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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 産業上利用性  H01L
管理番号 1081456
異議申立番号 異議2002-72592  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-04-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-22 
確定日 2003-07-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第3276900号「半導体装置及び表示装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3276900号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第3276900号(平成9年9月30日出願、平成15年14年2月8日設定登録。)の請求項1ないし3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
基板上に、パルスレーザーによるアニールが施された半導体膜が形成されてなる複数の半導体素子を有する半導体装置において、
前記半導体素子の一つ、いくつか、あるいは全ては、電気的に並列関係にある複数のチャンネル領域を有し、
前記複数のチャンネル領域の各チャンネル幅と、各チャンネル領域の間隙の離間距離とを合わせた合計距離は、前記パルスレーザーのピッチよりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
基板上に光学変調部材を変調する表示電極群と、これら表示電極群の各々に接続され表示信号を供給するための第1の薄膜トランジスタ群と、これら第1の薄膜トランジスタ群を駆動する第2の薄膜トランジスタ群が形成され、前記第1および第2の薄膜トランジスタ群は、パルスレーザーによるアニールが施された半導体膜をチャンネル領域に用いてなる表示装置において、
前記第1または第2の薄膜トランジスタ群を構成する薄膜トランジスタの一つ、いくつかまたは全ては、各々電気的に並列関係にある複数のチャンネル領域を有し、
前記複数のチャンネル領域の各チャンネル幅と、各チャンネル領域の間隙の離間距離と合わせた合計距離は、前記パルスレーザーのピッチよりも大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
基板上に光学変調部材を変調する表示電極群と、これら表示電極群の各々に接続され表示信号を供給するための第1の薄膜トランジスタ群と、これら第1の薄膜トランジスタ群を駆動する第2の薄膜トランジスタ群が形成され、前記第1または第2の薄膜トランジスタ群は、パルスレーザーによるアニールが施された半導体膜をチャンネル領域に用いてなる表示装置において、
前記第1または第2の薄膜トランジスタ群のうちパルスレーザーによるアニールが施された半導体膜をチャンネル領域に備えた薄膜トランジスタ群を構成する薄膜トランジスタの一つ、いくつかまたは全ては、各々電気的に並列関係にある複数のチャンネル領域を有し、
前記複数のチャンネル領域の各チャンネル幅と、各チャンネル領域の間隙の離間距離と合わせた合計距離は、前記パルスレーザーのピッチよりも大きいことを特徴とする表示装置。

2.異議申立理由の概要
申立人中川徹は、証拠として甲第1号証(特開平8-264802号公報)及び甲第2号証(特開平7-92501号公報)を提出し、次のように主張している。
「本件特許発明において主張されている効果は、上述の通り、実用上極めて疑わしいものである。また、発明とは自然法則を利用した技術的思想の創作であって、普遍性を要するところ、本件特許発明はその技術的範囲の一部において、その課題が解決されず、また主張されている効果も奏しないものであるから、産業上の利用性を欠くものである。
即ち、チャネル領域の幅及び間隙の総和がレーザー走査ピッチより僅かに大きい程度、例えばその総和とレーザー走査ピッチとの差がチャネル幅の和の1%程度の場合では、一部が不良領域にかかるTFTのチャネル幅は正常なTFTのチャネル幅のおよそ100分の1であり、素子特性の悪化を回避することは到底できない。
よって、本件特許の請求項1〜3に係る発明は、特許法第29条第1項柱書の規定に反するから、特許を受けることができない」(同書第9頁第17〜28行)ものである。(以下、「申立ての理由1」という)

次に、本件請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである旨(以下、「申立ての理由2」という)主張している。

3.異議申立てについての検討
3-1.申立ての理由1について
(1)本件請求項1ないし3に係る発明は、どれも「前記複数のチャンネル領域の各チャンネル幅と、各チャンネル領域の間隙の離間距離とを合わせた合計距離は、前記パルスレーザーのピッチよりも大きいこと」を発明特定事項とするものであるので、結晶化不良とならないチャンネルが、例え僅かであっても必ず存在するものであり、常に効果を奏するものである。
したがって、「本件特許発明において主張されている効果は、実用上極めて疑わしい」との上記主張を採用することはできない。

(2)また、チャンネル領域の幅及び間隙の総和がレーザー走査ピッチより僅かに大きい程度、例えばその総和とレーザー走査ピッチとの差がチャンネル幅の和の1%程度の場合でも、そのTFTには、チャンネル幅が正常なTFTのチャンネル幅のおよそ100分の1であっても、結晶化不良とならないチャンネルが必ず存在するものである。
したがって、本件特許発明のTFTは、チャンネル全てが不良領域にかかることを排除するものであるので、TFTの素子特性の悪化を回避することができないという、上記主張を採用することはできない。

