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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1083023
異議申立番号 異議2001-70071  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-12-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-10 
確定日 2003-06-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3062150号「広いコレステリック反射帯域を有する配向三次元架橋ポリマー材料の製法、そのような材料、コレステリックフィルム並びに広帯域フィルタ、偏光子及びリフレクタ」の請求項1〜5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3062150号の請求項1〜5に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続きの経緯
本件特許第3062150号に係る発明は、平成10年4月30日に特願平10-120897号として出願されたものであって(優先権主張、1997年4月30日、ドイツ)、その特許について平成12年4月28日に設定登録がなされ、その後、日石三菱株式会社及び生川佳子より特許異議の申立てがなされ、平成13年6月21日付けで取消理由通知がなされ、平成13年12月26日付けで特許権者より特許異議意見書と訂正請求書が提出され、その後、平成14年8月27日付けで特許権者に対して審尋通知がなされたが、その指定期間内に特許権者から何ら応答がなかったものである。
【2】訂正の可否についての判断
〔1〕訂正事項
特許請求の範囲の請求項1の「コレステリック特性を有するポリマー材料が、該ポリマー材料に最低100nmの幅のコレステリック反射帯域をもたらすポリマーネットワークの密度勾配を有ることを特徴とする、コレステリック特性を有するポリマー材料。」を、
「コレステリック特性を有するポリマー材料が、該ポリマー材料に最低100nmの幅のコレステリック反射帯域をもたらすポリマーネットワークの密度勾配を有し、抽出すべきポリマーの可溶性パラメーターとの差が5単位より大きくない可溶性パラメータを有する抽出剤を、ポリマー材料と接触させることにより該密度度勾配を達成することを特徴とする、コレステリック特性を有するポリマー材料。」と訂正する。
〔2〕訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件明細書、段落番号【0009】には「本発明は、広いコレステリック反射帯域を有する配向三次元架橋ポリマー材料の製法に関し、これは、抽出可能な材料成分を含むコレステリック特性を有するポリマー材料を溶剤又は溶剤混合物と接触させることを特徴とする。」と記載され、段落番号【0027】には「その可溶性パラメーターが、抽出されるポリマーもしくはその可溶成分の可溶性パラメーターと等しいか、又は近い溶剤又は種々異なる溶剤からなる混合物を用いて抽出を有利に行うことができる。それらの溶剤は以降では、抽出剤とも称される。」と記載され、段落番号【0028】には「近い可溶性パラメーターを有する溶剤とは本発明の意味では、その可溶性パラメーターと、抽出されるポリマーもしくはその可溶成分の可溶性パラメーターとの差が5単位より大きくない溶剤のことである。可溶性パラメーターの記載が例えば、Polymer Handbook,J.Brandrup,E.H.Immergut,Verlag J.Wiley & Sons1975,Kapitel IV,S337-353中にある。そこにはそれらを測定するための方法も記載されている。」と記載され、さらに、段落番号【0032】には「本発明の方法での抽出は、ネットワーク中の密度勾配が、ポリマーの表面に向かって垂直に生じるように行うのが有利である。」と記載されている。
してみると、訂正によって特許請求の範囲の請求項1に加わった「抽出すべきポリマーの可溶性パラメーターとの差が5単位より大きくない可溶性パラメータを有する抽出剤を、ポリマー材料と接触させることにより該密度勾配を達成する」という構成要件は、そのままの表現ではないが、本件願書に添付した明細書に実質的に記載されていた事項であると言える。
そして、このように密度勾配を達成する方法的手段を加えることは構成要件の付加であり、本件特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであり、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔3〕むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
【3】本件発明
本件特許第3062150号の請求項1〜5に係る発明は、平成13年12月26日付けで提出された訂正請求書に添付された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により構成される次のとおりのものである。
「【請求項1】コレステリック特性を有するポリマー材料が、該ポリマー材料に最低100nmの幅のコレステリック反射帯域をもたらすポリマーネットワークの密度勾配を有し、抽出すべきポリマーの可溶性パラメーターとの差が5単位より大きくない可溶性パラメータを有する抽出剤を、ポリマー材料と接触させることにより該密度度勾配を達成することを特徴とする、コレステリック特性を有するポリマー材料。(以下「本件第1発明」という。)
【請求項2】請求項1に記載のポリマー材料からなる、コレステリックフィルム。(以下「本件第2発明」という。)
【請求項3】200〜3000nmのスペクトル領域での反射帯域が、2800nmまでの帯域幅である、請求項2に記載のコレステリックフィルム。(以下「本件第3発明」という。)
【請求項4】フィルムの各部分領域で反射帯が異なる、請求項2記載コレステリックフィルム。(以下「本件第4発明」という。)
【請求項5】請求項1に記載のコレステリック材料からなる、広帯域フィルター、偏向子及びリフレクタ。(以下「本件第5発明」という。)」
