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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01G
管理番号 1083007
異議申立番号 異議2001-72360  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-03-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-05 
確定日 2003-06-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3139537号「法面緑化工法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3139537号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3139537号の請求項1及び2に係る発明は、平成9年8月28日に特許出願され、平成12年12月15日にその特許権の設定登録がなされ、その後、土山健二より特許異議の申立てがなされ、平成14年2月7日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年4月15日に訂正請求がなされ、これに対して、平成14年12月26日付けで再度の取消しの理由が通知されたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
訂正事項
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2において、「生育基盤材、侵食防止材、及び水を含む緑化基材を法面上に吹付けることにより生育基盤を造成する法面緑化工法」とあるのを、「荒廃裸地に木本植物群落を復元するべく湿式吹付機を用いて生育基盤を造成するために、生育基盤材、侵食防止材、及び水を含む緑化基材を法面上に吹付けることにより生育基盤を造成する法面緑化工法」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項は、特許請求の範囲の請求項1及び2において、発明を特定するための事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
3-1.本件発明
平成14年4月15日付けの訂正請求に係る訂正は認められるから、本件請求項1及び2に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】荒廃裸地に木本植物群落を復元するべく湿式吹付機を用いて生育基盤を造成するために、生育基盤材、侵食防止材、及び水を含む緑化基材を法面上に吹付けることにより生育基盤を造成する法面緑化工法において、前記生育基盤材に含まれるバーク堆肥とピートモスとの容積混合比を5:5乃至6:4の範囲とし、かつ、前記緑化基材に含まれる前記水の割合を69〜79%とした前記緑化基材を調製することを特徴とする法面緑化工法。
【請求項2】荒廃裸地に木本植物群落を復元するべく湿式吹付機を用いて生育基盤を造成するために、生育基盤材、侵食防止材であるセメント、及び水を含む緑化基材を法面上に吹付けることにより生育基盤を造成する法面緑化工法において、前記生育基盤材に含まれるバーク堆肥とピートモスとの容積混合比を5:5乃至6:4の範囲とし、前記緑化基材に含まれる前記水の割合を69〜79%とし、かつ、前記生育基盤材2000リットルに対し前記セメントを40〜80kgの割合で混合した前記緑化基材を調製することを特徴とする法面緑化工法。」

3-2.当審の判断
上記本件請求項1及び2に係る発明に対して、平成14年12月26日付けで取消しの理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。
そして、上記の取消しの理由は妥当なものと認められる。