よって、本件請求項1ないし3に係る発明は、産業上利用することができる発明と認められる。

3-2.申立ての理由2について
3-2-1.申立人が提出した甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明
(1) 甲第1号証には、
「基板上に形成されたアモルファスシリコン薄膜を、アニール処理により多結晶化させるに際し、前記アモルファスシリコン薄膜は、1000μm2以下の平面面積を有することを特徴とする半導体作製方法。」(請求項1)、
「薄膜トランジスタの活性シリコン層が、複数並列に配置された島状領域で構成され、該島状領域は、1000μm2以下の平面面積を有する多結晶シリコン薄膜であることを特徴とする薄膜トランジスタ。」(請求項4)、
「実施例1は、同一基板上に、多結晶シリコン薄膜トランジスタにより構成された、アクティブマトリクス回路と周辺駆動回路とを形成した例を示す。」(第4欄第47〜49行)、「この初期アモルファスシリコン薄膜が、ドライエッチングによりパターニングされ、活性シリコン層403〜405を構成する島状領域が、アクティブマトリクス部と、周辺駆動回路部の、薄膜トランジスタが形成される位置に設けられる。」(第5欄第12〜16行)、
「これらアモルファスシリコン薄膜よりなる島状領域が、アニール処理により結晶化される。基板温度は、500℃〜1100℃、ここでは700℃、加熱時間は2時間〜72時間、ここでは48時間とした。アニール処理は、加熱の他に、レーザー光や、強光(赤外線等)の照射により行ってもよい。」(第5欄第42〜47行)、
「すなわち、活性シリコン層404、405には、P型不純物が、403には、N型不純物がドーピングされた。この結果、P型の不純物領域413、415、416、418と、N型の不純物領域410、412、および実質的に真性なチャネル形成領域411、414、417を形成することができた。」(第6欄第13〜18行)
と記載されている。

(2) 甲第2号証には、
「ビームアニールによる多結晶Si形成方法には、まず基板全面または多結晶Siの必要な領域の全体を隙間なくビームアニールする第1の方法がある。さらに、ビームアニールの必要ない部分はとばしてしまう第2の方法がある。前者は、エキシマレーザのような、パルス発振でレーザ照射面積の大きいものが多く用いられている。後者にはアルゴンイオンレーザのような連続発振レーザのビームアニールが用いられる。高速処理が必要でスループットを向上させるためには後者が用いられる。」(第2欄第44行〜第3欄第3行)、
「【発明が解決しようとする課題】
ビームアニール法を用いて上述した画像表示用の基板を製造する場合に画素領域とは異なる周辺回路に備えられる行駆動回路または列駆動回路のTFTは画素駆動TFTとは同時にビームアニールすることが困難であった。この周辺回路でのTFTの配置が工夫されていないと、この部分のビームアニールに時間がかかり、スループットが低下する。本発明はこのような欠点を解消しようとするものである。」(第4欄第26〜34行)、
「(実施例1)
図3は、ガラス基板上に画素領域(画素表示用マトリクス回路)5と、行駆動回路6、列駆動回路7とが形成された液晶表示装置用のTFT基板100の平面図である。画素領域5は、多結晶半導体チャネルを有するTFT等のスイッチングトランジスタ、画素電極、行電極線(ゲートバスライン)、列電極線(ソースバスライン)などが、マトリクス状に配置されて構成される。」(第8欄第13〜20行)、
「これらのTFT回路の半導体層(チャネル、ソースおよびドレイン)として、ガラス基板上に成膜されたα-Siを走査型のビームアニール装置を用いてビームアニールして形成せしめた多結晶Siを用いる。図4は図3に示したようなガラス基板をビームアニールするときの走査の様子を示す平面図である。実線で表されるビームアニール走査ライン4は、べた一面ではなく間欠的に行われる。ビームアニールの走査は行方向(図4中の矢印Lの方向)に行う。なお、ビームアニールとは連続発振アルゴンイオンレーザ等、被照射体である水素化α-Si等の非単結晶膜に対して高速で多結晶化せしめることのできるエネルギーを有するビームであればよい。」(第8欄第42行〜第9欄第4行)、
「図4に示す幅bの範囲にわたって、すなわち列駆動回路7のTFTとして形成せしめられる予定領域の材料(実際は、水素化α-Si等)は、画素表示用のTFTとまとめてビームアニールすることはできないが、TFTの半導体チャネルとなる予定領域が、列方向にほぼ所定のピッチ間隔を持ち、行方向に展伸する所定の幅を持つ直線群にのるようにあらかじめ配置している。そのため、ビームアニールの走査回数はその直線の数になる。ビームアニールの走査ピッチはその直線群のピッチとなる。」(第9欄第26〜36行)
と記載されている。

3-2-2.対比・判断
請求項1ないし3に係る発明と申立人が提出した甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明とを対比すると、甲第1号証及び甲第2号証には、請求項1ないし3に係る発明の構成要件である、チャンネル領域として用いられる半導体膜が、「パルスレーザーによるアニールが施され、かつ複数のチャンネル領域の各チャンネル幅と、各チャンネル領域の間隙の離間距離とを合わせた合計距離は、前記パルスレーザーのピッチよりも大きい」点について記載も示唆もされていない。
(甲第1号証及び甲第2号証には、特にパルスレーザーを採用する点について記載も示唆もされていない。)
さらに、本件請求項1ないし3に係る発明は、上記の点を備えることにより、「パルスピッチと同じ幅の不良領域が半導体膜に生じても、チャンネル領域の全域が不良領域により覆われることが防がれ、更には、チャンネル領域の全幅に対して不良領域が占める割合が小さくなり、実質的な移動経路の幅が大きなり、良好な素子特性を有した半導体装置あるいは表示装置が得られる。」(明細書段落【0023】)といった顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1ないし3に係る発明が甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明から容易に発明をすることができたとはいえない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すことはできない。

また、他に請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-07-08 
出願番号 特願平9-266679
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01L)
P 1 651・ 14- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河本 充雄  
特許庁審判長 内野 春喜
特許庁審判官 恩田 春香
朽名 一夫
登録日 2002-02-08 
登録番号 特許第3276900号(P3276900)
権利者 三洋電機株式会社
発明の名称 半導体装置及び表示装置  
代理人 芝野 正雅  

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