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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01C
管理番号 1081351
異議申立番号 異議2001-73134  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-08-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-11-21 
確定日 2003-05-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3167672号「乗用型田植機」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3167672号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3167672号の請求項1ないし3に係る発明は、平成3年9月25日に出願した特願平3-245485号の一部を平成9年4月21日に新たな特許出願(特願平9-102977号)とし、さらにこの特許出願の一部を平成10年3月24日に新たな特許出願としたものであり、平成13年3月9日にその発明についての特許権の設定登録がなされ、その後、この特許に対し、異議申立人三菱農機株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由を通知したところ、平成14年5月21日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正請求について
2-1.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、特許明細書を次のとおりに訂正しようとするものである(下線部は訂正個所である)。
(a)特許明細書(平成12年11月24日付け提出の手続補正書により補正された明細書)における【特許請求の範囲】(本件特許公報第1欄10〜11行)に記載された「走行機体(3)から伝達される動力を出力する出力部(6a)を、」を、
「前方の走行機体(3)から伝達される動力を前記横フレーム(9)の外側を通して横フレーム(9)の後側で出力する出力部(6a)を備え、この出力部(6a)を、」と訂正する。
(b)同明細書における【特許請求の範囲】(本件特許公報第2欄4〜5行)に記載された「外部で架設して、
走行機体(3)の後部に」を、
「外部で架設して、前記伝動軸(16)と前記出力部(6a)との接続箇所を前記横長の横フレーム(9)の左右方向での中央から外れた位置に設定し、 走行機体(3)の後部に」と訂正する。
(c)同明細書の段落【0006】(本件特許公報第4欄2〜3行)に記載された「走行機体から伝達される動力を出力する出力部を、」を、
「前方の走行機体から伝達される動力を前記横フレームの外側を通して横フレームの後側で出力する出力部を備え、 この出力部を、」と訂正する。
(d)同明細書の段落【0006】(本件特許公報第4欄9行)に記載された「外部で架設して、走行機体(3)の後部に」を、
「外部で架設して、
前記伝動軸と前記出力部との接続箇所を前記横長の横フレームの左右方向での中央から外れた位置に設定し、 走行機体の後部に」と訂正する。
2-2.訂正の適否
上記(a)の訂正は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「横フレームと出力部との配置構成」をより明確にしようとするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、この横フレームと出力部との配置構成については、特許明細書の「図3及び図4に示すように伝動ケース6に、走行機体3からの動力伝達軸12を介して動力が伝達されており、・・・図1,3,4に示すように、伝動ケース6から植付ケース8への動力の伝達は、伝動ケース6の右端部より後方下部へ延出されて隣接する植付ケース8の間で横フレーム9の後側に位置した出力ケース部6aの左右両端から突出する出力軸13と、植付ケース8の左右向きに沿った植付入力軸14とを、同芯状に配置されてスプライン嵌合される連結具15、及び横フレーム9の後側の外部で横フレーム9と平行に配置された伝動軸16により連動連結して行われている。」(段落【0030】)の記載、並びに、図1、図2、及び図3から明らかである。
また、上記(b)の訂正は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「伝動ケースの配置構成」を特定するものであるから、特許請求の範囲の滅縮を目的とするものであり、この伝動ケースの配置構成については、特許明細書の「図2(ハ)・・・に示すように、6条植型式の場合には1つの植付ケース8が、植付ケース8の左右中央と横フレーム9の左右中央とが一致するように横フレーム9に取り付けられ、中央の植付ケース8から植付条間隔Lの2倍の間隔を置いて、左右に植付ケース8が取り付けられている。」(段落【0031】)の記載、及び、図1、図2、図4から明かである。
さらに、上記(c)及び(d)の訂正は、発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記(a)ないし(d)の訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものでなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
