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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E02D |
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管理番号 | 1082163 |
審判番号 | 不服2001-23658 |
総通号数 | 46 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-07-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-12-28 |
確定日 | 2003-08-15 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第365700号「緑化工法」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 7月 6日出願公開、特開平11-181776]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成9年12月22日の出願であって、その請求項1および2に係る発明は、平成15年5月9日受付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1および2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1および2に記載された発明(以下、請求項2に記載された発明を「本願発明」という。)は次のとおりである。 【請求項1】 省略 【請求項2】 発芽力増強処理を施した後に発芽兆候を示した木本植物種子を、前記木本植物種子の主根の伸長に影響しない大きさの目をもつ篭状容器の植栽ポットへ定植し、前記定植された木本植物種子の主根が前記植栽ポットの底部へ到達する前に該植栽ポットを法面上へ設置もしくは移植することを特徴とする緑化工法。 2.引用例 これに対して、当審において平成15年3月4日付けで通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である、実願昭63-52734号(実開平1-155746号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、実用新案登録請求の範囲に「植栽すべき苗木の根系部を収容する植生ポットにおいて、先端部分が尖頭形状をしており、側面部分には複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする植生ポット。」、1頁11〜14行に「本考案は、植栽すべき苗部の根系部を収容するポットに関し、特に、法面等に木本植物を植栽してその表面を安定化する工法における植栽作業で用いられるポットに関する。」、4頁1〜9行に「苗木を植栽するに際しては、苗木をポットと一緒に土壌(苗木生育基盤)中へ挿入するだけで植栽作業が完了する。・・・そして、植栽された苗木の根が生長しても、根は側面部の貫通孔を介して植生ポット外に自由に伸長することができ、且つ土壌や水分が植生ポット内へ充分に流通するので、根づまり等によって苗木の生長が阻害されることが防止される。」4頁10〜末行に「また、遠赤外線物質を添加した材質や紙等の土中で腐蝕する材質で植生ポットを構成すれば、・・・さらに、遠赤外線物質を添加した材質を用いた場合には、遠赤外線の作用により木本植物の発芽ぞろいが良好となる。」と記載されており、明記はされていないが、4頁10〜末行の記載から、木本植物種子は、植生ポットに播かれる(定植する)と解され、4頁1〜9行の記載から、法面へ植栽されるのは、根(主根を含む)が植生ポットの底部へ到達する前であると解される(本来、移植の時期は、木本植物の種類、法面の状況、季節等の諸条件を考慮して決定されると思われるが。)から、これらの記載および図面を参照すると、引用例1には、「木本植物種子を、苗木の根が生長しても植生ポット外に自由に伸長することができる大きさの貫通孔が側面部分に複数形成されている植生ポットへ定植し、定植された木本植物種子の主根が前記植生ポットの底部へ到達する前に該植生ポットを法面へ植栽する法面安定化工法」という発明が記載されていると認められる。 同、特開平8-193017号公報(以下、「引用例2」という。)には、段落番号【0002】に「【従来の技術】・・・種子においてはプライミング技術を用いた発芽促進が行われ」、段落番号【0005】に「これまでに、種子プライミングにはポリエチレングリコール、マンニトール、各種塩類溶液等が使用されており、発芽促進等には効果的な技術であることが知られている。」と記載されている。 3.対比・判断 本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「植生ポット」、「法面へ植栽する」、「法面安定化工法」は、それぞれ、本願発明の「植栽ポット」、「法面上へ設置もしくは移植する」、「緑化工法」に相当し、引用例1記載の発明において、「根」には、当然「主根」も含まれると解され、そうであれば、引用例1記載の発明の「根が生長しても植生ポット外に自由に伸長することができる大きさの貫通孔」は、本願発明の「主根の伸長に影響しない大きさの目」に相当するから、両者は、木本植物種子を、前記木本植物種子の主根の伸長に影響しない大きさの目をもつ植栽ポットへ定植し、前記定植された木本植物種子の主根が前記植栽ポットの底部へ到達する前に該植栽ポットを法面上へ設置もしくは移植する緑化工法の点で一致し、下記の点で相違している。 相違点1:本願発明では、発芽力増強処理を施した後に発芽兆候を示した木本植物種子を植栽ポットへ定植するのに対し、引用例1記載の発明では、どのような状態の木本植物種子を植栽ポットへ定植するのか記載されていない点。 相違点2:本願発明の植栽ポットは、篭状容器であるのに対し、引用例1記載の発明では、篭状ではない点。 上記相違点1について検討すると、種子に発芽力増強処理を施しておくことは、引用例2を参照すると、従来から行われていることにすぎないし、また、本願発明のように発芽兆候を示した種子を植栽ポットへ定植することは適宜なしうることにすぎない。 相違点2について検討すると、複数の貫通孔を有する植栽ポットとして、篭状容器からなる植栽ポットは、例をあげるまでもなく、周知技術にすぎない。 そして、本願発明によってもたらされる効果も、引用例1および2記載の発明および周知技術から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。 なお、審判請求人は、平成15年5月9日受付の意見書において、「本発明の「発芽兆候を示した種子を定植する」点は、【0005】に記載する播種工の長所である「根系構造も自然林と同様の形態になることから、台風等に対する抵抗力が強く、防災機能の高い緑化を行うことができる」という特徴を、植栽工においても実現するための重要な構成要素である。」(3頁参照)と主張しているが、発芽兆候を示した種子を定植することにより、100%近い発芽は期待できるとしても、発芽兆候を示した種子を定植することと、法面への移植後の根系構造との関係は不明であり、上記主張は採用できない。 4.むすび 以上のように、本願発明は、引用例1および2記載の発明および周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-05-30 |
結審通知日 | 2003-06-10 |
審決日 | 2003-06-24 |
出願番号 | 特願平9-365700 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(E02D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深田 高義 |
特許庁審判長 |
鈴木 憲子 |
特許庁審判官 |
山口 由木 藤原 伸二 |
発明の名称 | 緑化工法 |
代理人 | 小島 高城郎 |