• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01C
管理番号 1081271
異議申立番号 異議2001-71097  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-03-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-10 
確定日 2003-05-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3097204号「乗用型作業機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3097204号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3097204号の請求項1に係る発明についての出願は、平成3年8月30日に特許出願され、平成12年8月11日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、本件特許に対し、平成13年4月10日にヤンマー農機株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由を通知したところ、平成14年7月12日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正請求について
2-1.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、次のとおりである(下線部分が訂正個所である)。
(a)平成11年10月25日に提出した手続補正書で補正した明細書(以下、「特許明細書」という)の特許請求の範囲(本件特許公報1頁下段左欄2〜15行)に記載された「機体上に設けた操縦座席16の前方に操縦ハンドル15を配置し、該操縦ハンドル15の側方に変速レバー9を設けた乗用型作業機において、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの操作経路イ、ロを設け、一つの操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該操作経路ロを前記操作経路イの前後中間部で連通したことを特徴とする乗用型作業機。」を、
「機体上に設けた操縦座席16の前方に操縦ハンドル15を配置し、該操縦ハンドル15の側方に変速レバー9を設けると共に該変速レバー9の外側に作業者が通れる通路Aを設けた乗用型作業機において、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの機体内方の操作経路イと該操作経路イに連通する外方の操作経路ロを設け、一つの機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該機体外方の操作経路ロを前記機体内方の操作経路イの前後中間部で連通したことを特徴とする乗用型作業機。」と訂正する。
(b)特許明細書の段落【0003】(同公報1頁右欄11行〜2頁左欄6行)に記載された「この発明は、前記の従来技術のもつ課題を解決すべく、機体上に設けた操縦座席16の前方に操縦ハンドル15を配置し、該操縦ハンドル15の側方に変速レバー9を設けた乗用型作業機において、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの操作経路イ、ロを設け、一つの操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該操作経路ロを前記操作経路イの前後中間部で連通したことを特徴とする乗用型作業機としたものである。」を、
「この発明は、前記の従来技術のもつ課題を解決すべく、機体上に設けた操縦座席16の前方に操縦ハンドル15を配置し、該操縦ハンドル15の側方に変速レバー9を設けると共に該変速レバー9の外側に作業者が通れる通路Aを設けた乗用型作業機において、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの機体内方の操作経路イと該操作経路イに連通する外方の操作経路ロを設け、一つの機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該機体外方の操作経路ロを前記機体内方の操作経路イの前後中間部で連通したことを特徴とする乗用型作業機としたものである。」
と訂正する。
(c)特許明細書の段落【0004】(同公報2頁左欄8〜18行)に記載された「この発明は、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの操作経路イ、ロを設け、一つの操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定したものであるから、作業時には、前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定した操作経路イの前後一端に変速レバー9を操作すると、前進後進の切換えができて、作業時の変速操作が容易に又迅速に且つ適確に行え、従来例における課題を簡単な構成で解決することができる。」を、
