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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C02F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C02F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C02F
管理番号 1082289
審判番号 不服2001-2480  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-01-11 
確定日 2003-08-18 
事件の表示 平成9年特許願第343544号「液中内物質分離のためのノズル型電場ユニット」拒絶査定に対する審判事件[平成11年5月25日出願公開、特開平11-138174]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は平成9年11月10日に出願されたものであって、平成12年8月8日提出の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3には次のとおりの記載がある。
【請求項1】電極として機能する同軸上に固定された径が異なる2種類のステンレスパイプは、小さい径の原水注水用ステンレスパイプと大きい径の衝突用ステンレスパイプとなり、注水用ステンレスパイプに空けられた細孔以外から液体が流出しない止水処理を施すことで、注水用ステンレスパイプに入った原水は注水用ステンレスパイプ細孔から噴出し、噴出した液体は衝突用ステンレスパイプに当たると同時に帯電し、ノズル状となって出水することを特長とするノズル型電場ユニット。
【請求項2】電極として機能する同軸上に固定された径が異なる2種類のステンレスパイプは、大きい径の原水注水用ステンレスパイプと小さい径の噴出用ステンレスパイプとなり、噴出用ステンレスパイプに空けられた細孔以外から液体が流出しない止水処理を施すことで、注水用ステンレスパイプに入った原水は注水用ステンレスパイプと噴出用ステンレスパイプ間を満たしここで帯電され、さらに噴出用ステンレスパイプに空けられた細孔から帯電された原水が流入し噴出用ステンレスパイプの先端細孔から噴出し、噴出した液体はステンレス等の壁に衝突し、ノズル状となって出水することを特長とするノズル型電場ユニット。
【請求項3】一対の電極とノズル噴射口を組み合わせ、電極を通過した原水をノズル噴射口から噴出させることを特長とするノズル型電場ユニット。

II.拒絶の理由
II-1.当審の平成14年12月25日付け拒絶理由
《理由-1》
本願明細書の特許請求の範囲請求項1の記載が平成12年8月8日提出の手続補正書により補正され、これにより、同請求項1における、ステンレスパイプの一つを「衝突用ステンレスパイプ」と補正し、また、噴出した液体が「衝突用ステンレスパイプに当たると同時に帯電する」旨、付加したことになる。
しかし、補正前の本願明細書及び図面には、上記付加した事項は記載されておらず、また、それが、補正前の明細書又は図面の記載から一義的に導き出すことができるものでもない。
してみれば、当該補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定を満たしていない。
《理由-2》
請求項1及び2には、液体が帯電する旨の記載が見られるが、ここでは液体(不純物を含む水)は高い導電性を示し、そのような液体が帯電することは、通常考えられないものである。したがって、請求項1及び2の当該記載は、発明を不明瞭にするものである。
したがって、本願出願は、明細書の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
II-2.原査定の理由の概要
《理由-3》
本願請求項3に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である特開平3-258391号公報(以下、「引用例」という)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないというものである。

III.当審の判断
III-1.理由-1について
平成12年8月8日提出の手続補正書による補正は、次の事項を含むものである。
(1)本願請求項1における、径が異なる2種類のステンレスパイプにつき、大きい径のステンレスパイプを、「衝突用」ステンレスパイプと補正する。
(2)本願請求項1において、原水はステンレスパイプ細孔から噴出し、「噴出した液体は衝突用ステンレスパイプに当たる」と同時に帯電することを付加する。
(以下、当該(1)及び(2)を、それぞれ、「本件補正事項1」及び「本件補正事項2」という)
本件補正事項1及び2が、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、必要に応じ、「当初明細書」という)に記載された事項の範囲内であるか否かにつき検討する。
本件補正事項1及び2について、当初明細書の記載において、それらと関係があると認められる記載を摘記すると、以下のとおりとなる。
(a)「この状態で、ノズル状となって勢いよく外部に噴出し、ステンレス等の壁面に衝突する。」(段落0011)
(b)「図1、図2が請求項1、請求項2の実施例である。図1においては、原液はステンレスパイプ(小)に入り、その細孔からステンレスパイプ(大)との間の電場空間に押し出されさらにステンレスパイプ(大)の細孔から噴出し、ステンレス等の壁に衝突する。大、小のステンレスパイプは電極となっている。」(段落0017)
(c)「図2においては、原液はステンレスパイプ(大)に入り、その細孔からステンレスパイプ(小)との間の電場空間に押し出されさらにステンレスパイプ(小)の先端ノズル孔から噴出し、ステンレス等の壁に衝突する。大、小のステンレスパイプは電極となっている。」(段落0018)
(d)図1及び図2の記載

