• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1081333
異議申立番号 異議2000-71914  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-09 
確定日 2003-05-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2974418号「特定の直接染料を含有するケラチン繊維の薄化染色用組成物」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2974418号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2974418号の発明については、平成8年11月22日に出願され、平成11年9月3日にその特許権の設定登録がなされ、その後、花王株式会社より特許異議の申し立てがなされ、当審により取り消し理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年3月27日に訂正請求(後日取下げ)がなされた後、再度の取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年4月18日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(i)訂正事項1
特許請求の範囲における請求項1〜10を次のように訂正する。
「1.染色に適切な水性媒体に、酸化剤を含有する組成物と、塩基性のpHで、使用時に前記酸化剤を含有する組成物と混合される少なくとも1つの直接染料を含有するタイプの、ケラチン繊維の薄化染色用組成物において、
塩基性のpHを有し、直接染料として、
-非局在化していてもよい第四級化窒素原子、および、-CH=N-結合を有する、少なくとも1つの染料、または
-以下のように表わされる染料:
(式(1)〜(4)、(8)〜(13)省略)
[式中、X-は、塩化物または硫酸メチル等のアニオンを示す]
を有することを本質的な特徴とする組成物。

2.直接染料が、次の式(I):
(式(I)省略)
[上式(I)中、Zは、CH基を示し、AおよびBは、一または複数のハロゲン原子で、もしくは一または複数の、R1およびR2が、同時にまたは互いに独立して、水素、C1-C8のアルキル基、C1-C4のヒドロキシアルキル基、またはフェニル基を示す、NR1R2またはOR1で置換されていてもよい、ベンゼンまたは複素環式芳香族を示し、X-は、塩化物または硫酸メチル等のアニオンを示し、カチオン電荷が、その置換基の一つにより担持されるか、または芳香環の全体に形成されうる]
の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。

3.前記染料が、カチオン電荷が芳香環AまたはBの全体に形成される、式(I)の化合物から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。

4.前記染料が、次の化合物
(式(5)〜(7)省略)
から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。

5.前記直接染料が、前記酸化剤を含有する組成物と混合する前の組成物の全重量に対して、0.001〜5重量%の範囲内の濃度で存在することを特徴とする請求項1ないし4に記載の組成物。

6.前記直接染料が、前記酸化剤を含有する組成物と混合する前の組成物の全重量に対して、0.05〜2重量%の範囲内の濃度で存在することを特徴とする請求項5に記載の組成物。

7.塩基性のpHが、アンモニア水およびアルカノールアミンから選択される塩基性化剤を使用して得られることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の組成物。

8.前記酸化剤を含有する組成物が、過酸化水素水を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組成物。

9.染色に適切な水性媒体に、
非局在化していてもよい第四級化窒素原子、および-CH=N-結合を有する、少なくとも1つの染料、または
-以下のように表わされる染料:
(式(1)〜(4)、(8)〜(13)省略)
[式中、X-は、塩化物または硫酸メチル等のアニオンを示す]と、
酸化剤と、最終的なpHを7より高い値に調節するために十分な量の塩基性化剤を更に含有せしめてなることを特徴とする、ケラチン繊維の使用準備が整った薄化染色用組成物。

10.少なくとも2つの区分を有し、1つが請求項1〜7のいずれか1項に定義されている組成物(A)を収容し、もう一つが染色に適した媒体に酸化剤を含有する組成物(B)を収容することを特徴とする、ヒトのケラチン繊維を薄化染色するための多区分染色装置。」
と訂正する。

イ.訂正の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記の訂正事項1は、訂正前の請求項1及び9に記載の「直接染料」を限定し、また、訂正前の請求項1及び9に記載の「染色に適切な媒体」を「染色に適切な水性媒体」に限定し、また、訂正前の請求項4に記載の化合物(5)〜(13)を、化合物(5)〜(7)に限定し、さらに、訂正前の請求項2におけるZを限定するものであるから、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、上記の訂正事項は、特許明細書に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
ア.本件発明
特許第2974418号の請求項1〜10に係る発明は、上記訂正事項1に記載されたとおりのものである。

