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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1082171
審判番号 不服2001-18529  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-16 
確定日 2003-08-15 
事件の表示 平成 5年特許願第180839号「浄水器用カートリッジ」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年10月 9日出願公開、特開平 7-256239]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、特許法第42条の2に基づく優先権主張を伴う平成5年6月26日(優先日、平成4年6月26日)の出願であって、本願の請求項1乃至請求項2に係る発明は、平成5年9月24日提出の手続補正書により補正された願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1乃至請求項2に記載されたとおりのものと認める。
そして、本願特許請求の範囲請求項1には、次のとおりに記載されている。
なお、本願明細書においては、平成12年11月10日に手続補正書が提出されているが、特許法第53条第1項の規定により、その補正は却下された。
「【請求項1】 繊維状活性炭と、イオン吸着能を有する吸着剤を、ミクロフィブリル化繊維または熱融着繊維或いは熱融着樹脂粉末を成型剤として、成型せしめてなる浄水器用カートリッジ。」(以下、本願発明1という)

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平3-35681号(特開平4-247234号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、先願明細書という)には、以下の記載がなされている。
(A)「【請求項1】 活性炭素繊維、イオン交換能を有する物質、およびバインダーを含む成形吸着体。」(【特許請求の範囲】)
(B)「【従来の技術】水道水中の塩素臭などを除去するため、家庭用、業務用等の浄水器には、活性炭素繊維をバインダーで接合した抄紙構造の成形吸着体が装着されている。この成形吸着体は、塩素成分などに対する吸着速度、吸着能及び通水性が高い。しかしながら、前記活性炭素繊維は、上水中に存在するアンモニア成分、鉄などの金属イオン成分に対する吸着能が小さい。従って、前記成形吸着体により上水などを処理してもイオン化した不純物成分を除去できない。そして、前記アンモニアは不快臭を与え、鉄イオンなどは旨味を損なう。」(段落【0002】)
(C)「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高い吸着能を示すと共に、イオン化した不純物成分を除去できる成形吸着体を提供することにある。」(段落【0003】)
(D)「活性炭素繊維は、例えば、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、セルロース、レーヨン、ピッチなどの炭素繊維を賦活処理することにより得られる。活性炭素繊維の比表面積は、例えば、500〜2500m2/g程度であり、その特異なミクロポアの構造に起因して、吸着速度および吸着能が大きいという特徴を有する。なお、前記活性炭素繊維は、粉状又は粒状活性炭と併用してもよい。」(段落【0005】)
(E)「イオン交換能を有する物質には、例えば、第四級アンモニウム、第一級、第二級、第三級アミン型などの陰イオン交換性樹脂、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基などを含む陽イオン交換性樹脂、キレート樹脂などの有機物質;シリカゲル、ゼオライトなどの無機物質が含まれる。好ましいイオン交換能を有する物質は、陽イオン交換性樹脂である。イオン交換能を有する物質は、粉粒状であってもよいが、通水性及び通気性を高めることができる繊維状であるのが好ましい。」(段落【0006】)
(F)「バインダーは、前記活性炭素繊維及びイオン交換能を有する物質を接合して一体化する。バインダーとしては、例えば、パルプ;熱接着性繊維;熱接着性樹脂などが挙げられる。前記熱接着性繊維には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリアクリロニトリル繊維や複合繊維などが含まれる。熱接着性樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ナイロン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、スチレン系ポリマーなどの慣用の熱可塑性ポリマーが使用できる。バインダーの形態は、吸着体の製造方法に応じて選択でき、液状、粉粒末状、繊維状などのいずれであってもよいが、活性炭素繊維のミクロポアの閉塞を抑制でき、吸引成形性に優れる繊維状であるのが好ましい。特に好ましいバインダーは、パルプ及び/又は熱接着性繊維である。これらのバインダーは、一種又は二種以上使用できる。」(段落【0007】)
(G)「得られた吸着体の寸法は、直径50mmφ、高さ50mmの円柱状であり、重量は15g、その比表面積を測定したところ、720m2/gであった。」(段落【0026】)