これらの記載によれば、本件補正事項1及び2は、当初明細書に記載されていない。
そして、当初明細書には、上記(a)、(b)及び(d)により、「径の異なる2種類のステンレスパイプからなるユニットにおいては、原液(原水)は、径の小さいステンレスパイプの細孔から、径の小さいステンレスパイプと径の大きいステンレスパイプの間の電場空間に押し出されること、また、原液の噴出は、ステンレスパイプとは別異の部材であるステンレス壁に向かってなされるものであり、その噴出した原液の衝突先は同ステンレス壁等であること」が、実質上、記載されているだけであり、そこでの、径の小さいステンレスパイプと径の大きいステンレスパイプの間の電場空間に押し出される原液は、径の大きいステンレスパイプに衝突するといえる程度の強い圧力で押し出されることが示されず、更には、原液が噴出するといえる程度の強い圧力で径の小さいステンレスパイプの細孔から押し出されることが示されない。
そうすると、本願請求項1のノズル型電場ユニットにおける、上記補正事項1の「衝突用」ステンレスパイプ、及び、上記補正事項2の「噴出した液体は衝突用ステンレスパイプに当たる」との事項は、当初明細書の記載から自明なこととして導き出すことができない

したがって、上記本件訂正事項1及び2は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたとすることはできない。
よって、本願の願書に添付した明細書又は図面についてした平成12年8月8日提出の手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

III-2.理由-2について
上記請求項1及び2には、電極として機能する2種類のステンレスパイプを具備し、当該2種類のステンレスパイプ間には原水(ないしは、液体、以下、同じ)が存在する旨記載される。そして、両ステンレスパイプが電極として機能するのであるからそれらパイプ間には電気が印加されることは明らかであり、また、ここでの原水とは、典型的には、不純物を含む水を指すものであり、このことは明細書の記載からみて明白なことである。この場合、不純物を含む水は、通常、電気導電性を示すものである。
そうすると、本願請求項1及び2に記載の発明において、その両ステンレスパイプ間に電気が印加されるときには、当然のこととして、電気が原水を通電することになるものであり、その原水が帯電することは通常あり得ないものである。
ところが、本願請求項1及び2においては、ステンレスパイプ間に存在するところの原水が帯電すると規定されるものである。
してみれば、本願請求項1及び2に記載の発明では、電極として機能する2種類のステンレスパイプの外に原水を帯電させる電気的手段が、別途、存在するのか、又は、原水を帯電させるための絶縁手段がステンレスパイプに、別途、存在するのか、或いは、そもそも、原水が帯電するものではなく原水を帯電させる手段を必要としないのか、更には、その他の手段が存在するのか、そのいずれに該当するのか不明といわざるを得ない。
したがって、本願請求項1及び2の記載は、原水が帯電するとの特定事項を具備することにより、そこで規定される発明を不明瞭にするものである。
よって、本願出願は、明細書の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

III-3.理由-3について
III-3-1.本願請求項3に係る発明
本願請求項3に係る発明(以下、必要に応じ、「本願発明3」という)は、本願明細書の特許請求の範囲第3項に記載される次のとおりのものである。

