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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない F16F
管理番号 1080708
審判番号 無効2002-35437  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-05-18 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-10-15 
確定日 2003-07-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第3310653号発明「車高調整懸架装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1、手続の経緯
本件無効審判請求に係る特許第3310653号は、平成12年5月22日(優先日:平成11年8月20日)に出願され、平成13年5月18日に出願公開され、平成14年5月24日に特許権の設定の登録がなされ、平成14年8月5日に特許掲載公報が発行されたものである。
これに対して、平成14年10月15日に請求人・株式会社アルテアより無効審判の請求がなされたところ、平成14年12月25日付で被請求人より無効審判答弁書が提出され、平成15年3月18日付で請求人から口頭審理陳述要領書が提出され、平成15年4月24日付で被請求人から口頭審理陳述要領書が提出され、平成15年4月24日に第1回口頭審理が、大阪市淀川区西宮原2-2-17、ドーミーイン新大阪センイシティー、特許庁審判廷で実施され、同日付で物件提出書が、その後、平成15年5月8日付で上申書が請求人より提出されている。

2、本件特許発明
本件特許の請求項1〜4に係る特許発明(以下、「特許発明1〜4」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、これを1A〜4Aの分説符号を用いて分説すれば、次のとおりである。(なお、この分説手法は請求人によるものであるが、被請求人もこれに同意している。)
『【請求項1】
1A.伸縮可能な略筒状のラバースプリング(2)に対し、該ラバースプリング(2)の両端部の開口部を閉塞し且つそれぞれ挿通孔(3a,4a)を有する、円板状の第1エンド体(3)及び円板状の第2エンド体(4)を備え、
1B.ラバースプリング(2)の両端部の開口部に、外側方向に曲げ加工された係止部が形成される一方、第1エンド体(3)及び第2エンド体(4)の周縁部に、内側方向に曲げ加工された係合部が形成され、
1C.それぞれの係合部がラバースプリング(2)のそれぞれの係止部に係止することにより、ラバースプリング(2)の両端部の開口部が閉塞されてなるベローズ式ラバースプリングと、
1D.該ベローズ式ラバースプリングの第1エンド体(3)の挿通孔(3a)に挿通されるショックアブソーバ本体(6a)及び第2エンド体(4)の挿通孔(4a)に挿通される伸縮ロッド(6b)を備えたショックアブソーバ(6)と、
1E.該ショックアブソーバ(6)のショックアブソーバ本体(6a)に固着され、且つ前記ベローズ式ラバースプリングの第1エンド体(3)に気密に装着されるラバースプリング受け部材(7)と、
1F.前記ベローズ式ラバースプリングの第2エンド体(4)に気密に装着されるアダプター(9)とから構成され、
1G.前記ラバースプリング受け部材(7)は、ショックアブソーバ本体(6a)が挿通される円筒状部(7a)と、該円筒状部(7a)の基部に一体に形成された鍔部(7b)とからなり、
1H.しかも、前記第1エンド体(3)と対面するラバースプリング受け部材(7)の鍔部(7b)の一面に、鍔部用Oリング(18)が嵌入される環状凹部(7d)が形成されてなることを特徴とする車高調整懸架装置。
【請求項2】
2A.前記第1エンド体(3)は、挿通孔(3a)の同心円上であって前記鍔部用Oリング(18)よりも内側の位置に数個の雌螺子(3b)を有する一方、前記ラバースプリング受け部材(7)の鍔部(7b)は、第1エンド体(3)の雌螺子(3b)に螺着されるボルトを没入する凹部(7c)を有し、しかも、該凹部(7c)は、エアー漏れ防止用のボルト用Oリング(17)を備えてなることを特徴とする請求項1記載の車高調整懸架装置。
【請求項3】
3A.車体(10)に取り付け可能で且つショックアブソーバ(6)の伸縮ロッド(6b)の先端部を保持するアッパーマウントユニット(8)をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の車高調整懸架装置。
