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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1082443
審判番号 不服2002-19116  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-02 
確定日 2003-08-21 
事件の表示 平成 9年特許願第307515号「入力業務支援システム」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 5月28日出願公開、特開平11-143973]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成9年11月10日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年4月14日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「作業者がキー入力を行なうための複数の入力作業用コンピュータと、前記入力作業用コンピュータを介して行なわれる前記作業者のキー入力作業の管理・統括を行なう入力管理センター用コンピュータとがネットワーク接続された入力業務支援システムであって、
前記入力管理センター用コンピュータは、前記作業者の作業の進捗状況を管理し、
複数の記載欄より構成される書類の画像を取り込んでディジタル化し、画像データとする画像入力手段と、
前記書類の記載欄構成用紙を前記画像入力手段に供給したときに、前記記載欄よりも大きめの領域を認識する領域認識手段と、
前記画像データを前記領域ごとに分割して前記記載欄数の分割画像データとする画像分割手段と、
前記分割画像データ毎に、どの書類のどの領域であるかを示す識別情報を付加する識別情報付加手段と、
前記識別情報が付加された前記分割画像データを記憶する記憶手段と、
データ入力を委託された異なる作業者の前記入力作業用コンピュータのそれぞれに、全体を見て分かる機密ないしはプライバシー情報を相互に関連付けることができない状態で、特定の記載欄の前記分割画像データの圧縮データとその分割画像データと対応する前記識別情報とを複数まとめて送信すると共に、前記入力作業用コンピュータからのキー入力された文字データとその文字データに対応する前記識別情報とを受信する通信手段と、
前記入力作業用コンピュータから送られてきたキー入力された文字データと前記識別情報とを用いて前記書類に記載された情報を復元する復元手段と、を備え、
前記入力作業用コンピュータは、前記作業者の自宅にそれぞれ設置され、
前記入力管理センター用コンピュータから送られてきた前記圧縮データを伸長し、前記書類の特定の記載欄の前記分割画像データに対応する領域の画像及び文字入力画面を表示する表示手段と、
前記画像及び文字入力画面を見ながらキー入力作業を行なうためのキーボードと、
キー入力した文字データとその文字データに対応する前記識別情報とを前記入力管理センター用コンピュータに送信する手段と、を備える
ことを特徴とする入力業務支援システム。」にあると認める。

2.引用例に記載の発明
これに対して、当審における、平成15年2月3日付けで通知した拒絶の理由に引用された、特開平8-202812号公報(平成8年8月9日出願公開、以下「引用例1」という。)には次の事項が記載されている。
1)「【産業上の利用分野】本発明は、イメージ形式のデータを文字認識し、それを対応するコード形式のデータに変換して入力するデータ入力システムにおいて、イメージ形式のデータを文字認識してコード形式のデータに変換する際、認識不能の文字を入力するシステムに係り、特に機密を要する個人データを入力する場合に好適なデータ入力システムに関する。」(段落番号【0001】。)
2)「【作用】本発明においては、データの修正操作者が、データ入力装置の表示画面に表示されたイメージ形式データを見て、自動認識されなかった文字をキー入力する時、そこに表示されるイメージ形式データは、データ項目単位で分割されているため一人分のデータの一部分(1データ項目)、例えば、「氏名」のみ、「住所」のみ、しか表示されず、同一人の他の修正データ部分は、同様に分割されて、他の処理装置で分散処理されるようにしたため、データの機密、あるいはプライバシーが保たれる。また、認識できなかったイメージ形式データに対するコード形式データの候補が各処理装置に送られるため、修正作業が容易になる。さらに、各処理装置にデータ項目単位に分割された認識不能のイメージ形式データを分配するにあたり、処理装置毎の稼働状態に応じてデータを分配するため、各処理装置の稼働効率が向上し、効率的なキー入力ができる。」(同【0005】。)
