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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない G02F
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない G02F
管理番号 1082242
審判番号 訂正2003-39037  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-02-26 
確定日 2003-08-14 
事件の表示 特許第2785737号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】請求の要旨・手続の経緯
本件の訂正の審判は、特許第2785737号の願書に添付した明細書を、請求書に添付した全文訂正明細書のように訂正することを要旨として、平成15年2月26日付けで請求されたものである。
なお、訂正の対象である特許第2785737号は、昭和63年5月31日に出願された特許出願(特願昭63-133872号)の一部を特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願としたものであり、平成10年5月29日にその設定登録がなされ、その後、特許無効の審判請求(無効2002-35257号)がなされ、平成13年10月10日付けで請求項1に係る特許を無効とする旨の審決がなされた。本件の請求人はこれを不服として東京高等裁判所に当該審決の取消を求める訴(14(行ケ)631号)を提起し、現在同裁判所にて審理中である

【2】訂正事項
請求人は、特許請求の範囲の請求項1の記載を「光源部からの光に基づき変調された光を投写するプロジェクタにおいて、前記光源部は、コールドミラー付きリフレクターを有する光源ランプと、該光源ランプが支持固定されるとともに前記光源ランプを取り囲むフレームからなる第1のハウジングと、該第1のハウジングのフレームを出入れ可能な開口と該第1のハウジングのフレームを取り囲むように内部に収容し支持可能な構造を有する第2のハウジングとを備え、前記第1のハウジングのフレームには、前記光源ランプに風を導く導風構造が設けられ、前記第2のハウジングは、当該第2のハウジングの開口を当該プロジェクタのケースに設けられた開口に臨ませるように、該ケース内に固定されてなり、前記光源ランプを交換可能とするように、前記光源ランプが支持固定された前記第1のハウジングを、前記第2のハウジング内に収容した状態から、前記第2のハウジングの開口及び前記ケースの開口を介して外部に出せるように構成することを特徴とするプロジェクタ。」と訂正し、これに伴い段落【0005】を「【課題を解決するための手段】本発明のプロジェクタは上記の目的を達成するために、光源部からの光に基づき変調された光を投写するプロジェクタにおいて、前記光源部は、コールドミラー付きリフレクターを有する光源ランプと、該光源ランプが支持固定されるとともに前記光源ランプを取り囲むフレームからなる第1のハウジングと、該第1のハウジングのフレームを出入れ可能な開口と該第1のハウジングのフレームを取り囲むように内部に収容し支持可能な構造を有する第2のハウジングとを備え、前記第1のハウジングのフレームには、前記光源ランプに風を導く導風構造が設けられ、前記第2のハウジングは、当該第2のハウジングの開口を当該プロジェクタのケースに設けられた開口に臨ませるように、該ケース内に固定されてなり、前記光源ランプを交換可能とするように、前記光源ランプが支持固定された前記第1のハウジングを、前記第2のハウジング内に収容した状態から、前記第2のハウジングの開口及び前記ケースの開口を介して外部に出せるように構成することを特徴とする。」と訂正することを求めている。(訂正部分に下線を付した。)

【3】訂正の目的、新規事項、拡張・変更
上記訂正の目的は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明にあるものと認められる。

【3-1】「コールドミラー付きリフレクターを有する」の点
この点は、段落【0032】の「27はリフレクタで、熱対策としてコールドミラー付および明るさを向上する目的でマルチミラーリフレクタが用いられる。」という記載に基づくものであり、この点の訂正は、願書に添付された明細書及び図面に記載された事項の範囲でする訂正である。

