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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B24D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24D
管理番号 1082557
審判番号 不服2001-20899  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-22 
確定日 2003-08-28 
事件の表示 平成8年特許願第285535号「無機繊維含有ゴムよりなる研磨材」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 5月19日出願公開、特開平10-128669]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年10月28日の出願であって、平成13年10月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月20日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成13年12月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年12月20日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「アルミナ繊維およびアルミナシリカ繊維から選ばれた無機繊維とゴム基材とからなり、この無機繊維の含有量が60〜90重量%であることを特徴とする無機繊維含有ゴムよりなる研磨材。」から、
「アルミナ繊維 とゴム基材とからなり、このアルミナ繊維の含有量が60〜90重量%であることを特徴とするアルミナ繊維含有ゴムよりなる研磨材。」
と補正された。なお、下線は補正個所を明確化するために、当審で付したものである。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「アルミナ繊維およびアルミナシリカ繊維から選ばれた無機繊維」についてアルミナシリカ繊維である場合を除外して、アルミナ繊維である場合だけに限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物記載の発明(事項)
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内で頒布された刊行物である特開平8-1526号公報(以下、「刊行物1」という。)には、
(イ)「ゴム・・・のマトリックスに繊維を含有せしめた試料をアクロン磨耗試験機にかけて荷重2.72kg,傾角15°で 1000 回転したとき、マトリックス表面から突出している繊維に曲がりや繊維先端部の変形が生じないような繊維を使用し、繊維の引張り弾性率E〔kgf/mm2 〕及び繊維の直径d〔mm〕が≧1×103 及びd≦0.1 であり、シート表面において、繊維の先端がマトリックス面から突出し、1mm2 当りに1×104/(E・d)本以上の平均密度で分布していることを特徴とするシート状研摩ゴム。」(【請求項1】)、
(ロ)「本発明を実施するに当たって繊維としては、・・・セラミック繊維・・・などがある。」(段落【0005】)、
(ハ)「前記繊維の引張り弾性率は、・・・アルミナ繊維が104 kgf/mm2 台、アルミナホイスカー繊維が105 kgf/mm2 台であって、高弾性の材料を使用するので十分な研摩作用が発揮される」(段落【0009】)、
(ニ)「【効果】何回研摩を続けても折れ目が生せず、即ち形状,材質に対してもいかなる面にも適用でき、複雑な面にも自在に貼着可能で、しかも滑らかな研摩を得ることができる自己再生性研摩材を得た。又、耐水性にも優れ、繊維も外れにくかった。更に又、本発明の趣旨とは直接関係しないが所望により自存な形に容易に成形しうる。」(段落【0018】)と記載されている。
これらの摘記事項(イ)、(ロ)からみて、刊行物1には、
「セラミック繊維とゴムマトリックスとからなるシート状研摩ゴム」の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内で頒布された刊行物である特開昭58ー59276号公報(以下、「刊行物2」という。)には、
(ホ)「本発明の湿式摩擦材においては耐熱耐油性を有するゴム系材料として塩基性アクリルゴム、エピクロールヒドリンゴムを選定し、更に耐摩耗性に優れた熱硬化性樹脂の3成分を基に・・・マトリクスとし、次に・・・セラミックス繊維を混入してなるものである。」(第2頁左上欄2行〜10行)、
(ヘ)「3成分系のマトリックスに対して次の割合でガラス微繊維及び/又はチタン酸カルシウム繊維を混入する。3成分系マトリックス:セラミックス繊維=5〜2:2〜5」(第2頁右上欄1行〜5行)と記載され、
同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内で頒布された刊行物である特開平4-36375号公報(以下、「刊行物3」という。)には、
(ト)「本発明は、アルミナ質繊維・・・から選ばれた・・・繊維で、かつ繊維径が少なくとも、二種の繊維を樹脂で結合してなる研磨研削材料を提供するものである。」(第2頁左上欄7行〜11行)、
(チ)「本発明で、研磨研削材料の中に占める繊維の割合が高い程、機械的強度及び切削性能が優れるが、20容量%から80容量%の間で用途及び使用条件に合わせて選択する。」(第3頁左上欄15行〜18行)と記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明1と刊行物1記載の発明とを比較すると、後者の「ゴムマトリックス」は前者の「ゴム基材」に、後者の「シート状研摩ゴム」は前者の「研磨材」に、それぞれ相当する。また、前者の「アルミナ繊維」と後者の「セラミック繊維」とは、「セラミック繊維」の限りで一致する。
してみると、両者は、「セラミック繊維とゴム基材とからなる研磨材」で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点1〉前者は、セラミック繊維がアルミナ繊維であるのに対して、後者はそのように特定していない点。
〈相違点2〉前者は、繊維の含有量を60〜90重量%とするのに対して、後者は、繊維の含有量をそのように特定していない点。