しかし、請求項1において訂正によって追加された「抽出すべきポリマーの可溶性パラメーターとの差が5単位より大きくない可溶性パラメータを有する抽出剤を、ポリマー材料と接触させることにより該密度勾配を達成する」という構成要件は、平成14年8月27日付けでなされた審尋通知で判決例も挙げて詳しく述べたように、製法にのみ係る要件であって、本件発明のような物の発明を特定する要件とは考え難いので、発明の同一性、進歩性を判断する上では、この要件は考慮しないものとする〔なお、このように判断することについての審尋通知に対して、特許権者は何の回答もしなかった。〕。
即ち、本件請求項1に係る発明は「コレステリック特性を有するポリマー材料が、該ポリマー材料に最低100nmの幅のコレステリック反射帯域をもたらすポリマーネットワークの密度勾配を有し、抽出すべきポリマーの可溶性パラメーターとの差が5単位より大きくない可溶性パラメータを有する抽出剤を、ポリマー材料と接触させることにより該密度度勾配を達成することを特徴とする、コレステリック特性を有するポリマー材料。」であり、物の発明であるところ、先の訂正で追加された構成要件はその物を製造するための要件(プロセス)(より具体的に言うならば、密度勾配を得るための要件)である。
そして、この製法的要件(プロセス)によらなければ密度勾配と言う物の発明における構成要件を直接的に規定することが、不可能、困難、あるいは何らかの意味で不適切(例えば、不可能でも困難でもないものの、理解しにくくなる度合が大きい場合などが考えられる。)であるとも考えられない。
そうだとすると、本件請求項1に係る発明は物の発明である以上、その特許性を考える上で、その製造方法自体の特許性を検討する必要はないし、訂正された製法的要件は、発明の対象となる物の構成を特定するための要件として、特段の意味を有するとはいえないので、訂正された製法的事項を考慮しないで発明の同一性及び進歩性を判断することとなる。
【4】当審で通知した取消理由通知に引用された刊行物の記載事項
〔1〕刊行物1:特開平6-281814号公報(特許異議申立人日石三菱石油株式会社が提出した甲第1号証、特許異議申立人生川佳子が提出した甲第1号証)
該刊行物には次の事項が記載されている。
「【請求項1】コレステリック規則性を持つポリマ材料の光学的能動層を有し、該材料は分子螺旋の軸が前記層を横切って延在するように配向されたコレステリック偏光子において、前記層における前記分子螺旋のピッチが、最大ピッチと最小ピッチとの間の差が少なくとも100nmとなるように変化されていることを特徴とするコレステリック偏光子。
……
【請求項3】請求項1又は請求項2に記載のコレステリック偏光子において、前記ポリマ材料が3次元網構造を形成することを特徴とするコレステリック偏光子。
……
【請求項10】請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載のコレステリック偏光子を製造する方法において、コレステリック規則性を持つ重合された液晶材料の光学活性層の表面に反応性モノマの膜が設けられ、これらモノマが拡散の結果として前記層中に濃度勾配を形成し、その後前記モノマが重合されることを特徴とするコレステリック偏光子を製造する方法。
【請求項11】請求項10に記載のコレステリック偏光子を製造する方法において、前記膜が前記層中において異なる拡散速度を持つようなモノマの混合物を含むことを特徴とするコレステリック偏光子を製造する方法。
【請求項12】請求項10又は請求項11に記載のコレステリック偏光子を製造する方法において、前記各モノマの少なくとも一部が2以上の重合可能な基を有していることを特徴とするコレステリック偏光子を製造する方法。」(特許請求の範囲の請求項1〜12)、
「【0004】コレステリック偏光子を用いることにより、偏光されていない光を非常に効率的に偏光光に変換することが可能である。このような偏光子はコレステリック[即ち、カイラル・ネマチック(chiral nematic)]材料の光学的能動層を有している。この種の液晶材料においては、カイラル分子は自然に螺旋状(スパイラル又はヘリカル状)の構造をなすような構造を有している。このような混合物を2つの平行な基板の間に薄い光学的に能動な層として設けると、上記螺旋構造は当該螺旋軸が該層を横切る方向に延在するように配向される。上記螺旋の配向は、前記基板の互いに対向する面上にいわゆる配向層(orientation layer)が設けられると、より良好に得られる。この種の偏光子が偏光されていない光のビームにより照射されると、当該光のうちの前記螺旋の方向(右向き又は左向き)及びピッチに適合する(compatible)部分は反射され、一方当該光の残りの部分は透過される。鏡を用いて、上記の反射された光の「適合する」偏光は反転することができ、その後、この適合しないように偏光された上記光を再び偏光子に向けることができる。このようにして、この種の偏光子を用いることにより、理論的には、適合する波長を持つ偏光されていない入射光の100%を円偏光された光に変換することが可能である。
【0005】上記のようなコレステリック偏光子は、SID90ダイジェスト、1990年、第110頁〜第113頁に掲載された「コレステリックLCシリコーンからなる偏光色フィルタ」なる題名のMaurer他による文献から既知である。この文献においては、光学的能動層がシリコーンを基剤とするコレステリック規則性を持つポリマからなるようなコレステリック偏光子が説明されている。この層は、2つのガラス基板の間でカイラル・シリコーンモノマとネマトジェニック(nematogenic)・シリコーンモノマとの混合物を配向し、その後これらを紫外線光により光学的に能動な層に重合することにより作成される。このポリマ材料における上記2種のモノマの比が、分子螺旋のピッチ及びこれに関連する反射波長(反射光の色に等しい)を支配する。この場合、上記ピッチp及び波長λはλ=1/2・(n’+n”)pなる式で与えられ、ここでn’及びn”は上記ポリマ材料の異常屈折率及び通常屈折率を各々表す。」(第3頁第3欄第15行〜同頁第4欄第4行)、
「【0022】理論的には、分子螺旋のピッチの変化はコレステリック・ポリマのピッチの温度依存性に基づいて実現することができることに注意すべきである。この場合は、温度勾配を前記モノマ混合物の光学的能動層にわたって付与しなければならず、その後重合が実施されねばならない。典型的には数μmから数十μmである前記光学的能動層の薄い厚さのため、上記のやり方は上記のような温度勾配の要求される傾きのため極めて困難である。
