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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01H 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01H |
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管理番号 | 1080944 |
審判番号 | 審判1999-18303 |
総通号数 | 45 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-11-17 |
確定日 | 2003-07-09 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 62658号「サーマルプロテクタ」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 9月24日出願公開、特開平11-260220]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年3月13日の出願であって、平成11年9月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月17日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 2.平成11年11月17日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成11年11月17日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「一端に固定接点を有し他端が第1の端子を介して外部回路に接続される固定板と、上記固定接点に接触可能な可動接点を一端に有し他端が第2の端子を介して外部回路に接続される可動板と、予じめ設定された所定の温度以上になると形状が変化し上記可動接点が上記固定接点から離れる方向に上記可動板を変形させるバイメタル板とを備え、パーソナルコンピュータの2次電池パックにプロテクタとして組み込んで使用するサーマルプロテクタにおいて、 上記固定板および第1、第2の端子を銅によって形成するとともに、上記可動板を導電率が50%IACS以上の材料で形成することを特徴とするサーマルプロテクタ。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載された発明である「サーマルプロテクタ」が、「パーソナルコンピュータの2次電池パックにプロテクタとして組み込んで使用する」ものであること、および、「内部の通電部材が導電率が50%IACS以上の材料で作られている」としていた点について、内部の通電部材を構成している固定板、第1及び第2の端子並びに可動板の各部材について、「固定板および第1、第2の端子を銅によって形成する」とともに、「可動板」を導電率が50%IACS以上の材料で「形成する」という限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、特公平3-34169号公報(以下、「引用例1」という)には、「密閉形熱応動スイッチ」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。 (イ)「本発明は、バイメタルなど温度の相違によって形状を変える熱応動板を皿状に絞り成形して異なる温度において急跳運動を行なうようにし、その急跳運動を利用して接点の開閉を行なわせる熱応動スイッチに係」るものである点(第1欄第22〜26行)、 (ロ)「導電体4の図示右側即ち密閉容器の内側になる部分には例えば銀合金などをクラッドした上面が部分球面状をなした円板状の固定接点5aを先端部に固着した固定接点支持体5が固着されている。」点(第2欄第24〜27行)、 (ハ)「固定接点支持体5は固有抵抗や溶着性などが目的に合致するように選択された適当な金属板をL字形に曲げて作られている。」点(第3欄第1〜3行)、 (ニ)「蓋板2の密閉容器内側に面する一部にL字形の金属板で作られた熱応動板支持体8が溶接などの方法で固着されている。」点(第3欄第3〜5行)、 (ホ)「この熱応動板支持体8の右側には適当な金属板をクランク形に曲げた接続部材7の右端が固着され、その接続部材7の左側には可動接点6aを先端近傍に固着したバイメタル或いはトリメタルから成る熱応動板6が固着されている。」点(第3欄第6〜10行)、 (へ)「熱応動板6の中央部は浅い皿状に絞り成形されていて所定の温度例えば120℃で急跳反転して点線にて示す状態になり固定接点5aから可動接点6aをスナップ動作で開離させ、また例えば80℃で急跳復帰して図示実線にて示す状態に接点間を閉成するものである。」