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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1080887
審判番号 不服2001-13099  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-26 
確定日 2003-07-28 
事件の表示 平成9年特許願第27177号「釣竿」拒絶査定に対する審判事件[平成10年2月17日出願公開、特開平10-42749]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 一、手続の経緯及び本願発明
本願は、平成8年5月31日に出願された特願平8-160590号の特許出願を国内優先権主張の基礎として平成9年1月27日に特許出願された特願平9-27177号であって、本願の発明は、平成13年6月4日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】穂先先部に対して同心状に回転自在に設けられた回転体の有する釣糸結着溝の底部と回転体の頭部が中実に形成され、前記釣糸結着溝の前側壁面が、穂先の軸心方向と略直交するよう延在された平面状部を有し、その平面状部の先部が曲面状に面取りされており、前記釣糸結着溝の深さが、標準釣糸の直径の2倍から15倍の範囲内に設定され、釣糸結着溝の幅が当該釣竿に使用の標準釣糸の外径より大きいことを特徴とする釣竿。」

二、引用刊行物及び引用刊行物における記載事項
原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の特許出願前に頒布された刊行物である実願昭63-145213号(実開平2-67763号公報)のマイクロフイルム(以下、「引用刊行物」という。)には、釣竿に関し、次の事項が記載されている。
「3,釣竿の先端部に固定した保持体に、先端に釣糸を直接又はリリアン等の柔軟部材を介して取付けた回転体を回動自在に嵌合すると共に前記保持体及び回転体によって形成される段部を被覆するカバー材を設けた釣竿。」(明細書1頁14行〜18行)
「本考案は釣竿先端部における釣糸取付部に釣糸が引掛かるのを防止する考案に関する。」(2頁1行〜2行)
「本考案はこれらの現状に鑑み、釣竿に絡まった釣糸を引張ることによって釣糸取付部を円滑に通過して釣糸の引掛かるのを防止した釣糸取付部を有する釣竿を提供することを目的とするものである。」(明細書2頁14行〜18行)
「更に第6図に示す実施例は保持体2内に先端に釣糸5を直接係止した回転体4を回動自在に嵌合すると共に回転体4に形成した脱落防止用環状部4’によって形成される段部部分に保持体2と一体にカバー材6を設けたものである。」(明細書6頁13行〜17行)
「魚釣り中における糸撚れ及び釣糸の纏絡を釣糸取付部で確実に防止できることはもとより、特に釣糸が釣竿に巻き付いても釣糸を引張ることにより釣糸は容易にカバー材によって釣糸取付部を通過して釣糸の引掛るのを確実に防止し、魚釣り操作の支承を来すことなく円滑容易に行うことができる優れた特徴を有する。」(明細書7頁4行〜11行)
さらに、上記引用刊行物の第6図には、別実施例の一部切欠正面図として、釣竿1の先端部に取付けられた筒状の保持体2の内部に中実状の回転体4が回転自在に嵌合され、該回転体4の前方先端側の釣糸取付部に釣糸5を直接係止する溝が形成されていて、前記溝の縊部と回転体4の先端部も中実状となっており、前記溝の前方先端側及び竿尻側の両側の壁面が釣竿1の軸方向に対し略直交する面となっている釣竿の釣糸取付部の構造が図示されている。
また、同第6図の記載では、前記釣糸係止用溝の前方先端側と竿尻側の両側の平面状の壁面の先部に、極小の面取りが施されているように図示され、そして、前記釣糸係止用溝の内部の奥底位置に埋没するように釣糸5が係止されている図が示されている。