【0023】また、本発明による上記各方法においては、光学的能動層に対向する面上に配向層が設けられる基板を使用することが絶対に必要であるということではないことにも注意すべきである。特に、(非常に)薄い光学的能動層の製造に際してはネマトジェニック基の自発的な配向が起きる。しかしながら、重合中に配向層を設けることにより光学的能動層の配向が改善されるので、これにより当該偏光子の光学特性が大幅に改善される。
【0024】前記反応性モノマとしては、例えば米国特許第5,188,760号等に記載されているように、アクリル(acrylates)、エポキシ化合物、ビニルエーテル及びチオル系(thiolene systems)を基剤とする反応性基を含む化合物を用いることができる。異なる反応性基を含むモノマは、通常、反応性が異なる。上記反応性は、温度、使用される化学作用照射の波長等の重合動作が行われる反応条件によっても支配される。
【0025】上述したような各製造方法の興味ある変形例は、前記カイラル・モノマの反応性基の数がネマトジェニック・モノマのものとは異なっていることを特徴としている。上記のようなモノマの混合物が光重合されると、2つのタイプのモノマの中の少なくとも一方が2以上の反応性基を持つので、3次元網構造が形成される。前述したように、上記のようなポリマ網は前記光学層に大きな強度を与えるので、もし望むならば光重合工程の後に配向層等を含む使用後の基板を当該光学層から取り除くことができ、これにより自己支持型の広帯域偏光子フィルタを得ることができる。なお、一方の型のモノマが1個の反応性基を有し、他方の型のモノマが2つの反応性基を有するようなモノマの混合物が好ましい。」(第5頁第7欄第35行〜同頁第8欄第23行)。
〔2〕刊行物5:特開平6-167718号(特許異議申立人生川佳子が提出した甲第3号証)
該刊行物には次のようなことが記載されている。
「特許請求の範囲
【請求項1】特定の波長に対して円偏光した光を反射させる色選択層と、該色選択層に積層され、少なくとも電界の印加手段をもった液晶層を含み、電界の印加時に所定のレターディションを有した複屈折層と、該複屈折層の出力光を選択的に透過させる選択層とを具備したことを特徴とする液晶表示装置。」(特許請求の範囲の請求項1)、
「【実施例】まず本発明の原理について図1を利用して説明する。図1において10は複数の波長に対して各々円偏光させる色選択層で、例えば各々異なる特定波長、具体的には光の三原色である赤、青、緑の各々の特定波長の光を円偏光させるコレステリック液晶層からなる。……複屈折層20を通過した光が円偏光になると色選択層10の所定の波長の所定の回転方向の光が反射され、選択層30により観察される。」(第2頁第2欄38行〜第3頁第3欄第2行)。
【5】特許法第29条第1項乃至第2項についての判断
〈1〉本件第1発明について
本件第1発明と刊行物1に記載された発明を対比する。
(イ)先ず、両発明の対象について検討する。
刊行物1に記載された発明に係るコレステリック偏光子もまたコレステリック規則性を持つポリマ材料の光学的能動層を有するものであり(請求項1)、この「コレステリック規則性を持つポリマ材料」は本件第1発明における「コレステリック特性を有するポリマー」に他ならないものである。
(ロ)次に、本件第1発明における「該ポリマー材料に最低100nmの幅のコレステリック反射帯域をもたらすポリマーネットワークの密度勾配を有し」という構成要件について検討する。
まず、本件第1発明における「ポリマーネットワーク」が何を意味するかについての正確な定義が本件明細書には何も記載されていないが、「ポリマーの網状組織」と解釈することができ、また、本件明細書に多々記載されている「三次元架橋ポリマー」(例えば本件明細書の段落番号【0001】、【0009】、【0010】等の記載)を意味すると理解することもできる。
そして、刊行物1に記載された発明は、「該材料(光学的能動層)は分子螺旋の軸が前記層を横切って延在するように配向されたコレステリック偏光子において、前記層における前記分子螺旋のピッチが、最大ピッチと最小ピッチとの間の差が少なくとも100nmとなるように変化されている」(請求項1)のであり、「請求項1又は請求項2に記載のコレステリック偏光子において、前記ポリマ材料が3次元網構造を形成する」(請求項3)のであり、それは、「請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載のコレステリック偏光子を製造する方法において、コレステリック規則性を持つ重合された液晶材料の光学活性層の表面に反応性モノマの膜が設けられ、これらモノマが拡散の結果として前記層中に濃度勾配を形成し、その後前記モノマが重合されることを特徴とするコレステリック偏光子を製造する方法。」(請求項10)によって製造されるものである。
これらのことをまとめると、刊行物1に記載された発明は、モノマーの拡散の結果としての濃度勾配を生じそれが重合し3次元網構造ポリマーを形成するが、その濃度勾配により最大ピッチと最小ピッチとの間の差が少なくとも100nmとなるような変化を生ずるものであると理解されるのである。
そうしてみると、両者は、例えば、「密度」と「濃度」、「ネットワーク」と「網構造」等の多少の表現の相違があるとしても「ポリマーネットワークの密度勾配を有し」という点では同じであり、ただ、本件第1発明が「最低100nmの幅のコレステリック反射帯域をもたらす」のに対し刊行物1に記載された発明では「最大ピッチと最小ピッチとの間の差が少なくとも100nmとなるような変化を生ずる」ものである点で一見相違している。
しかし、刊行物1の段落番号【0004】に記載されているように偏光子に偏光されていない光が照射されると螺旋の方向及びピッチに適合する(光の)部分は反射されるのであるから、分子螺旋の最大ピッチと最小ピッチとの間の差が少なくとも100nmあるならば、そこに入射される光線が反射される場合は当然にその反射光の反射帯域は100nm以上となるものと考えられるのであり、この点で両者は相違するものではない。
(ハ)最後に、本件第1発明における「抽出すべきポリマーの可溶性パラメーターとの差が5単位より大きくない可溶性パラメータを有する抽出剤をポリマー材料と接触させることにより該密度勾配を達成する」という構成要件について検討する。