2-3.むすび
以上のとおりであり、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
3-1.本件特許発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし3に係る発明は、訂正後の特許明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりの、
「【請求項1】 左右方向に沿って横長の横フレーム(9)を配置して、苗を田面に植え付ける植付アーム(7)を後部に備えた前後方向に縦長の複数の植付ケース(8)を、互いに平行状の後向きで片持ち状に前記横フレーム(9)に連設し、
前記横フレーム(9)の右及び左の端部よりも内方側に、右及び左の最外側の植付ケース(8)が位置するように構成すると共に、
前方の走行機体(3)から伝達される動力を前記横フレーム(9)の外側を通して横フレーム(9)の後側で出力する出力部(6a)を備え、
この出力部(6a)を、隣接する植付ケース(8)の間で且つ前記横フレーム(9)の後側に配置して、前記出力部(6a)の動力を、前記隣接する植付ケース(8)に前記横フレーム(9)の後側の外部で伝達するように構成し、
前記隣接する植付ケース(8)に対し前記出力部(6a)とは反対の横外側に位置する植付ケース(8)と、前記隣接する植付ケース(8)との間において、動力を伝達する伝動軸(16)を前記横フレーム(9)の後側の外部で架設して、前記伝動軸(16)と前記出力部(6a)との接続箇所を前記横長の横フレーム(9)の左右方向での中央から外れた位置に設定し、
走行機体(3)の後部に備えられたリンク機構(5)の後部側下部に、前記横フレーム(9)を前後軸芯(X)周りにローリング自在に支持させてある乗用型田植機。
【請求項2】 前記植付ケース(8)を前記横フレーム(9)に対して直接に取り付けて支持させてある請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項3】 前記伝動軸(16)を前記横フレーム(9)に平行に配置してある請求項1又は2記載の乗用型田植機。」
である。
3-2.引用刊行物記載の発明
(a)当審において、通知した取消しの理由に引用した、特開昭52-34212号公報(以下、「引用刊行物1」という)には、次の事項が記載されている。
(a-1)「本発明は、主として乗用型田植機に装備される多条植え田植装置に関する。」(1頁下左欄13〜14行)、
(a-2)「前記均平装置2のフレーム4と苗植付装置3の連結用枠体12との間には、下側の左右一対のサイドリンク13,13及び上方中間部のアッパーリンク14が、フレーム4側取付端を球継手を介して3次元方向に回動自在に連結されるとともに連結用枠体12側取付端部を横軸心周りに回動自在に連結された状態で介装されており、このサイドリンク13,13及びアッパーリンク14を介して苗植付装置3が均平装置2に対して上下移動自在並びに左右ローリング自在に支持されている。」(2頁左上欄20行〜同頁右上欄10行)、
(a-3)「田植装置3は、第3図参照のように、上下に循環回動駆動される4対の植付爪20・・等からなる植付機構21を装備した二つの植付ケース22,22が前記連結用枠体12に連結された状態で横方向に並置されて構成されるものであって、・・・横往復移動する苗のせ台24・・の載置苗を8対の植付爪20で順次圃場に植付けるように構成されている。また、前記植付ケース22・・には、第4図に示すように入力軸25・・が夫々横方向に向けて水平軸支され、且つ、夫々の入力軸25・・が一直線状に沿って配置されるとともに、両ケース22・・間には、前記回転軸7と連動連結されて動力を受入れ、且つ、前記入力軸25・・の端部に動力を伝達する機構26が配置されている。この伝達機構26について詳しく説明すると、前記回転軸7と連動連結される縦軸27、前記入力軸25の端部と連結される横軸28及び中間伝動横軸29が前記枠体12に連結支持されるミツンョンケース30に夫々軸支されており、これら各軸27,28,29に軸支されるギヤを介して以下に述べる様に動力伝達が行なわれる。すなわち、縦軸27→・・・噛合いクラッチ37→横軸28→入力軸25・・。」(2頁左下欄8行〜同頁右下欄19行)、
(a-4)「前記横軸28と入力軸25,25との連結部には軸心方向の位置決め微調節が可能なスプライン継手53,53が介在されている。
また、前記フロート23・・は、第3図に示すように、前部側が二つ折れリンク機構38・・を介して前記連結用枠体12に対して上下移動自在に連結される・・・第5図に示すように、一端を前記ケース30の側面に回動自在に挿入係止され、他端を前記植付ケース22の外側端部に回動自在に支持された横架姿勢の連結棒39,39に夫々2個づつのアーム40・・が固着され、各アーム40・・の先端が各フロート23・・の後部に枢着され」(3頁左上欄11行〜同頁右上欄7行)、
(a-5)「更に例示する植付ケース22と同様の別の植付ケースの入力軸とを軸継手構造等により連結可能に構成すれば、例示する8条田植装置が12条または16条へと順次多条植えに構成できるものとなる。すなわち、本発明を利用すれば、植付ケース22・・を順次並置し、入力軸25・・を順次連動連結することによって、所要の多条の田植え装置を容易に構成できるものとなる。」(3頁左下欄18行〜右下欄6行)、