「この発明は、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの機体内方の操作経路イと該操作経路イに連通する外方の操作経路ロを設け、一つの機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定したものであるから、作業時には、前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定した機体内方の操作経路イの前後一端に変速レバー9を操作すると、前進後進の切換えができて、作業時の変速操作が容易に又迅速に且つ適確に行え、従来例における課題を簡単な構成で解決することができる。また、圃場内での変速レバー9の操作は機体内方の操作経路イであるから、作業者が通路Aを通る作業時に変速レバー9が邪魔にならず作業性が良い。」と訂正する。
2-2.訂正の適否
上記(a)の訂正は、変速レバー9の位置と操作経路イ・ロの位置関係とを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記(b)及び(c)の訂正は、発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、特許明細書には、「操縦ハンドル15の側方に変速レバー9を設けた乗用型作業機において、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの操作経路イ、ロを設け、」(特許請求の範囲)、「ステップ11は操縦ハンドル15の左右両側から前方まで延設されて左右通路A・Aを構成している。」(段落【0008】)と記載されているので、上記(a)の訂正事項は、前記記載及び図3の記載から特許明細書に記載されている。
また、特許明細書には、「作業時には、前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定した操作経路イの前後一端に変速レバー9を操作すると、前進後進の切換えができて、作業時の変速操作が容易に又迅速に且つ適確に行え、」(段落【0018】)と記載されており、(c)の訂正事項は、特許明細書に記載されていることは明らかである。
したがって、(a)ないし(c)の訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものでなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
2-3.むすび
以上のとおりであり、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
3-1.本件特許発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、訂正後の特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「機体上に設けた操縦座席16の前方に操縦ハンドル15を配置し、該操縦ハンドル15の側方に変速レバー9を設けると共に該変速レバー9の外側に作業者が通れる通路Aを設けた乗用型作業機において、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの機体内方の操作経路イと該操作経路イに連通する外方の操作経路ロを設け、一つの機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該機体外方の操作経路ロを前記機体内方の操作経路イの前後中間部で連通したことを特徴とする乗用型作業機。」である。

3-2.引用刊行物記載の発明
(a)取消しの理由に引用した実願昭62-142500号(実開昭64-45918号)のマイクロフィルム(以下「引用刊行物1」という)には、
(a-1)「走行車体(A)は機体(1)前部にエンジンを搭載しており、又機体下部には前後車輪(2)(3)があって、エンジンからはミッション部(4)へ動力が伝達され、更に伝動ケース(5)から後車輪(3)が駆動される。
ミッション部(4)中には多数のギヤ群が噛合しており、座席(6)側部に配した主変速レバー(7)の操作によって、走行車体(A)の路上走行、植付走行、後進走行、中立の各シフト操作がなされるようになっている。」(3頁10〜19行)と、
(a-2)「(C)は主変速レバー(7)で変速されるギヤ群で、図上で左方から後進、植付走行、路上走行のギヤ群であって、(31)(31)は前後輪駆動軸、(30)は植付部駆動軸である。(C’)は摺動ギヤを示す。」(5頁11〜15行)と、
(a-3)「オペレータの左右に主変速レバーとスーパーシフトレバー(モノレバー)のある乗用田植機において、スーパーシフトレバーに油圧上下機能と植付クラッチ及び副変速機能をもたせると共に、主クラッチペダルの入から、切への切替操作と、主変速レバーの植付から後進への切替操作によりスーパーシフトレバーが如何なる位置であっても、油圧「上」位置に戻すように構成すると、植付後進作業時、スーパーシフトレバーを操作することなく油圧「上」位置に自動化させることができるので、取扱性が向上するばかりでなく、植付部を破損させることがない。
第8図は以上のような主変速レバー案内溝(72)と、スーパーシフトレバー案内溝(73)を示す。また、第6〜7図は副変速カムとディテント、及びバック連動アームと植付昇降アームとの関係を示す。」(11頁1〜18行)と、記載されている。