【3-2】「第1のハウジングのフレームには、前記光源ランプに風を導く導風構造が設けられ」の点
この点は、【0032】の「28はランプソケット、29はランプ取り外し用エジェクタ、30は箱形フレーム25Bの光路方向正面側に設けた導光筒、31は箱形フレーム25Bのシロッコファン22の側の面に設けた導風筒、32は箱形フレーム25A・25Bのケース背面側の面に一体に設けたパネル部である。そのパネル部32はケース背面の開口7より大きくて、ランプハウジングユニット15を開口7からアウタハウジング23に収めると、開口7はランプハウジングユニット15のパネル部32によって覆われる。」及び【0035】の「スリット37から入った外気の一部は、前記導風筒31の案内作用によって光源ランプ26の周囲を正確に流れるのでランプハウジングユニット15は十分冷却される」という記載に基づくものである。
なお、スリット37について、請求人は『図5を見れば,パネル部32は,箱形フレーム25Aの縦板(パネル部32と相まってロック部材34を挟み込む板。)よりも上下に長く,両者を図5通りに固定すると4つあるスリット37のうち下側の2つは箱形フレーム25Aによって閉塞されないことは明らかである。』と主張しているが、図4、図5及び段落【0035】の説明からはスリット37が「光源ランプに風を導く導風構造」となることは明らかではない。しかし、明細書及び図面の記載からみて、前述のとおり、導風筒31が第1のハウジング(ランプハウジングユニット15)に設けられシロッコファンからの風をランプに導く導風構造と認められる。

【3-3】「光源ランプを取り囲むフレームからなる第1のハウジング」及び「該第1のハウジングのフレームを取り囲むように内部に収容し支持可能な構造を有する第2のハウジング」の点
先の訂正拒絶理由では、『「取り囲む」の技術的意味を実質的に包囲することと解釈しても、それを示唆する記載は見あたらない。』と認定したが、これに対して、請求人は『「取り囲む」とは,一般的には,「まわりをかこむ」ことを意味し,「かこむ」とは「ものを中にしてまわりを取り巻く」ことを意味する(甲14の1及び2:広辞苑第5版1948頁及び488頁)。かかる一般的な定義から明らかな通り,ある物を「取り囲む」ために用いられる部材は単一の部材でなければならないということはなく,また水も漏らさぬように覆い尽くす必要もない。また・・・第1のハウジングについては,「高温にあるランプに直接手を触れることなく,第1のハウジングを取り出すことによって,ランプ交換できるので,取り扱いの危険性を少なくできる」という効果(本件明細書段落【0052】)及び「光源ランプを配置した状態において,ハウジングが二重構造となり,外部衝撃から光源ランプを保護する効果が高まる」という効果(本件明細書段落【0053】)をいずれも奏する程度に光源ランプの「まわりをかこむ」ことが必要でありかつそれで十分である。・・・かつ前述の第1のハウジングが奏するべき効果を奏するに必要かつ十分な構造であるので,箱形フレーム25A及び箱形フレーム25は,光源ランプを「取り囲む」ものと認められる。したがって,「光源ランプを取り囲むフレームからなる第1のハウジング」は,箱形フレーム25A及び箱形フレーム25Bとして本件明細書及び図面の図4及び図5に明記されている。また,第2のハウジングについては,明細書の段落【0032】に「該ユニット15を収容支持するアウタハウジング23」との記載,および,段落【00351に「ランプハウジングユニット15をアウタハウジング23に収めると該ユニット15はあたかも二重構造となり」との記載,並びに,図面の図4および図6に対応する記載があり,このアウタハウジング23は,第1のハウジングのフレームを出入れ可能な開□部を除いて,第1のハウジングのフレームを中にしてまわりを取り巻く構造になっている。』と主張している。
そこで、「取り囲む」の技術的意味を検討するに当たって、一般的な「まわりをかこむ」こと、「用いられる部材は単一の部材でなければならないということはなく,また水も漏らさぬように覆い尽くす必要もない」ことを考慮すると、訂正事項における「取り囲む」とは、中の物をほぼ取り巻いている状態であり、全体として本件明細書段落【0052】及び【0053】記載の効果が達成されるものであればよく、それ以上の技術事項を意図する用語ではないと認められる。
してみると、上記点の訂正は、願書に添付された明細書及び図面に記載された事項の範囲でする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、本件の訂正は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の、同法律施行前の特許出願についての訂正についてはなお従前の例による旨の規定が適用されるものであるところ、同規定によって適用される改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び同条第2項の規定に適合する。