(a-6)「また、実施例においては、各植付ケース22が4対の植付爪20・・からなる植付機構21を装備するのを例示したが、2対の植付爪20からなる植付機構21等を装備するものに構成してもよい。」(3頁右下欄7〜11行)、
(a-7)「以上要するに本発明による多条植え田植装置は植付機構21を装備した植付ケース22・・を複数個横方向に並置するとともに、各植付ケース22・・の入力軸25・・を横方向に水平軸支し、これら入力軸25・・を互いに一直線状に連動連結し、且つ、所定の入力軸25端部に動力を伝達する機構26を配置してあることを特徴とする。
即ち、多条植えでありながら植付ケースを複数に構成したので、全体を横中の長い一個の植付ケースに構成した場合に比して各植付ケース22は軽小で強度も小さいものですむとともに、各ケースごとに内部機構の組付けができ組立てが容易になり、また各植付ケース22は比較的小さいものとなるからケース自体及び内装部品の加工精度を上げることも容易となる。そして、このような横付ケース22・・を並置して各ケース22・・の水平入力軸25・・を一直線状に連動連結して所定の入力軸端部に動力伝達機構26を配置するだけで、各植付機構21・・を簡単に駆動することができ、その結果、所望数の多条植えを行う田植装置を植付ケース並びに伝動機構の構造が簡単なものとして構成し得るに至ったのである。」(3頁右下欄第12行〜4頁左欄15行)。
(a-8)また、図面(特に第2図)には、ミッションケース30を、このミッションケース30からの横軸28の存在箇所とは異なる部分で前記連結用枠体12に連結した構成が記載されており、また、ミッションケース30の前面が連結用枠体12の後面より前方に位置していることが認識できる。
引用刊行物1の第2図には、連結用枠体12に、4対(これは、「4つ」の誤記である)の植付爪20・・等からなる植付機構21を装備した二つの植付ケース22,22を連結したものが記載されているが、2対(これは、「2つ」の誤記である)の植付爪20からなる植付機構21等を装備するものに構成してもよい(上記(a-6)参照)と記載されており、
連結用枠体12に、2つの植付爪20・・等からなる植付機構21を装備した植付ケース22,22を連結したものが記載されているとみることができ、2つの植付爪20・・等からなる植付ケース22は前後方向に縦長の形状をしている。
そうすると、引用刊行物1には、
左右方向に沿って横長の連結用枠体12を配置して、
苗を田面に植え付ける植付爪20を設けた植付アームを後部に2つ備えた、前後方向に縦長の植付ケース22,22を、複数互いに平行状の後向きで片持ち状に前記連結用枠体12に連設し、
前方の農用トラクター1から伝達される動力を前記連結用枠体12の後ろ側で出力する出力部を備え、
この出力部を、隣接する植付ケース22,22の間で且つ前記連結用枠体12の後側に配置して、前記出力部の動力を、前記隣接する植付ケース22,22に前記連結用枠体12の後側の外部で伝達するように構成した乗用型田植機の多条植え田植装置(以下、「引用刊行物1の発明」という)が記載されていると認められる。
(b)同じく取消しの理由に引用した実公昭50-30258号公報(以下、「引用刊行物2」という)には、
「この田植機用ヒッチ16の中央部には機体の進行方向と略平行する水平軸17を、第2図に示す如く前記ロアリンク3,3の枢支部20下方の前記田植機4の均平板6が滑走する植付田面近くに位置させて設け、この水平軸17に田植機4側のフレーム5のボス18を回転自在に嵌入して、田植機4が田植機用ヒッチ16に対し前記水平軸17の軸芯周りに左右方向へは回動自在となる如く装着する。」(1頁右欄34行〜2頁左欄4行)と記載されている。
(c)同じく取消しの理由に引用した実公昭55-47286号公報(以下、「引用刊行物3」という)には、
「中間伝動ケース2は、アルミ等の押出成形にて製作された植付け装置3……の並設方向に沿って同一断面形状の長い筒状ケースを8条植えに見合う長さで切断して構成し、かつ、この中間伝動ケース2の一側面には前記駆動軸15挿設用の孔20を穿設する一方、他側面には、前記各植付けミツンョン1……側に動力を取り出す伝動軸21……挿設用の孔22……を穿設し、上記孔20,22……の周り・・・には、ボルトにより各ケースを連設するための小孔29……を適宜穿設している。」(2頁右欄3〜14行)と記載されており、
3-3.対比・判断
3-3-1.請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明と引用刊行物1の発明とを比較すると、
引用刊行物1の発明の「連結用枠体12」、「農用トラクター1」及び「植付ケース22」が、本件発明の「横フレーム(9)」、「走行機体(3)」及び「植付ケース(8)」に、それぞれ対応しているから、両者は、
左右方向に沿って横長の横フレームを配置して、苗を田面に植え付ける植付アームを後部に備えた前後方向に縦長の複数の植付ケースを、互いに平行状の後向きで片持ち状に前記横フレームに連設し、
前記横フレームに、植付ケースが位置するように構成すると共に、
走行機体から伝達される動力を横フレームの後ろ側で出力する出力部を備え、
この出力部を、隣接する植付ケースの間で且つ前記横フレームの後側に配置して、前記出力部の動力を、前記隣接する植付ケースに前記横フレームの後側の外部で伝達するように構成した乗用型田植機の苗植付装置で一致し、以下の点で構成が相違している。