(a-4)第8図には、主変速レバー(7)の主変速レバー案内溝(72)が記載されており、この主変速レバー案内溝(72)には、座席寄り(機体内側)に前後方向に形成した操作経路と該操作経路の外側(機体外側)に形成した操作経路が形成され、機体内側の操作経路の前端には、植付が、後端には、後進が設定されており、また、機体内側の操作経路の前端には、移動走行が設定されており、前記2つの操作経路が連通されている構成が示されている。
(a-5)第10図には、座席(6)の前方にハンドルを配置した構成が示されている。
上記(a-1)〜(a-5)の記載及び図面の記載によると、引用刊行物1には、
機体(1)上に設けた座席(6)の前方に操縦ハンドルを配置し、該座席(6)の側部に主変速レバー(7)を配した乗用田植機において、主変速レバー案内溝(72)は、機体内側に前後方向に形成した操作経路と機体外側に形成した操作経路が形成され、機体内側の操作経路の前端には植付が、後端には後進が設定されており、また、機体内側の操作経路の前端には移動走行が設定されており、前記2つの操作経路が連通されている乗用田植機(以下、「引用刊行物1の発明」という)が記載されていると認められる。
(b)同じく取消しの理由に引用した特開昭61-191478号(以下、「刊行物2」という)には、明細書および図面の記載からみて、
床面15上に設けた運転席9の前方にステアリングハンドル31を配置し、ステアリングハンドル31側部に変速用切替レバー33を配し、変速用切替レバー33の外側に通路が設けられた乗用型作業機械けん引車が記載されていると認められる。

3-3.対比・判断
本件発明と引用刊行物1の発明とを対比すると、
引用刊行物1の発明の「座席(6)」は本件発明の「操縦座席16」に対応し、同様に「主変速レバー(7)」が「変速レバー9」に、「乗用田植機」が「乗用型作業機」に、「主変速レバー案内溝(72)」が「操作経路」に、「機体内側の操作経路の前端には植付が、後端には後進が設定され」が「機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し」に、「機体内側の操作経路の前端には移動走行が設定され」が「機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し」に、それぞれ対応している。
そうすると、本件発明と引用刊行物1の発明とは
機体上に設けた操縦座席16の前方に操縦ハンドル15を配置し、該乗用型作業機において、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの機体内方の操作経路イと該操作経路イに連通する外方の操作経路ロを設け、一つの機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該機体外方の操作経路ロを前記機体内方の操作経路イの前後中間部で連通した乗用型作業機で一致するが、下記点で相違する。
本件発明では、「操縦ハンドル15の側方に変速レバー9を設けると共に該変速レバー9の外側に作業者が通れる通路Aを設け」ているのに対して、引用刊行物1の発明では、変速レバー(主変速レバー(7))が座席(6)の側部に設けられており、また、操縦ハンドルの外側に作業者が通れる通路が設けられているか不明である点。
上記相違点について検討する
乗用田植機において、操縦ハンドル(ステアリングハンドル31)の側方に変速レバー(変速用切替レバー33)を設けると共に該変速レバーの外側に作業者が通れる通路を設けることは周知技術(例えば、上記引用刊行物2参照)であるから、引用刊行物1の発明において、座席(6)の側部に設けられている変速レバー(主変速レバー(7))とその案内装置(主変速レバー案内溝(72)が形成された部分)を、前方に位置させて、操縦ハンドルの側方に設けると共に該変速レバーの外側に作業者が通れる通路を設けることは当業者なら容易に想到できることであり、変速レバーとその案内装置を、前方に位置させて、操縦ハンドルの側方に設けると、圃場内での変速レバーの操作は機体内方の操作経路となる。
そして、本件発明が奏する効果は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術から予測できる程度であって格別顕著なものではない。
したがって、本件発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
乗用型作業機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 機体上に設けた操縦座席16の前方に操縦ハンドル15を配置し、該操縦ハンドル15の側方に変速レバー9を設けると共に該変速レバー9の外側に作業者が通れる通路Aを設けた乗用型作業機において、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの機体内方の操作経路イと該操作経路イに連通する外方の操作経路ロを設け、一つの機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該機体外方の操作経路ロを前記機体内方の操作経路イの前後中間部で連通したことを特徴とする乗用型作業機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、操作性及び作業性を良くした乗用型作業機に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】
