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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1083037 |
異議申立番号 | 異議2001-71369 |
総通号数 | 46 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-07-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-04-27 |
確定日 | 2003-06-23 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3131262号「貼付剤および貼付製剤」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3131262号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.訂正の適否 平成15年4月28日付け訂正請求書による訂正の適否を検討する。 (1)訂正の内容 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1が 「膏体層を有する伸張性の支持体と、この膏体層表面を被覆する膏面被覆材とで構成される貼付剤であって、上記貼付剤を180度角定速剥離強度試験したとき、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が1〜15g/cmであり、膏体層を有する伸張性の支持体を1分間に300mmの速さで自長の100%の長さに引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、110〜200%であることを特徴とする貼付剤。」 とあるのを、 「膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体と、この膏体層表面を被覆する膏面被覆材とで構成される貼付剤であって、上記貼付剤を180度角定速剥離強度試験したとき、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであり、膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体を1分間に300mmの速さで自長の100%の長さに引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、150〜200%であることを特徴とする貼付剤。」 と訂正する。 訂正事項b 明細書の【0007】が 「すなわち、請求項1の貼付剤は、膏体層を有する伸張性の支持体と、この膏体層表面を被覆する膏面被覆材とで構成される貼付剤であって、上記貼付剤を180度角定速剥離強度試験したとき、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が1〜15g/cmであり、膏体層を有する伸張性の支持体を1分間に300mmの速さで自長の100%の長さに引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、110〜200%であることを特徴とする。また、請求項2の貼付製剤は、上記膏体層に、薬物を含有させたことを特徴とする。本発明において「180度角定速剥離強度試験」は、テンシロン引張り試験機(商品名テンシロンSTM-T50BP 東洋ボールドウイン社製)を使用して行われ、23℃で24時間保存した後の貼付剤を1cm幅に切断して5枚のサンプルを調製し、膏体層と膏面被覆材とを180度方向に300mm/分の速さで剥離させてその接着力を測定して、膏体層と膏面被覆材間の剥離力を求めるものである。」とあったものを 「すなわち、請求項1の貼付剤は、膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体と、この膏体層表面を被覆する膏面被覆材とで構成される貼付剤であって、上記貼付剤を180度角定速剥離強度試験したとき、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであり、膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体を1分間に300mmの速さで自長の100%の長さに引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、150〜200%であることを特徴とする。また、請求項2の貼付製剤は、上記膏体層に、薬物を含有させたことを特徴とする。本発明において「180度角定速剥離強度試験」は、テンシロン引張り試験機(商品名テンシロンSTM-T50BP 東洋ボールドウイン社製)を使用して行われ、23℃で24時間保存した後の貼付剤を1cm幅に切断して5枚のサンプルを調製し、膏体層と膏面被覆材とを180度方向に300mm/分の速さで剥離させてその接着力を測定して、膏体層と膏面被覆材間の剥離力を求めるものである。」と訂正する。 