(A)本件請求項1に係る発明では、「横フレーム(9)の右及び左の端部よりも内方側に、右及び左の最外側の植付ケース(8)が位置するように構成」し、「隣接する植付ケース(8)に対し前記出力部(6a)とは反対の横外側に位置する植付ケース(8)と、前記隣接する植付ケース(8)との間において、動力を伝達する伝動軸(16)を前記横フレーム(9)の後側の外部で架設し」ているのに対し、引用刊行物1の発明では、植付ケース22は植付アームを2つ備えたものである(上記(a-6)参照)が、植付ケース22,22が連結用枠体12の右及び左の端部よりも内方側に位置する構成が明記されておらず、動力を伝達する構成が不明である点、
(B)本件請求項1に係る発明では、「走行機体(3)から伝達される動力を前記横フレーム(9)の外側を通して横フレーム(9)の後ろ側で出力する出力部(6a)を備え」ているのに対し、引用刊行物1の発明では、前記構成が不明である点、
(C)本件請求項1に係る発明では、「伝動軸(16)と前記出力部(6a)との接続箇所を前記横長の横フレーム(9)の左右方向での中央から外れた位置に設定し」ているのに対し、引用刊行物1の発明では、横フレーム(連結用枠体12)の左右方向でのほぼ中央位置に設定してある点、
(D)本件請求項1に係る発明では、「走行機体(3)の後部に備えられたリンク機構(5)の後部側下部に、前記横フレーム(9)を前後軸芯(X)周りにローリング自在に支持させてある」のに対し、引用刊行物1の発明では、前記構成を備えていない点、
で両者は構成が相違している。
上記相違点(A)ないし(D)について検討する。
相違点(A)について
引用刊行物1には、「2対の植付爪20からなる植付機構21等を装備するものに構成してもよい」と記載されており、2つの植付爪20からなる植付ケース22は、一般的には、植付条の左右条間幅内に位置する幅狭のものであり、また、この植付ケース22を横フレーム(連結用枠体12)に取り付けると、右及び左の最外側の植付ケース22は、引用刊行物3に記載されているように、横フレーム(連結用枠体12)の右左の端部よりも内方側に位置することになる。そして、植付ケース22から植付ケース22との間で動力を伝達する伝動軸を外部で架設するよう構成することは当業者なら容易にできる設計事項に過ぎない。
相違点(B)について
引用刊行物1のものは、走行機体(農用トラクター1)から伝達される動力を横フレーム(連結用枠体12)の後ろ側で出力する出力部を備えており、走行機体からの動力を、横フレームに貫通孔を設けて後ろ側で出力するよう構成することは、横フレームの強度を損なわせ合理的でないから、走行機体(3)から伝達される動力を前記横フレーム(連結用枠体12)の外側を通して出力部に伝達するよう構成することは当業者なら容易に想到できることである。
相違点(C)について
引用刊行物1には、4つの植付爪20・・等からなる植付機構21によって12条植の多条田植機を構成することが示されており(上記(a-5))、これは植付ケースが中央に位置するものであるから、出力部を左右方向での中央から外れた位置に設定したものが示唆されているといえるし、また、2つの植付爪等からなる植付ケースによって構成した6条植の多条田植機は周知(例えば、実公昭62-11376号公報参照)である。そして、前記6条植の多条田植機においては、植付ケースが中央に位置することになり、前方の走行機体から伝達される動力を出力する出力部を左右方向での中央から外れた位置に設定しなければならなくなるから、引用刊行物1の発明において、6条植の多条田植機とし、本件請求項1に係る発明のように構成することは当業者なら容易に想到できることである。
相違点(D)について
走行機体の後部に備えられたリンク機構の後部側下部に、前記横フレーム(9)を前後軸芯周りにローリング自在に支持する構成は、引用刊行物2に記載されており、引用刊行物1の発明において、走行機体の後部に備えられたリンク機構の後部側下部に、前記横フレームを前後軸芯周りにローリング自在に支持する構成することは当業者なら容易に想到できることである。
そして、本件請求項1に係る発明が奏する効果は、引用刊行物1及び2に記載された発明並びに周知技術から予測できる程度のことであって格別顕著なものではない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、上記引用刊行物1及び2に記載された発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
3-3-2.請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に、「前記植付ケース(8)を前記横フレーム(9)に対して直接に取り付けて支持させてある」構成を付加して限定するものである。
しかしながら、引用刊行物1には、植付ケース22を横フレーム(連結用枠体12)に対して直接に取り付けて支持させた構成が記載されているといえるから、本件請求項2に係る発明は、上記「3-3.対比・判断」の「3-3-1.請求項1に係る発明について」に記載した理由により上記引用刊行物1及び2に記載された発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3-3-3.請求項3に係る発明について
本件請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明に、「前記伝動軸(16)を前記横フレーム(9)に平行に配置してある」構成を付加して限定するものである。