3)「【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を実行するためのブロック構成図である。同図において、1は機密性を有する個人データ(複数のデータ項目からなる)などが記入されている原票、2は入力された原票1に記入されているデータを読み取るための読取り装置、3は読取り結果、4は修正制御装置、5は通信装置(交換機、ネットワークなどを含む)、6はクライアント(またはクライアントが保有する端末装置、特許請求の範囲中では一般的に処理装置と記す)、7は完成データを示している。本ブロック図における処理の概略は、まず、原票1に記入されているデータを原票読取り装置2(例えば、OCR)を用いて読み取って読取り結果3を得る。修正制御装置4は、原票読取り装置2において文字認識が不可能なデータ項目があった場合にはそのデータ項目を通信装置5を介して複数のクライアント6に割り振って修正入力させ、その修正されたデータ項目を再び通信装置5を介して受信し、読取り結果3と修正されたデータ項目を合成して完成データを作成するものである。」(同【0006】。)
4)「図2は原票読取り装置2の各処理部を説明するための図である。同図に示すように、原票読取り装置2は、読み込んだレコード(原票)ごとに連番を付加する連番付加処理部11と、原票のイメージを認識(項目辞書を利用)しコードデータに落す自動認識処理部12と、読取り可能・不可能データを分類する読取りデータ分類処理部13と、項目を識別するための識別子を付加する項目識別子付加処理部14と、データを振り分けるデータ振り分け処理部15とからなっている(図2参照)。次に、上記各処理部11〜15をさらに詳細に説明する。連番付加処理部11は、1レコード(1原票)を読み込む都度、レコード識別子としての連番を付加していく処理部である。本実施例では、機密保護を徹底するために、後に説明するように修正制御装置において、読取りができなかったデータをデータ項目ごとに分割し別々にキー入力する仕組みを採用している。そこで、キー入力した各データ項目を再び元のレコードに戻すために、各データ項目が同一レコード(同一原票)に属するか否かを識別しておく必要がある。本処理部はそのための処理部である。」(同【0007】。)
5)「自動認識処理部12は、読み込んだ原票イメージをOCRなどで自動認識してコードデータに変換するものであるが、自動認識を迅速かつ正確に行ない、読取り率を向上させるために、原票のパターンを登録しておき、同一パターンの原票の項目位置や罫線の位置を識別して文字コードを判別する。また、業務ごとの専門用語、慣用用語を辞書(項目辞書)として内蔵しておき、読取り不能文字が発生した場合、この辞書を参照することにより、読取り精度を向上させることができる(後述するように、辞書を参照して候補となるデータを読取り不能なイメージ形式データとともに修正入力するための複数の処理装置に分配することも可能である)。読取りデータ分類処理部13は、OCRなどによる自動認識の結果、1レコード(1原票)全てのデータ項目が読み取れたレコード(原票)と、1つでも読取り認識ができなかったデータ項目のあるレコード(原票)に分類し、分類コードを付加する処理部である。項目識別子付加処理部14は、読取りデータ分類処理部13において1つでも読取りができなかったデータ項目のあるレコードに関して、後の工程(修正制御装置4における工程)で、同一のデータ項目ごとにイメージファイルを作成するために、データ項目の識別子を付加する処理部である。」(同【0008】。)
6)「データ振り分け処理部15は、読取りデータ分類処理部13において分類した結果により、1レコード内の全てのデータ項目が読取り可能となったレコードは、レコード単位にコードデータファイルとしてファイリングする。1レコード内に読取り可能データ項目と読取り不可のデータ項目の両方があるレコードに関しては、読取り可能データ項目にはレコードの連番を付して別のコードデータファイルにファイリングする。そして、読取り不可のデータ項目はレコードの連番を付した後、項目識別子付加処理部14で付加したデータ項目分類コードに従って、同一データ項目ごとにそれぞれのイメージデータファイルにファイリングするための処理部である。図4に、上述したデータ振り分け処理部15における、データを振り分け、ファイリングの概念図を示す。原票1を読取り、全項目が読取りできたレコード101、102のコードデータをレコード(原票)単位で読取り可ファイル103に格納する。レコード内に1個でも読取り不能の項目があるレコード201、202に対しては、読取り可の項目203、204は項目単位にそのコードデータを読取り可ファイル205に格納する。読取り不能な項目に対しては、例えば、氏名項目206,207、住所項目208,209などの項目別に分けて項目単位でそのイメージデータ自体を別個の読取り不能ファイル210、211に格納する。以上の各処理部により原票読取り装置2における入力原票の読み込み、データの振り分け処理などが行われる。」(同【0009】。)