この点は、刊行物1には記載がされていなかったことである。
しかし、この要件は先に【3】の本件発明の認定のところで詳しく述べたように、本件発明の「密度勾配」を得るための製法的要件であり、その製法自体としての新規性あるいは進歩性は検討する必要はないものである。(詳細な理由は【3】の記載参照)。
以上のとおりであるから、本件第1発明は刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであると言える。
〈2〉本件第2発明について
本件第2発明は本件第1発明に対して、さらにそれがフィルムであることを規定している点でのみ相違している。
しかし、刊行物1には「典型的には数μmから数十μmである前記光学能動層の薄い厚さのため、」(第5頁第7欄第40行〜第41行)との記載があり、また、刊行物1には「もし望むならば光重合工程の後に配向層等を含む使用後の基板を当該光学層から取り除くことができ、」(第5頁第8欄第18行〜第20行)との記載があり、基板を取り除き薄いフィルムを得ることはこれ等の記載から示唆されることであるから、フィルムにすることは記載されているに等しいことであると言える。また、仮にそうでないとしてもフィルムにすることは上記のような記載から当業者が容易に考えつくことであると言える。
したがって、本件第2発明は刊行物1に記載された発明であるか又はそれから容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものであると言える。
〈3〉本件第4発明について
本件第4発明は本件第2発明に対して、フィルムの各部分領域で反射帯が異なることを規定している点でのみ相違している。
しかし、刊行物5に記載された発明は液晶表示装置に係るものであるところ、その実施例には「図1において10は複数の波長に対して各々円偏光させる色選択層で、例えば各々異なる特定波長、具体的には光の三原色である赤、青、緑の各々の特定波長の光を円偏光させるコレステリック液晶層からなる。……複屈折層20を通過した光が円偏光になると色選択層10の所定の波長の所定の回転方向の光が反射され、選択層30により観察される。」(第2頁第2欄第39行〜第3頁第3欄第2行)と記載され、このようにコレステリック液晶の各部分で異なる反射帯を有するものが示されているので、刊行物5の記載をも併せれば、この点は当業者が容易になし得るものであると言える。
してみると、本件第4発明は刊行物1及び刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであると言える。
〈4〉本件第5発明について
本件第5発明は本件第1発明に対して、それが広帯域フィルター、偏向子及びリフレクタであるとの用途を規定している点でのみ相違している。
しかし、刊行物1に記載された発明は偏光子に係るの発明(例えば請求項1)であるから偏光子については刊行物1に明確に記載されているものである。また、刊行物1の段落番号【0004】に記載されているように偏光子に光が照射されると螺旋の方向及びピッチに適合する(光の)部分は反射されるのであるから、当然にレフレクターとなり得ることは刊行物1に示唆されていると言える。また、刊行物1の段落番号【0025】の記載(即ち、「……、上記のようなポリマ網は……、これにより自己支持型の広帯域偏光子フィルタを得ることができる。……。」)はコレステリック偏光子が広帯域フィルターとなり得ることを示唆するものである。
してみると、本件第5発明で規定されている用途については刊行物1に記載されているか又はそれから示唆される事項であるから、本件第5発明は刊行物1に記載されたものであり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであると言える。また、仮にそうでないとしても上記のような刊行物1の記載からみて刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであると言える。
【6】特許法第36条第6項についての判断
本件第3発明は本件第2発明に対して、「200〜3000nmのスペクトル領域での反射帯域が、2800nmまでの帯域幅である」との要件を付したものであるが、この要件は本件明細書の発明の詳細な説明の何処にも記載されていないので、係る特許請求の範囲の記載は特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであると言うことはできない。
してみると、本件特許請求の範囲の請求項3の記載は特許法第36条第6項に規定する記載要件を満たしていないものである。
【7】むすび
以上の理由により、本件第1発明、第2発明、第4発明及び第5発明の特許は特許法第29条第1項第3号あるいは同条第2項の規定に違反してされたものであり、また、本件第3発明の特許は特許法第36条第6項に規定する記載要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件第1発明、第2発明、第4発明及び第5発明の特許は特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものであり、また、本件第3発明の特許は特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
広いコレステリック反射帯域を有する配向三次元架橋ポリマー材料の製法、そのような材料、コレステリックフィルム並びに広帯域フィルタ、偏光子及びリフレクタ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 コレステリック特性を有するポリマー材料が、該ポリマー材料に最低100nmの幅のコレステリック反射帯域をもたらすポリマーネットワークの密度勾配を有し、抽出すべきポリマーの可溶性パラメーターとの差が5単位より大きくない可溶性パラメーターを有する抽出剤を、ポリマー材料と接触させることにより該密度勾配を達成することを特徴とする、コレステリック特性を有するポリマー材料。
【請求項2】 請求項1に記載のポリマー材料からなる、コレステリックフィルム。
【請求項3】 200〜3000nmのスペクトル領域での反射帯域が、2800nmまでの帯域幅である、請求項2に記載のコレステリックフィルム。