【請求項4】
4A.前記第1エンド体(3)又は第2エンド体(4)の少なくとも何れか一方にエアーバルブ取付部(5)が設けられ、該エアーバルブ取付部(5)に空気導入路が接続されてなることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車高調整懸架装置。』

3、請求人の主張
これに対し、請求人は甲第4号証刊行物(実開昭60-134013号のマイクロフィルム)、甲第5号証刊行物(実公昭43-24891号公報)、甲第6号証刊行物(実開平5-50198号のマイクロフィルム)及び甲第7号証刊行物(米国特許第5580033号明細書)を呈示して、本件特許発明1〜4は甲第4〜7号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許発明1〜4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきであると主張している。
また請求人は、平成15年3月18日付の口頭審理陳述要領書で、参考文献1(米国特許第2874458号明細書)を提出し、同じく平成15年4月24日付物件提出書で、参考文献3(「ファミリア整備書(追補版)」、マツダ(株)、昭和62年7月第2版発行、第13-18頁)を提出し、上記主張の補強としている。(なお、請求人は審判請求書において、本件特許発明1〜4は、いずれも甲第4号証刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができないと主張してもいたが、この主張は特許庁審判廷における口頭審理の場において取り下げられた。)

4、被請求人の主張
一方、被請求人は、平成14年12月25日付無効審判答弁書及び平成15年4月24日付口頭審理陳述要領書において、乙第1〜7号証を提出すると共に、甲第4〜7号証刊行物及び参考文献1、3の存在の如何に拘わらず、本件特許発明に対する特許は特許法第29条第2項の規定に違反しないものであることは明白であるから、請求人主張の如き無効理由は一切存在しない、と主張している。

5、甲各号証及び参考文献
甲第4号証刊行物には、その明細書及び図面の記載から見て、出来るだけ本件特許発明に用いられる用語に倣って整理してみると、少なくとも次の発明が特徴的に記載されている。
「1A'.伸縮可能なラバースプリングに対し、該ラバースプリングの上端部の開口部を閉塞し且つ挿通孔を有する、円板状の第2エンド体を備え、
1B'.ラバースプリングの上端部の開口部に、外側方向に曲げ加工された係止部が形成される一方、第2エンド体の周縁部に、内側方向に曲げ加工された係合部が形成され、
1C'.係合部がラバースプリングの係止部に係止することにより、ラバースプリングの上端部の開口部が閉塞されてなるローリングダイアフラム式ラバースプリングと、
1D'.第2エンド体の挿通孔に挿通される伸縮ロッドを備えたショックアブソーバと、
1E'.ショックアブソーバのショックアブソーバ本体に固着されるピストンと、
1F'.ローリングダイアフラム式ラバースプリングの第2エンド体に装着されるスペーサと、
1G'.ショックアブソーバ本体が挿通される円筒状部と、該円筒状部の基部に一体に形成された鍔部とからなるピストン部材と、
1H'.ピストン部材の鍔部とを有する車高調整懸架装置。」
(なお、甲第4号証刊行物のものが「車高調整懸架装置」に関するものであるとの積極的記載はないが、そのものを「車高調整懸架装置」に関するものであるとすることについて当事者間に争いはなく、また、請求人が提出した参考文献3の存在がそれを裏付けてもいるので、かかる認定をした。)
甲第5号証刊行物には、その明細書及び図面の記載から見て、出来るだけ本件特許発明に用いられる用語に倣って整理してみると、少なくとも次の技術的事項が特徴的に記載されている。
「1A''.伸縮可能な略筒状のラバースプリングに対し、該ラバースプリングの両端部の開口部を閉塞する円板状の第1エンド体及び円板状の第2エンド体を備え、
1B''.ラバースプリングの両端部の開口部に、内側方向に曲げ加工された係止部が形成される一方、第1エンド体及び第2エンド体の周縁部に、外側方向に曲げ加工された係合部が形成され、
1C''.それぞれの係合部がラバースプリングのそれぞれの係止部に係止する事により、ラバースプリングの両端部の開口部が閉塞されてなるベローズ式ラバースプリングと、
1D''.第1エンド体の挿通孔に挿通される高さ調節用の弁と、
