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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1082772 |
審判番号 | 不服2000-14727 |
総通号数 | 46 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-09-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-09-14 |
確定日 | 2003-09-04 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第 45148号「生産ラインシミュレーションシステム」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 9月16日出願公開、特開平 6-259437]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年3月5日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、平成12年10月12日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された 「上位コンピュータに入力した生産ラインの生産計画情報と設備情報とを含む基準データに対し、予めパラメータファイルに格納されたシミュレーションパラメータに基づいてシミュレーションを行うシミュレーション解析部と、 前記シミュレーション解析部によるシミュレーション結果が前記生産ラインにおける工程能力に関してNGと評価されたとき、生産計画と設備計画とを含む前記基準データを所定の条件で変化させて新たなファイルを生成し、前記パラメータファイルに格納されたシミュレーションパラメータに基づいて再度シミュレーションを行わせる変更・擬似的加工処理部と、 を有することを特徴とする生産ラインシミュレーションシステム。」にあると認める。 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-121155号公報(平成元年5月12日出願公開。以下、引用例1という。)には、シミュレーション結果に基づき生産スケジューリングを行う装置について、図面とともに、次の事項が記載されている。 (1)上位日程計画システムから与えられる投入品種、数量、納期を格納する計画情報記述部と、前記計画に関する現在の進捗情報を格納する進捗情報記述部と、生産対象となる製品の品種単位の工程手順・割当設備・処理時間を格納する製品技術情報記述部と、工場の設備(ワークセンタ)に関する情報・工場カレンダを格納する工場情報記述部と、前記ワークセンタにおける投入品の着手順序及び設備割当に関する専門家のノウハウをルール化したデータを格納するノウハウ記述部と、前記計画情報記述部のデータをシミュレーション部の実行形式に合わせて抽出・編集し編集データ格納部にデータを格納する編集部と、前記編集データに基づいてシミュレーションを実行しシミュレーション結果データ格納部にデータを格納するシミュレーション部と、前記シミュレーション結果データをオペレータに報告する結果表示部と、オペレータが前記シミュレーション結果データの変更指示を行い変更データ格納部に格納するためのデータ入力部と、前記シミュレーション結果データと変更データに基づき再度前記シミュレーション部でシミュレーション実行させるために再編集を行い再編集データ格納部にデータを格納する再編集部とを含むことを特徴とする生産スケジューリング装置(特許請求の範囲) (2)第1図は本発明の一実施例を示すブロック図である。オペレータは、スケジューリングを行う前に、入力端末1を通じて、製品情報ファイル2、工場情報ファイル3、ノウハウ情報ファイル4の各ファイルに必要な情報を登録しておく。計画情報ファイル5、進捗情報ファイル6には、入力端末1または他のシステムとのインターフェースを通じて情報を登録しておく。(2頁左下欄12行乃至20行) (3)シミュレーションを実行する際には、まず事前に、編集部7において5の計画情報ファイルに登録されている投入品の品種に関する情報を製品情報ファイル2、工場情報ファイル3、ノウハウ情報ファイル4、進捗情報ファイル6から抽出し編集し、その結果を編集データファイル8に格納する。その後、シミュレーション部9は、ノウハウ情報ファイル4のルールに基づいて各ワークセンタでの着手順序を決め、各工程における処理時間と生産数量を用いてシミュレーションを進めていく。この操作を全投入品が、最終工程に達するまで続ける。その際、各通過工程での割当設備・処理時刻・生産量等のデータをシミュレーション結果ファイル10に書き込んでいく。(3頁右上欄5行乃至19行) (4)次に、結果編集部11では、シミュレーション結果ファイル10内の各種情報を基に、各投入品単位の製造リードタイム、完了予定時期、各設備・ワークセンタでの稼働率等を求め、ガントチャート・表等に編集し表示部12に表示する。表示部に表示される各種データをオペレータ(班長等)が評価・判断を行い、ノウハウ情報4に登録できない工夫等をスケジュールに組み込む必要が発生した場合、シミュレーション結果をデータ変換部13により変換し、変換データファイル14を作成し、入力部15から前述のファイルに対しての変更・更新を行う。(3頁右上欄20行乃至左下欄11行) (5)前述のようにデータ変更を行った後に、再度、変更以降のシミュレーションを実行させるときは、事前に変換データファイルと14と前回のシミュレーションの入力データとなった編集データファイル8から必要なデータを再編集部16にて、抽出・編集し、再編集ファイル17にデータを記録し、再度シミュレーションを実行する。シミュレーション/修正の手順を数回繰り返し、作成されたシミュレーション結果にもとづいて前記結果編集部で製造指示書を作成する。(3頁右下欄3行乃12行) 上記摘記事項から、引用例1には、 「計画情報、製品情報、工場情報、ノウハウ情報及び進捗情報から編集データを編集する編集部と、 編集データに基づいてシミュレーションを行うシミュレーション部と、 前記シミュレーション部によるシミュレーション結果データの変更指示がなされたとき、再度前記シミュレーション部でシミュレーションを実行させるためにシミュレーション結果データの変更データを用いて前記編集データの再編集を行う再編集部と、 を有することを特徴とする生産スケジューリング装置。」(以下、引用例1に記載された発明という。)が記載されていると認められる。 