【請求項4】 フィルムの各部分領域で反射帯域が異なる、請求項2に記載のコレステリックフィルム。
【請求項5】 請求項1に記載のコレステリック材料からなる、広帯域フィルター、偏光子及びリフレクタ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、広いコレステリック反射帯域を有する三次元架橋ポリマー材料の製法及びその方法により製造されたフィルタ、リフレクタ及び偏光子に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、配向コレステリック層は、メソゲン基から成るらせん軸が、フィルムの両方の境界面に対して垂直になっている分子配列を示す。らせんのピッチは全層厚で一定である。このようなフィルムは光学的に活性であり、かつ偏光せずに入射する光を、反射波長の領域で2つの円偏光された部分光に分け、その際一方の部分光は反射され、かつ他方の部分光は透過する点で際立っている。両方の光割合は、光学活性層中に存在するキラル剤により特定されるキラリティーにより異なる。このようなコレステリック液晶のキラル剤の種類及び割合が、ねじれ構造のピッチを、従って反射光の波長を特定する。構造のねじれは、右巻きでも左巻きでもありうる。反射色は、ピッチpと称されるねじれ構造のピッチ及び平均分子屈折率nに関係している。この関係は、反射光の中心波長に当てはまる:
λ=n×p
反射光は、両方の屈折率の差から生ずる帯域幅を有する:
Δλ=p×(ne-no)
no及びneは常光線及び非常光線の屈折率を示し、一方で、平均屈折率nに関しては、次の式が該当する:
n=1/2(no+ne)
コレステリック相を有するポリマーは通常、0.1〜0.2の屈折率差Δnを有し、可視スペクトル範囲の光に関して、<100nmの反射光の帯域幅を生ずる。帯域幅は殊に光学スペクトルの青色領域の光で、たった30〜50nmであることが多い。
【0003】
このようなコレステリックフィルムとλ/4-特性を有する遅延素子との組み合わせにより、直線偏光の発生が可能になる。コレステリックポリマーの使用下でのこのような組み合わせば、例えば”Polarizing Color Filters made from Cholesteric LC Silicones”(SID 90 Digest,1990,p.110-113)とのタイトルでR.Maurer u.a.により記載されている。
【0004】
フィルター及びリフレクタの範囲で使用されるコレステリック層は、広いスペクトル範囲に亙る光学的特性の調節を必要とし、その際、反射帯域の中間波長も、帯域の幅も可能な限り柔軟に調節可能でなければならない。帯域幅の適合は従来、分子最適化による屈折率変更の限られた可能性から生ずる狭い範囲内でのみ行うことができた。通常、好適なモノマー及び好適なキラル剤の組み合わせにより架橋前に、これらの限られた帯域幅を有するポリマーを調節して、架橋により固定する。架橋の後に通常、補正は不可能である。
【0005】
しかししばしば、その帯域幅が光の全可視スペクトル範囲をカバーする光学的に活性な層が必要である。このためには、最低250nmの帯域幅が必要である。これは、種々異なるピッチを有するコレステリックポリマーからなる複数の層を組み合わせることにより達成するととができる。このための提案を、前記で引用したようにR.Maurerに見いだすことができる。このような多層の製造は迂遠であり、かつ経費的に不利である。
【0006】
R.Dreherによる理論的考察(Solid State Communication,Vol.12,p.519-522,1973,S.Mazkedian,S.Melone,F.Rustichelli,J.Physique Colloq.36,C1-283(1974)及びL.E.Hajdo,A.C.Eringen,J Opt.Soc.Am.36,1017(1976)は、ピッチがフィルムの全層厚で一時的に変化するらせん層構造は、光を広い帯域で反射する可能性を有するはずであることを示している。R.S.Pindak,C.C.Huang,J.T.Ho,Phys.Rev.Lett.32,43(1974)には、温度勾配によりノナン酸コレステリル中にピッチ勾配を生じさせることが記載されている。記載された方法の欠点は、薄膜中のポリマーの通常良好な熱伝導性の故に、困難を伴ってのみ高い温度勾配を生じさせることができることである。生じたピッチ勾配はそれぞれの温度でのみ可視である。
【0007】
ヨーロッパ特許(EP)第0606940A2号明細書(Broer et al)中に、同時に及び徐々に架橋する間に種々異なるモノマー(キラル及び非キラル)を拡散することにより、連続的に変化するピッチを有するらせんを形成させることが記載されている。光度の軸方向勾配を生じさせるために付加的な染料を使用することが、より広い帯域幅に必要である。UV光での長い照射時間の他に、付加的な染料は短波長範囲でのスペクトル帯域幅を制限する。この方法のもう1つの欠点は、特定のモノマー及びキラル剤への限定により、最適な液晶特性及び調製取り扱い性に関して殆ど柔軟性がないという事実である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記の欠点を有さないポリマー材料を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、広いコレステリック反射帯域を有する配向三次元架橋ポリマー材料の製法に関し、これは、抽出可能な材料成分を含むコレステリック特性を有するポリマー材料を溶剤又は溶剤混合物と接触させることを特徴とする。
【0010】
抽出可能な材料成分を含むポリマー材料とは有利には、そのネットワークが完全には形成されていないか、又はそのネットワークが抽出可能な成分を含んでいる三次元架橋ポリマー材料のことである。
【0011】
抽出可能な材料成分とは、構造の障害に成ることなく、それ自体はコレステリックネットワークに結合せずにコレステリックネットワーク中に存在し、かつ再度このネットワークから溶出することができるそれぞれの成分のことである。
【0012】
溶剤又は溶剤混合物との接触により、コレステリックネットワークに結合されていない成分を、ネットワークから除去する。
【0013】
溶剤との接触を浸漬、重ね塗り又は噴霧により行うのが有利である。
【0014】