【請求項3】一対の電極とノズル噴射口を組み合わせ、電極を通過した原水をノズル噴射口から噴出させることを特長とするノズル型電場ユニット。

III-3-2.引用例の記載
引用例(特開平3-258391号公報)には、以下のことが記載されている。
(A-1)「外筒1Aと誘電体1Bに被覆された中心電極1Cとの間に高電圧をかける電源2をもち外筒1Aと電極1Cとの間を通過する被処理水中の金属イオンを電極に吸引し、機壁に付着しがたい微粉に変える静電気水質処理機1と、処理された水を衝撃飛散させ水分子並びに水中に残存する水素ガス、炭酸ガス等の気体を分離するためのノズルを具備した抜気筒3と、抜気筒3の一端に連結された抜気ブロアー4と、切換バルブにより連結された送水管5と、抜気筒3の他端に接続された配水管6とよりなるものにおいて、抜気筒3はその外筒7内に静電気水質処理機1よりの処理水の導入管3Aの先端に連結した多数の孔をあけたノズル9と、ノズル9の先端にフード10Aに支持された多孔板10と、外筒の一端に設けたインペラー8と、その他端に気液分離膜18に仕切られたエアチャンバー20を介して設けた真空ポンプ4とより成り、静電気水質処理機1で処理された水を低真空状態にある抜気筒3内でノズル及び多孔板を介して衝撃、飛散させて曝気し水分子並びに水中に残存する水素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、塩素ガス等の気体を分離し更に気液分離膜で気液分離して水質処理した水を排出するよう構成した抜気装置付静電気水質処理機構。」(特許請求の範囲)
(A-2)「本発明は直流高電圧をかけた電極間に設けられた静電場水路を通過する被処理水中の金属イオンを電極に吸引し、機壁に付着し難い微粉に変える静電気水質処理機と、処理された水を真空室中に噴出し機壁に衝突飛散させ水分子並びに水中に残存する水素ガス、炭酸ガス等の気体を分離するためのノズルを具備した抜気筒と、抜気筒の一端に連結された真空ポンプと、切換バルブにより連結された送水管と、抜気筒の他端に接続された配水管とよりなるものにおいて、抜気筒はその外筒内に静電気水質処理機よりの処理水の導入管の先端に連結した多数の孔をあけたノズルと、ノズルの先端にフードに支持された多孔板と、外筒の一端に設けたインペラーと、その他端に気液分離膜に仕切られたエヤチャンバーを介して設けた真空ポンプとより成り、静電気水質処理機で処理された水を低真空状態にある抜気筒内でノズル及び多孔板を介して衝突、飛散させて曝気し水分子並びに水中に残存する水素ガス、酸素ガス炭酸ガス、塩素ガス等の気体を分離し更に気液分離膜で気液分離して水質処理した水を排出するよう構成した抜気装置付静電気水質処理機構である。」(第2頁右上欄末行〜右下欄第1行)
(A-3)「図面について本発明を詳細に説明すると、1は静電気水質処理機で、この静電気水質処理機1は外筒1Aと、誘電体1Bに被覆された中心電極1Cとよりなり、中心電極1Cと外筒1Aとの間に高電圧(DC5000〜8000V×1mA)をかけ、水中に含まれる金属イオン、ガス等を電離するよう構成する。2は静電気水質処理機1の中心電極1Cに導電接続した電源であり、外筒1Aを接地して、外筒1Aと中心電極1Cとの間に高電圧をかけ水中に含まれる金属イオン、ガス等を電離するためのものである。」(第3頁右上欄第3〜13行)
(A-4)「3は抜気筒で、この抜気筒3は配管3Aにより静電気水質処理機1の排水側に接続され、弁13により開閉制御される。」(第3頁右上欄第13〜16行)
(A-5)「排気筒3の中に挿入された配管3Aの先端にはノズル9が設けられ、その先端に多孔板10が支持フード10Aにより支持してあり、ノズル9は例えば孔あきスクリュー状をなして水を多数の噴霧として多孔板10に衝突させて、飛散させ、曝気することにより水中に含まれ金属イオン及びガスを分離するよう構成したものである。」(第3頁左下欄第4〜10行)
(A-5)「第3図はノズルの詳細を示すもので、導入管3Aより流入した水はノズル9で固定された孔明きらせん板9Aにそって回転運動をしながら噴出する水と、らせん板9Aの孔から噴出する水を多孔板10に衝突、飛散を行わしめ、第1次ガス体と水分子との遊離をさせる。」(第4頁左上欄第2〜7行)