三、本願発明と引用発明との比較・対比及び一致点・相違点
引用刊行物の上記摘記事項からみて、前記引用刊行物には、少なくとも、釣竿1の先端部に取付けられた筒状の保持体2の内部に回転体4が回転自在に嵌合され、該回転体4の前方先端側の釣糸取付部に釣糸5を直接係止する溝が形成されていて、前記溝の縊部と回転体4の先端部が中実状となっており、前記溝の前方先端側の壁面が釣竿1の軸方向に対し略直交する面となっていて、釣糸係止用溝の深さが釣糸5を前記溝の奥底の位置に埋没する状態で係止できる深さとなっており、釣糸係止用溝の幅が釣糸5を前記溝内に丁度係止できる大きさとなっている釣竿の発明についての記載が認められる。
ここで、本願発明と上記引用刊行物に記載の発明(以下、「引用発明」という。)とを比較・対比すると、引用発明における「釣竿1の先端部」「中実状の回転体4」「釣糸5」「釣糸係止用溝」「縊部」「回転体4の先端部」「釣糸係止溝の前方先端側の壁面」「釣竿1」が、本願発明の「釣竿の穂先先部」「回転体」「釣糸」「釣糸結着溝」「底部」「回転体の頭部」「釣糸結着溝の前側壁面」「釣竿」にそれぞれ相当するから、両者は「穂先先部に対して同心状に回転自在に設けられた回転体の有する釣糸結着溝の底部と回転体の頭部が中実に形成され、前記釣糸結着溝の前側壁面が、穂先の軸心方向と略直交する面を有する釣竿」である点で一致し、次の点で両者の構成が相違する。
相違点1:本願発明の釣糸結着溝の前側壁面が「穂先の軸心方向と略直交するよう延在された平面状部を有し、その平面状部の先部が曲面状に面取りされて」ているのに対し、引用発明の釣糸係止溝の前方先端部側の壁面も、第6図の記載では、穂先の軸心方向と略直交するよう延在された平面状部を有し、その平面状部の先部が極小の面取りが施されているようにも見えるが、明確ではない点。
相違点2:本願発明の釣糸結着溝の深さが「標準釣糸の直径の2倍から15倍の範囲内に設定され」ているのに対し、引用発明の釣糸係止溝の深さの設定は、少なくとも釣糸が埋没する深さではあるが、明確ではない点。
相違点3:本願発明の釣糸結着溝の幅が「当該釣竿に使用の標準釣糸の外径より大きい」のに対し、引用発明の釣糸係止溝の幅は、釣糸の外径とほぼ同等の大きさである点。

四、当審の判断
次に、上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
釣糸が擦り切れないようにするために、釣糸が当接する釣具の角部に面取りを施しておくことは、本願特許出願時における常套手段である。
しかも、引用刊行物の第6図の記載でも、明確ではないが、引用発明における釣糸係止溝の前方先端部側の壁面も、穂先の軸心方向と略直交するよう延在された平面状部を有し、その先部に極小ではあるが面取りが施されているように図示されているのであり、上記常套手段に基いて本願発明の上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
引用刊行物の第6図では、引用発明における釣糸係止溝の深さが、少なくとも釣糸5が埋没するような深さであるように図示されていることを考えると、釣糸の結着を確実にするために、釣糸結着溝の深さを「標準釣糸の直径の2倍から15倍の範囲内に設定され」るように変更することは、引用発明に基いて当業者が容易に成しうる程度のことにすぎない。
してみると、種々の釣糸の直径が該当しうる「標準釣糸の直径」を基準にして、釣糸結着溝の深さを「標準釣糸の直径の2倍から15倍の範囲内に設定」して、本願発明のような上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者が格別の困難性を要せずに容易に想到できることである。そして、本願発明の前記相違点2に係る「標準釣糸の直径の2倍から15倍の範囲内に設定」した点に格別の効果を認めることができない。

(3)相違点3について
引用刊行物の第6図には、引用発明における釣糸係止溝の幅が、釣糸5の外径とほぼ同等の大きさとして図示されていることを勘案すると、釣糸の結着を容易にできるようにするために、釣糸結着溝の幅の大きさを「当該釣竿に使用の標準釣糸の外径より大きい」ように変更することは、引用発明に基いて当業者が容易に成しうる程度のことにすぎない。
してみると、本願発明の前記相違点3に係る構成のように、釣糸の外径を基準にして釣糸結着溝の幅の大きさを「当該釣竿に使用の標準釣糸の外径より大きい」とすることは、当業者が格別の困難性を要せずに容易に想到できることである。そして、本願発明の前記相違点3に係る「当該釣竿に使用の標準釣糸の外径より大きい」とした点に格別の効果を認めることができない。

(4)まとめ
以上のとおりであり、本願発明は、引用刊行物に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

五、むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び常套手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-05-30 
結審通知日 2003-05-30 
審決日 2003-06-10 
出願番号 特願平9-27177
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋月 美紀子  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 瀬津 太朗
佐藤 昭喜
発明の名称 釣竿  
代理人 越智 俊郎  

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