3.対比
先願明細書には、先願明細書(A)により、「活性炭素繊維、イオン交換能を有する物質、およびバインダーを含む成形吸着体」が記載されている。
そして、該成形吸着体の用途は、先願明細書(B)及び(C)により、家庭用、業務用等の浄水器に用いることを想定するものであり、また、該バインダーとしては、先願明細書(F)により、「熱接着性繊維、粉粒末状の熱接着性樹脂」が選択し得るものである。
以上のことを整理すると、先願明細書には、
「活性炭素繊維、イオン交換能を有する物質、及び、熱接着性繊維又は熱接着性樹脂粉粒末を含む、浄水器用成形吸着体」に関する発明が記載されていると云える。
このことに基づいて本願発明1と先願発明とを対比する。
先願発明における「活性炭素繊維」は、本願発明1における「繊維状活性炭」に相当する。
また、「イオン交換能を有する物質」は、イオン交換により「イオン化した不純物成分」を吸着するものであるから、先願発明における「イオン交換能を有する物質」は、本願発明1における「イオン吸着能を有する吸着剤」に相当する。
加えて、先願明細書(F)には、「バインダーは、前記活性炭素繊維及びイオン交換能を有する物質を接合して一体化する」ことが記載されており、上記記載からみて、「活性炭素繊維及びイオン交換能を有する物質」が「バインダー」によって「成形吸着体」に成型されることは明らかである。そしてこの場合、「熱接着性繊維」あるいは「粉粒末熱接着性樹脂」は、熱により溶融して接着性を顕わす、すなわち熱融着する繊維あるいは樹脂粉末に相当する。
してみれば、本願発明1と先願発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
〈一致点〉
「繊維状活性炭と、イオン吸着能を有する吸着剤を、熱融着繊維或いは熱融着樹脂粉末を成型剤として、成型せしめてなる浄水器用物品」である点。
〈相違点〉
当該物品が、本願発明1は浄水器用カートリッジであるのに対して、先願発明は、浄水器用成形吸着体に係るものであるが、カートリッジの態様で用いることが明示されていない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
先願明細書(B)及び(C)の記載により、先願発明における浄水器用成形吸着体は、浄水器に「装着」することを意図するものである。
そして、先願明細書(G)により、得られた浄水器用成形吸着体は、「直径50mmφ、高さ50mmの円柱状」の寸法を有しているので、特別の操作を要せず、取付及び取外しが可能なものである。
してみれば、先願発明における浄水器用成形吸着体においても、カートリッジ形式で浄水器に適用する態様を含むものである。
仮にそうでないとしても、先願発明のような成形吸着体の適用態様として、カートリッジ形式は当分野における周知・慣用の事項に過ぎないものであって〔例えば、実願昭53-118200号(実開昭55-35953号)のマイクロフィルム(実用新案登録請求の範囲、第2ページ第8行〜第13行)、特開平4-4040号公報(特許請求の範囲、第1ページ左下欄第14行〜第15行、第3ページ左上欄第15行〜第18行)、等を参照〕、先願発明の浄水器用成形体においても、かかるカートリッジ形式の適用態様を含むものである。
そうすると、いずれにしても、先願発明の浄水器用形成吸着体はカートリッジとして浄水器に適用する態様を含むものである。
以上のとおりであるから、上記相違点は実質的な相違点であるとは云えず、したがって本願発明1と先願発明との間には、実質的に相違点は存在しない。

5.むすび
したがって、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-05-30 
結審通知日 2003-06-10 
審決日 2003-06-23 
出願番号 特願平5-180839
審決分類 P 1 8・ 161- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 後谷 陽一
金 公彦
発明の名称 浄水器用カートリッジ  
代理人 小田中 壽雄  

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