【4】独立特許要件の判断
【4-1】訂正後の発明
上記訂正後の請求項1に係る発明は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりの以下のものである。
「光源部からの光に基づき変調された光を投写するプロジェクタにおいて、前記光源部は、コールドミラー付きリフレクターを有する光源ランプと、該光源ランプが支持固定されるとともに前記光源ランプを取り囲むフレームからなる第1のハウジングと、該第1のハウジングのフレームを出入れ可能な開口と該第1のハウジングのフレームを取り囲むように内部に収容し支持可能な構造を有する第2のハウジングとを備え、前記第1のハウジングのフレームには、前記光源ランプに風を導く導風構造が設けられ、前記第2のハウジングは、当該第2のハウジングの開口を当該プロジェクタのケースに設けられた開口に臨ませるように、該ケース内に固定されてなり、前記光源ランプを交換可能とするように、前記光源ランプが支持固定された前記第1のハウジングを、前記第2のハウジング内に収容した状態から、前記第2のハウジングの開口及び前記ケースの開口を介して外部に出せるように構成することを特徴とするプロジェクタ。」(以下、「訂正発明」という。)

【4-2】刊行物の記載
本件の出願前に公知の特開昭53-102032号(以下、「刊行物」という。)の記載事項は以下のとおりである。
1頁右下欄14行〜2頁右上欄5行
「本発明は特に、オーバーヘッドプロジェクターなどの投影ランプを取替える装置に関する。
現在は、オーバーヘッドプロジェクターの投影ランプを取替える場合、多くは作業者が投影器のケースを開き、そのソケットから消費済みランプを取外し、これを新しいランプに取替え、投影器を閉じて使用を続ける技術を使って行なわれる。
この方法は、ランプが安全に取替えるのに充分冷えるまで作業者が待たねばならぬこと、オーストラリアにおける電気安全規則が投影器内の操作、即ちランプの取換等のために内部に近づくためには作業者は工具を使わねばならぬことを強制している。更に、最良の結果を得るために、作業者は新しい電球のそのガラス外皮に彼の皮膚が触れずに組み立てねばならぬことの欠点を持っている。
それで上に概説した現在のランプ交換技術は困難且潜在的に危険である。
本発明の目的は先行技術の前述の欠点を改善することである。
一般的一様式として、本発明は、一端近くに投影ランプ装架装置を置かれた一対の腕を持つ細長い部材を有する装置にあり、前記腕の他端又はその近くに固着装置を置かれ、前記固着装置は、前記ランプを投影器内で作動位置に押圧し、そして消費済ランプを取外すため前記投影器から前記装置を取外すように前記装置を投影器などの装置に固着するようにされ、前記固着装置は、前記装置が前記投影器内に固着された時前記投影器本体の外側に置くようにされた部材を有し、前記部材は前記装置を前記投影器内に挿入、固着し、そして前記装置を前記投影器から取外し引出すため手で作動出来るものである。」
2頁右上欄6行〜左下欄16行
「例として、本発明による装置の一好適形のみ添付図面を参照して次に述べられる。
符号1で示す本装置は一対の離隔された、細長い平行腕15、15Aを有する。
符号3で示す普通の投影器ハウジングは、これにV形溝10を設けられた本体四角形のスリーブ2を設置して修正されており、この目的はあとで述べる。スリーブ2は投影器ハウジング3の内外に滑ることの出来る装置1を受ける形である。
装置1の一端近くにハウジング5があり、ハウジングは、投影器ランプ5Aを、ランプ5Aの電気結合ピン6が受入ランプソケット11内に押圧及びこれから引出すことの出来る形状である。
装置1の他端には、回転可能軸線部材7に結合された回しノブ14がある。又軸線部材7には一対の固着舌8,8Aを設けられた円板9がある。第1図に示すV形溝10の他に、スリーブ2には溝10と反対の下面に別の溝10Aが設けられている。舌8、8Aは夫々溝10、10Aと組合わされる形であり装置1を投影器ハウジング3内の位置でランプ5Aのピン6をソケット11内に係合させている。
ランプ5Aが消費された時、ノブ14は反時計方向に回され固着舌8を溝10から取外させ、それから装置1はランプ5Aの取替えのため投影器ハウジング3から引出すことが出来ることが認められる。
さらに装置の腕15、15Aの間隔は、ランプ5Aから放出される光がその光を使う投影器要素に邪魔されない通路を進むことを可能にしていることも認められる。」
2頁左下欄17行〜右下欄6行
「図面の簡単な説明
第1図は本発明の装置を受入れるよう修正された投影器の斜視図で、この装置が前記投影器の左側に置かれたものを示し、第2図は中に本発明の装置を固定された投影器の一部破断した断面図で該装置は図示のように右側から挿入されている。
1・・・取替装置、2・・・スリーブ、3・・・投影器、5・・・ハウジング、5A・・・ランプ、6・・・ピン、7・・・部材、8、8A・・・舌、9・・・円板、10、10A・・・溝、11・・・ソケット、14・・・ノブ、15、15A・・・腕」
Fig.1、Fig.2
刊行物のFig.1及びFig.2には、取替装置1を投影器3から外し、さらにランプ5Aを取替装置1から外した状態の斜視図、及びランプ5Aを取替装置1に装着し、さらに該取替装置1を投影器3に装着したときの要部の断面が図示さている。また、両図には、取替装置1がその内外に進退可能で、取替装置1がスリーブ2に収容されて投影器3に装着されるとき、取替装置1とランプ5Aがその内部に進入し、ランプ5Aを周囲から取り囲む状態となるスリットを備えた部材が投影器3に設けられていることが図示されている。なお、Fig.1において、内部を図示するため、スリットを備えた4方向から内部を取り囲む部材の手前とスリーブ2側の2面を切り欠いて図示しているものと認められる。
さらに、これら両図によると、前記スリットを備えた部材と、取替装置1のハウジング5に固定されたランプ5Aのピン6が係合するソケット11を固定支持する板状の部材とを、投影器3の底板から離して、発条(緩衝部材)を介して一体に支持している状態が図示されている。