1H''.第1エンド体と下面板との間に設けられたパッキンと、
からなる高さ調節機構を内蔵した空気ばね。」
甲第6号証刊行物には、その明細書及び図面の記載から見て、出来るだけ本件特許発明に用いられる用語に倣って整理してみると、少なくとも次の技術的事項が特徴的に記載されている。
「1A'''.伸縮可能な略筒状のラバースプリングに対し、該ラバースプリングの両端部の開口部を閉塞する、円板状の第1エンド体及び円板状の第2エンド体を備え、
1B'''.ラバースプリングの両端部の開口部に、外側方向に曲げ加工された係止部が形成される一方、第1エンド体及び第2エンド体の周縁部に、内側方向に曲げ加工された係合部が形成され、
1C'''.それぞれの係合部がラバースプリングのそれぞれの係止部に係止することにより、ラバースプリングの両端部の開口部が閉塞されてなるベローズ式ラバースプリングと、
1D'''.第1エンド体上に固着される減衰装置と、
を備えた減衰装置付き空気ばね。」
甲第7号証刊行物には、その明細書及び図面の記載から見て、出来るだけ本件特許発明に用いられる用語に倣って整理してみると、少なくとも次の技術的事項が特徴的に記載されている。
「1A.伸縮可能な略筒状のラバースプリングに対し、該ラバースプリングの両端部の開口部を閉塞し且つそれぞれ挿通孔を有する、円板状の第1エンド体及び円板状の第2エンド体を備え、
1B.ラバースプリングの両端部の開口部に、外側方向に曲げ加工された係止部が形成される一方、第1エンド体及び第2エンド体の周縁部に、内側方向に曲げ加工された係合部が形成され、
1C.それぞれの係合部がラバースプリングのそれぞれの係止部に係止することにより、ラバースプリングの両端部の開口部が閉塞されてなるベローズ式ラバースプリングと、
を備えてなるベローズ式ラバースプリング。」
また、参考文献1には、甲第7号証刊行物に記載されるものと同様のベローズ式ラバースプリングが記載されていると共に、かかるベローズ式ラバースプリングを車両の懸架装置に適用し得る旨の記載も認められる。
参考文献3によれば、甲第4号証刊行物に記載されるものと類似するローリングダイアフラム式車高調整懸架装置が図示されている。

6、対比・判断
(1)まず、本件特許発明1と甲第4号証刊行物に記載される発明とを比較検討すると、両者共にショックアブソーバと柔軟可撓部材との組合せからなる車高調整懸架装置である点で一致するも、本件特許発明1ではベローズ式ラバースプリングを用いているのに対し、甲第4号証刊行物の発明ではローリングダイアフラムを用いている点で少なくとも相違する。
確かに、ショックアブソーバと柔軟可撓部材としてベローズに類似するローリングダイアフラムとの組合せにかかる車高調整装置が文献公知であり、そして、ベローズ式ラバースプリングそれ自体が周知であることは、請求人の提出にかかる甲各号証刊行物及び参考文献1,3の存在からも明らかである。
しかし、ショックアブソーバと組み合わされるローリングダイアフラムを、かかるベローズ式ラバースプリングで置換することがよしんば当業者にとって容易になし得たことであったとしても、本件特許発明1は、ベローズ式ラバースプリングとショックアブソーバとの組合せにかかる車高調整懸架装置を具現化するにあたり、
「1E.該ショックアブソーバ(6)のショックアブソーバ本体(6a)に固着され、且つ前記ベローズ式ラバースプリングの第1エンド体(3)に気密に装着されるラバースプリング受け部材(7)と、」を有し、
更には、「1G.前記ラバースプリング受け部材(7)は、ショックアブソーバ本体(6a)が挿通される円筒状部(7a)と、該円筒状部(7a)の基部に一体に形成された鍔部(7b)とからなり、
1H.しかも、前記第1エンド体(3)と対面するラバースプリング受け部材(7)の鍔部(7b)の一面に、鍔部用Oリング(18)が嵌入される環状凹部(7d)が形成され」なる組合せ構成を併せ持つものであるから、この点についてまでは、甲各号証刊行物及び参考文献の何れにも記載されているとすることができないばかりでなく、その組合せ構成を示唆する記述を見いだすこともできない。
すなわち、甲第5号証刊行物に記載されるものは、高さ調節機構を内蔵した空気ばねであって、第1エンド体に挿通されるものは、空気ばねの高さを一定に保つための弁であり、本件特許発明とはその技術思想を異にし、また、甲第6号証刊行物に記載されるものは減衰装置付空気ばねの単体であって、かかる減衰装置は第1エンド体上に固着されるものであるから、そして甲第7号証刊行物に記載されるものは、あくまで本件特許発明1に用いられる単体としてのラバースプリングに留まるに過ぎないから、ラバースプリングにショックアブソーバを貫通させることが、たとえ知られていたとしても、これらをどう組合せても上記1E、1G及び1Hに係る構成を得ることができないのみならず、それらのものから当業者が容易に想到し得たと言うこともできない。
