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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1082525
審判番号 不服2002-8592  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-04-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-15 
確定日 2003-08-29 
事件の表示 平成11年特許願第217275号「建築用木材の継合具」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 4月11日出願公開、特開2000-104343]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成11年7月30日(国内優先権主張 平成10年7月30日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項1】建築用木材と,端部に仕口部を設けた連結用木材とを直角若しくは傾斜状態に継合する建築用木材の継合具であって、板材を断面折り返し状に折曲形成した折り返し状の継合具本体の遊離両端側に前記連結用木材の仕口部に継合連結し得る継合部を設け、この継合部の反対側の折り返し部に前記建築用木材に当接接合し得る接合部を設けると共に、この接合部に建築用木材より突出する継合具本体取付用の取付ボルトの突出先端を貫通する貫通孔を設けた建築用木材の継合具において、前記継合具本体の折り返し部の折り返し形状を、前記建築用木材に対して前記連結用木材が引っ張られる方向に負荷を受けて継合部が引っ張られた際にコ字状の折り返し形状から変形すると想定したこの変形の折り返し形状であって、且つコ字状の折り返し形状のように直角の折曲部分を有しない折り返し形状に設定したことを特徴とする建築用木材の継合具。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された「特開平8-312007号公報」(以下、「引用例」という。)の、段落番号【0001】、【0002】、【0010】〜【0015】の記載事項及び図面の記載によると、引用例には次の発明が記載されている。
「柱(3)と,端部に仕口部を設けた梁(12)とを直角に接合する柱(3)の接合金物であって、金属板を平面から見た概略U字型若しくはコ字型に折り曲げ形成された金物本体(1)の遊離両端側に梁(12)の仕口部に接合連結し得る互いに平行な一対の片(6)(6)を設け、この片(6)(6)の反対側の中央部に柱(3)に当接接合し得る中央片(2)を設けると共に、この中央片(2)に柱(3)より突出する金物本体取付用のボルト(5)の突出先端を貫通するボルト穴(4)を設け、更に、金物本体(1)の下端面に、梁(12)を下側から支持する支持プレート(9)を設けた柱(3)の接合金物。」

3.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「柱(3)」、「梁(12)」、「接合金物」、「金属板」、「金物本体(1)」、「接合」、「片(6)」、「中央部」、「中央片(2)」、「ボルト(5)」及び「ボルト穴(4)」は、それぞれ本願発明の「建築用木材」、「連結用木材」、「継合具」、「板材」、「継合具本体」、「継合」、「継合部」、「折り返し部」、「接合部」、「取付ボルト」及び「貫通孔」に相当する。また、引用例記載の発明の「金属板(板材)を平面から見た概略U字型若しくはコ字型に折り曲げ形成された金物本体(継合具本体)」は、本願発明の「板材を断面折り返し状に折曲形成した折り返し状の継合具本体」の一部であるから、両者は、
「建築用木材と,端部に仕口部を設けた連結用木材とを直角若しくは傾斜状態に継合する建築用木材の継合具であって、板材を断面折り返し状に折曲形成した折り返し状の継合具本体の遊離両端側に前記連結用木材の仕口部に継合連結し得る継合部を設け、この継合部の反対側の折り返し部に前記建築用木材に当接接合し得る接合部を設けると共に、この接合部に建築用木材より突出する継合具本体取付用の取付ボルトの突出先端を貫通する貫通孔を設けた建築用木材の継合具。」
の点で一致し、次の2点で相違する。
[相違点1]
継合具本体の折り返し部の折り返し形状に関し、本願発明は、建築用木材に対して連結用木材が引っ張られる方向に負荷を受けて継合部が引っ張られた際にコ字状の折り返し形状から変形すると想定したこの変形の折り返し形状であって、且つコ字状の折り返し形状のように直角の折曲部分を有しない折り返し形状に設定したものであるのに対し、引用例記載の発明は、板材を平面から見た概略U字型若しくはコ字型に折り曲げ形成されたものである点。
[相違点2]
引用例記載の発明が、本願発明にはない、連結用木材を下側から支持する支持プレートを継合具本体の下端面に設けた点。

4.当審の判断
[相違点1についての検討]
本願明細書の【発明の詳細な説明】の項の段落番号【0004】、【0006】、【0026】及び【0027】の記載によると、本願発明の構成の「建築用木材に対して連結用木材が引っ張られる方向に負荷を受けて継合部が引っ張られた際にコ字状の折り返し形状から変形すると想定したこの変形の折り返し形状であって、且つコ字状の折り返し形状のように直角の折曲部分を有しない折り返し形状」は、「断面U字状に近い折り返し形状」と想定され、「完全なU字型」(折り縁を有しない湾曲状に折曲加工することによる断面U字状の折り返し形状)は、その一実施例にすぎない。
一方、引用例には、「概略U字型」の折り返し形状の継合具本体が記載されているから、相違点1に関し、両者に実質的な差異はない。
請求人は、「(概略U字型若しくはコ字型という記載は、)U字型について何らこの引用文献の明細書に解説がない以上、常識的に判断すれば、図示した実施例のコ字型金具を請求項として表現する際に、厳格な意味での狭義のコ字型だけでなく、直角の両角部を多少R面取りした概略U字型をも含む意味であることを明確化した記載と考えるのが当業者における常識的判断と考えます。」(審判請求書2頁下から11〜7行)と主張する。
しかしながら、請求人の主張する「直角の両角部を多少R面取りした概略U字型」であるにしても、「直角の折曲部分を有しない折り返し形状」であって、「断面U字状に近い折り返し形状」であるといえる。
さらに、引用例において、「図2」を精査すると、番号16のものは、角部がR面取りされており、このものを引用例では「断面コ字型の座金プレート(16)」(段落番号【0013】)と称していることから、引用例でいう「断面コ字型」は、すでに角部がR面取りされた「直角の折曲部分を有しない折り返し形状」を備えるものである。そして、同図2には、座金プレート(16)と同じ折り返し形状の金物本体(継合具本体)が記載されているから、図2の金物本体は、「折曲部分が直角でないコ字型に折り曲げ形成されたもの」を図示したものということができる。そうすると、引用例記載の発明の「概略U字型に折り曲げ形成されたもの」は、すでに角部がR面取りされたコ字型の折り返し形状のものより更に角部がR面取りされた、折り返し形状がU字状に近い形状のものを意味しているといえるから、引用例記載の発明の継合具本体の折り返し部の折り返し形状には、「断面U字状に近い形状」が含まれている。
したがって、相違点1に係る本願発明は、相違点1に係る引用例記載の発明と実質的な差異はないというべきである。
[相違点2についての検討]
相違点2に係る引用例記載の発明が支持プレートを設けた構成を採用したのは、連結用木材を確実に支持するためのものであって、そのような設定条件を持たない場合に、支持プレートを設けない構成とすることは、当業者にとって格別の発明力を要するものではない。

そして、本願発明の作用効果も、引用例記載の発明の作用効果と比べて、格別のものがあるとは認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることがでず、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-05-22 
結審通知日 2003-05-26 
審決日 2003-06-24 
出願番号 特願平11-217275
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 小山 清二
青山 敏
発明の名称 建築用木材の継合具  
代理人 吉井 雅栄  
代理人 吉井 剛  

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