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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23B |
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管理番号 | 1082939 |
審判番号 | 不服2002-908 |
総通号数 | 46 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-10-05 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-01-17 |
確定日 | 2003-09-11 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第325238号「ツイストドリルおよびその研磨方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年10月 5日出願公開、特開平 5-253720]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本件発明 本件出願は、平成4年12月4日(優先権主張平成3年12月27日)に特許出願されたものであって、その請求項1及び2に係る発明は、平成14年2月15日付手続補正書により補正がされた明細書及び願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであると認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、次のとおりである。 「切刃に続く逃げ面を平面に近い曲面状とし、この逃げ面に続いて明確な第2逃げ面を形成し、さらにこの第2逃げ面の先部に急に鋭い起立部を形成し、芯厚部先端のチゼルエッジに上記切刃に連続した切刃を形成したことを特徴とするツイストドリル。」 2 引用例記載の発明 原査定における拒絶の理由に引用した本件出願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平2-109669号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されていると認める。 a 第3頁左上欄第13行-右上欄第2行 「第1図(a)は右ネジレ2刃ドリルに逃げ面研削とX形シンニング研削とを行った外観斜視図、また第1図(b)はその平面図である。 両図において、右ネジレの2刃ドリル1には逃げ面1Aとシンニング面1Bとが2刃の夫々に研削されている。」 b 第1図(a) 右ネジレ2刃ドリルに逃げ面研削とX形シンニング研削とを行った外観斜視図。 上記記載事項aを参照して、第1図(a)に示されている事項について検討すると、シンニング面1Bから2刃ドリル1の先端側に急に鋭く起立する起立面が形成されており、そして、シンニング面1B及び起立面により、ドリル1の先端部の芯厚が小さくされていること、即ち、シンニングが施されていることが明らかである。 したがって、シンニング面1B及び起立面は、シンニングを施すためのシンニング部を構成するものであり、換言すると、起立面は、シンニング部の先部に急に鋭く起立して形成されていることが明らかである。 また、起立面の芯厚部先端のチゼルエッジに切刃に連続したシンニング切刃が形成されていることも明らかであり、また、シンニング部は、逃げ面1Aに続いて明確に形成されていることも明らかである。 以上のとおりであるので、引用例には、次の発明が記載されていると認める。 切刃に続く逃げ面1Aに続いて明確なシンニング部を形成し、さらにこのシンニング部の先部に急に鋭い起立面を形成し、芯厚部先端のチゼルエッジに上記切刃に連続したシンニング切刃を形成した右ネジレ2刃ドリル。 3 対比 本件発明1と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「シンニング切刃」は、本件発明1の切刃に連続した「切刃」に相当し、以下同様に、「起立面」は「起立部」に、「右ネジレ2刃ドリル」は「ツイストドリル」にそれぞれ相当していることは明らかである。 また、本件発明1の「第2逃げ面の先部に急に鋭い起立部を形成し、芯厚部先端のチゼルエッジに上記切刃に連続した切刃を形成したこと」の構成により得られるドリルの芯厚部先端の形状は、シンニングを施すことにより得られる形状と同様のものであり、また、求心性が良く、スラスト荷重が軽減されるという上記構成により得られる効果についても、シンニングを施すことにより得られる効果と同様のものであることは、明らかである。 したがって、上記「第2逃げ面の先部に急に鋭い起立部を形成し、芯厚部先端のチゼルエッジに上記切刃に連続した切刃を形成したこと」は、シンニングを施したことを意味するものであり、引用例記載の発明の「シンニング部」が、本件発明1の「第2逃げ面」に相当していることは明らかである。 以上のとおりであるので、本件発明1と引用例記載の発明とは、次の一致点で一致し、そして、次の相違点で相違している。 (1) 一致点 切刃に続く逃げ面に続いて明確な第2逃げ面を形成し、さらにこの第2逃げ面の先部に急に鋭い起立部を形成し、芯厚部先端のチゼルエッジに上記切刃に連続した切刃を形成したことを特徴とするツイストドリル。 (2) 相違点 逃げ面を、本件発明1では、平面に近い曲面状としているのに対し、引用例記載の発明では、そのようなものであるのか明らかでない点。 4 判断 上記相違点について検討すると、引用例記載の発明の逃げ面をどのような形状の面とするかは必要に応じて適宜決定する設計的事項であって、平面に近い曲面状とすることが格別に困難であるとすることはできない。 なお、審判請求書及び当審で通知した審尋に対する回答書において、審判請求人は、本件発明1は、逃げ面が曲面状であるので、逃げ面と第2逃げ面との境界線は、曲線状になり、中心切刃と曲線状に交差するのに対し、引用例記載の発明は、逃げ面が平面状であるので、逃げ面と第2逃げ面との境界線は、直線状になり、中心切刃と直線状に交差しており、両者は、刃部の形状が異なり、また、研磨方法も全く異なるものである旨主張している。 しかし、本件発明1は、上記1で認定したとおりの「ツイストドリル」であって、研磨方法について限定されているものではないので、本件発明1の進歩性の判断において、上記研磨方法が異なる旨の主張は、採用することができない。 また、引用例記載の発明の逃げ面の形状が、仮に、審判請求人が主張するように平面状であるとしても、上記1で認定したとおり、本件発明1の逃げ面の形状は、平面に近い曲面状であるので、両者の差異は、平面状であるか平面に近い曲面状であるかということになり、また、境界線についても、両者の差異は、直線状であるか直線に近い曲線状であるかということになり、このような差異に格別な技術的意義があるとすることはできず、また、上記回答書によっても、境界線が中心切刃に曲線状に交差することに格別な技術的意義があるとすることもできないので、上記刃部の形状が異なる旨の主張は、採用することができない。 また、上記回答書において、審判請求人は、本件発明1は、求心性がよくスラスト荷重が軽減されるものであるので、引用例記載の発明とは、効果が異なるものである旨主張しているが、求心性がよくスラスト荷重が軽減されるという効果は、シンニングを施すことにより得られる効果であって、シンニングが施されている引用例記載の発明により当然に得られる効果であるので、上記主張は採用することができない。 5 むすび したがって、本件発明1は、本件出願の優先権主張日前に日本国内において頒布された上記引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 以上のとおりであるので、請求項2に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-07-08 |
結審通知日 | 2003-07-15 |
審決日 | 2003-07-30 |
出願番号 | 特願平4-325238 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B23B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 野村 亨 |
特許庁審判長 |
小池 正利 |
特許庁審判官 |
三原 彰英 宮崎 侑久 |
発明の名称 | ツイストドリルおよびその研磨方法 |
代理人 | 金倉 喬二 |