7)「図3は、読取り未完(認識不可能)データの修正入力のための修正制御装置4の各処理部を説明するための図である。同図に示すように、修正制御装置4は、読取り未完(不能)データをデータ項目ごとに振り分け、別個のファイルを作成するファイル作成処理部21と、データ項目ごとの別個のファイルをクライアントに割り当てるクライアント割当処理部22と、修正結果を集信する修正ファイル集信処理部23と、読取りができなかったデータ項目を持つレコードを再現する一次マージ処理部24と、全レコードをマージし、入力を完成する二次マージ処理部25とからなっている(図3参照)。」(同【0010】。)
8)「次に、上記各処理部21〜25をさらに詳細に説明する。ファイル作成処理部21は、原票読取り装置2における項目識別子付加処理部14で付加したデータ項目識別子によって読取り未完(不能)データをデータ項目ごとに分類し、別個のファイルに振り分ける処理部である。クライアント割当処理部22は、各ファイルを通信装置5(交換機、ネットワークなど)を介して遠隔地のクライアントまたはLANに接続されたクライアント6(キーパンチ入力者)に割り当てる処理部である。具体的には、例えば図5に示したように、クライアント状態判定処理部305によってクライアント6からの待機情報(クライアントがビジー状態か待機状態にあるのかの情報、または稼働率がどの程度かなどの稼働率情報、入力作業量状態など)を受信しその状態を判定することにより、データ項目別に分割した読取り不能イメージデータファイルを該当のクライアントに待機状態(または稼働率の低い状態、入力作業量が少ない状態)にあるクライアント6に順次配信する。なお、自動認識処理部12のメモリに格納された業務別の当該業務で特有に使用される語を辞書を用いて、前記イメージ形式データが認識できないと判断されたとき、前記メモリ内辞書に基づいて候補となる語を検索し、前記データ項目単位に分割された認識不能のイメージ形式データと共に前記検索された候補データも合わせて前記複数のクライアントへ分配するようにすれば、各クライアントは分配された候補データを利用することによって正しい修正データを容易に入力することができる。」(同【0011】。)
9)「修正ファイル集信処理部23は、各クライアント6によって修正された結果を集信する処理部である。具体的には、例えば図5に示したように、クライアント状態判定装置305により、クライアント6からキーパンチ入力完了メッセージを受信すると、キーパンチデータ受信準備に入り、各クライアント6からのキーパンチデータを受信し、入力完了データファイル307〜309を作成する。一次マージ処理部24は、一部読取りが可となったデータファイル205とクライアント6によって修正された結果をマージする処理部である。具体的には、例えば図5に示したように、クライアントによって修正された受信ファイルのデータ項目識別子をチェック(306)し、1レコード内の全てのデータ項目がキーパンチ完了した場合、該入力完了データファイル307〜309と原票読取り装置2におけるデータ振り分け処理部15において作成した一部読取りが可となったデータファイル205のデータとをマージ(一次マージ310)し、読取り不可のデータ項目を持つ全レコードを復元する。二次マージ処理部25は、一次マージ処理部24において復元したファイルと原票読取り装置2におけるデータ振り分け処理部15において作成した読取り可レコードファイルのレコードをマージ(二次マージ)し、最終完了データを作成するための処理部である。以上、原票読取り装置における処理部11〜15および修正制御装置4における処理部21〜25により入力原票の自動認識によるコードデータの自動作成、及びデータ項目分割による機密漏洩を防ぐキーパンチ入力により、迅速且つ安全なデータ入力が実現する。」(同【0012】。)
10)「【発明の効果】本発明によると、原票の読取り不可のデータ項目を手入力する際に、データ項目(氏名、年齢、住所、・・・)ごとに分割してそれぞれ別個のクライアントによって行うようにしため、クライアント(キーパンチ入力者)が入力原票全体を見ることがなくなり、公開すべきではない個人データなど機密情報の漏洩が防止できるという効果がある。」(同【0013】。)