イ.申立の理由の概要
特許異議申立人花王株式会社(以下、「申立人」という。)は、証拠として甲第1号証(米国特許第4025301号明細書)、甲第2号証(米国特許第4151162号明細書)、甲第3号証(米国特許第4153065号明細書)及び甲第4号証(特開平2-49716号)を提出し、訂正前の本件請求項1〜3及び5〜9に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず(主張1)、また、訂正前の本件請求項1〜10に係る発明は甲第1〜4号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定違反し特許を受けることができず(主張2)、さらに訂正前の請求項4に係る発明は、特許法第36条第5項及び第6項の規定を満たしていない(主張3)ので、請求項4に係る発明の特許を取り消すべき旨主張する。

ウ.申立人が提出した甲各号証記載の発明
甲第1号証には、-N=N-結合を有する特定の染料化合物と酸化剤としての過酸化水素を含有する染毛組成物が記載(実施例q)されている。
甲第2号証には,-N=N-結合を有する特定の染料化合物を含有する染料組成物及びこれに過酸化水素水を併用する染毛方法が記載(実施例N)されている。
甲第3号証には、-N=N-結合を有する特定の染料化合物を含有する染毛組成物及びこれに過酸化水素(20容量%)を併用する染色方法が記載(第7欄第65行〜第8欄第11行)されている。
甲第4号証には、少なくとも1種の染料を含有する第1の粉末状成分と、過酸化水素の水溶液を含む第2の液状成分からなる塗布可能のペースト状毛髪処理剤を仕上げるための二成分調剤が記載(特許請求の範囲第1項)されている。

エ.判断
(主張1について)
甲第1〜3号証には、本件請求項1〜3及び5〜9に係る発明に記載の直接染料が具体的に記載されていないので、甲第1〜3号証に、本件請求項1〜3及び5〜9に係る発明が記載されているとすることはできず、申立人の主張1は採用できない。

(主張2について)
甲第1〜4号証には、本件請求項1〜10に係る発明に記載の直接染料が具体的に記載されておらず、それを示唆する記載もないので、当業者が甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて、本件請求項1〜10に係る発明を容易にすることができたものとはいえず、申立人の主張2も採用できない。