請求人はこの点につき、特許発明1におけるラバースプリング受け部材は、甲第4号証刊行物に記載される発明におけるピストン38に対応し、ピストン38の上部が特許発明1における「円筒状部」に、下部が同じく「鍔部」に対応すると主張して、本件特許発明1の進歩性を否定する。
確かに、図面を形式的に見ればそうかもしれないが、特許発明1に係るラバースプリング受け部材の特に円筒状部の基部に一体に形成された鍔部は、密封作用を有してラバースプリングの第1エンド体に装着されるものであること既述のとおりであるから、また甲第4号証刊行物におけるピストン38に係る構成の説明は、「ローリングダイアフラム36の他端はショックアブソーバ10の本体12に固定されたピストン38に固定されている」(第6頁第19行〜第7頁第2行)と記載されているだけであるから、請求人のかかる主張には飛躍があると言わざるを得ない。
そして、本件特許発明1は、かかる構成を特徴的に具備することにより、全体として「簡単且つ確実に、しかも迅速に現在使用している車両の車高調整懸架装置を、車両自体の基本構造に一切手を加えることなく、また、現在の車両に装着されているアッパーマウントユニットやショックアブソーバ等の部材を有効利用して車高調整懸架装置に変更すべく用いることが出来る」という、特許明細書記載の作用効果を奏するものでもある。
そうしてみると、本件特許発明1は甲第4〜7号証刊行物及び参考文献1,3に記載される発明又は技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(2)特許発明2につき検討する。
特許発明2は、特許発明1を引用する形式で記載されている。
特許発明1が既述のとおり進歩性を有するものであるから、特許発明1の構成に、更に限定された分説符号2Aの内容を組み込んだ特許発明2は、甲各号証刊行物及び参考文献1,3の存在の如何に拘わらず、これを進歩性なしとすることはできない。
(3)特許発明3につき検討する。
特許発明3は、特許発明1又は特許発明2を引用する形式で記載されている。
特許発明1及び特許発明2が既述のとおり何れも進歩性を有するものであるから、特許発明1又は特許発明2の構成に、更に限定された分説符号3Aの内容を組み込んだ特許発明3は、甲各号証刊行物及び参考文献1,3の存在の如何に拘わらず、これを進歩性なしとすることはできない。
(4)特許発明4につき検討する。
特許発明4は、特許発明1、特許発明2又は特許発明3を引用する形式で記載されている。
特許発明1、特許発明2及び特許発明3が既述のとおり何れも進歩性を有するものであるから、特許発明1、特許発明2又は特許発明3の構成に、更に限定された分説符号4Aの内容を組み込んだ特許発明4は、甲各号証刊行物及び参考文献1,3の存在の如何に拘わらず、これを進歩性なしとすることはできない。
(5)以上のとおりであるから、本件特許発明1〜4は甲第4〜7号証刊行物及び参考文献1、3に記載された発明又は技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

7、むすび
したがって、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1〜4についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-05-23 
結審通知日 2003-05-28 
審決日 2003-06-10 
出願番号 特願2000-150194(P2000-150194)
審決分類 P 1 112・ 121- Y (F16F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤村 聖子  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 町田 隆志
内田 博之
登録日 2002-05-24 
登録番号 特許第3310653号(P3310653)
発明の名称 車高調整懸架装置  
代理人 薬丸 誠一  
代理人 坂戸 敦  
代理人 藤本 昇  
代理人 清原 義博  
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