また、原査定の理由において、周知技術を示すものとして引用された特開平4-282745号公報(平成4年10月7日出願公開。以下、引用例2という。)には、確率変数を含んだ複数の要因が評価指標に影響するシミュレーションシステムにおいて、前回のシミュレーションによる評価指標と今回の評価指標の偏差がシミュレーションの終了基準を満たさないとき、評価指標に影響する確率変数のシードSをS=S+D(D>0)だけ変化させて繰り返しシミュレーションを実行するものが記載されている。 3.対比 本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、本願発明の「上位コンピュータに入力した生産ラインの生産計画情報と設備情報とを含む基準データに対し、予めパラメータファイルに格納されたシミュレーションパラメータに基づいてシミュレーションを行うシミュレーション解析部」と引用例1に記載された発明の「計画情報、製品情報、工場情報、ノウハウ情報及び進捗情報から編集データを編集する編集部と、編集データに基づいてシミュレーションを行うシミュレーション部」は、ともに「シミュレーションに必要なデータを用いてシミュレーションを行うシミュレーション部」であることで一致する。 また、本願発明の「前記シミュレーション解析部によるシミュレーション結果が前記生産ラインにおける工程能力に関してNGと評価されたとき、生産計画と設備計画とを含む前記基準データを所定の条件で変化させて新たなファイルを生成し、前記パラメータファイルに格納されたシミュレーションパラメータに基づいて再度シミュレーションを行わせる変更・擬似的加工処理部」と引用例1に記載された発明の「前記シミュレーション部によるシミュレーション結果データの変更指示がなされたとき、再度前記シミュレーション部でシミュレーションを実行させるためにシミュレーション結果データの変更データを用いて前記編集データの再編集を行う再編集部」は、ともに「前記シミュレーション結果がNGと評価されたとき、修正されたシミュレーションに必要なデータを作成して再度シミュレーションを実行させる変更・擬似的加工処理部」である点で一致する。 さらに、本願発明の「生産ラインシミュレーションシステム」と引用例1に記載された発明の「生産スケジューリング装置」は「シミュレーションシステム」である点で一致する。 したがって、両者は、 「シミュレーションに必要なデータを用いてシミュレーションを行うシミュレーション部と、 前記シミュレーション結果がNGと評価されたとき、修正されたシミュレーションに必要なデータを作成して再度シミュレーションを実行させる変更・擬似的加工処理部と、 を有することを特徴とするシミュレーションシステム」であることで一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明のシミュレーションシステムは、生産ラインシミュレーションシステムであって、そのシミュレーションに必要なデータは、「上位コンピュータに入力した生産ラインの生産計画情報と設備情報とを含む基準データ」と「予めパラメータファイルに格納されたシミュレーションパラメータ」であり、シミュレーション結果の評価は、生産ラインにおける工程能力に関してなされるのに対して、引用例1に記載された発明のシミュレーションシステムは、生産スケジューリング装置であって、そのシミュレーションに必要なデータも、シミュレーション結果の評価対象も本願発明のものと異なる点。 (相違点2) 本願発明の変更・擬似的加工処理部は、「シミュレーション結果がNGと評価されたとき、生産計画と設備計画とを含む前記基準データを所定の条件で変化させて新たなファイルを生成し、前記パラメータファイルに格納されたシミュレーションパラメータに基づいて再度シミュレーションを行わせる」ものであるのに対して、引用例1に記載された発明のものは、「シミュレーション結果データの変更指示がなされたとき、その変更データを用いて再度シミュレーションを実行させる」ものである点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) シミュレーションは各種分野で様々な目的で利用されており、シミュレーションに必要なデータとして何を採用するか、及び、シミュレーション結果の評価を何について行うかは、それぞれの利用分野においてどのような目的でシミュレーションを行うかによって決定すべき設計的事項であり、特に、生産ラインにおける工程能力の評価のためにシミュレーションを行うこと、そのシミュレーションに必要なデータとして、「上位コンピュータに入力した生産ラインの生産計画情報と設備情報とを含む基準データ」と「予めパラメータファイルに格納されたシミュレーションパラメータ」を採用することに限って、格別困難な点があったとも認められない。 (相違点2について) シミュレーション結果がNGと評価されたとき、シミュレーションに必要なデータの一部を所定の条件で変化させて再度シミュレーションを実行することは、例えば、引用例2に、前回のシミュレーションによる評価指標と今回の評価指標の偏差がシミュレーションの終了基準を満たさないとき(シミュレーション結果がNGと評価されたときに相当。)、評価指標に影響する確率変数のシードSをS=S+D(D>0)だけ変化させ(シミュレーションに必要なデータの一部を所定の条件で変化させることに相当。)て繰り返しシミュレーションを実行することが記載されていることから、「シミュレーション結果がNGと評価されたとき、生産計画と設備計画とを含む前記基準データを所定の条件で変化させて新たなファイルを生成し、前記パラメータファイルに格納されたシミュレーションパラメータに基づいて再度シミュレーションを行わせる」ことは、当業者が容易に想到し得たことである。 5.むすび 以上のとおりであるので、本願発明は、引用例1乃至2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-07-03 |
結審通知日 | 2003-07-08 |
審決日 | 2003-07-22 |
出願番号 | 特願平5-45148 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小太刀 慶明、▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判長 |
斎藤 操 |
特許庁審判官 |
徳永 民雄 村上 友幸 |
発明の名称 | 生産ラインシミュレーションシステム |
代理人 | 野上 敦 |
代理人 | 八田 幹雄 |
代理人 | 奈良 泰男 |
代理人 | 宇谷 勝幸 |
代理人 | 齋藤 悦子 |