訂正事項c 明細書の【0008】が、 「【作用】上記構成によれば、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が1〜15g/cmであるので、上記膏面被覆材剥離時に、この膏面被覆材が容易に剥離できる。また、膏面被覆材が容易に剥離できるので、貼付剤が変形することがない。」とあったものを、 「【作用】上記構成によれば、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであるので、上記膏面被覆材剥離時に、この膏面被覆材が容易に剥離できる。また、膏面被覆材が容易に剥離できるので、貼付剤が変形することがない。」と訂正する。 訂正事項d 明細書の【0009】が 「本発明をより詳細に説明すると、貼付剤に使用する支持体は、伸張性を有するもの、すなわち、膏体層を有する支持体を一定方向に荷重を掛けて引張ったとき、上記支持体が引張り前の長さと比較して100%復元しないことを意味する。具体的には、1分間に300mmの速さで自長の100%の長さを引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、110〜200%、好ましくは130〜200%、さらに好ましくは150〜200%のものである。」とあったものを 「本発明をより詳細に説明すると、貼付剤に使用するプラスチックフィルまたはシートからなる支持体(以下、「伸張性を有する支持体」、「伸張性の支持体」、「伸張性支持体」と称する。)は、伸張性を有するもの、すなわち、膏体層を有する支持体を一定方向に荷重を掛けて引張ったとき、上記支持体が引張り前の長さと比較して100%復元しないことを意味する。具体的には、1分間に300mmの速さで自長の100%の長さを引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、150〜200%のものである。」 に訂正する。 訂正事項e 明細書の【0013】が 「本発明の貼付剤は、膏体層を有する伸張性の支持体と、この膏体層を被覆する膏面被覆材とで構成され、上記膏体層と膏面被覆材間の180度剥離力が1〜15g/cm、好ましくは2〜12g/cm、より好ましくは3〜9g/cmを有するものである。上記剥離力が1g/cm未満であれば、貼付剤加工時に膏体層と膏面被覆材とが剥離して加工が困難であり、一方、15g/cmを越えると、膏面被覆材剥離時に、膏体層を有する伸張性の支持体が変形して、常に一定面積を貼付することが困難となり好ましくない。なお、本発明において、上記の剥離力は、前記膏体層と膏面被覆材との組合せによって調整される。」とあったものを 「本発明の貼付剤は、膏体層を有する伸張性の支持体と、この膏体層を被覆する膏面被覆材とで構成され、上記膏体層と膏面被覆材間の180度剥離力が2.5〜13g/cm、好ましくは2.5〜12g/cm、より好ましくは3〜9g/cmを有するものである。上記剥離力が2.5g/cm未満であれば、貼付剤加工時に膏体層と膏面被覆材とが剥離して加工が困難であり、一方、13g/cmを越えると、膏面被覆材剥離時に、膏体層を有する伸張性の支持体が変形して、常に一定面積を貼付することが困難となり好ましくない。なお、本発明において、上記の剥離力は、前記膏体層と膏面被覆材との組合せによって調整される。」と訂正する。 訂正事項f 明細書の【0066】が 「発明の効果】本発明の貼付剤および貼付製剤は、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が1〜15g/cmであるので、上記膏面被覆材剥離時に、膏面被覆材が容易に剥離でき、貼付剤が変形することなく、常に一定面積の貼付剤および貼付製剤を与える。」とあったものを 「発明の効果】本発明の貼付剤および貼付製剤は、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであるので、上記膏面被覆材剥離時に、膏面被覆材が容易に剥離でき、貼付剤および貼付製剤が変形することなく、常に一定面積の貼付剤および貼付製剤を与える。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、拡張・変更の存否及び新規事項の追加の有無 訂正事項aは訂正前の請求項1の「支持体」を、「プラスチックフィルムまたはシートからなる支持体」、「剥離力が1〜15g/cm」を「剥離力が2.5〜13g/cm」、「復元率が……110〜200%である」を「復元率が……150〜200%である」とそれぞれ限定するものである。これらについて、願書に添付された明細書(以下、特許明細書という。)には、【0003】に、従来技術として膏体層の支持体は伸縮性の不織布、編物あるいは非伸張性プラスチックフィルム等である旨を記載されているので、本件発明についてプラスチックフィルム又はシートの文言はないが、上記従来技術を前提としていることは明らかであり、【0011】にポリエチレン、塩化ビニル、エチレン-ビニルアルコール共重合体のフィルム又はシート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン等の無延伸あるいは一軸または二軸延伸のフィルムまたはシート等とプラスチックフィルム又はシートであることが明らかな例示があるから、「プラスチックフィルム又はシートからなる支持体」の記載は特許明細書記載の範囲内のものと認められる。