点(第3欄第14〜20行)、 (ト)「このような構成の熱応動スイッチを接続金具9a及び9bを介して保護すべきモーターなどと直列に接続して電源に接続し、かつモーター巻線に対して熱交換関係状態に装着すればそのモーターの巻線の温度の影響及びモーターの電流が熱応動板支持体8-接続部材7-熱応動板6-可動接点6a-固定接点5a-固定接点支持体5-導電体4を流れるのでこれら各部の抵抗による発熱の影響を受け熱応動板6は温度上昇し、異常時には熱応動板6が急跳反転して点線に示す状態となりモーターへの電流供給を遮断してモーターの巻線温度の異常上昇を保護する事が出来る。」点(第3欄第33行〜第4欄第1行)、 (チ)「以上述べた如き構造の熱応動スイッチにおいて、モーターなどを保護する上で必要な特性として限界動作電流値(以下UTCと表す)及びそのUTCの何倍かの値の電流をスイッチに通じた時に熱応動板が所定の急跳反転温度に達して接点を開く迄の動作時間(以下STと表す)がある。」点(第4欄第6〜11行)、 (リ)「保護すべきモーターの定格電流に対して好ましい範囲に熱応動スイッチのUTCを合わせるためには、熱応動スイッチの各部要素の抵抗値を選定しなければならないが、各部要素の機械的強度も考慮して使用する材料の固有抵抗値と寸法を設計する。」点(第4欄第28〜33行)。 これら(イ)〜(リ)の記載及び図1の記載を総合すると、上記引用例1には、 「一端に固定接点5aを有し他端が接続金具9bを介して外部回路に接続される固定接点支持体5と、上記固定接点5aに接触可能な可動接点6aを一端に有し他端が接続部材7、熱応動板支持体8及び接続金具9aを介して外部回路に接続され、予じめ設定された所定の温度以上になると形状が変化し上記固定接点5aから離れる方向に変形するバイメタルから成る熱応動板6とを備えた熱応動スイッチにおいて、熱応動スイッチのUTCを合わせるために各部要素の抵抗値を選定し、その選定に当たっては、各部要素の機械的要素も考慮して使用する材料の固有抵抗と寸法を設計するようにした、熱応動スイッチ。」の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されているものと認められる。 (3)対比・判断 そこで、本願補正発明と上記引用発明1とを対比すると、引用発明1の「熱応動スイッチ」は、上記(2)(ト)の記載を参照すると、温度の影響及び回路を流れる過電流の発生等により生じた過熱を検知して回路を遮断し、回路を保護する装置であるから、本願補正発明の「サーマルプロテクタ」に相当するものである。また、引用発明1の「接続金具9b」、「固定接点支持体5」、「接続金具9a」、「熱応動板6」、は、その構造または機能からみて、本願補正発明の「第1の端子」、「固定板」、「第2の端子」、「可動板」に、それぞれ相当している。 そうしてみると、両者は、「一端に固定接点を有し他端が第1の端子を介して外部回路に接続される固定板と、上記固定接点に接触可能な可動接点を一端に有し他端が第2の端子を介して外部回路に接続され、予じめ設定された所定の温度以上になると形状が変化し上記固定接点から離れる方向に変形する可動板と、を備えたサーマルプロテクタ。」である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。 (A)可動板に関して、本願補正発明においては、可動板はバイメタル板によって変形させられるものであるのに対して、引用発明1においては、熱応動板6(可動板)自体がバイメタルから成り、自ら変形するものである点。 (B)サーマルプロテクタの用途に関して、本願補正発明においては、パーソナルコンピュータの2次電池パックにプロテクタとして組み込んで使用するものであるのに対して、引用発明1においては、そのような用途に用いられるものかどうか明確でない点。 (C)要素部材の材料またはその特性に関して、本願補正発明においては、固定板および第1、第2の端子を銅によって形成するとともに、可動板を導電率が50%IACS以上の材料で形成するものであるのに対して、引用発明1においては、熱応動スイッチのUTCを合わせるために各部要素の抵抗値を選定し、その選定に当たっては、各部要素の機械的要素も考慮して使用する材料の固有抵抗と寸法を設計するようにしているものの、その具体的な材料またはその特性については明確でない点。 そこで、これらの相違点について検討する。 まず、上記相違点(A)についてみると、この種の可動板をバイメタルで変形させる構造を備えたサーマルプロテクタについて、可動板自体をバイメタルとするか、可動板にバイメタル板をほぼ平行に付設するような別体構造とするかは、どちらも本願出願前周知の技術であるから(例えば、特開平1-93019号公報第2頁左上欄第3〜12行の記載参照)、引用発明1の可動板自体がバイメタルであるものを、本願補正発明のように別体のバイメタルを可動板に付設するような構成に代えることは、当業者が必要に応じて適宜採用し得る設計的事項といえる。 