【4-3】対比
(1)引用発明
刊行物において、取替装置1及びスリーブ2はオーバーヘッドプロジェクターの光源部を構成していること、及びこのオーバーヘッドプロジェクターは、使用に際して図示されていない原稿等によって前記光源部からの光が変調されて投射されることによってオーバーヘッドプロジェクターとしての機能を達成することは明らかである。してみると、刊行物には以下の発明が開示されているものと認められる。
「光源部からの光に基づき変調された光を投写するオーバーヘッドプロジェクターにおいて、前記光源部は、投影器ランプ5Aと、投影器ランプ5Aが支持固定されるハウジング5、平行腕15、15Aからなる取替装置1と、該取替装置1のハウジング5、平行腕15、15Aを出入れ可能な開口と該取替装置1に設けられたハウジング5、平行腕15、15Aを収容し支持可能な構造を有するスリーブ2とを備え、
前記スリーブ2は、当該スリーブ2の開口を当該オーバーヘッドプロジェクターの投影器ハウジング3に設けられた開口に臨ませるように当該投影器ハウジング3に固定されてなり、
前記投影器ランプ5Aを交換可能とするように、前記投影器ランプ5Aが支持固定された前記取替装置1を、前記スリーブ2に収容した状態から、前記スリーブ2の開口及び前記投影器ハウジング3の開口を介して、取外し引出すため手で作動出来るように、取替装置1の一対の固着舌8,8Aを設けた円板9がスリーブ2の溝10、10Aと組合わされる取替装置1がスリーブ2の内側を通って収容されたオーバーヘッドプロジェクター。」(以下、「引用発明」という。)

(2)対比
訂正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における、
a:「オーバーヘッドプロジェクター」、
b:「投影器ランプ5A」、
c:「ハウジング5、平行腕15、15A」、
d:「取替装置1」、
e:「スリーブ2」及び
f:「投影器ハウジング3」
は、訂正発明の
a:「プロジェクタ」、
b:「光源ランプ」、
c:「第1のハウジングのフレーム」、
d:「第1のハウジング」、
e:「第2のハウジング」及び
f:「ケース」
に相当する。
ここで、特許明細書及び意見書の記載からみて、訂正発明における、「取り囲む」は、漠然と「ほぼ取り巻いている」という程度の意味である。一方、引用発明のスリーブ2は取替装置1の一部を取り巻いているから、スリーブ2と取替装置1との関係は、一部を「取り囲む」形態といえる。また、引用発明の技術事項d及びeは、内側に何らかの部材を取り付けたり、支持したりする囲い部分であるから、ハウジングとしての機能を備えるものである。