上記記載1)から引用例1には、データ入力システムについて記載されており、上記記載3)から、該データ入力システムは複数のクライアント、ネットワークを含む通信装置、原票読み取り装置、修正制御装置を有し、修正制御装置は通信装置(ネットワーク)を介して、修正入力するための複数のクライアントに接続されており、上記記載2)から前記複数のクライアントは修正操作者がキー入力を行うためのものである。
上記記載8)及び図1と図5の関係から、修正制御装置はクライアント割り当て処理部を有し、該クライアント割り当て処理部は、クライアント6からの待機情報(クライアントがビジー状態か待機状態にあるのかの情報、または稼働率がどの程度かなどの稼働率情報、入力作業量状態など)を受信しその状態を判定することにより、データ項目別に分割した読取り不能イメージデータファイルを該当のクライアントに待機状態(または稼働率の低い状態、入力作業量が少ない状態)にあるクライアント6に順次配信している。したがって修正制御装置はクライアントの入力作業量状態を判定している。
上記記載5)で、自動認識処理部12は、読み込んだ原票イメージをOCRなどで自動認識しているので、原票読取り装置は自動認識の前段階として原票を読み込んで原票イメージとする手段を当然有しており、また、原票のパターンを登録しておき、同一パターンの原票の項目位置や罫線の位置を識別して文字コードを判別するのだから、項目位置や罫線の位置を識別するための原票のパターンを登録する手段を当然有している。また、読取りができなかったデータ項目のあるレコードに関しては、後の工程で同一のデータ項目毎にイメージファイルを作成しているのであるから、自動認識処理部で認識できなかったデータ項目はデータ項目を単位としたイメージデータとなっているものと解される。また、上記記載2)から、原票は例えば氏名、住所といった複数のデータ項目から構成されている。
上記記載4)から原票読取り装置は連番付加処理部と項目識別子付加処理部を有している。
上記記載7)から、修正処理部は、データ項目ごとの別個のファイルをクライアントに割り当てるクライアント割当処理部と、修正結果を集信する修正ファイル集信処理部23と、読取りができなかったデータ項目を持つレコードを再現する一次マージ処理部24を有しており、上記記載10)から、データ項目ごとに分割することにより、入力原票全体を見ることがなくなり、公開すべきではない個人データなど機密情報の漏洩が防止できる状態となることは明らかである。
上記記載8)から、クライアントは遠隔地に設置されており、クライアント割り当て処理部は各ファイルをクライアントに割り当てる処理をしているのだから、クライアントがファイルを受信しているのは明らかであり、クライアントが受信したファイルは、上記記載2)から表示画面に表示されることもまた明らかである。そして上記記載2)から修正操作者はイメージデータを見ながらキー入力をしているのだから、キー入力の手段として最も普及しているキーボードを備えていることは明らかである。
上記記載9)では、修正制御装置の修正ファイル集信処理部は、各クライアント6からのキーパンチデータを受信し、入力完了データファイル307〜309を作成しているのだから、クライアントは、前記受信に対応するキーパンチデータを送信する手段を当然有している。また、一次マージ処理部24は、クライアントによって修正された受信ファイルのデータ項目識別子をチェックしているのだから、受信ファイルにデータ項目識別子が含まれていると解するのが最も自然である。
従って引用例1には、
「修正操作者がキー入力を行なうための複数のクライアント、原票読取り装置、前記クライアントにデータ項目の割り振りをし、修正されたデータ項目の合成を行う修正制御装置とを有し、前記複数のクライアントと前記修正制御装置がネットワークを介して接続されたデータ入力装置であって、
前記修正制御装置は前記クライアントの入力作業状態を判定する手段を有し、
前記原票読取り装置は、複数のデータ項目から構成される原票を読み込んで原票イメージとする手段と、
項目位置や罫線の位置を識別するための、原票のパターンを登録しておく手段と、
同一パターンの原票イメージの項目位置や罫線の位置を識別してデータ項目を読取り認識し、認識できなかった項目をイメージデータとしておく自動認識処理部と、
読み込んだレコード(原票)毎に連番を付加する連番付加処理部と、
項目を識別するための識別子を付加する項目識別子付加処理部と、
認識できなかった項目に対しては、項目単位でそのイメージデータ自体を格納する別個の読取り不能ファイルを作成する手段を備え、
前記修正処理部は、入力原票全体を見ることがなくなり、公開すべきではない個人データなど機密情報の漏洩が防止できる状態で、データ項目毎の別個のファイルをクライアントに割り当てるクライアント割り当て処理部と、 修正結果を集信する修正ファイル集信処理部と、