次に、上記相違点(B)についてみると、サーマルプロテクタの用途として、パーソナルコンピュータの2次電池パックの回路にプロテクタとして組み込んで使用することは本願出願前周知の技術であり(例えば、特開平7-183025号公報の段落【0003】安全素子9、特開平10-50281号公報の感温素子8に関する記載参照)、またバッテリーに付随させたこのような素子をともにバッテリーパックの内部に収納するよう組み込むことも実施にあたっての任意の設計的事項にすぎないから、上記相違点(B)は、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、上記相違点(C)についてみる。 引用発明1において、熱応動スイッチのUTCを合わせるために各部要素の抵抗値を選定し、その選定に当たっては、各部要素の機械的要素も考慮して使用する材料の固有抵抗と寸法を設計するようにしているところ、サーマルプロテクタ等の電気的スイッチにおいて、固定板および第1、第2の端子等の導電部分を銅によって形成する点は、本願出願前周知の技術であり(例えば、特表平6-506793号公報「単純な銅線の導体2、3」に関する記載参照)、また、大電流が流れる回路においてはサーマルプロテクタ等の電気的スイッチのサーモスタット素子には抵抗値の低い材料、すなわち、導電率の高い材料を採用することが本願出願前周知の技術であること(例えば、特開平8-22757号公報第7欄第26〜30行「大電流が通電されるモータについては抵抗値の低いヒータ2及びサーモスタット素子5が選択され、電流が小さいモータに対しては抵抗値の大きいヒータ2及びサーモスタット素子5が選択される」なる記載参照)、かつ、サーマルプロテクタ等の電気的スイッチの可動板について、導電率が50%IACS以上の材料としてよく知られているベリリュウム銅を採用することも本願出願前周知の技術であること(特開平7-335103号公報の段落【0057】、特開平8-7729号公報の段落【0037】の記載参照)を考慮すれば、上記相違点(C)において本願補正発明のようにすることは、熱応動スイッチのUTCを合わせるために各部要素の抵抗値を選定するに当たって、具体的な用途・目的に応じた所望の性能を得るために周知の材料を適宜選定した程度のものであって、当業者が容易に想到し得るものというほかない。 そして、上記相違点(A)〜(C)による作用効果についても、上記引用発明1及び本願出願前周知の技術から当業者の予測し得る範囲内のものでしかない。 したがって、本願補正発明は、上記引用発明1および本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成13年10月10日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成11年5月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「一端に固定接点を有し他端が第1の端子を介して外部回路に接続される固定板と、上記固定接点に接触可能な可動接点を一端に有し他端が第2の端子を介して外部回路に接続される可動板と、予じめ設定された所定の温度以上になると形状が変化し上記可動接点が上記固定接点から離れる方向に上記可動板を変形させるバイメタル板とを備えるサーマルプロテクタにおいて、 内部の通電部材が導電率が50%IACS以上の材料で作られていることを特徴とするサーマルプロテクタ。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「サーマルプロテクタ」を限定する「パーソナルコンピュータの2次電池パックにプロテクタとして組み込んで使用する」ものであるという構成、および、「内部の通電部材が導電率が50%IACS以上の材料で作られている」ことについての「固定板および第1、第2の端子を銅によって形成するとともに、上記可動板」を導電率が50%IACS以上の材料で「形成する」という限定を省いたものである。 そうしてみると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、上記引用発明1および本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記引用発明1および本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明1および本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-04-24 |
結審通知日 | 2003-05-09 |
審決日 | 2003-05-20 |
出願番号 | 特願平10-62658 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01H)
P 1 8・ 121- Z (H01H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中川 真一 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
平上 悦司 千壽 哲郎 |
発明の名称 | サーマルプロテクタ |
代理人 | 奥山 尚男 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 秋山 暢利 |
代理人 | 有原 幸一 |