3-3.むすび
したがって、本件請求項1及び2に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
法面緑化工法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 荒廃裸地に木本植物群落を復元するべく湿式吹付機を用いて生育基盤を造成するために、生育基盤材、侵食防止材、及び水を含む緑化基材を法面上に吹付けることにより生育基盤を造成する法面緑化工法において、前記生育基盤材に含まれるバ一ク堆肥とピートモスとの容積混合比を5:5乃至6:4の範囲とし、かつ、前記緑化基材に含まれる前記水の割合を69〜79%とした前記緑化基材を調製することを特徴とする法面緑化工法。
【請求項2】 荒廃裸地に木本植物群落を復元するべく湿式吹付機を用いて生育基盤を造成するために、生育基盤材、侵食防止材であるセメント、及び水を含む緑化基材を法面上に吹付けることにより生育基盤を造成する法面緑化工法において、前記生育基盤材に含まれるバーク堆肥とピートモスとの容積混合比を5:5乃至6:4の範囲とし、前記緑化基材に含まれる前記水の割合を69〜79%とし、かつ、前記生育基盤材2000リットルに対し前記セメントを40〜80kgの割合で混合した前記緑化基材を調製することを特徴とする法面緑化工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、法面、斜面等の荒廃裸地に木本植物群落を復元するべく湿式吹付機を用いて生育基盤を造成する厚層基材吹付工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の法面緑化工法の手法は、ハイドロシーダーや湿式吹付機等の吹付機を使用して、イネ科の外来草本植物を主体に用いて法面全面にカーペット状の植物群落を造成する方法が一般的であった。通常、外来草本類は、発芽が早くかつ発芽率が高く、施工後1〜2週間でほとんどの種子が発芽する。さらに、初期生長も早い。従って、造成した基盤が比較的柔らかい場合でも植物による表面保護効果により降雨等の侵食を受ける危険性が低く、また生育基盤の配合比や含水量によって植生状態が左右されることはなかった。
ところが、近年では環境保全や景観保全の面から、緑化により造成しようとする植物群落が外来草本類から木本植物へと移行してきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、木本植物は、草本植物と比較して発芽や初期生育が遅い。また、発芽までに少なくとも1ヶ月以上の期問を要するものが多く、気象条件や休眠等の種子の生理的な問題によっては発芽までに数ヶ月から1年以上を要するもあも少なくない。加えて発芽率も低い。現状では、木本類の確実な導入方法は技術的に十分確立されていない。
【0004】
木本植物を導入する場合には、発芽に適した土壌硬度の生育基盤を長期間維持し、かつ、降雨等による侵食に対して耐久力が大きい基盤を造成することが重要なポイントとなる。
一般的に、植物の発芽生育に適した土壌硬度(山中式土壌硬度計による指標硬度)は、粘性土の場合10〜23mm、砂質土の場合10〜25mmの範囲において植物の地上部及び地下部とも生育が良好となり好ましいとされている。土壌硬度10mm未満の場合には、乾燥のため発芽不良になることが多い。また、粘性土の場合23〜30mm、砂質土の場合25〜30mmになると根系の土中への伸長が妨げられ、さらに30mm以上になると根系の伸長は不可能といわれている。
【0005】
しかしながら、バーク堆肥やピートモスなどの有機質資材を主材料に用いる厚層基材吹付工法においては、これまでの施工実績から、一概にこれら粘性土や砂質土を対象とした場合と一致しないことが判っている。例えば、土壌硬度が15mm以下程度では造成した生育基盤が侵食されるケースが多く、20mm以上では生育基盤材に混合する侵食防止材の硬化により、さらに土壌硬度が硬くなり、発芽不良をきたす等の問題を有している。
【0006】
こうしたことから、厚層基材吹付工法を用いて木本植物を導人する場合、侵食防止材が硬化した後に土壌硬度が15〜20mmの範囲となるような生育基盤をいかに造成するかということが重要な課題となっている。このような土壌硬度の範囲は、特に侵食防止材に接合力の大きいセメントを用いた場合に重要な要素となる。
本発明の目的は、以上の問題点に鑑み、有機質を主材料に用いる厚層基材吹付工法において、木本植物の発芽生育に適する最適な土壌硬度を長期間維持し、かつ、強い耐侵食性を保持する生育基盤を造成することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するべく、本発明は、主材料である生育基盤材のバーク堆肥とピートモスの配合比及び含水量を好適範囲とした緑化基材を調製し、かかる緑化基材を湿式吹付機を用いて法面上に吹付け造成することにより生育基盤を造成し、法面上に木本植物を効率よく導入することを実現する。
【0008】
本発明による法面緑化工法では、少なくとも生育基盤材、侵食防止材、及び水を含む緑化基材であって、主材料である生育基盤材に含まれるバーク堆肥とピートモスとの容積混合比を5:5乃至6:4の範囲とし、かっ、緑化基材全体に含まれる前記水の割合を69〜79%とした緑化基材を調製する。
【0009】
また、侵食防止材をセメントとする場合、上記要件に加え、生育基盤材2000リットルに対しセメントを40〜80kgの割合で混合した緑化基材を調製することが好適である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態は、木本植物を導入する厚層基材吹付工法において、湿式吹付け機を用いて緑化基材を法面に吹付け、生育基盤を造成する。緑化基材は、有機質の生育基盤材、侵食防止材、肥料、種子等に少量の水を加えて混合したものである。一般的な厚層基材吹付工法では、生育基盤材としてバーク堆肥とピ-トモスを主材料に用いるものが多く、これに土壌改良材等の添加物を加える場合もある。侵食防止材としては、セメントや酢酸ビニル系の高分子系樹脂が用いられ、肥料には化成肥料が用いられている。
【0011】
本発明においては、緑化基材の主材料である有機質生育基盤材として、バーク堆肥とピートモスの容積混合比を5:5から6:4の範囲とし、かつ、緑化基材全体に対する含水量を69%乃至79%に調整することを特徴とする。この範囲で含水量調整をされた緑化基材により、木本植物の発芽生育に適した土壌硬度15〜20mm範囲の生育基盤を造成することができる。特に、侵食防止材の不十分な硬化による生育基盤の侵食や、過剰な硬化による発芽不良を防ぎ、必要最低限の耐侵食性を長期間維持することに有効である。
【0012】
最適な含水量の設定にあたっては、次の通りの試験を行った。
試験に用いた緑化基材の生育基盤材は、バーク堆肥とピートモスを混合したものであるが、バーク堆肥の製造元による含水量への影響が考えられるため、製造元の異なる代表的な2種類のバーク堆肥を用いてそれぞれA工場とB工場の2箇所において同一の試験を行い、両工場における結果を確認することとした。
試験に用いた生育基盤材は、バーク堆肥とピートモスの容積混合比を5:5に混合したもの(試験体α)と、6:4に混合したもの(試験体β)である。
【00013】
なお、バーク堆肥の混合比が6割より多くなると、含水量を調整しても生育基盤の土壌硬度が過剰に硬くなるなどの障害が発生し、そしてバーク堆肥の混合比が5割より少なくなると、生育基盤が非常に膨軟となり、耐侵食性が著しく低下する障害が発生する。試験では、好適な生育基盤材配合比の範囲である5:5(A)と6:4(B)の緑化基材を用い、吹付造成した生育基盤の土壌硬度が15〜20mmの範囲となる含水量の最小値と最大値の計測をそれぞれ5回行った。すなわち、土壌硬度15mmのときが最大含水量となり、土壌硬度20mmのときが最小含水量となる。
【0014】
含水量の計測は、緑化基材を110℃で36時間乾燥し、乾燥前後の重量差から算出した。A工場及びB工場におけるそれぞれの試験体α及びβの計測結果は次の通りである。
【0015】
【表1】