溶剤とポリマー材料フィルムとの容量比は、0.1を上回るのが有利である。
【0015】
溶剤を用いてのポリマー材料の本発明による処理は-30℃〜150℃で、特に有利には室温で行うのが有利である。
【0016】
本発明の方法で使用することができるコレステリック特性を有するポリマー材料は例えば、出発成分の架橋反応を予定より早く中断して、それ自体架橋可能な成分の一部を架橋させないままで存在させることにより得ることができる。
【0017】
これは例えば、光化学的に架橋可能なモノマー又はポリマーでは、UV照射時間の短縮により達成することができる。
【0018】
本発明の方法で使用することができるポリマーを製造するための第2の方法は、強い照射にも関わらず一部の架橋反応のみが進行できるように、ポリマーを製造するための出発成分の混合物中の光重合開始剤の含有率を低くして使用することである。
【0019】
本発明の方法で使用することができるポリマーを製造するための第3の可能性は、コレステリック層と相容性の架橋不可能なポリマー又はオリゴマーを、ポリマーを製造するための出発成分の混合物に添加することにある。
【0020】
本発明の方法で使用することができるポリマーを製造するための第4の可能性は、架橋可能な基の非常に低い濃度を有する出発材料を使用することにある。
【0021】
確定的でないこれらの列挙は、どのように特定の割合の抽出可能な材料をポリマー中に含めるかということを例示している。
【0022】
このような部分架橋されたネットワークの製造は、光重合可能な系に限られない。例えば、熱活性可能なラジカル形成剤により部分架橋されたポリマーに移行することができるモノマー、オリゴマー、ポリマーが、重付加又は重縮合により部分架橋されるポリマーと同様に好適である。
【0023】
コレステリック特性を有するこのような部分架橋されたポリマー材料は、コレステリック特性を有するポリマー材料の製造に好適な任意の材料から製造することができる。このような材料は例えば、ヨーロッパ特許(EP)第358208号明細書(米国特許(US)第5211877号明細書に相当)又はヨーロッパ特許(EP)第66137号明細書(米国特許(US)第4388453号明細書に相当)から公知であり、その際、ポリマー材料を製造するための架橋反応は、完全な架橋の前に終了させなければならない。例えば前記の文献中の材料では、有利には非常に短いUV-照射又は架橋可能基の数の低減又は光開始剤の非常に少ない濃度により弱い架橋が達成される。
【0024】
抽出可能な重合可能な基の例は、米国特許(US)第4637896号明細書又は米国特許(US)第660038号明細書中にも記載されている。
【0025】
本発明の方法では、部分架橋されたコレステリックポリマーとして、90%までの抽出可能成分を有するポリマーを使用するのが有利である。
【0026】
部分架橋されたコレステリックポリマーを層状物の形で、特に有利にはフィルムの形で使用するのが有利である。層状物は5〜200μm、特に有利に15〜80μmの厚さを有するのが有利である。
【0027】
その可溶性パラメーターが、抽出されるポリマーもしくはその可溶成分の可溶性パラメーターと等しいか、又は近い溶剤又は種々異なる溶剤からなる混合物を用いて抽出を有利に行うことができる。それらの溶剤は以降では、抽出剤とも称される。
【0028】
近い可溶性パラメーターを有する溶剤とは本発明の意味では、その可溶性パラメーターと、抽出されるポリマーもしくはその可溶成分の可溶性パラメーターとの差が5単位より大きくない溶剤のことである。可溶性パラメーターの記載が例えば、Polymer Handbook,J.Brandrup,E.H.Immergut,Verlag J.Wiley & Sons 1975,Kapitel IV,S337-353中にある。そこにはそれらを測定するための方法も記載されている。
【0029】
使用される抽出剤の可溶性パラメーターとポリマー、例えば液晶ポリシロキサンもしくはネットワーク中の可溶成分の可溶性パラメーターとの差が少なくなるほど、拡散工程及び抽出工程は激しくなる。
【0030】
可溶性パラメーターにおいて、抽出すべきポリマーの値との差が、2〜3単位より少ない抽出剤が特に有効であることが判明している。部分的に架橋されたポリマー材料の処理のために、2種以上の溶剤からなる混合物を使用することもでき、その際、抽出されるポリマーもしくはその可溶性成分の可溶性パラメーターとの差が5単位より大きくない少なくとも1種の溶剤が、溶剤混合物中に0.01容量%より多く含有されている。種々異なる溶剤の組み合わせにより、抽出の規模及び速度に影響を及ぼすことができる。
【0031】
例えば、例中で使用されているようにポリシロキサンでは、可溶性パラメーター17〜21(J/m3)1/2の溶剤が高い抽出をもたらし、その際、抽出されるポリシロキサンの可溶性パラメーターは19(J/m3)1/2である。これらの溶剤では、早すぎる抽出を、第2の僅かな活性の溶剤により抑制する事ができる。例えばこのために、グリコール(例えばジエチレングリコール)又は短鎖アルコール(例えばヘキサノール)を挙げることができる。<17又は>21の値を有する抽出剤では、例中で使用されるポリマーでは抽出がますます遅くなる。反射帯域の拡大は、抽出剤の同じ作用時間では、溶剤パラメーター>17及び<21を有する抽出剤よりも僅かである。
【0032】
本発明方法での抽出は、ネットワーク中の密度勾配が、ポリマーの表面に向かって垂直に生じるように行うのが有利である。
【0033】
本発明方法の1つの方法変法では、部分架橋されたポリマー材料は、配向及び部分架橋された状態で、溶剤非透過性担体材料の上にあり、かつそのまま抽出剤中に入れられる。従って抽出剤の拡散導入及び非架橋部分の抽出を、フィルムの片方の界面からのみ行う。
【0034】
本発明方法の別の方法変法では、担体を伴わないポリマーフィルム又は使用される抽出剤に対して透過性の担体上のポリマーフィルムを、抽出剤中に入れる。これにより、抽出剤は、両面からポリマーフィルム中に侵入する。これにより、フィルムの両方の層面から、ポリマーフィルム中の両面ネットワーク密度勾配の結果を伴う抽出が生じる。
【0035】
最大ネットワーク密度勾配を達成するために、抽出剤中での浸漬時間は時間的に、層担体に向いているフィルム面が、まだ完全には抽出されずに、かつフィルムの抽出剤に向いている面が最大に抽出されているように限定する。