この種従来技術としては、操作経路が一直線の変速レバーを操縦ハンドルの側部に設けたものがあるが、その操作ストロークが長く操作性が悪いばかりでなく、作業中に頻繁に行われる前後進切換え操作を行うとき作業者はその切換え位置が掴み難く誤った位置に操作してしまったり、また、操作位置を判断できず一瞬操作をためらうなど迅速に操作できないこともあった。
【0003】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記の従来技術のもつ課題を解決すべく、機体上に設けた操縦座席16の前方に操縦ハンドル15を配置し、該操縦ハンドル15の側方に変速レバー9を設けると共に該変速レバー9の外側に作業者が通れる通路Aを設けた乗用型作業機において、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの機体内方の操作経路イと該操作経路イに連通する外方の操作経路ロを設け、一つの機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該機体外方の操作経路ロを前記機体内方の操作経路イの前後中間部で連通したことを特徴とする乗用型作業機としたものである。
【0004】
【発明の作用効果】
この発明は、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの機体内方の操作経路イと該操作経路イに連通する外方の操作経路ロを設け、一つの機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定したものであるから、作業時には、前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定した機体内方の操作経路イの前後一端に変速レバー9を操作すると、前進後進の切換えができて、作業時の変速操作が容易に又迅速に且つ適確に行え、従来例における課題を簡単な構成で解決することができる。また、圃場内での変速レバー9の操作は機体内方の操作経路イであるから、作業者が通路Aを通る作業時に変速レバー9が邪魔にならず作業性が良い。
また、もう一つの操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該操作経路ロを前記操作経路イの前後中間部で連通したから、作業時にあって、変速レバー9を前記操作経路イの前後一端へ操作したときに、勢いあまってその操作経路イの前後一端から移動速位置を設定した操作経路ロに変速レバー9を移動させてしまうこともなく、作業時にあって、誤って移動速に操作することがない。しかも、移動速への操作も、前後方向に操作してその一端に移動することで行えるから、容易且つ適確に操作できる。
【0005】
【実施例】
以下、図面に示すこの発明の一実施例である乗用型作業機の一種の乗用型田植機について説明する。1は乗用型走行装置であって、機体は、前部に配置されたミッションケ-ス2と機体後部に配置された後輪伝動ケース3とをフレーム4で連結して構成されている。ミッションケ-ス2の後部にはその左右側面に左右フロントアクスルケース5・5を固着し、該左右フロントアクスルケース5・5の下部には左右操向駆動前輪6・6が設けられている。
【0006】
7・7は左右駆動後輪であって、後輪伝動ケース3の左右後端部に装着されている。8はエンジンであって、後輪伝動ケース3の上部に搭載され、該エンジン8より機体前部のミッションケ-ス2に動力が伝えられ、ミッションケ-ス2より左右フロントアクスルケース5・5を介して左右操向駆動前輪6・6を駆動し、更に後輪伝動ケース3を介して左右駆動後輪7・7を駆動すべく設けられている。
【0007】
そして、このミッションケース2には、後述の主変速レバー9にてエンジン8の回転駆動力が変速される主変速機構と前輪用デフ機構とが内蔵されている。また、後輪伝動ケース3内部の伝動機構中には左右駆動後輪7・7に対する左右サイドクラッチと左右サイドブレーキとが内蔵されており、エンジン8の前方に設けられたステップ11の前方部に設けられた左右ペダル12,13の踏込操作により該左右サイドクラッチが切れ且つ左右サイドブレーキが利くように構成されている。即ち、左右ペダル12,13の踏込操作をした側の駆動後輪7・7の駆動が停止されブレーキが利くようになっている。
【0008】
14はFRPにて成型された車体カバ-であって、エンジン8の周囲を覆うエンジンカバ-部と前記エンジン8の前方及び左右側方に設けられたステップ11とが一体形成され、機体上に固着されている。そして、ステップ11は操縦ハンドル15の左右両側から前方まで延設されて左右通路A・Aを構成している。16は操縦座席であって、車体カバ-14の上部に装着されている。
【0009】
17は上部リンクと下部リンクとにより構成されるリンク機構であって、その基端部は、後輪伝動ケース3より上方に延設された支持フレーム18に枢着され、後端部は、田植装置19をローリング自在に支持するローリング軸20が設けられた縦枠21に枢着されている。22は油圧シリンダー装置であって、シリンダーの基部は後輪伝動ケース3に枢着され、ピストンの先端が上部リンクに枢着されている。
【0010】
23はハンドルポストの周囲を覆う合成樹脂にて形成された前部カバ-であって、ステップ11の前部上面に固着されており、その上面は各種表示装置やメータ類が設けられた操作パネルになっている。そして、前部カバ-23の左側部には前記主変速レバー9が設けられ、前部カバ-23の右側部には後述の副変速レバー10と植付クラッチの操作及び田植装置19の上下操作を行う操作レバー24とが設けられている。
