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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B |
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管理番号 | 1081019 |
審判番号 | 不服2002-2817 |
総通号数 | 45 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-03-07 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-02-20 |
確定日 | 2003-07-30 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第211811号「分包機」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 3月 7日出願公開、特開平 7- 61402]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成5年8月26日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明は、平成14年3月22日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】散剤および/または錠剤を所定分量ずつ袋体内に封入する分包機であって、(a)前記散剤を分割収納する複数個の散剤収納体と、これら各散剤収納体を支持して回転駆動される散剤用エンドレスベルトと、前記各散剤収納体の底部を所定位置で開口することによってその散剤収納体内の散剤を下方へ落下させる散剤落下手段とを有する散剤部、および、(b)前記錠剤を分割収納する複数個の錠剤収納体と、これら各錠剤収納体を支持して回転駆動される錠剤用エンドレスベルトと、前記各錠剤収納体の底部を所定位置で開口することによってその錠剤収納体内の錠剤を下方へ落下させる錠剤落下手段とを有する錠剤部を備え、前記散剤部は、機体の上部開口を覆うように設けられる棚板上に配設され、前記錠剤部は、前記散剤部の後部寄りでかつ前記散剤収納体の移送路の上方に配設されることを特徴とする分包機。」 2.引用刊行物記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された実願昭61-20253号(実開昭61-150702号)のマイクロフィルム(昭和61年9月18日出願公開。以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 記載ア.「機筐上面において、所定の閉路を有するように設けた複数個の錠剤用分割マス2及び該分割マス底面に設けた開閉シャッタ8と、前記錠剤用分割マスの下部においてエンドレスに周回可能に設けたバケット装置と、該バケット装置の底面に設けた錠剤の落下機構及び、機本体側に設けた投入部22を介して投入される包装機構5を具備して成る事を特徴とする小型錠剤分包機。」(実用新案登録請求の範囲) 記載イ.「錠剤を手分割によって所望の分包袋中に包装するに便利であり、しかも小形軽量である為取扱いも容易である上、価格的に廉価である小型錠剤分包機を得る事を目的とするものである。」(第2頁第15〜19行) 記載ウ.「第1図は装置全体を示す斜視図、第2図は上面図である。1は機筐であり、その上方に複数個の錠剤用分割マス2が固設され、且つ散剤の均一撒布機構3が並設される。・・・・・機筐1の上面は蓋体6が設けてあり、側蓋7とともに開閉し得るように構成されている。第3図は、上記蓋体6,側蓋7をともに開けて内部の構成を明らかにする斜視図である。即ち前記の如く固設された錠剤用分割マス2の底面には、共通の開閉シャッタ8(第2図)が設けてあり、その下方に複数個の錠剤バケット9が回動チェーン10に一端を結合してエンドレス周回する如く設置されている。11は錠剤バケット9を支持する支持板であり、中心近傍に錠剤落下孔が設けてある(第2図のA位置)。一方散剤の均一撒布機構3は揺動落下機構としての揺動開閉板12とその落下端部下方において複数個の散剤バケット13を結合する回動チェーン14とから成る。