剥離力については、【0061】に実施例の上限と下限の範囲として、復元率については、【0009】に好ましい範囲として記載されているから、これらの訂正は、特許明細書記載の範囲内ものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 訂正事項b〜fは、請求項1の訂正に伴い明細書の発明の詳細な説明の項の記載を整合させたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして、これらの訂正は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 2.特許異議申立についての判断 (1)本件発明 本件の請求項1及び2に係る発明は、特許明細書の記載からみて、訂正後の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体と、この膏体層表面を被覆する膏面被覆材とで構成される貼付剤であって、上記貼付剤を180度角定速剥離強度試験したとき、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであり、膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体を1分間に300mmの速さで自長の100%の長さに引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、150〜200%であることを特徴とする貼付剤。 【請求項2】 請求項1の膏体層に、薬物を含有させたことを特徴とする貼付製剤。」 (2)平成13年10月22日付け取消理由通知で引用された刊行物 平成13年10月22日付け取消理由通知で引用された刊行物1〜9は、異議申立人久保田良子の提出した甲第1、2号証、異議申立人林國治の提出した甲第1〜7号証に対応するものである。 刊行物1:特開昭63-1185920号公報 刊行物1には、支持体がエチレン-ビニルアルコール共重合体でなるテープ製剤に関して、このポリマーのシートは15〜25℃という平均的室温においてポリマーは比較的堅い状態にあり、皮膚表面に貼付後はポリマーのガラス転移温度を越えるためポリマーは柔軟性を有するようになること(3頁左上欄)、及びテープ製剤は、常法により調製され、膏体層上に剥離ライナーを密着させてもよいことが記載されている。 刊行物2:特開昭59-141943号公報 刊行物2には、粘着性フィルムドレッシングについて記載され、ポリマーフィルムは水蒸気透過性であり、また様々な身体の輪郭に順応すべく十分に伸縮性を有していること、これらのフィルムは、その片面が医療用グレードの感圧接着剤が塗布され、この接着剤は使用時に容易に除去可能である剥離紙又は他の裏打材料で保護されていること(2頁右下欄〜3頁左上欄)、及び、剥離紙の引き剥が値の好ましい値が4.5〜7.8g/cm、8.9〜12.2g/cmであることが記載されている。 刊行物3:Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Thechnology, Second Edition :Edited by Donatas Satas ; VAN NOSTRAND REINHOLD(1989) p515-517, p585-592及びp750-754(翻訳文としてDonatas Statas 編著、水町浩一監訳「粘着技術ハンドブック」日刊工業新聞社、1997年3月31日発行、567-569、645-654及び842-843頁参照) 刊行物3には、シリコーン系粘着剤の医療用途として、経皮吸収剤の粘着剤として用いられること、粘着剤層を保護するためにはく離ライナーが必要であり、医療グレードのシリコーン系粘着剤は粘着性を低くしてあるので、工業用の同等品よりもはるかに容易にはく離ライナーからはがすことができること、はく離ライナーからのはく離値が1.4g/cmであることが(翻訳文567〜568頁)記載されている。 刊行物4:特表平3-505047号公報 刊行物4には、創傷用ドレッシング、留置カテーテル用ドレッシングなどに用いられる接着シート材(2頁左上欄)について、接着剤層から剥離裏紙を分離する剥離力が5〜25gf/cmであること(2頁左下欄)が記載されている。 刊行物5:特開平1-149720号公報 刊行物5には、高伸縮性繊維集合体層と低伸張性支持体層とを接合した剥離強力が20〜200g/5cmの積層体からなる皮膚貼付用基布(特許請求の範囲第1項)について記載され、これは高伸縮性の繊維集合体を用いた基布にコーティング機を使用して連続的に治療用薬剤液を塗布し得るように、高伸縮性集合体層に低伸張性支持体層を接合したものであって、塗布後低伸張性支持体層が容易に剥離できるものである旨(2頁左上〜右下欄)が記載されている。 