しかしながら、引用刊行物1には、伝動軸(16)を前記横フレーム(9)に平行に配置した構成が記載されているといえるから、本件請求項2に係る発明は、上記「3-3.対比・判断」の「3-3-1.請求項1に係る発明について」に記載した理由により上記引用刊行物1及び2に記載された発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1ないし3に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
乗用型田植機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 左右方向に沿って横長の横フレーム(9)を配置して、苗を田面に植え付ける植付アーム(7)を後部に備えた前後方向に縦長の複数の植付ケース(8)を、互いに平行状の後向きで片持ち状に前記横フレーム(9)に連設し、
前記横フレーム(9)の右及び左の端部よりも内方側に、右及び左の最外側の植付ケース(8)が位置するように構成すると共に、
前方の走行機体(3)から伝達される動力を前記横フレーム(9)の外側を通して横フレーム(9)の後側で出力する出力部(6a)を備え、
この出力部(6a)を、隣接する植付ケース(8)の間で且つ前記横フレーム(9)の後側に配置して、前記出力部(6a)の動力を、前記隣接する植付ケース(8)に前記横フレーム(9)の後側の外部で伝達するように構成し、
前記隣接する植付ケース(8)に対し前記出力部(6a)とは反対の横外側に位置する植付ケース(8)と、前記隣接する植付ケース(8)との間において、動力を伝達する伝動軸(16)を前記横フレーム(9)の後側の外部で架設して、前記伝動軸(16)と前記出力部(6a)との接続箇所を前記横長の横フレーム(9)の左右方向での中央から外れた位置に設定し、
走行機体(3)の後部に備えられたリンク機構(5)の後部側下部に、前記横フレーム(9)を前後軸芯(X)周りにローリング自在に支持させてある乗用型田植機。
【請求項2】 前記植付ケース(8)を前記横フレーム(9)に対して直接に取り付けて支持させてある請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項3】 前記伝動軸(16)を前記横フレーム(9)に平行に配置してある請求項1又は2記載の乗用型田植機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、乗用型田植機における苗植付装置の全体構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
乗用型田植機における苗植付装置の全体構成としては、例えば実開昭62-99914号公報に開示されているように、田面に苗を植え付ける植付アーム(前記公報の第1図中の3)を、植付ケース(前記公報の第1図中の7a,7b)の後部に備えて、乗用型田植機の植付条数に応じた複数の植付ケースを用意し、複数のパイプ部材(前記公報の第1図中の8a,8b)により、複数の植付ケースの間をつなぐようにして、苗植付装置の全体を構成したものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年では、一つの植付条に複数の植付アーム(図3及び図4参照)を備えたロータリ型式の苗植付装置が多くなり、これに伴い苗植付装置の全体の重量が重くなってきている。従って、乗用型田植機では走行機体のリンク機構に、苗植付装置の左右中央部が支持される構成なので、前述のように苗植付装置の全体の重量が重くなると、苗植付装置の全体を左右方向に曲げようとする曲げモーメントが大きくなってくる。
【0004】
これに対し前述の実開昭62-99914号公報のように、複数のパイプ部材により複数の植付ケースの間をつないでいく構成であると、パイプ部材の端面と植付ケースの横面との連結部が、左右方向に沿って多数並ぶ状態(前記公報の第1図参照)となり、苗植付装置の全体を左右方向に曲げようとする曲げモーメントが、パイプ部材の端面と植付ケースの横面との連結部の各々に掛かる状態となるので、苗植付装置の全体の強度の確保と言う面で改善の余地がある。
【0005】
又、パイプ部材の端面と植付ケースの横面との連結部には、組立時に左右方向の連結誤差が発生し易いので、前述の実開昭62-99914号公報のように、複数のパイプ部材により複数の植付ケースの間をつないでいく構成であると、前述の連結誤差が左右方向に沿って集積されて、右側及び左側の植付アームの位置に誤差の発生することがある。
本発明は、乗用型田植機において、苗植付装置の全体の強度を充分に確保し、右側及び左側の植付アームの位置の誤差の発生を抑えることを目的としており、苗植付装置を適切に支持することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴は乗用型田植機において、次のように構成することにある。
[1] 左右方向に沿って横長の横フレームを配置して、苗を田面に植え付ける植付アームを後部に備えた前後方向に縦長の複数の植付ケースを、互いに平行状の後向きで片持ち状に横フレームに連設し、
横フレームの右及び左の端部よりも内方側に、右及び左の最外側の植付ケースが位置するように構成すると共に、
前方の走行機体から伝達される動力を前記横フレームの外側を通して横フレームの後側で出力する出力部を備え、
この出力部を、隣接する植付ケースの間で且つ横フレームの後側に配置して、出力部の動力を隣接する植付ケースに横フレームの後側の外部で伝達するように構成し、
隣接する植付ケースに対し出力部とは反対の横外側に位置する植付ケースと、隣接する植付ケースとの間において、動力を伝達する伝動軸を横フレームの後側の外部で架設して、