15は均一撒布機構3を支持する支持板であり、前記錠剤バケット9の例と同様に回動チェーン14に沿って散剤バケット13が回動チェーン14に沿ってエンドレス周回する如く設置され、且つ前記錠剤落下孔の近傍に散剤落下孔が設けてある。」(第3頁第2行〜第4頁第8行) 記載エ.「錠剤バケット9及び散剤バケット13の底蓋には開閉扉を装備するのが良く、例えばマグネットを利用した簡易開閉機構を採用し、錠剤又は散剤落下孔の上方で容易に開閉し、」(第4頁第17〜20行) 記載オ.「実施例装置は、錠剤のみではなく散剤も併せて分割包装する際にも使用する事ができるものであって、その際には、錠剤と散剤の同時包装はもちろん、交互包装を行う事もできる。」(第8頁第18行〜第9頁第1行) そして、蓋体を開けた斜視図である第3図には、錠剤分割マス及び錠剤バケットと均一撒布機構とが、散剤バケットより上方に一定の間隔を有する空間を存して配設された状態が図示されており、また、上面図である第2図には、錠剤分割マス及び錠剤バケットと均一撒布機構とが、平面でみて、散剤バケットの上部に約1つの散剤バケット幅に対応する間隔を有して配設されている状態が図示されている。 上記記載ア〜オの事項及び図面の第1〜3図からみて、引用刊行物には、「散剤及び/または錠剤を所定分量ずつ袋体に封入する分包機において、(a)揺動落下機構としての揺動開閉板(12)とその落下端部下方において複数個の散剤バケットを結合する回動チェーン(14)とから成る散剤の均一撒布機構と、該回動チェーン(14)に沿ってエンドレス周回するように設置された散剤バケットと、錠剤落下孔近傍に設けられた散剤落下孔の上方で開扉する該散剤バケットの底蓋に設けられた開閉扉と、を有する散剤を扱う部分、及び(b)機筐上面において、所定の閉路を有するように設けた複数個の錠剤用分割マス及び該分割マス底面に設けた開閉シャッタと、前記錠剤用分割マスの下部においてエンドレスに周回可能に設けた錠剤バケットと、該錠剤バケットを結合する回動チェーン(10)と、錠剤落下孔の上方で開扉する該錠剤バケットの底蓋に設けられた開閉扉とを有する錠剤を扱う部分とを備え、錠剤を扱う部分は、均一撒布機構と、平面でみて、散剤バケットの上部に約1つの散剤バケット幅に対応する間隔を有する空間を存して散剤を扱う部分の後方に配設されている小型錠剤分包機。」の発明(以下、「引用刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 3.対比 本願発明と引用刊行物記載の発明を対比すると、引用刊行物記載の発明の「散剤バケット」、「散剤バケットの底蓋」、「散剤バケットの底蓋に設けられた『開閉扉』」、「散剤を扱う部分」、「錠剤バケット」、「錠剤バケットの底蓋」、「錠剤バケットの底蓋に設けられた『開閉扉』」及び「錠剤を扱う部分」は、それぞれ本願発明の「散剤収納体」、「散剤収納体の底部」、「散剤落下手段」、「散剤部」、「錠剤収納体」、「錠剤収納体の底部」、「錠剤落下手段」及び「錠剤部」に相当する。(上記記載ア及びウ並びに図面参照。) また、引用刊行物記載の発明の「回動チェーン(14)」は、散剤バケットを結合して回転駆動される散剤用エンドレス回転手段であり、同じく「回動チェーン(10)」は、錠剤バケットを結合して回転駆動される錠剤用エンドレス回転手段であるといえる。 したがって、両者は「散剤および/または錠剤を所定分量ずつ袋体内に封入する分包機であって、(a)前記散剤を分割収納する複数個の散剤収納体と、これら各散剤収納体を支持して回転駆動される散剤用エンドレス回転手段と、前記各散剤収納体の底部を所定位置で開口することによってその散剤収納体内の散剤を下方へ落下させる散剤落下手段とを有する散剤部、および、(b)前記錠剤を分割収納する複数個の錠剤収納体と、これら各錠剤収納体を支持して回転駆動される錠剤用エンドレス回転手段と、前記各錠剤収納体の底部を所定位置で開口することによってその錠剤収納体内の錠剤を下方へ落下させる錠剤落下手段とを有する錠剤部を備えた分包機。」である点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1 本願発明は、散剤用及び錠剤用のエンドレス回転手段として、エンドレスベルトを用いているのに対して、引用刊行物記載の発明は、散剤用及び錠剤用エンドレス回転手段として、エンドレスチェーン(10,14)を用いている点。 ・相違点2 本願発明では、散剤部は、機体の上部開口を覆うように設けられる棚板上に配設されているのに対して、引用刊行物記載の発明では、その点が言及されていない点。 ・相違点3 本願発明では、錠剤部は、散剤部の後部寄りでかつ散剤収納体の移送路の上方に配設されるのに対して、引用刊行物記載の発明では、錠剤部は、均一撒布機構と、平面でみて、散剤収納体の上部に約1つの散剤収納体幅に対応する間隔を有する空間を存して散剤部の後方に配設されている点。 4.相違点の判断 そこで、上記相違点について検討する。 ・相違点1について 収容体を移動させる手段として、エンドレスベルトを用いることは、本願の出願前に周知の技術的事項であり(例えば、バケットコンベアにおける特開平4-112114号公報、薬品収容部を無端ベルトに仕切り板を設けたものとした特開平4-87905号公報、請求人が提出した平成13年5月28日付け早期審査に関する事情説明書において示された、自動分割分包機における実公昭56-44641号等参照。)、収容体を移動させる手段として、チェーンを用いるか、エンドレスベルトを用いるかは、当業者が適宜選択し得る事項である。 そして、本願明細書の記載をみても、本願発明において、「エンドレスベルト」を採用することによる格別の効果を見いだすことはできない。 なお、審判請求人は、平成14年3月22日の請求書において、「散剤収納体および錠剤収納体をそれぞれ散剤用エンドレスベルトおよび錠剤用エンドレスベルトに支持させ、これらエンドレスベルトの駆動により散剤収納体もしくは錠剤収納体を移動させるように構成されているので、それら散剤収納体もしくは錠剤収納体の移動をスムーズにかつ静かに行うことができ、しかもメインテナンスフリーであるという優れた作用効果を奏するのである。」(審判請求書第5頁第18〜23行)と主張するが、当該効果は、エンドレスベルトによる駆動を採用することにより普通に奏する効果であるから、かかる出願人の主張は採用できない。 したがって、引用刊行物記載の発明において、散剤用及び錠剤用のエンドレス回転手段として、エンドレスベルトを用いることは、当業者が容易になし得たことである。 ・相違点2について 引用刊行物記載の発明において、錠剤部、散剤部は、第1図を参照すると、包装機構を備える機筐上部に配置されており、また、第3図を参照しても、散剤部、錠剤部は、機筐上部に備えられているものと認められる。 そして、各種装置を筐体の上部に取り付ける場合に、筐体の上部開口を覆う棚板上に各種装置を配置することは、一般に普通に行われていることであるから、引用刊行物記載の発明において、散剤部を棚板上に配置することは、当業者が容易になし得たことである。 ・相違点3について 分包機の技術分野において、装置を構成する装置要素を配置する場合に、装置全体としてコンパクトになるように配置することは、本願の出願前に周知の技術的事項である(例えば、特開昭61-273302号公報第3頁右上欄の「散剤供給部以外の散剤処理部は平面的にみて錠剤収容部の内側に配置されているため、全体としてスペースとくに平面的にみたスペースを最大限有効に活用することができ、したがって高密度でコンパクトな薬剤分包機を実現することができる等のすぐれた効果を有するものである。」の記載参照。また、特開昭60-172602号公報、実願昭61-115440号(実開昭62-76102号)のマイクロフィルムの、散剤フィーダが錠剤フィーダ棚とオーバーラップ配置したものが図示されている点や、実願平2-2064号(実開平3-93401号)のマイクロフィルム等参照。)。 そうすると、引用刊行物記載の発明において、装置全体のコンパクト化を図るために、錠剤部(錠剤を扱う部分)と均一撒布機構との間であって、散剤収納体(散剤バケット)の上部に存する、約1つの散剤収納体幅に対応する間隔を有する空間を無くして錠剤部を散剤収納体の上部に配置し、相違点3における本願発明の構成にすることは、当業者が容易になし得たことである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-05-28 |
結審通知日 | 2003-06-03 |
審決日 | 2003-06-16 |
出願番号 | 特願平5-211811 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 一ノ瀬 覚 |
特許庁審判長 |
鈴木 公子 |
特許庁審判官 |
柳 五三 山崎 勝司 |
発明の名称 | 分包機 |
代理人 | 井上 勉 |