刊行物6:特開昭57-185217号公報 刊行物6には、適用体面の伸縮挙動に追従するのに充分な可撓性且つ伸張性を有する裏打部材の表面に薬剤を含有する感圧接着剤を塗布した医薬製剤(特許請求の範囲)、裏打部材はポリオレフィン、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのフィルム又はシートであること、(3頁右下欄)、実用的には100〜800%伸びる材質を選択すること(4頁左上欄)、実施例2〜3に支持体層として軟質ポリ塩化ビニル又はポリエチレンフィルムを用い、その上に薬剤含有感圧接着剤層、離型ライナーを設けた医薬製剤が記載されている。 刊行物7:特開平3-161433号公報 刊行物7には、50%伸張時伸張回復率が40%以上である伸縮性支持体を貼付剤に用いること(特許請求の範囲)が記載され、実施例では該回復率55%の支持体は、比較例の回復率20%、45%の支持体より使用テストで優れていること(表-1)が記載されている。 刊行物8:特開平2-104519号公報 刊行物8には、伸縮性を有する不織布に薬剤を塗布するためのパップ剤用基布(1頁右下欄)について記載され、この基布の100%伸張時の回復率が90%以上であること(特許請求の範囲)記載されている。 刊行物9:特開平3-200885号公報 刊行物9には、ポリウレタン弾性繊維からなる不織布の一方表面上にオルガノポリシロキサン系感圧粘着剤からなる粘着層を設けた感圧粘着テープ(特許請求の範囲)が記載され、実施例1及び2の粘着テープの物性として100%伸張時の回復率が88〜92%であり、比較例1のポリウレタンフィルムでは30〜40%であること(第1表)が示されている。 (3)対比・判断 (3-1)請求項1に係る発明について 請求項1に係る発明と、刊行物6に記載された発明とを対比する。 刊行物6には、100〜800%伸びるポリエチレンやポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムシートである裏打部材(支持体)、薬剤含有感圧接着剤(薬剤含有膏体層)、及び離型ライナー(膏面被覆材)をもつ医薬製剤が記載されているといえるから、両者は、膏体層を有するプラスチックフィルムまたはシート(以下、単にプラスチックフィルムという。)からなる支持体と、この膏体層表面を被覆する膏面被覆材とで構成される貼付剤である点で一致し、前者は、膏体層と膏面被覆材間の剥離力、伸張性支持体の1分間に300mmの速さで自長の100%の長さに引っ張った時の伸張性支持体復元率が引っ張り前の長さと比較した復元率(以下、100%伸張時復元率という。)を、それぞれの数値が2.5〜13g/cm、150〜200%であると限定しているのに対して、後者は該剥離力及び伸張性支持体の復元率については記載がない点で相違する。 そこで、これらの相違点について検討する。 まず、伸張性の支持体についてみると、請求項1に係る発明の100%伸張時の復元率が150〜200%である伸張性のプラスチックフィルムは、一度伸ばすと元の長さに戻らないものであって、元の長さに戻ろうとする伸縮性のフィルムとは異なるものである。これに対して、刊行物1、2及び4には支持体の100%伸張時の復元率については何等記載されていない。また、刊行物5及び8〜9に記載の支持体は、「高伸縮性」、「100%伸張時の回復率が90%以上」及び「100%伸張時の回復率が88〜92%」と記載され、これらの100%伸張時の回復率を復元率で表現すると、110%以下、108〜112%となり、これらは伸張性ではなく、高伸縮性の支持体を用いることが記載されているのである。また、刊行物7に記載の支持体は、100%伸張時ではなく「50%伸張時伸張回復率が40%以上である伸縮性」支持体であり、請求項1に係る発明の支持体とは単純には比較できないが、この回復率を復元率で表現すると160%以下となる。しかし、実施例と比較例の結果からみると、この例も該復元率が150%より小さいものの方がよいことが示されているのであるから、刊行物7にも伸縮性の支持体が好ましく、伸張性の支持体は好ましくないことが示されているのである。 そうすると、刊行物6に記載の伸張性であるか伸縮性であるかが不明の100〜800%伸びるプラスチックフィルムに代えて、本件特許の出願前の技術水準と認められる刊行物5〜9に貼付剤の支持体として用いることが好ましくないことが示されている100%伸張時復元率が150〜200%の伸張性のプラスチックフィルムを適用することは当業者が容易に想到できるものではない。 次に、剥離力について検討すると、刊行物5に高伸縮性繊維集合体層と低伸張性支持体層との剥離強力が記載されているが、これは2層の支持体間の剥離強度であるから、膏体層と膏面被覆材間の剥離強度に適用できるものではない。刊行物2〜4に貼付剤における粘着剤層(膏体層)と剥離紙(膏面被覆材)間の剥離力が1.4〜25g/cmと請求項1に規定する範囲内の剥離力が記載されているものの、貼付剤において上記100%伸張時復元率が150〜200%の伸張性プラスチックフィルム支持体を用いることが予想できないのであるから、これを支持体とする膏体層と膏面被覆材間の剥離力を限定することは想起できるものではない。 