【0036】
浸漬時間及び/又は抽出剤を変更することにより、様々なネットワーク密度勾配をポリマー材料中に製造することができる。
【0037】
浸漬浴の後にまだポリマーフィルム上に存在する抽出剤を引き続き、ポリマーから除去するのが有利である。
【0038】
これは例えば、抽出剤吸収材料を用いて行うか、又はポリマーを、抽出剤と混合可能な液体中に浸漬するか、又はそれを噴霧し、引き続き乾燥させることにより行う。
【0039】
抽出剤を除去するための液体の可溶性パラメーターは有利に、使用される抽出剤の可溶性パラメーターよりも最低1単位多く、ポリマーの可溶性パラメーターから離れているべきである。
【0040】
抽出剤を除去する方法工程は多工程でも実施することができる。その際、それぞれ更なる方法工程のために、可溶性パラメーターがそれぞれ、抽出剤の可溶性パラメーターからどんどん離れていくように、液体を選択する。
【0041】
例えば、なお抽出剤を含有するポリマーフィルムを直接、乾燥することも可能である。これは、10℃〜140℃及び圧力0.1〜1200ミリバールで行うのが有利である。
【0042】
抽出剤の除去及び乾燥の後に、フィルム中にはネットワーク密度勾配が存在する。このような本発明により得られるフィルム上に照射される光は電磁スペクトルそのものの幅で、反射光の長波帯域限界は、本来の反応帯域とほぼ一致し、一方で、反射光の短波帯域限界の位置は、ポリマーの抽出された成分により決定されるように影響を及ぼされる。従ってこれは、抽出剤の種類により、また浸漬時間により決められる。
【0043】
好適な方法進行により、抽出工程が、ポリマー材料の全密度に亙って、同じ規模で生じないことを保証する必要がある。
【0044】
抽出剤がポリマー材料に完全には透過しないのが有利である。
【0045】
抽出の後にまだポリマー材料中に存在する重合可能基を後架橋するのが有利である。
【0046】
これは例えば、化学光を用いての後架橋により行う。しかし同様に、他の公知の架橋方法により、例えば熱活性可能なラジカル形成剤を用いて後架橋を実施することもできる。
【0047】
ネットワーク密度勾配を生じさせる本発明の処理の後に、ポリマー材料のコレステリック反射帯域の拡大が示される。
【0048】
本発明は更に、コレステリック特性を有するポリマー材料にも関し、その際、このポリマー材料は、そのポリマーネットワークに密度勾配を有し、それが、そのポリマー材料に、少なくとも100nmの幅のコレステリック反射帯域をもたらしていることを特徴とする。
【0049】
本発明のポリマー材料はフィルムの形で存在するのが有利である。
【0050】
このフィルムを公知のコレステリックフィルムと同様に製造するが、但し、コレステリック材料を完全には重合させずに、部分架橋させ、引き続き、溶剤と接触させる。コレステリックフィルムの製造は例えば、米国特許(US)第5211877号明細書から公知である。
【0051】
本発明は従って、コレステリック特性を有するポリマー材料を含有するコレステリックフィルムにも関し、これは、ポリマー材料がネットワーク密度勾配を有し、これが、そのポリマー材料に、少なくとも100nmの幅のコレステリック反射帯域をもたらすことを特徴とする。
【0052】
本発明のコレステリックフィルムは有利に、400〜700nmのスペクトル範囲で100nm〜300nmの帯域幅を有する反射帯域又は200〜450nmのスペクトル範囲で50nm〜250nmの帯域幅を有する反射帯域又は500〜3000nmのスペクトル範囲で100nm〜500nmの帯域幅を有する反射帯域を有する反射帯域を有するのが有利である。
【0053】
コレステリックフィルムは、殊に広帯域フィルタ、偏光子及びリフレクタとして好適である。
【0054】
本発明は従って、本発明のコレステリック材料からなり、有利にはフィルムの形の広帯域フィルタ、偏光子及びリフレクタにも関する。
【0055】
使用例は、LC-ディスプレーの明かりの場合に光り吸収を高めるためのコレステリックリフレクタ、プロジェクトディスプレイの偏光子、表示ディスプレー用の構造体化多色フィルター、可視スペクトル範囲内又は範囲外の重要印刷物中の安全マーク並びに赤外線用フィルター及びリフレクタである。
【0056】
本発明のフィルター、偏光子及びリフレクタは構造体であってよいか、かつ/又は多色であってよい。これらはコレステリックフィルムからなり、その場合、フォトマスク及び様々な温度の使用下での部分架橋の際に、フィルム表面中に、反射帯域の様々な中波長を有する領域が生じる。色セグメントは個々に、グループで又は全て一緒に、帯域を拡大するための方法工程に使用することができる。
【0057】
本発明は更に、構造化された多色フィルター、リフレクタ又は偏光子からなる光学素子及び多色構造体の選択された波長領域に相応する光用遅延素子に関する。
【0058】
これらの光学素子は、本発明のコレステリックフィルム及び波長500nmの光に関して50〜5000nmの遅延を有する光学遅延素子からなるのが有利である。遅延素子は担体材料として同時に使用することができる。
【0059】
光学遅延素子は、ポリマーのコレステリック反射帯域のスペクトル範囲の一部に相応する選択された反射光の1/4-波長単位遅延させるのが有利である。
【0060】
その場合、ポリマーのコレステリック反射帯域に相応する全スペクトル領域に対して、1/4の波長単位を有する光学遅延素子が特に有利である。
【0061】
付加的に、光学素子は更に、反射防止被覆を有して良い。
【0062】
図1は、例1からのフィルムの透過スペクトルを示している。
【0063】
図2は、例2からのフィルムの反射スペクトルを示している。
【0064】
【実施例】
次の例は、本発明の詳述に役立つ。
【0065】
例1:フィルム1の製造
物質Wacker‐LC‐Silicon‐CC3767(Wacker Chemie GmbH;81737 Muenchenから入手)は、コレステリック液晶オルガノシロキサンである。この物質に、光開始剤Irgacure 907(Ciba-Geigy社)2重量%を添加し、引き続き、90℃で磨耗されたポリイミド被覆(Merck社 PI-Kitt 2650)を有するガラスプレート上に施与する。
【0066】