前記伝動軸と前記出力部との接続箇所を前記横長の横フレームの左右方向での中央から外れた位置に設定し、
走行機体の後部に備えられたリンク機構の後部側下部に、前記横フレームを前後軸芯周りにローリング自在に支持させてある。
【0007】
[2] 前項[1]の構成において、植付ケースを横フレームに対して直接に取り付けて支持させてある。
【0008】
[3] 前項[1]又は[2]の構成において、伝動軸を横フレームに平行に配置してある。
【0009】
【作用】
[I] 請求項1の特徴によると、左右方向に沿って横長の横フレームが配置されて、苗を田面に植え付ける植付アームを後部に備えた前後方向に縦長の複数の植付ケースが、互いに平行な状態で後向きに片持ち状に、横フレームに連設されているので、苗植付装置の全体を左右方向に曲げようとする曲げモーメントが、横フレームに掛かる状態となる。
【0010】
この場合、「従来の技術」に記載の実開昭62-99914号公報の構成のような、パイプ部材の端面と植付ケースの横面との連結部が左右方向に沿って多数並ぶと言う状態は、請求項1の特徴による横フレームには生じないので、苗植付装置の全体を左右方向に曲げようとする曲げモーメントが、横フレームに掛かる状態となっても、横フレームは充分に耐えることができる。
【0011】
請求項1の特徴による横フレームにおいて、パイプ部材の端面と植付ケースの横面との連結部が左右方向に沿って多数並ぶと言う状態が生じなければ、パイプ部材の端面と植付ケースの横面との連結部に発生する左右方向の連結誤差が、左右方向に沿って集積されると言う状態は、横フレームには生じないので、前述の連結誤差の集積によって、右側及び左側の植付アームの位置に誤差が発生すると言うような状態は生じない。
【0012】
[II] 請求項1の特徴によると、横フレームの右及び左の端部よりも内方側に右及び左の最外側の植付ケースが位置するように、複数の植付ケースが横フレームに連設されているので、横フレームの右又は左の端部付近に障害物が在った場合、横フレームの右又は左の端部が障害物に当たることはあっても、右及び左の最外側の植付ケースが障害物に当たるようなことは少ない。
【0013】
[III] 複数の植付ケースへの伝動系を構成する際、「従来の技術」に記載の実開昭62-99914号公報の構成によると、複数の植付ケースの間をつなぐパイプ部材の内部に伝動軸を配置して、複数の植付ケースの各々に動力を伝達するように構成されている。
これにより、パイプ部材の端面と植付ケースの横面との連結及び伝動軸の連結が同一個所で行われることになるので、構造が複雑なものとなり、メンテナンス作業も困難なものとなっている。又、前項[I]に記載のように苗植付装置の全体を左右方向に曲げようとする曲げモーメントが、パイプ部材に掛かる状態になった場合、前述の曲げモーメントが伝動軸にも掛かる状態となるので、伝動軸の疲労及び伝動軸を支持するベアリング等の磨耗に発展するおそれがある。
【0014】
請求項1の特徴によると、複数の植付ケースへの伝動系を構成する際、走行機体から伝達される動力を出力する出力部を、隣接する植付ケースの間で且つ横フレームの後側に配置して、出力部の動力を隣接する植付ケースに横フレームの後側の外部で伝達するように構成している。隣接する植付ケースに対し出力部とは反対の横外側に位置する植付ケースと、隣接する植付ケースとの間において、動力を伝達する伝動軸を横フレームの後側の外部で架設している。
【0015】
請求項1の特徴ように、横フレームへの植付ケースの連設及び植付ケースへの動力伝達を分けることにより、構造が簡素なものとなるのであり、メンテナンス作業も容易なものとなる。又、前項[I]に記載のように苗植付装置の全体を左右方向に曲げようとする曲げモーメントが横フレームに掛かる状態となっても、前述の曲げモーメントが伝動軸や出力部に直接に掛かることはないので、伝動軸や出力部の疲労、及び伝動軸を支持するベアリング等の磨耗を避けることができる。
【0016】
[IV] 請求項1の特徴によると、前項[III]に記載のように走行機体から伝達される動力を出力する出力部を、隣接する植付ケースの間に配置している。
これにより、請求項1の特徴によると、平面視において苗植付装置の左右範囲から横外側に出力部が出ることがなく、苗植付装置の左右中央側に出力部を配置することが可能になるので、走行機体から出力部に動力を伝達する場合、走行機体からの伝動軸を大きく横に向きを変えるように構成しなくても、走行機体からの伝動軸を出力部に向けて無理なく配置することができる。
【0017】
[V] 請求項1の特徴によると、乗用型田植機において走行機体の後部に備えられたリンク機構の後部側下部に、横フレームを前後軸芯周りにローリング自在に支持している。このように横フレームをリンク機構の後部側下部に前後軸芯周りにローリング自在に支持することにより、重心の位置を低く設定しながら、苗植付装置の全体を安定してリンク機構にローリング自在に支持させることができる。
【0018】
[VI] 請求項2の特徴によると、請求項1の場合と同様に前項[I]〜[V]に記載の「作用」を備えており,これに加えて以下のような「作用」を備えている。
請求項2の特徴によると、植付ケースが横フレームに対して直接に取り付けられて支持されるので、植付ケースの横フレームへの取付構造を簡素に構成することが可能になる。
【0019】
[VII] 請求項3の特徴によると、請求項1又は2の場合と同様に前項[I]〜[VI]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