請求項1に係る発明は、従来貼付剤の支持体として好ましくない該復元率が150〜200%の伸張性のプラスチックフィルムを支持体として貼付剤に用い、膏体層と膏面被覆材間の剥離力を2.5〜13g/cmと限定することによって、膏面被覆材剥離時に、膏面被覆材が容易に剥離でき、貼付剤が変形することなく、常に一定面積の貼付剤が得られることを見出し、貼付剤として使用することができるという顕著な効果を奏するものである。 したがって、請求項1に係る発明は、刊行物1〜9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3-2)請求項2に係る発明について 請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を、膏体層に薬物を含有させると限定したものであるから、刊行物1〜9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件特許は特許法第29条の規定に違反してされたものではない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 貼付剤および貼付製剤 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体と、この膏体層表面を被覆する膏面被覆材とで構成される貼付剤であって、上記貼付剤を180度角定速剥離強度試験したとき、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであり、膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体を1分間に300mmの速さで自長の100%の長さに引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、150〜200%であることを特徴とする貼付剤。 【請求項2】 請求項1の膏体層に、薬物を含有させたことを特徴とする貼付製剤。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、皮膚面に貼付して傷口の保護や皮膚を通して薬物を吸収させるための貼付剤および貼付製剤に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より薬物投与手段として、経口、注射などが知られている。近年では、臓器への作用あるいはその他の副作用を軽減させる目的で、経皮により薬物を投与する新しい手段が開発され、すでに一部で使用されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記経皮手段で使用される貼付製剤は、一般に膏体層を有する伸縮性の不織布、編物あるいは非伸張性プラスチックフィルム等の支持体と、上記膏体層表面を被覆する膏面被覆材から成り、上記膏体層とこの膏体層表面を被覆する膏面被覆材とが剥離できれば、特に問題なく使用できた。 【0004】ところが、伸張性を有する支持体を使用した貼付剤では、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が大きい場合、この膏面被覆材剥離時に貼付剤の変形が生じ易く、常に一定の膏体面積を貼付することが困難であった。 【0005】本発明は、上記課題を解決するもので、伸張性を有する支持体に膏体層が形成された貼付剤であっても、膏面被覆材が容易に剥離できて貼付剤が変形することなく、常に一定の膏体面積が貼付できる貼付剤および貼付製剤を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明者らが研究を重ねた結果、膏体層と膏面被覆材間の180度剥離力が、前記膏面被覆材剥離時の貼付剤の変形に相関することを見出し、この発明を完成した。 【0007】すなわち、請求項1の貼付剤は、膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体と、この膏体層表面を被覆する膏面被覆材とで構成される貼付剤であって、上記貼付剤を180度角定速剥離強度試験したとき、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであり、膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体を1分間に300mmの速さで自長の100%の長さに引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、150〜200%であることを特徴とする。また、請求項2の貼付製剤は、上記膏体層に、薬物を含有させたことを特徴とする。本発明において「180度角定速剥離強度試験」は、テンシロン引張り試験機(商品名テンシロンSTM-T50BP 東洋ボールドウイン社製)を使用して行われ、23℃で24時間保存した後の貼付剤を1cm幅に切断して5枚のサンプルを調製し、膏体層と膏面被覆材とを180度方向に300mm/分の速さで剥離させてその接着力を測定して、膏体層と膏面被覆材間の剥離力を求めるものである。 【0008】 【作用】上記構成によれば、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであるので、上記膏面被覆材剥離時に、この膏面被覆材が容易に剥離できる。