読取りができなかったデータ項目を持つレコードを再現する一次マージ処理部とを備え、
前記クライアントは遠隔地に存在し、
前記修正制御装置から配信されたイメージ画像を受信し、該イメージ画像を表示画面に表示する表示手段と、
イメージデータを見ながら認識されなかった文字をキー入力するキーボードと、
キーパンチデータとデータ項目識別子とを修正制御装置に送信する手段と、
を備えることを特徴とするデータ入力装置」(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明(以下、「前者」という。)と引用例1に記載された発明(以下、「後者」という。)を対比する。
1)後者の修正操作者、クライアントは、各々前者の作業者、入力作業用コンピュータに相当し、後者のデータ項目の割り振りをし、修正されたデータ項目の合成を行うことは一種の管理・統括なので、後者の原票読取り装置と修正制御装置をあわせたもの(以下、「読取り・修正制御手段」という。)は、前者の入力管理センター用コンピュータと、キー入力作業の管理・統括装置である点で共通している。また、後者のデータ入力装置は、データ項目の割り振り、修正されたデータ項目の合成といった、入力支援作業の側面を有するので、前者と同様の入力業務支援システムといえる。したがって、後者の「修正操作者がキー入力を行なうための複数のクライアント、原票読取り装置、前記クライアントにデータ項目の割り振りをし、修正されたデータ項目の合成を行う修正制御装置とを有し、前記複数のクライアントと前記修正制御装置がネットワークを介して接続されたデータ入力装置」と、前者の「作業者がキー入力を行なうための複数の入力作業用コンピュータと、前記入力作業用コンピュータを介して行なわれる前記作業者のキー入力作業の管理・統括を行なう入力管理センター用コンピュータとがネットワーク接続された入力業務支援システム」とは、「作業者がキー入力を行なうための複数の入力作業用コンピュータと、前記入力作業用コンピュータを介して行なわれる前記作業者のキー入力作業の管理・統括を行なう管理・統括装置とがネットワーク接続された入力業務支援システム」である点で一致している。
2)後者のクライアントの入力作業状態を判定する手段は、入力作業は作業者が行うのだから、前者の作業者の作業の進捗状況を管理することに相当している。
3)後者のデータ項目は一般に記載欄に記載されるものであり、該記載欄が前者の記載欄に相当し、後者の原票、原票イメージは、各々前者の書類、画像データに相当しているから、後者の原票イメージとする手段は前者の画像入力手段に相当する。したがって、後者の「複数のデータ項目から構成される原票を読み込んで原票イメージとする手段」は、前者の「複数の記載欄より構成される書類の画像を取り込んでディジタル化し、画像データとする画像入力手段」に相当する。
4)後者の項目位置や罫線の位置を識別するための、原票のパターンを登録しておく手段と、前者の「前記書類の記載欄構成用紙を前記画像入力手段に供給したときに、前記記載欄よりも大きめの領域を認識する領域認識手段」は、書類のパターンに関する情報を登録する手段である点では一致している。
5)後者の「同一パターンの原票イメージの項目位置や罫線の位置を識別してデータ項目を読取り認識し、認識できなかった項目をイメージデータとしておく自動認識処理部」は、認識できなかった項目のイメージデータは当然分割されているから、前者の「前記画像データを前記領域ごとに分割して前記記載欄数の分割画像データとする画像分割手段」と画像データを領域に分割して分割画像データとする手段である点では一致している。
6)後者の「読み込んだレコード(原票)毎に連番を付加する連番付加処理部」における原票毎に連番を付加するということは、前者のどの書類であるかを示す情報に相当し、後者の、「項目を識別するための識別子を付加する項目識別子付加処理部」における、項目を識別するための識別子は、前者のどの領域であるかを示す情報に相当するから、後者の連番付加処理部と項目識別子付加処理部をあわせたものは前者の「前記分割画像データ毎に、どの書類のどの領域であるかを示す識別情報を付加する識別情報付加手段」に相当する。
7)後者の「認識できなかった項目に対しては、項目単位でそのイメージデータ自体を格納する別個の読取り不能ファイルを作成する手段」は、ファイルは通常記憶手段に格納するから、前者の「前記識別情報が付加された前記分割画像データを記憶する記憶手段」に相当する。