(主張3について)
申立人の指摘する記載不備は、上記の訂正事項1により解消されたので、申立人のこの点についての主張3も採用できない。

オ.むすび
したがって、本件特許は、特許異議申立ての理由及び証拠によっては取り消すことができない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
特定の直接染料を含有するケラチン繊維の薄化染色用組成物
【発明の詳細な説明】
本発明は、非局在化(delocalizable)していてもよい第四級化窒素原子、およびXが窒素原子または-CH-基である、-X=N-結合を有する染料類により形成される群から選択される少なくとも1つの直接染料を含有する、ケラチン繊維、特に、ヒトのケラチン繊維の薄化(lightening)染色用組成物に関する。また本発明は、上述したところの用途における、このような組成物の使用にも関する。
いわゆる「直接染色」法により、直接染料を含有する染色用組成物で、ケラチン繊維、特にヒトの髪を染色することは知られている。この方法は、前記繊維に対する親和力を有する染料分子をケラチン繊維に適用し、それらを放置しておき、ついで繊維をすすぐことからなる。それにより、ケラチン繊維に明暗のある(shading)色調を付与することができる。また、いわゆる「酸化染色」法により、ケラチン繊維、特にヒトの髪を、酸化染料の先駆物質類(一般に、「酸化塩基」と呼ばれるオルト-フェニレンジアミン類またはパラ-フェニレンジアミン類、およびオルト-アミノフェノール類またはパラ-アミノフェノール類)と、修正剤(着色変調剤と呼ばれ、酸化塩基の縮合生成物により得られた「ベース」となる色調を変化させたり光沢に富ませることができる、メタ-フェニレンジアミン類、メタ-アミノフェノール類、およびメタ-ジフェノール類)を含有する染色用組成物で染色することが知られている。
酸化染色法は、通常、色を薄くすることに関する。すなわち、塩基性のpHで、塩基と、修正剤と、過酸化水素水との混合物を、ケラチン繊維に適用し、適用した混合物を髪に放置し、ついで髪をすすぐことからなる。特に、髪の染色の場合は、メラニンを薄くし、髪を染色することが可能になる。
メラニンを薄化させることは、グレーの髪の場合においては均質に着色させる効果、自然に色素沈着した髪の場合は、色調が現れるという効果、すなわち、それがより目立つようになるといった利点がある。
酸化剤、特に、過酸化水素水と、塩基性化剤とが、この薄化を得るために使用される。3/4トーン(tone)から2トーン以上の範囲内のメラニンの薄化は、塩基性化剤と過酸化水素水との濃度に応じて、また塩基性化剤の性質に応じて、引き起こすことができる。薄化が穏やかである場合は、積み重ねていくうちに、所望の薄化度が得られる。
いわゆる髪の酸化染色において、酸化塩基の使用により、時折、頭皮の感作の問題に至ることがある。この場合、髪を好ましく染色しようとしても、直接染色しか使用することができないが、従来の直接染色では、それだけでは薄化することはできないため、酸化染色のティント効果がもはや見いだせないという欠点があった。
既に、従来より、酸化塩基と修正剤を、直接染料に置き換えることにより、薄化染料を得ようとする試みがなされてきた。しかしながら、得られた全ての結果は、期待はずれのものであった。
従って、ニトロ直接染料、および/または分散したアゾ染料、およびアンモニア性過酸化水素水をベースとする染色用組成物(これに関し、仏国特許第1584965号および日本国特許第062711435号を参照)を用い、使用直前に調製した該染料と該酸化剤の混合物を髪に適用して、髪を染色することが提案されている。しかしながら、得られた着色は、十分に耐性があり、シャンプーで落ち、髪の繊維を薄化可能とするものではなかった。このような着色は、経時的に変化し、美的に好ましくないものとなる。
また、第1段階として、アンモニア性過酸化水素水を、ついで第2段階としてオキサジン直接染料をベースとした組成物を髪に適用することにより、アンモニア性過酸化水素水とオキサジン型のカチオン性直接染料をベースとした組成物で、髪を染色することが提案されている(これに関し、日本国特許第5395693号および日本国特許第55022638号を参照)。この方法においては、2つの連続した工程を行うのに、あまりに長い時間が必要であるという事実から、この着色は満足のいくものではなかった。さらに、使用時に調製される、アンモニア性過酸化水素水とオキサジン直接染料との混合物が、髪に適用されたとしても、髪の繊維は染色されないか、またはせいぜい、実際には存在しない程度の着色しか得られない。
さらに本出願人は、使用直前に調製され、アンモニア性過酸化水素水と、アニオン性スルホン染料とをベースとした組成物(優れた耐性を有すると評判のもの)を髪に適用することにより、該染料と該酸化剤との混合物で、髪を染色するテストを行った。しかしながら、この場合、髪の繊維には、何の着色も観察されなかった。
この問題に関し、多くの研究を行ったところ、本出願人は、塩基性のpHで、酸化剤と、非局在化していてもよい、第四級化窒素原子と、Xが窒素原子または-CH-基である、-X=N-結合との両方を含有するものからを選択される少なくとも1つの直接染料との、使用時に調製される混合物を使用することにより、耐性があり、均質で、洗浄に対して変化しない、適切に選択された特定の直接染料を有する薄化染料を得ることが可能であることを見いだした。
この発見が、本発明の基礎をなすものである。
よって、本発明の主題は、染色に適切な媒体に、酸化剤を含有する組成物(以後、”酸化組成物”と称する)と、塩基性のpHで、使用時に前記酸化組成物と混合される少なくとも1つの直接染料を含有するタイプの組成物において、それが塩基性のpHを有し、直接染料として、非局在化していてもよい、第四級化窒素原子、およびXが窒素原子または-CH-基である、-X=N-結合を有する、少なくとも1つの染料を含有することを本質的な特徴とする、ケラチン繊維、特に、ヒトの髪等のケラチン繊維の薄化染色用組成物にある。
本発明で得られた新規の染料により、それらが、経時的にも洗浄によっても変化しないため、経時的に美しいままの、均質で耐性のある着色を得ることが可能になる。さらに、それらは、非常に素早くつくり出され、特に、5分の染料/酸化剤の混合物の放置時間でつくり出される。加えて、それらは、負担をかけすぎることなく、自然な感触と、特に光沢のある外観を、特に髪の繊維に付与する。
本発明の他の主題は、染色に適切な媒体に、非局在化していてもよい、第四級化窒素原子、およびXが窒素原子または-CH-基である、-X=N-結合を有する少なくとも1つの染料を含有する、少なくとも1つの組成物(A)をケラチン繊維に適用する染色方法であって、使用時に組成物(A)と混合されるか、または同時に適用される組成物(B)中に存在する酸化剤を使用し、塩基性のpHで、確実に薄化させることを特徴とする、ケラチン繊維、特に髪等のヒトのケラチン繊維を染色する方法に関する。
また、本発明の他の主題は、非局在化していてもよい、第四級化窒素原子、およびXが窒素原子または-CH-基である、-X=N-結合を有する少なくとも1つの直接染料と、塩基性化剤とを収容する第1の区分と、酸化剤を収容する第2の区分の多区分を有する、多区分染色装置または「キット」にある。他の「キット」は、少なくとも1つの上述した染料を収容する第1の区分、塩基性化剤を収容する第2の区分、および酸化剤を収容する第3の区分とからなる。
さらに、本発明は、染色に適切な媒体に、非局在化していてもよい、第四級化窒素原子、およびXが窒素原子または-CH-基である、-X=N-結合を有する少なくとも1つの直接染料と、酸化剤、さらに、最終的なpHを7より高く、好ましくは8.5〜11の範囲内の値に調節するために十分な量の塩基性化剤を含有せしめてなることを特徴とする「使用準備が整った組成物」に関する。
しかしながら、本発明の他の特徴、観点、主題および利点は、以下の記載および実施例を読むことにより、さらに明らかになるであろう。
本発明で使用可能な、非局在化していてもよい、第四級化窒素原子、およびXが窒素原子または-CH-基である、-X=N-結合を有する少なくとも1つの直接染料は、好ましくは、次の式(I):