【0011】
25は該前部カバ-23の左側方に設けられた主クラッチペダルである。田植装置19は、前記縦枠21のローリング軸20にローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース26と、該植付伝動ケース26に設けられた下部支持部材27及び上部支持部材28に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台29と、植付伝動ケース26の後端部に装着され前記苗載台29の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける苗植付け装置30…と、植付伝動ケース26の下部にその後部が軸31にて枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体である中央整地フロート32・左右整地フロート33・33等にて構成されている。左右整地フロート33・33は、各々左右駆動後輪7・7の後方に配置されており、該左右駆動後輪7・7にて掻き乱された圃場を整地すると共に苗植付け装置30にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。
【0012】
34は中央整地フロート32の前部上面と植付伝動ケース26との間に設けられた油圧バルブであって、中央整地フロート32の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられた時にはミッションケ-ス2の左側面に装着された油圧ポンプにてミッションケ-ス2内から汲み出された圧油を油圧シリンダー22に送り込んでピストンを突出させリンク機構17を上動させて田植装置19を所定位置まで上昇せしめ、また、中央整地フロート32の前部が適正範囲以上に下がった時には油圧シリンダー22内の圧油をミッションケ-ス2内に戻してリンク機構17を下動させて田植装置19を所定位置まで下降せしめ、そして、中央整地フロート32の前部が適正範囲にあるとき(田植装置19が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー22内の圧油の出入りを止めて田植装置19を一定位置に保持せしめるべく設けられている。
【0013】
24は前部カバ-23の右側方より突出して操縦ハンドル15の右下側に設けられた操作レバーであって、ミッションケ-ス2内に設けられたPTOクラッチを操作して田植装置19への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、油圧バルブ34を操作して手動にて田植装置19を上下動できるように構成されている。即ち、第3図にて説明すると、操作レバー24を「固」位置にすると、PTOクラッチが切れ田植装置19の作動が停止し且つ油圧バルブ34が油圧シリンダー22内の圧油の出入りを止めて田植装置19を一定位置に保持せしめる位置に切換えられ田植装置19は上昇も下降もしない。そして、操作レバー24を後方に操作して「下」位置にすると、PTOクラッチは切りで田植装置19の作動は停止したままであるが油圧バルブ34は中央整地フロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態となる。そして、更に、操作レバー24を「入」位置にすると、PTOクラッチが入り田植装置19が駆動され且つ油圧バルブ34は中央整地フロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態となる。逆に、操作レバー24を前方に操作して「上」位置にすると、PTOクラッチが切れ田植装置19の作動が停止し且つ油圧バルブ34が強制的に田植装置19を上昇する側に切換えられ、田植装置19が上昇される。尚、操作レバー24には、各操作位置「上」「固」「下」「入」で位置決めができるように周知の位置決め用係止装置(カム方式・ボールストッパー方式)が設けられている。
【0014】
35はエンジン8を始動せしめるリコイルスタータのノブであって、車体カバ-14の前側部に設けられている。36は左右操向駆動前輪6・6の伝動系中の前輪デフ機構のデフロックペダルである。37は副変速レバー10にて変速操作される副変速機構であって、エンジン8とミッションケ-ス2との間の伝動系に設けられた低速のベルト式伝動機構と高速のベルト式伝動機構とにより構成され、各ベルトのテンションプーリを副変速レバー10にて操作して高速と低速との2段に設定できるようにしたものである。
【0015】
38は機体前部の左右中央部に左右方向に駆動装置により回動されるように設けられた錘であって、乗用型走行装置1に左右方向の傾斜を検出する水平センサを設けて該水平センサの傾斜検出により傾斜を補正する方向に駆動装置により錘を回動させるように構成している。また、左右前輪若しくは左右後輪をローリング自在に構成しそのローリングの検出にて錘を機体の傾斜を補正する方向に回動させるようにしても良い。
【0016】
上記の乗用型田植機においては、左右操向駆動前輪6・6及び左右駆動後輪7・7は、第2図に示すように、左右外側の苗植付け装置30・30の苗植付位置よりも外側方に位置するように配置されており、左右方向の機体安定性が良い。また、十分な車輪トレッドが確保できるので、車輪の位置は苗植付条間の中央に設定でき、植付苗に対する泥水の押出し等の悪影響も少ない。
【0017】