8)後者の、「入力原票全体を見ることがなくなり、公開すべきではない個人データなど機密情報の漏洩が防止できる状態」は、前者の「全体を見て分かる機密ないしはプライバシー情報を相互に関連付けることができない状態」に相当し、後者の「修正結果」は、前者の「入力作業用コンピュータからのキー入力された文字データとその文字データに対応する識別情報」に相当するから、後者の「入力原票全体を見ることがなくなり、公開すべきではない個人データなど機密情報の漏洩が防止できる状態で、データ項目毎の別個のファイルをクライアントに割り当てるクライアント割り当て処理部と、修正結果を集信する修正ファイル集信処理部」と前者の「データ入力を委託された異なる作業者の前記入力作業用コンピュータのそれぞれに、全体を見て分かる機密ないしはプライバシー情報を相互に関連付けることができない状態で、特定の記載欄の前記分割画像データの圧縮データとその分割画像データと対応する前記識別情報とを複数まとめて送信すると共に、前記入力作業用コンピュータからのキー入力された文字データとその文字データに対応する前記識別情報とを受信する通信手段」とは、全体を見て分かる機密ないしはプライバシー情報を相互に関連付けることができない状態で、特定の記載欄の前記分割画像データとその分割画像データと対応する前記識別情報とを送信すると共に、前記入力作業用コンピュータからのキー入力された文字データとその文字データに対応する前記識別情報とを受信する通信手段」である点で一致する。
9)後者の再現は前者の復元に相当するから、後者の「読取りができなかったデータ項目を持つレコードを再現する一次マージ処理部」は前者の「前記入力作業用コンピュータから送られてきたキー入力された文字データと前記識別情報とを用いて前記書類に記載された情報を復元する復元手段」に相当する。
10)後者の「前記クライアントは遠隔地に存在し」ていることと、前者の「前記入力作業用コンピュータは、前記作業者の自宅にそれぞれ設置され」ていることとは、作業用コンピュータが、作業者が作業をする場所に設置されている点では一致している。
11)後者の「イメージ画像を受信し、該イメージ画像を表示画面に表示する表示手段」は、キー入力された文字を文字入力画面に表示するのは当然であるから、前者の「前記書類の特定の記載欄の前記分割データに対応する領域の画像及び文字入力画面を表示する表示手段」に相当する。
12)後者の、「イメージデータを見ながら認識されなかった文字をキー入力するキーボード」は、イメージデータと文字入力画面を見ながらキー入力するキーボートであることは明らかであるから、認識されなかった文字を対象としている点を除いて、前者の「前記画像及び文字入力画面を見ながらキー入力作業を行なうためのキーボード」に相当する。
13)後者の「キーパンチデータとデータ項目識別子とを修正制御装置に送信する手段」は、前者の「キー入力した文字データとその文字データに対応する前記識別情報とを前記入力管理センター用コンピュータに送信する手段」に相当する。

14)従って前者と後者は、
「作業者がキー入力を行なうための複数の入力作業用コンピュータと、前記入力作業用コンピュータを介して行なわれる前記作業者のキー入力作業の管理・統括を行なう管理・統括装置とがネットワーク接続された入力業務支援システムであって、
前記管理・統括装置は、前記作業者の作業の進捗状況を管理し、
複数の記載欄より構成される書類の画像を取り込んでディジタル化し、画像データとする画像入力手段と、
書類のパターンに関する情報を登録する手段と、
画像データを領域に分割して分割画像データとする手段と、
前記分割画像データ毎に、どの書類のどの領域であるかを示す識別情報を付加する識別情報付加手段と、
全体を見て分かる機密ないしはプライバシー情報を相互に関連付けることができない状態で、特定の記載欄の前記分割画像データとその分割画像データと対応する前記識別情報とを送信すると共に、前記入力作業用コンピュータからのキー入力された文字データとその文字データに対応する前記識別情報とを受信する通信手段と、
前記入力作業用コンピュータから送られてきたキー入力された文字データと前記識別情報とを用いて前記書類に記載された情報を復元する復元手段と、を備え、
前記入力作業用コンピュータは、前記作業者が作業をする場所にそれぞれ設置され、
前記管理・統括装置から送られてきた、前記書類の特定の記載欄の前記分割データに対応する領域の画像及び文字入力画面を表示する表示手段と、
前記画像及び文字入力画面を見ながらキー入力作業を行なうためのキーボードと、
キー入力した文字データとその文字データに対応する前記識別情報とを前記入力管理センター用コンピュータに送信する手段と、を備える
ことを特徴とする入力業務支援システム。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
管理・統括装置が、前者は入力管理センター用コンピュータであるのに対し、後者は読取り・修正制御手段である点。
相違点2