III-3-3.対比・判断
引用例には、引用例の前記(A-1)により、
「外筒1Aと誘電体1Bに被覆された中心電極1Cとの間に高電圧をかける電源2をもち外筒1Aと電極1Cとの間を通過する被処理水中の金属イオンを電極に吸引し、機壁に付着しがたい微粉に変える静電気水質処理機1と、ノズルを具備した抜気筒3とを有する、抜気装置付静電気水質処理機構」が記載されており、該抜気筒3のノズルは、前記(A-2)により、「電気水質処理機で処理された水を真空室中に噴出し機壁に衝突飛散させ水分子並びに水中に残存する水素ガス、炭酸ガス等の気体を分離するため」のものであること、また、該抜気筒3のノズルには、第2図及び第3図によれば、その先端に開口が設けられることが実質上記載される。
そして、上記記載を整理すると、引用例には、
「外筒1Aと誘電体1Bに被覆された中心電極1Cとの間に高電圧をかける電源2をもち、被処理水を外筒1Aと電極1Cとの間を通過させる静電気水質処理機1と、静電気水質処理機1で処理された水を噴出し機壁に衝撃飛散させるノズルであって、その先端に開口が設けられたノズルを具備した抜気筒3とからなる、抜気装置付静電気水質処理機構」である発明が記載されるものである。
そこで、本願発明3と引用例に記載される発明とを対比する。
引用例に記載の抜気装置付静電気水質処理機構では、外筒1Aと被覆された中心電極1Cとの複数の電極を有し、また、その電極間に高電圧をかけるものであるので、引用例に記載のものは、本願発明3のように、電極を、一対、具備するといえる。
次いで、引用例に記載の抜気装置付静電気水質処理機構では、ノズルを具備するものであり、そして、当該ノズルは、処理された水を飛散させるように噴出するものであり、また、その先端には開口部が設けられており、したがって、引用例に記載のものでは、そのノズルに、本願発明3のように、ノズル噴射口を具備するといえる。
また、引用例に記載の抜気装置付静電気水質処理機構では、上記したようにノズルにはノズル噴射口を具備し、静電気水質処理機1で処理された水を、そのノズルにより噴出させるのであるから、本願発明3と同じように、電極を通過した水をノズル噴射口から噴出させるものであるといえる。
更に、引用例に記載の抜気装置付静電気水質処理機構では、上記したように一対の電極とノズル噴出口とを具備するものであり、そして、上記したようにノズル噴出口を保有するところのノズルを具備し、かつ、これらの各部材は、当該抜気装置付静電気水質処理機構に組み入れられているのであるから、引用例に記載のものは、一対の電極とノズル噴射口を組み合わせて、ノズル型ユニットを形成しているといえる。
加えて、引用例に記載の抜気装置付静電気水質処理機構では、その一対の電極間に高電圧をかけるので、上記するノズル型ユニットは、ノズル型電場ユニットであるといえる。
よって、両者は、「一対の電極とノズル噴射口を組み合わせ、電極を通過した水をノズル噴射口から噴出させる、ノズル型電場ユニット」である点で共通する。
一方、噴出させる水が、本願発明3では、「原水」であるとされるのに対し、引用例に記載のものでは、被処理水と示され、原水とは明示されない点で相違する。
以下、上記相違点につき、検討する。
本願明細書では、原水につき、特段、定義するところはなく、したがって、本願発明3における原水とは、処理前の水という程度の意味で用いられているものと解される。
そうすると、引用例に記載される発明において、噴出される前の水は、原水ということができるものである。
結局、本願発明3が噴出させる水を原水とすることは、実質上の相違点となりえない。
したがって、本願発明3は、引用例に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当する。

IV.むすび
本願の願書に添付した明細書又は図面についてした平成12年8月8日提出の手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
本願の特許出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願請求項3に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当する。
したがって、本願特許出願は特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-05-19 
結審通知日 2003-05-27 
審決日 2003-06-09 
出願番号 特願平9-343544
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C02F)
P 1 8・ 113- WZ (C02F)
P 1 8・ 55- WZ (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種村 慈樹斎藤 克也  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 西村 和美
米田 健志
発明の名称 液中内物質分離のためのノズル型電場ユニット  

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