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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01C |
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管理番号 | 1081445 |
異議申立番号 | 異議2003-70626 |
総通号数 | 45 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-03-10 |
確定日 | 2003-07-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3323140号「チップ抵抗器」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3323140号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続きの経緯 本件特許第3323140号の特許請求の範囲の第1項に係る発明についての特許は、昭和62年10月22日に出願した特願昭62-267879号の一部を分割した特願平8-4988号の一部を、更に平成10年11月2日に分割して新たな特許出願としたものであって、平成14年6月28日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立てがなされたものである。 (2)特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人ローム株式会社は、証拠として甲第1乃至第3号証を提出し、本件は、その要旨を変更した発明についてなされたものであって、改正前特許法第40条の規定により、特許出願は手続補正書を提出した平成12年12月22日にしたものとみなされるから、本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであり、仮にその要旨を変更した発明でないとしても、甲第2乃至第3号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して、特許を受けることができないものである旨主張している。 (3)甲各号証記載の発明 甲第1号証として提出された、特開平11-204317号公報は、平成11年7月30日に公知となった本件の公開特許公報である。 甲第2号証として提出された、実願昭56-4597号(実開昭57-119501号)のマイクロフィルムには、チップ抵抗が第1乃至4図とともに開示されている。そしてその実用新案登録請求の範囲の(1)には、「(1)基板上に印刷抵抗体を設け、かつこの基板の抵抗体配置面側に上記基板とほぼ同じ大きさの保護板を固定して、基板と保護板とで抵抗体を挟んだ積層構造になし、この積層構造体の両端に上記抵抗体のリ-ド電極を形成したチップ抵抗。」と記載され、同3頁5行〜4頁9行には、「まず従来のチップ抵抗の構造は第1図,第2図に示すように、・・・(中略)・・・そして、その組立てはまずアルミナ基板1上に、バインダーとしてガラスフリットを使用した銀パラジウム系導電ペーストで内部電極2a〜2dを印刷形成し約800℃の温度で焼成する。次に、抵抗体材料のメタルグレーズペーストをスクリーン印刷で塗布し約800℃の温度で焼成して抵抗体3を形成する。その上にガラスを塗布し、保護膜4を焼成する。最後に、基板1の端面に銀パラジウムを塗布焼成して電極4aを形成し、内部電極2a〜2dと端面電極4a,4b上に順次ニッケルメッキ,ハンダメッキをしてリード電極を形成する。」と記載されている。 甲第3号証として提出された、特開昭58-101号公報には、厚膜抵抗体のトリミング方法が図面とともに開示されている。そしてその特許請求の範囲には、「少なくとも抵抗体が形成された絶縁基板を準備する工程と、上記抵抗体の一部を除いて上記基板表面をオーバーコートする工程と、上記オーバーコートの施されていない上記抵抗体をトリミングして上記抵抗体の抵抗値を大まかに設定する工程と、上記オーバーコートの施された上記抵抗体をトリミングして上記抵抗体の抵抗値を微調整する工程とからなる厚膜抵抗体のトリミング方法。」と記載されている。 (4)要旨変更の有無についての検討 異議申立人は、平成12年12月22日付け手続補正書により補正された、「前記第2電極の前記メッキ層により覆われている部分の面積と前記第3電極により覆われている部分の面積とを合わせた面積が、前記第1電極の前記メッキ層により覆われている部分の面積と前記第3電極により覆われている部分の面積とを合わせた面積よりも大きい」とする点及び関連した効果の点は、出願当初の明細書又は図面に記載されていない旨主張している。 しかしながら、出願当初の図面である図2の記載を参酌すれば、上記の構成の点は明確に読み取ることができる。 また出願当初の明細書の段落0017における、「この実施例のチップ抵抗器によれば、ハンダくわれに対して電極4の耐性が向上し、しかも、回路基板の曲げに対しても、メタルグレーズ系のみででき電極とを比べ柔軟性が高いので強い。また、ハンダ付けの際の回路基板に対する固着力も第1、第2電極6,7が回路基板に強固にハンダ付けされるので、極めて強く、第3電極をAg-レジン系にしたことによる固着力の低下は生じない。」旨の記載、段落0019における、「基板の下面側の第2電極に一部重畳して第3電極を設けたので、基板の下面側の電極で段差が形成され、回路基板へハンダ付けした際、下面側電極と回路基板の間に生じる隙間にハンダが回り込んで強い固着力が得られる。」旨の記載及び図2の図面の記載を参酌すれば、「第1電極上に登る溶融半田の量を少なくすることができて、第2電極と回路基板上の半田付け電極との間の半田付け強度を高めることができる。」という効果は自明なものと認められる。 以上のとおりであるから、本件出願に異議申立人主張の要旨変更はない。 (5)本件発明の要旨 本件発明の要旨は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の第1項に記載された次のとおりのものであると認める。 「セラミック製の基板(2)の表面にメタルグレーズペーストを用いて形成された一対の第1電極(6)と、 前記基板(2)の裏面に前記一対の第1電極(6)と対向するようにメタルグレーズペーストを用いて形成された一対の第2電極(7)と、 前記一対の前記第1電極間に形成された抵抗体(3)と、前記抵抗体(3)を覆うガラスコートと、 前記基板(2)の端面に前記第1電極(6)及び第2電極(7)に跨るように導電性ペーストが塗布されて形成された一対の第3電極(8)と、 前記第1電極,前記第2電極及び前記第3電極の上にメッキ処理が施されて形成されたメッキ層とからなり、 前記第3電極の前記導電性ペーストの塗布厚が20μm程度であり、 前記第2電極の前記メッキ層により覆われている部分の面積と前記第3電極により覆われている部分の面積とを合わせた面積が、前記第1電極の前記メッキ層により覆われている部分の面積と前記第3電極により覆われている部分の面積とを合わせた面積よりも大きいことを特徴とするチップ抵抗器。(以下、「本件発明」という。)」 なお請求項2は実施態様項であるから、本件発明に含めて検討する。 (6)対比・判断 先ず甲第1号証として提出された、特開平11-204317号公報は、本件出願後に公知となった文献であるから、進歩性判断に当たって、引用の対象とならないものである。 次に本件発明と甲第2乃至3号証記載の発明とを対比すると、甲第2乃至3号証には、本件発明の必須の構成要件である、チップ抵抗器において、「第2電極のメッキ層により覆われている部分の面積と第3電極により覆われている部分の面積とを合わせた面積が、第1電極のメッキ層により覆われている部分の面積と第3電極により覆われている部分の面積とを合わせた面積よりも大きい」点について記載も示唆もされていない。 そして本件発明では、上記の構成を採用することにより、「第1電極上に登る溶融半田の量を少なくすることができて、第2電極と回路基板上の半田付け電極との間の半田付け強度を高めることができる。」という明細書記載(段落0006参照)の作用効果を奏するものである。 よって、本件発明が甲第2乃至第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (7)むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-06-27 |
出願番号 | 特願平10-311886 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H01C)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 下野 和行、北村 明弘、酒井 朋広、井上 信一 |
特許庁審判長 |
内野 春喜 |
特許庁審判官 |
浅野 清 朽名 一夫 |
登録日 | 2002-06-28 |
登録番号 | 特許第3323140号(P3323140) |
権利者 | 北陸電気工業株式会社 |
発明の名称 | チップ抵抗器 |
代理人 | 根本 恵司 |
代理人 | 畑川 清泰 |
代理人 | 西浦 嗣晴 |
代理人 | 三谷 浩 |