また、膏面被覆材が容易に剥離できるので、貼付剤が変形することがない。 【0009】本発明をより詳細に説明すると、貼付剤に使用するプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体(以下、「伸張性を有する支持体」、「伸張性の支持体」、「伸張性支持体」と称する。)は、伸張性を有するもの、すなわち、膏体層を有する支持体を一定方向に荷重を掛けて引張ったとき、上記支持体が引張り前の長さと比較して100%復元しないことを意味する。具体的には、1分間に300mmの速さで自長の100%の長さを引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、150〜200%のものである。 【0010】本発明において、前記伸張性を有する支持体を使用する理由は、貼付部位の皮膚の伸縮に追従でき、貼付端部が剥離することがなく接着面積が低下しないためである。 【0011】このような支持体としては、例えばポリエチレン、塩化ビニル、エチレン-ビニルアルコール共重合体のフィルム又はシート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン等の無延伸あるいは一軸または二軸延伸のフィルムまたはシート等が挙げられる。 【0012】これら支持体の厚みは、貼付剤の支持体としての機能を満足させるものであれば特に限定されないが、取扱い性、貼付感等を考慮すると、5μm〜500μm、好ましくは30μm〜100μmのものが適当である。 【0013】本発明の貼付剤は、膏体層を有する伸張性の支持体と、この膏体層を被覆する膏面被覆材とで構成され、上記膏体層と膏面被覆材間の180度剥離力が2.5〜13g/cm、好ましくは2.5〜12g/cm、より好ましくは3〜9g/cmを有するものである。上記剥離力が2.5g/cm未満であれば、貼付剤加工時に膏体層と膏面被覆材とが剥離して加工が困難であり、一方、13g/cmを越えると、膏面被覆材剥離時に、膏体層を有する伸張性の支持体が変形して、常に一定面積を貼付することが困難となり好ましくない。なお、本発明において、上記の剥離力は、前記膏体層と膏面被覆材との組合せによって調整される。 【0014】上記伸張性支持体に形成される膏体層は、膏面被覆材の種類によって適宜選択されるが、例えば一般に膏体として使用されている天然ゴム系、合成ゴム系、シリコーン系、アクリル系重合体の溶液やエマルジョン等の各種粘着剤組成物を適当な方法で前記支持体上に成膜したものが挙げられ、皮膚に接着性を示すとともに、膏面被覆材が容易に剥離できるものが好適に使用される。 【0015】上記膏体層の厚みは特に規定するものでないが、皮膚への接着性、貼付感等を考慮して、5μm〜100μm、好ましくは30μm〜70μmとすることが適当である。 【0016】前記膏体層表面を被覆する膏面被覆材は、膏体の種類によって適宜選択されるが、その表面に剥離性能を有する剥離層を形成したもの、例えばシリコーン樹脂処理やフッ素樹脂処理をした金属箔、アルミニウム箔、プラスチックフィルム等が挙げられる。 【0017】本発明の貼付剤は、たとえば表面に剥離性能を有する剥離層を形成した被覆材上に前記粘着剤組成物を所望の厚みの膏体層が形成できるよう被覆し、溶媒を除去した後、前記支持体を貼り合わせるか、または、支持体上に前記粘着剤組成物を所望の厚みの膏体層が形成できるよう被覆し、溶媒を除去した後、表面に剥離性能を有する剥離層を形成した被覆材を貼り合わせてえられる。 【0018】上記粘着剤被覆方法としては、従来一般に使用されている方法が使用でき、たとえば流えん法、ロールコーター法、リバースコーター法、ドクターブレード法、バーコーター法等が使用できる。 【0019】本発明では前記貼付剤の膏体層に薬物を含有させることにより、貼付製剤とするものである。この膏体層に含有させる薬物としては、この種の貼付剤に一般に使用される経皮吸収性薬物や局所性薬物が例示される。具体的には次のような薬物が挙げられる。 【0020】(1)解熱鎮痛消炎薬:サリチル酸、ジクロフェナック、アンフェナック、ブプレノルフィン等の塩又は塩基。 【0021】(2)全身性麻酔薬:チアミラール、ペントバルビタール等の塩又は塩基。 【0022】(3)催眠・鎮静薬:フルラゼパム、アモバルビタール、フェノバルビタール、ペントバルビタール等の塩又は塩基。 【0023】(4)抗てんかん剤:フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン等の塩又は塩基。 【0024】(5)鎮暈剤:ジフェニドール、dl-イソプレナリン等の塩又は塩基。 【0025】(6)精神神経用剤:クロルプロマジン、フロロピパミド、カルピプラミン、イミプラミン、ミアンセリン、クロルジアゼポキシド等の塩又は塩基。 【0026】(7)局所麻酔剤:プロカイン、ジプカイン、リドカイン等の塩又は塩基。 【0027】(8)自立神経用剤:アセチルコリン、ネオスチグミン等の塩又は塩基。 【0028】(9)骨格筋弛緩剤:塩化アルクロニウム、エペリゾン等の塩又は塩基。 【0029】(10)鎮痙剤:スコポラミン、パパベリン等の塩又は塩基。 