書類のパターンに関する情報を登録する手段が、前者は、書類の記載欄構成用紙を前記画像入力手段に供給したときに領域を認識するのに対し、後者はそうではない点、前者は前記記載欄よりも大きめの領域を認識するのに対し、後者は、そうではない点。
相違点3
画像データを領域に分割して分割画像データとする手段が、前者は記載欄数の分割画像データとするのに対して、後者は認識できなかった項目をイメージデータとする点。
相違点4
通信手段が、前者は分割画像データの圧縮データとその分割画像データと対応する前記識別情報とを複数まとめて送信するのに対して、後者には、圧縮データであること、複数まとめて送信することは示されていない点。
相違点5
前者は、入力作業用コンピュータが自宅にそれぞれ設置されているのに対して、後者は遠隔地に存在している点。
相違点6
前者の表示手段は、圧縮データを伸長しているのに対して、後者は伸長について示されていない点。
相違点7
前者の「前記画像及び文字入力画面を見ながらキー入力作業を行なうためのキーボード」は、入力対象が文字認識で認識されなかった文字とは無関係であるのに対し、後者のキーボードは認識されなかった文字を入力対象としている点。
4.当審の判断
上記相違点について検討する。
相違点1について
後者の読取り・修正制御手段を周知のコンピュータで構成することは当業者が容易になし得たことである。また、該手段を利用する主体をセンターとすることにも格別の技術的意義はない。よって相違点1は格別のものではない。
相違点2について
原票の項目位置や罫線の位置を識別するための情報は、そもそも未記入状態の原票が有しているものであるから、前記情報を作成する際に未記入状態の伝票(前者の記載欄構成用紙)を用いることは、当業者が適宜なしえたことである。また、原票のパターンは原票読取り装置で用いるのであるから、登録の際に原票読取り装置を用いることが最も自然である。
そして、書類の必要項目を記入する際に、文字が記載欄からはみ出すことがあるため、記載欄より大きめの領域を読み取ることは周知であり(例えば、特開昭59-91588号公報、特開平5-342409号公報参照)、該周知技術を、後者の原票のパターンの登録に適用することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点2は格別のものではない。
相違点3について
書類の記載欄の内容が例えば手書きの場合など、文字認識に適しない対象があることは良く知られている。後者において文字認識をするか否かは、読取りの対象の性質、文字認識の技術レベル等を考慮して適宜決定すべき事項である。そして文字認識を採用しないと決定したならば、後者においても分割画像データは記載欄数分になるものと認められる。したがって相違点3は格別のものではない。
相違点4について
画像を送信する際に圧縮技術を用いることは例示するまでもなく周知技術である。後者のイメージに該周知技術を適用することは当業者が容易になし得たことである。また、データを転送する際に転送効率を考慮することは技術常識である。後者の読取り不能ファイルの内容を送信するにあたって、該内容をまとめて送信することは、該技術常識に照らして当業者が当然想到し得ることである。
相違点5について
後者の遠隔地を具体的にどのような場所にするかは、作業者の希望、入力依頼者側の都合等を考慮して適宜決定すべき事項である。そして在宅勤務という勤務形態が周知であることを考慮すると、設置場所を作業者の自宅とすることは当業者が適宜なし得た事項である。
相違点6について
表示手段に画像を表示する時に圧縮データを伸長するのは当然である。相違点6は相違点4と同様格別のものではない。
相違点7について
後者において、文字認識をするか否かは適宜決定すべき事項であることは、相違点3の判断で述べたとおりである。そして後者で文字認識をしなければ、入力対象が文字認識で認識されなかった文字とは無関係となるのは当然である。したがって、相違点7は格別のものではない。
また、前者の効果も格別のものではない。
5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-06-03 
結審通知日 2003-06-10 
審決日 2003-06-26 
出願番号 特願平9-307515
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長 由紀子和田 財太  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 平井 誠
辻本 泰隆
発明の名称 入力業務支援システム  
代理人 名越 秀夫  
代理人 生田 哲郎  
代理人 松本 雅利  

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