【0016】
【表2】

【0017】
【表3】

【0018】
【表4】

【0019】
試験体α及び試験体βにおける最小含水量に関しては、A工場の結果では70.1〜72.6%の範囲であり、B工場の結果では69.8〜75.6%の範囲であった。両工場の結果を総合すると最小含水量は、69.8〜75.6%の範囲である。
一方、試験体α及び試験体βにおける最大含水量に関しては、A工場の結果では73.5〜78.9%の範囲であり、B工場の結果では72.9〜77.9%の範囲であった。両工場の結果を総合すると量大含水量は、72.9〜78.9%の範囲である。
これらの結果を踏まえて、生育基盤の土壌硬度を15〜20mmとするための緑化基材の含水量の範囲を69〜79%と設定した。従って、生育基盤材のバーク堆肥とピートモスの容積混含比が5:5乃至6:4の範囲内である緑化基材の好適な含水量はこの範囲である。
【0020】
次に、侵食防止材すなわち接合材としてセメントを用いた場合には、上記の条件に加えて、セメントの配台割合を規定することが好適である。なぜなら、セメントの場合、含水量の影響が大きいため、含水量によってレイタンスの発生や基盤硬度が著しく硬くなるなどの弊害が発生するからである。本発明においては、侵食防止材がセメントである場合、緑化基材の主材料である生育基盤材2000リットルに対し、セメントを40〜80kg混合することが好適である。このようなセメント配合割含とすることにより、前述の生育基盤の最適な土壌硬度15〜20mmが実現される。セメント配合割合が、これより少ないと硬化が不十分となり所定の耐侵食性を確保することが困難となる。またこれより多いと硬くなり過ぎて発芽障害が顕著に現れる。
【00021】
【発明の効果】
本発明においては、緑化基材の主材料が有機質生育基盤材である場合に、バーク堆肥とピートモスとの容積混合比並びに緑化基材の含水量を所定の範囲に設定することにより、造成される生育基盤の土壌硬度を木本植物の発芽生育に適した範囲とすることができる。
この結果、目的とする生育基盤の土壌硬度を確実に実現するための手法が確立された。本発明による手法は、緑化基材の各成分の配合割合を所定範囲に規定するのみでよいので、特別な作業や特殊な配合成分は不要である。従って、従来の施工過程を全く複雑化することなく従来の設備を用いて実施することができる。
本発明は、法面緑化工において木本植物の確実な成立を実現する極めて有用な技術である。
 
訂正の要旨 特許請求の範囲の請求項1及び2中の「生育基盤材、侵食防止材、及び水を含む緑化基材を法面上に吹き付けることにより生育基盤を造成する法面緑化工法」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「荒廃裸地に木本植物群落を復元するべく湿式吹付機を用いて生育基盤を造成するために、生育基盤材、侵食防止材、及び水を含む緑化基材を法面上に吹き付けることにより生育基盤を造成する法面緑化工法」と訂正する。
異議決定日 2003-04-17 
出願番号 特願平9-247842
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A01G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 白樫 泰子
鈴木 寛治
登録日 2000-12-15 
登録番号 特許第3139537号(P3139537)
権利者 東興建設株式会社
発明の名称 法面緑化工法  
代理人 小島 高城郎  
代理人 佐藤 卓也  
代理人 佐藤 卓也  
代理人 小島 高城郎  

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