ここで、主変速レバー9の構成及び操作につき詳述する。主変速レバー9のレバー軸9aは、前部カバ-23のガイド穴23aより突出して上方に延出されその上端には操作ノブ9bが設けられ、機体平面視で該操作ノブ9bはステップ1111の左通路A上方に位置している。前部カバ-23のガイド穴23aは、機体内方の操作経路イとそれに連通する機体外方の操作経路ロとにより構成され、該ガイド穴23aに当接する部分のレバー軸9aには係止板9cが固着されており、ガイド穴23aの操作経路イの前端に設けられた係止溝23bに係合するように構成されている。次に、その操作を第3図及び第4図に基づき説明すると、操作経路イの前後中間に設定した「中立」位置から当該経路イの前端に操作して係止板9cが係止溝23bに係合する「植付速」位置にすると田植作業を行う機体が前進する植付速に変速され、操作経路イの「中立」位置から当該経路イの後端に操作して「後進」位置にすると機体が後進するよう変速される。また、操作経路イの前後中間に設定した「中立」位置から外側方に操作すると操作経路ロに移り操作経路ロの「中立」位置から前方に操作して「移動低速」位置にすると路上走行を行う植付速よりも速い前進速となる。更に、操作経路ロの前方に操作して「移動高速」位置にすると路上走行を行う移動低速よりも更に速い前進速となる。
【0018】
従って、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの操作経路イ、ロを設け、一つの操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定したものであるから、作業時には、前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定した操作経路イの前後一端に変速レバー9を操作すると、前進後進の切換えができて、作業時の変速操作が容易に又迅速に且つ適確に行え、従来例における課題を簡単な構成で解決することができる。
また、もう一つの操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該操作経路ロを前記操作経路イの前後中間部で連通したから、作業時にあって、変速レバー9を前記操作経路イの前後一端へ操作したときに、勢いあまってその操作経路イの前後一端から移動速位置を設定した操作経路ロに変速レバー9を移動させてしまうこともなく、作業時にあって、誤って移動速に操作することがない。しかも、移動速への操作も、前後方向に操作してその一端に移動することで行えるから、容易且つ適確に操作できる。
【0019】
次に、副変速レバー10の操作につき説明すると、該副変速レバー10を「切」位置にすると、前述の副変速機構37の低速のベルト式伝動機構及び高速のベルト式伝動機構の両テンションプーリが動力を伝えない非作用状態となりエンジン8からミッションケ-ス2に動力が伝動されなくなって油圧ポンプ以外の全ての部材への動力は切断される。そして、副変速レバー10を「低」位置にすると、副変速機構37の低速のベルト式伝動機構のテンションプーリが動力を伝える作用状態となり(高速のベルト式伝動機構のテンションプーリは動力を伝えない非作用状態である)エンジン8からミッションケ-ス2に低速のベルト式伝動機構により動力が伝動されるので、走行速は低速となる。また、副変速レバー10を「高」位置にすると、副変速機構37の高速のベルト式伝動機構のテンションプーリが動力を伝える作用状態となり(低速のベルト式伝動機構のテンションプーリは動力を伝えない非作用状態である)エンジン8からミッションケ-ス2に高速のベルト式伝動機構により動力が伝動されるので、走行速は高速となる。
【0020】
尚、この副変速レバー10は、前記田植装置19の上昇により自動的に操作されるように構成されており、即ち、田植作業を行わない高さまで田植装置19が上昇されると油圧シリンダー装置22のピストンの突出により操作ワイヤが引かれて副変速レバー10が「高」位置から「低」位置に切替えられるようになっている。
【0021】
上記のように構成された乗用型田植機を水田圃場に入れて、苗載台29に苗を載置してリコイルスタータのノブ35を引いてエンジン8を始動し主変速レバー7を「植付速」位置にし副変速レバー10を「高」又は「低」位置にして操作レバー24を「入」位置にして各部を駆動し機体を前進せしめれば、田植装置19は自動的に適正位置に上下制御され田植作業が行われる。
【0022】
そして、作業者が熟練者の場合は、副変速レバー10を「高」位置にすれば高速の作業速となり作業能率が向上する。ここで、この副変速レバー10を用いる実際の植付作業過程を説明する。先ず、畦際で操作レバー24を「下」位置にして田植装置19を下降させて植付方向に機体を向け前工程で苗を植付けた位置まで苗植付け装置30…が進んだとき、操作レバー24を「入」位置にして植付け作業を開始する。そして、機体が安定した直進状態になれば、副変速レバー10を「高」位置に操作して高速の作業速として苗植付け作業をする。そして、畦に近づくと、操作レバー24を「上」位置にするとPTOクラッチが切れ田植装置19の作動が停止し且つ田植装置19が上昇され、その田植装置19の上昇に伴い副変速レバー10が「高」位置から「低」位置に自動的に切替えられ前進速度が低速となり畦際における旋回時の操作は低速状態で的確に誤操作なく行なえるので、非常に作業性が良い。
【0023】