(3)一致点・相違点
よって、両者は
「光源部からの光に基づき変調された光を投写するプロジェクタにおいて、前記光源部は、光源ランプと、フレームからなる第1のハウジングと、該第1のハウジングのフレームを取り囲むように出入れ可能な開口と該第1のハウジングのフレームを収容し支持可能な構造を有する第2のハウジングとを備え、
前記第2のハウジングは、当該第2のハウジングの開口を当該プロジェクタのケースに設けられた開口に臨ませるように、該ケース内に固定されてなり、
前記光源ランプを交換可能とするように、前記光源ランプが支持固定された前記第1のハウジングを、前記第2のハウジングに収容した状態から、前記第2のハウジングの開口及び前記ケースの開口を介して外部に出せるように構成したプロジェクタ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
訂正発明では、第1のハウジングのフレームを第2のハウジングの内部に取り囲むように収容している(従って、第2のハウジングは第1のハウジングと光源ランプを内部に取り囲むように収容できる)のに対して、引用発明では、第1のハウジング(取替装置1)を構成するフレーム(ハウジング5、平行腕15、15A)を第2のハウジング(スリーブ2)の内側を通して収容している点、すなわち第1のハウジングのフレームが第2のハウジングの内側を貫通するように収容されているものの、第2のハウジング(スリーブ2)は第1のハウジングの一部を取り囲むけれども、光源ランプの位置する部分を取り囲む状態ではない点。
相違点2
訂正発明では、光源部ランプがコールドミラー付きリフレクターを有するのに対して、引用発明では、そのような規定がない点。
相違点3
第1のハウジングのフレームは、訂正発明では、光源ランプに風を導く導風構造が設けられているのに対して、引用発明では、そのような規定がない点。

【4-4】判断
相違点1
引用発明において、第1のハウジング(取替装置1)の脱着ができるようにFig.1において符号4で示される開口が第2のハウジング(スリーブ2)に存在し、かつ、第2のハウジング(スリーブ2)の本体四角形をなす4つの面を適宜延長してもその延長部分が第1のハウジングの脱着の妨げとならないことは明らかである。また、刊行物には、第1のハウジングが装着された状態で、ランプ5Aを周囲から取り囲む状態となるスリットを備えた部材が投影器3に設けられ、この部材が緩衝部材を介して投影器3のケースに固定されている。ここで、一般にケースに何らかの部材を収容するに際して、当該部材を取り囲む状態となる部材(ハウジング)を介して収容することにより保護機能が向上し、また、緩衝部材により保護機能が向上することは当業者が経験上熟知するところである。
してみると、刊行物に記載された引用発明のスリットを備えた部材(ハウジング)や、緩衝部材は光源ランプを保護していることは明らかであり、刊行物は、ハウジングや緩衝部材などによって、装着状態の光源ランプの保護が必要であることを示しているといえる。また、引用発明は皮膚が触れてはいけないほどのデリケートな光源ランプを収容するのであるから、投影器の使用可能状態においてもデリケートな光源ランプを保護する機能が高くなければならないことも明らかである。この様な技術的要請の下で、引用発明の投影器3においては、第2のハウジング(スリーブ2)の本体四角形をなす4つの面は適宜延長可能な構造であり、延長部分の形状は第1のハウジングの着脱に影響しない限り任意であるから、引用発明の要請である光源ランプ保護機能向上のために、引用発明の第1のハウジングの位置決めが可能な状態を維持しつつ、前記第2のハウジングの4つの面をFig.1のソケット11の位置までの間で適宜延長するか、またはスリットを備えた部材の位置まで延長して当該部材と一体のハウジングとすること、すなわち、第1のハウジングのフレームを第2のハウジングの内部に取り囲むように収容して、第2のハウジングが第1のハウジングと光源ランプを内部に取り囲むように収容することは、刊行物に接した当業者が容易に着想できることである。なお、この場合、光源ランプからの利用する光の通路等を除いて延長部分を設けることは、本件訂正発明を実施する場合と同様に、当業者が当然とるべき措置である。