[上式(I)中、Zは、窒素原子または-CH-基を示し、AおよびBは、一または複数のハロゲン原子で、もしくは一または複数の基、例えば、R1およびR2が、同時にまたは互いに独立して、水素、C1-C8のアルキル基、C1-C4のヒドロキシアルキル基、またはフェニル基を表す、NR1R2またはOR1で置換されていてもよい、ベンゼンまたは複素環式芳香族基を示し、X-は、アニオン、好ましくは塩化物または硫酸メチルを示し、カチオン電荷は、その置換基の一つが持っているか、または芳香環の全体に形成されることが可能である]
の化合物から選択される。
これらの染料は、従来技術においてよく知られているものであり、国際特許出願第95/01772号および国際特許出願第95/15144号に記載されている。
本発明で使用可能であり、そのカチオン電荷が、置換基によって担持される、式(I)の化合物としては、好ましくは、次の式:

すなわち、4-アミノフェニルアゾ-2-ヒドロキシ-8-トリメチルアンモニオ(ammonio)ナフタレン-クロリド、

すなわち、2-メトキシフェニルアゾ-2-ヒドロキシ-8-トリメチルアンモニオナフタレン-クロリド、

すなわち、4-アミノ-3-ニトロフェニルアゾ-2-ヒドロキシ-8-トリメチルアンモニオナフタレン-クロリド、

すなわち、3-トリメチルアンモニオフェニルアゾ-N-フェニル-3-メチル-5-ヒドロキシピリダジン(pyridazinc)-クロリド、
の化合物が使用される。
本発明においては、そのカチオン電荷が、芳香環の全体に形成される、式(I)の化合物を使用することが、特に好ましい。前記化合物としては、限定するものではないが、次の式:

すなわち、(1-メチル-1-フェニル)-2-(1-メチン(methine)-4N-メチルピリジニリウム(pyridinylium))ヒドラジン-クロリド、

すなわち、(1-メチル-1-パラ-メトキシフェニル)-2-(1-メチン-4N-メチルピリジニリウム)ヒドラジン-クロリド、

すなわち、(1-メチル-1-パラ-メトキシフェニル)-2-(1-メチン-4N-メチルピリジニリウム)ヒドラジン-メチル-スルファート、

すなわち、4-ジメチルアミノフェニルアゾ-2N-メチル-5N-メチルイミダゾリリウム(imidazolylium)-クロリド、

すなわち、4-ジメチルアミノフェニルアゾ-2N-メチル-3N-メチルイミダゾリリウム-クロリド、

すなわち、4-メチルアミノフェニルアゾ-2N-メチル-5N-メチルイミダゾリリウム-クロリド、

すなわち、4-アミノフェニルアゾ-2N-メチル-5N-メチルイミダゾリリウム-クロリド、

すなわち、4-ジメチルアミノフェニルアゾ-4N-メチルピリジニリウム-クロリド、

すなわち、4-ジメチルアミノフェニルアゾ-4N-オキシドピリジニリウム-クロリド、
の化合物を挙げることができる。
式(I)の直接染料の濃度は、酸化剤と混合する前の染色用組成物の全重量に対して、約0.001〜5重量%、好ましくは約0.05〜2重量%の範囲内とすることができる。
酸化剤は、好ましくは、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属の臭素塩類、および過塩類類、例えば、過ホウ酸塩および過硫酸塩から選択される。特に、過酸化水素の使用が好ましい。
少なくとも1つの式(I)の直接染料を含有する組成物(A)のpH、並びに上述した酸化剤を含有する組成物(B)のpHは、組成物(A)と組成物(B)とを混合した後に、ヒトのケラチン繊維に適用される組成物のpHが7より高く、好ましくは8.5〜11になるような値である。それは、ケラチン繊維類の染色における従来技術でよく知られている塩基性化剤、場合によっては酸性化剤を使用して、選択される値に調節される。
塩基性化剤としては、アンモニア水、アルカリ金属の炭酸塩類、アルカノールアミン類、例えばモノ-、ジ-およびトリエタノールアミン類およびそれらの誘導体類、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、および次の式(II):