また、圃場内での主変速レバー9の操作は、「植付速」・「中立」・「後進」位置の操作経路イにおける前後操作だけでよく操作性がとても良く、その操作ノブ9bは機体内方に位置することとなり、作業者が通路Aを通る作業(苗補給作業や機体前部を畦につけて乗降する作業等)時に主変速レバー9が邪魔にならず作業性が良い。
【0024】
そして、田植作業を終えて圃場から出て路上を移動する時などは、主変速レバー9を「移動低速」又は「移動高速」位置に操作して高速走行をする。尚、上記実施例においては、乗用型走行車体2の後部に田植装置19を装着した乗用型田植機に本発明を実施した例をしめしたが、他の如何なる乗用型作業機に本発明を実施しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】操作レバーの作動を説明する要部平面図
【図4】主変速レバー9の作動を説明する要部平面図
【符号の説明】
1 乗用型走行装置
2 ミッションケース
3 後輪伝動ケース
4 フレーム
5 フロントアクスルケース
6 操向駆動前輪
7 駆動後輪
8 エンジン
9 変速レバー(主変速レバー)
9a レバー軸
9b 操作ノブ
9c 係止板
10 副変速レバー
11 ステップ
15 操縦ハンドル
17 リンク機構
19 田植装置
22 油圧シリンダー装置
23 前部カバ-
23a ガイド穴
24 操作レバー
37 副変速機構
イ・ロ 操作経路
 
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a
明細書の【特許請求の範囲】【請求項1】の記載を、
『機体上に設けた操縦座席16の前方に操縦ハンドル15を配置し、該操縦ハンドル15の側方に変速レバー9を設けると共に該変速レバー9の外側に作業者が通れる通路Aを設けた乗用型作業機において、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの機体内方の操作経路イと該操作経路イに連通する外方の操作経路ロを設け、一つの機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該機体外方の操作経路ロを前記機体内方の操作経路イの前後中間部で連通したことを特徴とする乗用型作業機。』
と訂正する。
▲2▼訂正事項b
明細書の段落0003の記載を、
『【課題を解決するための手段】
この発明は、前記の従来技術のもつ課題を解決すべく、機体上に設けた操縦座席16の前方に操縦ハンドル15を配置し、該操縦ハンドル15の側方に変速レバー9を設けると共に該変速レバー9の外側に作業者が通れる通路Aを設けた乗用型作業機において、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの機体内方の操作経路イと該操作経路イに連通する外方の操作経路ロを設け、一つの機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該機体外方の操作経路ロを前記機体内方の操作経路イの前後中間部で連通したことを特徴とする乗用型作業機としたものである。』
と訂正する。
▲3▼訂正事項c
明細書の段落0004の記載を、
『【発明の作用効果】
この発明は、変速レバー9の操作経路を機体左右方向で互いに異なる位置で機体前後方向に変速レバー9を操作する二つの機体内方の操作経路イと該操作経路イに連通する外方の操作経路ロを設け、一つの機体内方の操作経路イの前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定し、もう一つの機体外方の操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定したものであるから、作業時には、前後両端に作業速位置と後進操作位置を設定した機体内方の操作経路イの前後一端に変速レバー9を操作すると、前進後進の切換えができて、作業時の変速操作が容易に又迅速に且つ適確に行え、従来例における課題を簡単な構成で解決することができる。また、圃場内での変速レバー9の操作は機体内方の操作経路イであるから、作業者が通路Aを通る作業時に変速レバー9が邪魔にならず作業性が良い。
また、もう一つの操作経路ロの前後一端に移動速位置を設定し且つ該操作経路ロを前記操作経路イの前後中間部で連通したから、作業時にあって、変速レバー9を前記操作経路イの前後一端へ操作したときに、勢いあまってその操作経路イの前後一端から移動速位置を設定した操作経路ロに変速レバー9を移動させてしまうこともなく、作業時にあって、誤って移動速に操作することがない。しかも、移動速への操作も、前後方向に操作してその一端に移動することで行えるから、容易且つ適確に操作できる。』
と訂正する。
異議決定日 2003-03-20 
出願番号 特願平3-220226
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A01C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山田 昭次  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 鈴木 寛治
渡部 葉子
登録日 2000-08-11 
登録番号 特許第3097204号(P3097204)
権利者 井関農機株式会社
発明の名称 乗用型作業機  
代理人 伴 正昭  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