請求項3の特徴によると、植付ケースに動力を伝達する伝動軸が、横フレームの後側の外部で横フレームと平行に植付ケースに架設されている。このように横フレームと平行に伝動軸を配置すると、伝動軸が全体に亘ってコンパクトに配置されることになる。
【0020】
【発明の効果】
請求項1の特徴によると、乗用型田植機の苗植付装置において横フレームに植付ケースを後向きに片持ち状に連設することにより、苗植付装置の全体を左右方向に曲げようとする曲げモーメントに対し、充分に耐えることができるようになって、苗植付装置の全体の強度を向上させることができた。
請求項1の特徴によると、左右方向の連結誤差が左右方向に沿って集積されると言う状態を避けることができ、右側及び左側の植付アームの位置を精度良く設定することができるようになった。
【0021】
請求項1の特徴によると、横フレームの右及び左の端部よりも内方側に右及び左の最外側の植付ケースが位置しているので、右及び左の最外側の植付ケースの障害物との接触を少なくして、右及び左の最外側の植付ケースの破損を少なくすることができるようになった。
【0022】
請求項1の特徴によると、隣接する植付ケースの間で且つ横フレームの後側に配置される出力部、及び横フレームの後側の外部で架設される伝動軸によって、横フレームへの植付ケースの連設及び植付ケースへの動力伝達を分けて、構造の簡素化及びメンテナンス作業の容易化を図ることができた。さらに、苗植付装置の全体を左右方向に曲げようとする曲げモーメントが、伝動軸や出力部に直接に掛かることを避けることができるので、伝動軸や出力部の疲労及び伝動軸を支持するベアリング等の磨耗を避けることができるようになり、苗植付装置の伝動系の耐久性を向上させることができた。
【0023】
請求項1の特徴によると、走行機体から伝達される動力を出力する出力部を、隣接する植付ケースの間に配置することにより、苗植付装置の左右中央側に出力部を配置することが可能になって、走行機体からの伝動軸を出力部に向けて無理なく配置することができるようになるので、走行機体から出力部及び植付ケースへの動力の伝達が円滑に行われるようになり、動力の伝動効率を良いものにすることができた。
【0024】
請求項1の特徴によると、横フレームをリンク機構の後部側下部に前後軸芯周りにローリング自在に支持することにより、重心の位置を低く設定しながら、苗植付装置の全体を安定してリンク機構にローリング自在に支持させることができるので、苗植付装置の植付作動が安定して行われるようになって、苗植付装置の植付性能を向上させることができた。
【0025】
請求項2の特徴によると、請求項1の場合と同様に前述の請求項1の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
請求項2の特徴のように、植付ケースを横フレームに対して直接に取り付けて支持することにより、植付ケースの横フレームへの取付構造を簡素に構成することが可能になるので、苗植付装置の全体構成の簡素化及び軽量化を図ることができた。
【0026】
請求項3の特徴によると、請求項1又は2の場合と同様に前述の請求項1又は2の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
請求項3の特徴のように、横フレームの後側の外部で横フレームと平行に、伝動軸を植付ケースに架設することにより、伝動軸が全体に亘ってコンパクトに配置されることになり、苗植付装置の全体のコンパクト化を図ることができた。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図4に本発明の乗用型田植機が示されている。この乗用型田植機は、前輪1及び後輪2で支持された走行機体3の後部に、四連リンク機構5(図3参照)を介して苗植付装置4を連結して構成されている。
【0028】
苗植付装置4は図3に示すように、走行機体3からの動力が入力される伝動ケース6、伝動ケース6から動力が伝達されて各植付条毎に植付アーム7を回動駆動可能に後端部に支持した複数の植付ケース8、植付ケース8及び伝動ケース6を支持する横フレーム9、伝動ケース6に備えられた横送りネジ(図示せず)により左右に往復駆動される苗のせ台10により、多数条の植付作業が可能に構成されている。
【0029】
次に、苗植付装置4のフレーム構造について説明する。図3及び図4に示すように、四連リンク機構5の後部リンク5aに形成された枢支ボス部11の下部の前後軸心X周りに、回動自在(ローリング自在)に伝動ケース6が支持され、伝動ケース6の下部に角パイプ状の横フレーム9がボルトで連結されている。伝動ケース6が横フレーム9の左右中央に連結された状態において、横フレーム9が左右方向に走行機体3の全幅に亘って延設されている。
【0030】
図3及び図4に示すように伝動ケース6に、走行機体3からの動力伝達軸12を介して動力が伝達されており、横フレーム9の後部面側に所定間隔を置いて、前後方向に縦長の複数の植付ケース8が、互いに平行な状態で後向きに片持ち状に取り付けられている。図1,3,4に示すように、伝動ケース6から植付ケース8への動力の伝達は、伝動ケース6の右端部より後方下部へ延出されて隣接する植付ケース8の間で横フレーム9の後側に位置した出力ケース部6aの左右両端から突出する出力軸13と、植付ケース8の左右向きに沿った植付入力軸14とを、同芯状に配置されてスプライン嵌合される連結具15、及び横フレーム9の後側の外部で横フレーム9と平行に配置された伝動軸16により連動連結して行われている。