[上式(II)中、Rは、ヒドロキシル基またはC1-C4のアルキル基で置換されていてもよいプロピレン残基であり;R3、R4、R5およびR6は、同時にまたは互いに独立して、水素原子、C1-C4のアルキル基、またはC1-C4のヒドロキシアルキル基を表す]で示される化合物を挙げることができる。
酸性化剤としては、従来よりの無機酸または有機酸、例えば、塩酸、酒石酸、クエン酸およびリン酸を挙げることができる。
酸化組成物(B)は、好ましくは、その力価が、約5〜40容量の範囲内とすることができる過酸化水素水を含有する。
塩基性化剤は、好ましくは、穏やかな薄化が要求されている場合はアルカノールアミンが選択され、より著しい薄化が望まれている場合はアンモニア水である。
染色に適切な媒体は、好ましくは、水、特に、水/溶媒(類)の混合物からなり、該溶媒は、有機溶媒、例えば、2-ブトキシエタノールまたはエタノールから選択される。
本発明の染色方法の好ましい実施態様においては、塩基性化剤、特に上述したアルカノールアミンまたはアンモニア水を含有する、上述した染色用組成物(A)と、メラニンを薄化させるのに十分な量の酸化溶液とを使用時に混合し、ついで、得られた混合物をヒトのケラチン繊維に適用し、1〜45分間、好ましくは4〜20分間放置し、繊維をすすいだ後に、任意にシャンプーで洗髪し、再度すすいで乾燥させる。
また、本発明の染色用組成物は、好ましい実施態様において、従来よりよく知られている界面活性剤を、組成物の全重量に対して約0.5〜55重量%、好ましくは2〜50重量%の割合で、有機溶媒を、組成物の全重量に対して1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の割合で、また髪の酸化染色で従来より知られている化粧品的に許容可能な任意の他のアジュバントをさらに含有する。
髪に適用される組成物は、種々の形態、例えば、液体、クリーム、またはゲルの形態、またはケラチン繊維、特にヒトの髪を染色するのに適した他の形態とすることができる。特に、泡の形態、および噴霧剤が存在するエアゾール缶に、加圧下にて包装することもできる。
次に、本発明の具体例を例証する。
実施例1:
各々0.5重量%の以下の7つの染料を、10重量%の20%アンモニア水に入れ、ついで、20容量の過酸化水素水を100重量%添加した。
ついで、得られた各々7つの組成物を、パーマネントウエーブ処理が施されておらず、90%の白髪分を含有する、ヨーロッパ人の髪の束に適用し、組成物を30分間、髪の上で放置した。流水で髪の束を洗浄した後、乾燥させ、得られた着色を、以下のように、0〜3の尺度で等級分けした:
グレード0=着色されない
グレード1=わずかに知覚できるが、許容できない着色
グレード2=はっきりと知覚できる着色であるが、許容限界がある
グレード3=良好な着色
得られた結果を以下に示す:
本発明品ではない染料:
-アニオン性のスルホン染料:
アシッドブラック1(c.l.204-/l)→グレード=0
-ニトロベンゼン染料:
N1,N4,N4-トリス(β-ヒドロキシエチル)-1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゼン→グレード=1
-オキサジン型のカチオン性染料:
ベーシックブルー3→グレード=0
--N=Nまたは-CH=N-基を含有しないカチオン性染料
1-(N-メチルモルホリニウム(morpholinium)プロピルアミノ)-4-ヒドロキシアントラキノン(メチルスルファート)→グレード=0
本発明品の染料(番号は記載されている生成物に相当):
--N=N-基を有する染料(8)→グレード=3
--CH=N-基を有する染料(6)→グレード=3
このように、7つの直接染料の中でも、本発明の染料のみにより、良好な薄化着色を得ることができる。
実施例2:
次の染色用組成物を調製した:
本発明の式(I)の直接染料★ xg
20%のアンモニア水 10g
脱塩水 全体を100gとする量
★番号は記載されている生成物に相当し、以下の表(I)を参照
第1の実験(本発明の薄化用染料)において、チェスナットブラウンをしたヨーロッパ人の髪の束を、上述した組成物と、20容量の過酸化水素水とを、使用時に調製した混合物で染色した。組成物を5分間、髪の束の上で放置した後、それらを流水ですすぎ、乾燥した。
第2の実験(比較例である、標準的な直接染料)において、他の髪の束(上述したものと同一の質のもの)を、過酸化水素水を含有しない以外は、上述した組成物と同様の組成物で、別個に染色した。組成物を、上述した染色と同じ長さ、髪の束の上で放置した後、それらをすすぎ、乾燥した。
本発明の式(I)の直接染料(8)、(10)および(10)+(7)である、標準的な直接染料に相当するものと、本発明の薄化用染料とを比較した。
比較した色調は、ミノルタCM2002色差計で、L、a、b値を測定したものである(色の表記系において、Lは強度(intensity)を示し、aは暗度(shade)を示し、bは純度(purity)を示す)。
結果を次に示す:

これらの結果には、本発明の直接染料(過酸化水素水を含有するもの)を使用した薄化染色により、同一の染料を有する標準的な直接染料(過酸化水素水を含有しないもの)よりも、より良好な視覚的効果が得られる(より明瞭な着色が生じる)ことが示されている。
これらの薄化染色により、より均質で、耐性および光沢があり、経時的に美的で魅力的な着色が得られる。また、髪は、負担がかかることなく、自然な外観を呈するようになる。
(57)【特許請求の範囲】
1. 染色に適切な水性媒体に、酸化剤を含有する組成物と、塩基性のpHで、使用時に前記酸化剤を含有する組成物と混合される少なくとも1つの直接染料を含有するタイプの、ケラチン繊維の薄化染色用組成物において、
塩基性のpHを有し、直接染料として、
-非局在化していてもよい第四級化窒素原子、および、-CH=N-結合を有する、少なくとも1つの染料、または
-以下のように表される染料:


[式中、X-は、塩化物または硫酸メチル等のアニオンを示す]
を含有することを本質的な特徴とする組成物。
2. 直接染料が、次の式(I):