第2の場合によりポリイミド被覆されたガラスプレートでカバーした後に、溶融フィルムを分配するために両方のガラスプレートを相互に動かす。両方のガラスプレートの間に、36μm厚のスペーサーがあり、オルガノシロキサン/光開始剤の相応するフィルム厚が調節される。このフィルムに80℃で2秒、UV-光線(40mW/cm2、UVA-領域)を照射する。1枚のガラスプレートを除去する。付着性のフィルムを伴ったガラスプレートを、下記のように測定する。これは透過において、プラトーで57nmの幅を有する651nmの帯域を有する。反射された光は、左旋に偏光されている。
【0067】
フィルムをガラスプレート上で、1-ヘキサノール(可溶性パラメーター21.9、Polymer Handbookによる)10容量部及びフラン(可溶性パラメーター19.2)9容量部からなる混合物中に浸漬し、10秒後に取り出し、純ヘキサノール浴中に2秒浸漬して、動かし、かつ90℃で2分間、ヒートプレート上で、残留溶剤を留去させた。
【0068】
フィルムを透過に関して測定した。測定を、スペクトル光度計(Perkin Elmer社 Lambda 19,もしくはInstrument Systems社 Spectro 320)中で、直線偏光子及びλ/4-フレネル菱面体を用いて(共に方解石からなる)生じさせた円偏光された光を用いて行った。測定は、両方の円偏光に関する光の透過率を示す。結果を図1に示している。コレステリック反射帯域の特異的幅は、元来の57nmから250nmに拡がっている。このフィルムは、650〜400nmの広い反射帯域の全帯域に亙って、両方の円偏光を選択する。
【0069】
例2:フィルム2の製造:
両方の化合物A及びB(A:テトラメチルジシロキサンをメタクリル酸-(4-アリルオキシベンゾイル-4-ヒドロキシフェニル)エステル50モル%及び4-アリルオキシ安息香酸-コレステロールエステル50モル%を用いてヒドロシリル化することにより得られる;B:テトラメチルジシロキサンをメタクリル酸(4-アリルオキシベンゾイル-4-ヒドロキシフェニル)エステル50モル%及び4-アリルオキシ安息香酸-ジヒドロ-コレステロールエステル50モル%を用いてヒドロシリル化することにより得られる)を、A:=19重量%及びB:=81重量%の比で混合する。この100重量部に、光開始剤Irgacure907(Ciba-Geigy社)2重量部を添加する。
【0070】
物質混合物を90℃で、磨耗されたポリイミド被覆(Merck社、PI Kitt 2650)を有するガラスプレート上に施与する。第2の同様にポリイミド被覆されたガラスプレートでカバーした後に、両方のガラスプレートを相互に動かして、溶融フィルムを分配する。両方のガラスプレートの間に、36μm厚のスペーサーがあり、相応するフィルム厚が調節される。フィルムに85℃で2秒間、UV-光(40mW/cm2、UVA領域)を照射する。一枚のガラスプレートを除去する。付着しているフィルムを有するガラスプレートを例1の記載と同様に、反射添加物の使用下に、6°/6°-配置で測定する。これは、反射では、プラトーで34nmの幅を有する663nmで帯域を示す。反射光は左旋に偏光している。
【0071】
フィルムを、1-ヘキサノール(可溶性パラメーター21.9)10容量部及びキシレン(可溶性パラメーター18.0)7容量部からなる混合物に浸漬させる。5秒後に取り出し、90℃で2分、ヒートプレート上で残留溶剤を留去させる。フィルムを、反射に関して例1と同様に測定する。測定を、例1の記載と同様に生じさせる円偏光で行う。
【0072】
図2はこれらのフィルムの反射スペクトルを示している。コレステリック反射帯域の特異的な幅は、元来の34nmから125nmに拡がっている。このフィルムは、反射において、625〜500nmの波長領域に亙って、両方の円偏光を選択する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
例1により得られたフィルムの反射スペクトルを示す図
【図2】
例2により得られたフィルムの反射スペクトルを示す図
 
訂正の要旨 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「コレステリック特性を有するポリマー材料が、該ポリマー材料に最低100nmの幅のコレステリック反射帯域をもたらすポリマーネットワークの密度勾配を有ることを特徴とする、コレステリック特性を有するポリマー材料。」を、「コレステリック特性を有するポリマー材料が、該ポリマー材料に最低100nmの幅のコレステリック反射帯域をもたらすポリマーネットワークの密度勾配を有し、抽出すべきポリマーの可溶性パラメーターとの差が5単位より大きくない可溶性パラメーターを有する抽出剤を、ポリマー材料と接触させることにより該密度勾配を達成することを特徴とする、コレステリック特性を有するポリマー材料。」と訂正します。
異議決定日 2003-01-30 
出願番号 特願平10-120897
審決分類 P 1 651・ 537- ZA (C08G)
P 1 651・ 121- ZA (C08G)
P 1 651・ 113- ZA (C08G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 加藤 友也▲吉▼澤 英一  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 船岡 嘉彦
中島 次一
登録日 2000-04-28 
登録番号 特許第3062150号(P3062150)
権利者 コンゾルテイウム フユール エレクトロケミツシエ インヅストリー ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
発明の名称 広いコレステリック反射帯域を有する配向三次元架橋ポリマー材料の製法、そのような材料、コレステリックフィルム並びに広帯域フィルタ、偏光子及びリフレクタ  
代理人 久野 琢也  
代理人 ラインハルト・アインゼル  
代理人 松村 修  
代理人 山崎 利臣  
代理人 斉藤 武彦  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 山崎 利臣  
代理人 ラインハルト・アインゼル  
代理人 久野 琢也  

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