(4)当審の判断
〈相違点1について〉
アルミナ繊維を研磨材成分として使用することは、本願の出願前に周知の事項であって(例えば、上記の摘記事項(ト)、特開平1-222865号公報、特公平7-102504号公報を参照)、しかも、刊行物1自身にも、研磨材に用いるセラミック繊維としてアルミナ繊維を使用することが示唆されていることを考慮すると(上記の摘記事項(ハ)を参照)、刊行物1記載の発明のセラミック繊維としてアルミナ繊維を使用することは、当業者が容易になし得ることである。
〈相違点2について〉
研磨材中の繊維の含有量は、上記の摘記事項(チ)にも示されているように、当業者が、研磨剤に求める機械的強度、研磨性能、基材との均一分散性等を考慮して選択、決定するものと認められ、しかも、繊維の含有量を本願補正発明1と同程度に大きくすることは、刊行物2、3に示されている(上記の摘記事項(ヘ)、(チ)を参照。なお、相違点1に関する周知例としてあげた特開平1-222865号公報、特公平7-102504号公報にも繊維の含有量を、それぞれ45〜85wt%、50〜81容量%とすることが示されている。)。
してみると、刊行物1記載の発明において、例えば高い研磨性能を期待して、繊維の含有量を大きくし、本願補正発明1と同程度の繊維含有量とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明1の作用効果も、刊行物1記載の発明、刊行物2、3記載の事項、及び、周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明1は、刊行物1記載の発明、刊行物2、3記載の事項、及び、周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成13年12月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜5に係る発明(以下それぞれを、「本願発明1」等という。)は、平成13年10月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願発明1は次のとおりのものである。
「アルミナ繊維およびアルミナシリカ繊維から選ばれた無機繊維とゴム基材とからなり、この無機繊維の含有量が60〜90重量%であることを特徴とする無機繊維含有ゴムよりなる研磨材。」

(2)刊行物記載の発明(事項)
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載発明(事項)は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明1は、前記2.で検討した本願補正発明1の発明特定事項である「アルミナ繊維」を、該アルミナ繊維を含む、「アルミナ繊維およびアルミナシリカ繊維から選ばれた無機繊維」とすることを、その発明特定事項とするものである。
そして、本願補正発明1が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1記載の発明、刊行物2、3記載の事項、及び、周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物1記載の発明、刊行物2、3記載の事項、及び、周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、本願は、特許を受けることができない本願発明1を含むものであるから、残余の本願発明2〜5について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-06-25 
結審通知日 2003-07-01 
審決日 2003-07-14 
出願番号 特願平8-285535
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B24D)
P 1 8・ 575- Z (B24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 耕作  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 三原 彰英
林 茂樹
発明の名称 無機繊維含有ゴムよりなる研磨材  
代理人 久保山 隆  
代理人 久保山 隆  
代理人 榎本 雅之  
代理人 中山 亨  
代理人 榎本 雅之  
代理人 中山 亨  

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