[上式(I)中、Zは、CH基を示し、AおよびBは、一または複数のハロゲン原子で、もしくは一または複数の、R1およびR2が、同時にまたは互いに独立して、水素、C1-C8のアルキル基、C1-C4のヒドロキシアルキル基、またはフェニル基を表す、NR1R2またはOR1で置換されていてもよい、ベンゼンまたは複素環式芳香族基を示し、X-は、塩化物または硫酸メチル等のアニオンを示し、カチオン電荷が、その置換基の一つにより担持されるか、または芳香環の全体に形成され得る]
の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
3. 前記染料が、カチオン電荷が芳香環AまたはBの全体に形成される、式(I)の化合物から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
4. 前記染料が、次の化合物:

から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
5. 前記直接染料が、前記酸化剤を含有する組成物と混合する前の組成物の全重量に対して、0.001〜5重量%の範囲内の濃度で存在することを特徴とする請求項1ないし4に記載の組成物。
6. 前記直接染料が、前記酸化剤を含有する組成物と混合する前の組成物の全重量に対して、0.05〜2重量%の範囲内の濃度で存在することを特徴とする請求項5に記載の組成物。
7. 塩基性のpHが、アンモニア水およびアルカノールアミンから選択される塩基性化剤を使用して得られることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の組成物。
8. 前記酸化剤を含有する組成物が、過酸化水素水を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組成物。
9. 染色に適切な水性媒体に、
非局在化していてもよい第四級化窒素原子、および-CH=N-結合を有する、少なくとも1つの染料、または
-以下のように表される染料:



[式中、X-は、塩化物または硫酸メチル等のアニオンを示す]と、
酸化剤と、最終的なpHを7より高い値に調節するために十分な量の塩基性化剤をさらに含有せしめてなることを特徴とする、ケラチン繊維の使用準備が整った薄化染色用組成物。
10. 少なくとも2つの区分を有し、一つが請求項1ないし7のいずれか1項に定義されている組成物(A)を収容し、もう一つが染色に適した媒体に酸化剤を含有する組成物(B)を収容することを特徴とする、ヒトのケラチン繊維を薄化染色するための多区分染色装置。
 
訂正の要旨 ▲1▼平成11年5月14日付けの本件請求人により補正された特許請求の範囲
「1. 染色に適切な媒体に、酸化剤を含有する組成物と、塩基性のpHで、使用時に前記酸化剤を含有する組成物と混合される少なくとも1つの直接染料を含有するタイプの、ケラチン繊維の薄化染色用組成物において、
塩基性のpHを有し、直接染料として、非局在化していてもよい第四級化窒素原子、およびXが窒素原子または-CH-基である、-X=N-結合を有する、少なくとも1つの染料を含有することを本質的な特徴とする組成物。
2. 直接染料が、次の式(I):

[上式(I)中、Zは、窒素原子または-CH-基を示し、AおよびBは、一または複数のハロゲン原子で、もしくは一または複数の、R1およびR2が、同時にまたは互いに独立して、水素、C1-C8のアルキル基、C1-C4のヒドロキシアルキル基、またはフェニル基を表す、NR1R2またはOR1で置換されていてもよい、ベンゼンまたは複素環式芳香族基を示し、X-は、塩化物または硫酸メチル等のアニオンを示し、カチオン電荷が、その置換基の一つにより担持されるか、または芳香環の全体に形成され得る]
の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
3. 前記染料が、カチオン電荷が芳香環AまたはBの全体に形成される、式(I)の化合物から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
4. 前記染料が、次の化合物:


から選択されることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
5. 前記直接染料が、前記酸化剤を含有する組成物と混合する前の組成物の全重量に対して、0.001〜5重量%の範囲内の濃度で存在することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の組成物。
6. 前記直接染料が、前記酸化剤を含有する組成物と混合する前の組成物の全重量に対して、0.05〜2重量%の範囲内の濃度で存在することを特徴とする請求項5に記載の組成物。
7. 塩基性のpHが、アンモニア水およびアルカノールアミンから選択される塩基性化剤を使用して得られることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の組成物。
8. 前記酸化剤を含有する組成物が、過酸化水素水を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組成物。
9. 染色に適切な媒体に、非局在化していてもよい第四級化窒素原子、およびXが窒素原子または-CH-基である、-X=N-結合を有する少なくとも1つの、請求項2ないし4のいずれか1項に定義されている直接染料と、酸化剤と、最終的なpHを7より高い値に調節するために十分な量の塩基性化剤をさらに含有せしめてなることを特徴とする、ケラチン繊維の使用準備が整った薄化染色用組成物。
10. 少なくとも2つの区分を有し、一つが請求項1ないし7のいずれか1項に定義されている組成物(A)を収容し、もう一つが染色に適した媒体に酸化剤を含有する組成物(B)を収容することを特徴とする、ヒトのケラチン繊維を薄化染色するための多区分染色装置。」
を、
「1. 染色に適切な水性媒体に、酸化剤を含有する組成物と、塩基性のpHで、使用時に前記酸化剤を含有する組成物と混合される少なくとも1つの直接染料を含有するタイプの、ケラチン繊維の薄化染色用組成物において、
塩基性のpHを有し、直接染料として、
-非局在化していてもよい第四級化窒素原子、および、-CH=N-結合を有する、少なくとも1つの染料、または
-以下のように表される染料:



[式中、X-は、塩化物または硫酸メチル等のアニオンを示す]
を含有することを本質的な特徴とする組成物。
2. 直接染料が、次の式(I):

[上式(I)中、Zは、CH基を示し、AおよびBは、一または複数のハロゲン原子で、もしくは一または複数の、R1およびR2が、同時にまたは互いに独立して、水素、C1-C8のアルキル基、C1-C4のヒドロキシアルキル基、またはフェニル基を表す、NR1R2またはOR1で置換されていてもよい、ベンゼンまたは複素環式芳香族基を示し、X-は、塩化物または硫酸メチル等のアニオンを示し、カチオン電荷が、その置換基の一つにより担持されるか、または芳香環の全体に形成され得る]
の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
3. 前記染料が、カチオン電荷が芳香環AまたはBの全体に形成される、式(I)の化合物から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
4. 前記染料が、次の化合物:

から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
5. 前記直接染料が、前記酸化剤を含有する組成物と混合する前の組成物の全重量に対して、0.001〜5重量%の範囲内の濃度で存在することを特徴とする請求項1ないし4に記載の組成物。
6. 前記直接染料が、前記酸化剤を含有する組成物と混合する前の組成物の全重量に対して、0.05〜2重量%の範囲内の濃度で存在することを特徴とする請求項5に記載の組成物。
7. 塩基性のpHが、アンモニア水およびアルカノールアミンから選択される塩基性化剤を使用して得られることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の組成物。
8. 前記酸化剤を含有する組成物が、過酸化水素水を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組成物。
9. 染色に適切な水性媒体に、
非局在化していてもよい第四級化窒素原子、および-CH=N-結合を有する、少なくとも1つの染料、または
-以下のように表される染料:


[式中、X-は、塩化物または硫酸メチル等のアニオンを示す]と、
酸化剤と、最終的なpHを7より高い値に調節するために十分な量の塩基性化剤をさらに含有せしめてなることを特徴とする、ケラチン繊維の使用準備が整った薄化染色用組成物。
10. 少なくとも2つの区分を有し、一つが請求項1ないし7のいずれか1項に定義されている組成物(A)を収容し、もう一つが染色に適した媒体に酸化剤を含有する組成物(B)を収容することを特徴とする、ヒトのケラチン繊維を薄化染色するための多区分染色装置。」
と訂正する。
異議決定日 2003-04-28 
出願番号 特願平9-521020
審決分類 P 1 651・ 113- YA (A61K)
P 1 651・ 121- YA (A61K)
P 1 651・ 537- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 福井 悟  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 深津 弘
松浦 新司
登録日 1999-09-03 
登録番号 特許第2974418号(P2974418)
権利者 ロレアル
発明の名称 特定の直接染料を含有するケラチン繊維の薄化染色用組成物  
代理人 志賀 正武  
代理人 有賀 三幸  
代理人 渡辺 隆  
代理人 的場 ひろみ  
代理人 中島 俊夫  
代理人 高野 登志雄  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 成瀬 重雄  
代理人 山本 博人  
代理人 成瀬 重雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