【0031】
図2(ハ)及び図1の▲6▼に示すように、6条植型式として3つの植付ケース8を、植付条間隔Lの2倍の間隔を置いて横フレーム9に取り付けた構造が示されており、図2(ロ)(イ)に示すように5条植型式及び4条植型式の構造も、横フレーム9に伝動ケース6が連結された同一仕様のフレーム構造により構成することができる。図2(ハ)及び図1の▲6▼に示すように、6条植型式の場合には1つの植付ケース8が、植付ケース8の左右中央と横フレーム9の左右中央とが一致するように横フレーム9に取り付けられ、中央の植付ケース8から植付条間隔Lの2倍の間隔を置いて、左右に植付ケース8が取り付けられている。
【0032】
図2(イ)及び図1の▲4▼に示すように4条植型式に構成する場合には、横フレーム9の左右中央から植付条間隔Lの間隔を置いて、左右に植付ケース8が配置されている。
図2(ロ)及び図1の▲5▼に示すように5条植型式に構成する場合には、前述の4条植型式の右側の植付ケース8の位置から植付条間隔Lの2分の1の間隔を置いた右側の位置、前述の4条植型式の左側の植付ケース8の位置から植付条間隔Lの2分の1の間隔を置いた左側の位置に、植付ケース8が配置されている。
【0033】
以上のように図2(ハ)及び図1の▲6▼に示すように、6条植型式の場合には1つの植付ケース8が、植付ケース8の左右中央と横フレーム9の左右中央とが一致するように横フレーム9に取り付けられて、中央の植付ケース8の右側端面と伝動ケース6の出力ケース部6aの左側端面との間の間隔が、連結具15を装着できる程度の間隔Bに設定されている。植付ケース8の左右幅C、出力ケース部6aの左右幅A及び植付条間隔Lにおいて、次の関係となるように構成されている。
A≦L-(2B+C)【0034】
これにより図1に示すように、中央の植付ケース8から植付条間隔Lだけ右側に離れた位置に、別の植付ケース8(この植付ケース8の位置は4条植型式の植付ケース8の位置に相当する(▲4▼参照))を配置したと仮定した場合、両方の植付ケース8と出力ケース部6aとの各々の間隔が、少なくとも間隔Bの分だけ必要であるから、左右幅A,Cが最も大きく設定されても、連結具15を装着できる程度の間隔Bが、出力ケース部6aの左右に最低限確保される配置構成となっている。
【0035】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
4条植型式、5条植型式及び6条植型式に対応して配置された植付ケースと、出力ケース部及び横フレームとの位置関係を示す説明図
【図2】
4条植型式、5条植型式及び6条植型式に対応して配置された植付ケースの各々の状態を示す概略平面図
【図3】
苗植付装置の全体側面図
【図4】
乗用型田植機の全体平面図
【符号の説明】
3 走行機体
4 苗植付装置
5 リンク機構
6a 出力部
7 植付アーム
8 植付ケース
9 横フレーム
16 伝動軸
X 前後軸芯
 
訂正の要旨 (3-1)訂正事項a
特許明細書(平成12年11月24日付け提出の手続補正書により補正された明細書)における【特許請求の範囲】の欄の第8行(本件特許公報第1欄第10〜11行)の「走行機体(3)から伝達される動力を出力する出力部(6a)を、」を、特許請求の範囲の減縮を目的として次文のように訂正する。
『前方の走行機体(3)から伝達される動力を前記横フレーム(9)の外側を通して横フレーム(9)の後側で出力する出力部(6a)を備え、
この出力部(6a)を、』
これに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、同明細書における【課題を解決するための手段】の欄の第9行(本件特許公報第4欄第2〜3行)の「走行機体から伝達される動力を出力する出力部を、」を次文のように訂正する。
『前方の走行機体から伝達される動力を前記横フレームの外側を通して横フレームの後側で出力する出力部を備え、この出力部を、』
(3-2)訂正事項b
同明細書における【特許請求の範囲】の欄の第15行と16行との間(本件特許公報第2欄第4行と5行との間)に、特許請求の範囲の減縮を目的として次文を加入する。
『前記伝動軸(16)と前記出力部(6a)との接続箇所を前記横長の横フレーム(9)の左右方向での中央から外れた位置に設定し、』
これに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、同明細書における【課題を解決するための手段】の欄の第14〜15行(本件特許公報第4欄第9行)の「架設して、」の後に次文を加入する。
『前記伝動軸と前記伝動ケースの出力ケース部との接続箇所を前記横長の横フレームの左右方向での中央から外れた位置に設定し、』
異議決定日 2003-03-24 
出願番号 特願平10-75200
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A01C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 郡山 順吉田 英一  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 鈴木 寛治
渡部 葉子
登録日 2001-03-09 
登録番号 特許第3167672号(P3167672)
権利者 株式会社クボタ
発明の名称 乗用型田植機  
代理人 北村 修一郎  
代理人 北村 修一郎  

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