相違点2
プロジェクタにおいて光源部にコールドミラー付きリフレクターを用いることは、引用例を示すまでもなく極めて周知であり、引用発明の光源ランプと共にコールドミラー付きリフレクターを用いることは当業者が容易に想到できる事項である。

相違点3
プロジェクタの光源部が発熱することは当業者にとって自明であり、何らかの対策が必要であることは熟知している。従って、引用発明に接した当業者にとって、引用発明の第1のハウジングのフレーム(ハウジング5、平行腕15、15A)が、光源ランプ5Aの上下方向に開放されており、この開放された部分が、ランプの発熱による対流を促進させ、Fig.1に図示されたファンによる空気の流れと相俟って、訂正発明の実施例で具体化した導風筒31のように気流が通過する役割を担い導風の機能も果たす構造であることが明らかである。従って、相違点3は両者の実質的な相違点とは認められない。

よって、訂正発明は、引用発明と周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、『ハウジングとは,「構造物や機械装置などを覆ったり,保護したりする目的の囲い部分の総称」をいう(甲15:機械用語大辞典)』(意見書7頁9〜11行)、『引用発明におけるハウジング5,平行腕15,15Aについては,引用文献の図1から明らかなように,光源ランプ5Aはハウジング5上に置かれているだけであり,支持固定されるものではない。』(意見書7頁20〜22行)ことを根拠として、引用発明の『ハウジング5,平行腕15,15Aは,本件特許発明における第1のハウジングのフレームではなく,したがってまた,取替装置1は訂正発明における第1のハウジングではないから,この点において本件拒絶理由は誤っている。』(意見書8頁15〜18行)と主張しているので、この点について付言する。
引用発明を記載した刊行物には「装置1の一端近くにハウジング5があり,ハウジングは,投影器ランプ5Aを,ランプ5Aの電気結合ピン6が受入ランプソケット11内に押圧及びこれから引き出すことの出来る形状である」と記載され、引用発明における「ハウジング5,平行腕15,15A」は、少なくともランプの電気結合ピン6を受入ランプソケット11内に押圧及びこれから引き出すことができるようにランプをそこに固定するものであることは明らかである。
また、刊行物のFig.2を参酌すると、断面において、ランプの一部が取替装置1の平行腕15,15Aの上下端から上下に突出したように図示されているので、取替装置1内にランプ5Aを厳密に取り囲むとはいえないとしても、前述したように引用発明は皮膚が触れてはいけないほどのデリケートな光源ランプを取り扱うのであり、ランプ交換のために取り出された状態で、安易に人の手が触れないようにすべきことは刊行物の記載から明らかであり、そのため取替装置1の平行腕15,15Aの形状をランプに安易に人の手が触れない程度に変形することは、刊行物に図示されていなくとも実際の投影装置を製品として設計する当業者が実機設計の際、当然に考慮する事項である。
したがって、取替装置1の「ハウジング5,平行腕15,15A」(「第1のハウジングのフレーム」に相当)の形状をランプを取り囲む形状とすること、即ち構造物や機械装置などを覆ったり保護したりする形状とすることは、当業者にとって引用発明から自明の事項である。そして、この点は訂正発明と引用発明との技術事項としての実質的な相違とはいえないので前記請求人の主張は採用できない。

【5】むすび
以上のとおりであるから、本件の訂正の審判は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-06-12 
結審通知日 2003-06-17 
審決日 2003-07-03 
出願番号 特願平7-69681
審決分類 P 1 41・ 856- Z (G02F)
P 1 41・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 宏之宮本 昭彦  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 畑井 順一
町田 光信
登録日 1998-05-29 
登録番号 特許第2785737号(P2785737)
発明の名称 プロジェクタ  
代理人 松本 雅利  
代理人 池田 博毅  
代理人 生田 哲郎  
代理人 高橋 淳  

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