【0030】(11)抗パーキンソン剤:ビペリデン、トリヘキシフェニジル等の塩又は塩基。 【0031】(12)抗ヒスタミン剤:ジフェンヒドラミン、dl-クロルフェニラミン、クレマスチン等の塩又は塩基。 【0032】(13)強心剤:アミノフィリン、コリンテオフィリン、ドパミン等の塩又は塩基。 【0033】(14)不整脈用剤:プロプラノロール、アルプレノロール、ブプラノロール、チモロール、メトプロロール、リドカイン、ベラパミル等の塩又は塩基。 【0034】(15)利尿剤:エチアジド、ヒドロクロロチアジド、アセタゾラミド、イソソルビト等の塩又は塩基。 【0035】(16)血圧降下剤:カプトリル、エナラプリル、デラプリム、アラセプリム、ヒドララジン、クロニジン、ブニトロロール、プロプラノロール等の塩又は塩基。 【0036】(17)血管収縮剤:フェニレフリン、メトキサミン等の塩又は塩基。 【0037】(18)冠血管拡張剤:ジルチアゼム、ベラパミル、イソソルビド等の塩又は塩基。 【0038】(19)末梢血管拡張剤:ニカメタート、ニコチニックアルコール、トラゾリン等の塩又は塩基。 【0039】(20)動脈硬化用剤:シンフィブラート等の塩又は塩基。 【0040】(21)その他の循環器用剤:ニカルジピン、チアプリド等の塩又は塩基。 【0041】(22)鎮咳去痰剤:コデイン、デキストロメトルファン、ノスカピン等の塩又は塩基。 【0042】(23)呼吸促進剤:レバロルファン、ナロキソン等の塩又は塩基。 【0043】(24)ホルモン薬:ヒドロコルチゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、プレドニゾロン、ノルエチステロン等の塩又は塩基。 【0044】(25)化膿性疾患用外用薬:マフェニド、スルファメトキサゾール、テトラサイクリン等の塩又は塩基。 【0045】(26)鎮痛・鎮痒・吸斂・消炎用薬物:ジフェンヒドラミン、プレドニゾロン、アミノ安息香酸エチル等の塩又は塩基。 【0046】(27)寄生性皮膚疾患用薬物:サリチル酸、ナイスタチン、エコナゾール、クロコナゾール等の塩又は塩基。 【0047】(28)ビタミン:チアミン、シコチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、パンテノール等の塩又は塩基。 【0048】(29)止血用薬物:トラネキサム酸、エタンシラート、プロタミン等の塩又は塩基。 【0049】(30)痛風治療用薬物:コルヒチン、アロプリノール等の塩又は塩基。 【0050】(31)糖尿病用剤:トラザミド、グリミジンナトリウム等の塩又は塩基。 【0051】(32)他に分類されない代謝薬剤:オロチン酸、アザチオプリン、ラクツロース等の塩又は塩基。 【0052】(33)抗悪性腫瘍剤:ナィトロジェンマスタード-N-オキシド、チオイノシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、プロカルバジン等の塩又は塩基。 【0053】(34)抗生物質:ベンジルペニシリンカリウム、アンピシリン、セファレキシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ミノサイクリン、クリンダマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、フラジオマイシン等の塩又は塩基。 【0054】(35)化学療法薬:スルフイソミジン、イソニアジゾ等の塩又は塩基。 【0055】(36)麻薬:モルヒネ、コデイン、コカイン、フェンタニール等の塩又は塩基。 【0056】その他副腎皮質ホルモン、殺菌剤、血管拡張剤、組織修復剤、抗ウイルス剤、骨代謝剤、収れん剤、興奮剤、覚醒剤、刺激療法剤、アレルギー用剤、冠血管収縮剤、消化性潰瘍治療剤、その他の消化器官剤、脳下垂体ホルモン剤、甲状腺・副甲状腺ホルモン剤、男性ホルモン剤、卵胞・黄体ホルモン剤、その他のホルモン剤、子宮収縮剤、泌尿性殖器用剤、酵素製剤なども使用される。 【0057】なお、上記薬物は必要に応じて2種類以上併用することもできる。また、上記薬物は、常温で固体であっても液体であっても良く、膏体層に溶解または分解させることができるものであれば良い。 【0058】上記薬物の含有量は、薬物種や投与目的に応じて適宜設定することができるが、通常膏体層中に1〜40重量%、このましくは3〜30重量%程度含有させる。含有量が1重量%未満では、治療に有効な量の放出が期待できず、40重量%を越えると治療効果に限界が生じるとともに、経済的にも不利である。 【0059】 【実施例】次に、本発明を具体的に説明するため、以下に実施例を示す。なお、実施例中の部および%はいずれも重量部および重量%を示す。 実施例1 膏面被覆材として表面をシリコーン処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、この上に、2-エチルヘキシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレートおよびアクリル酸とを反応させたアクリル系共重合体の酢酸エチル溶液を、乾燥厚みが50μmになるよう流えんして膏体層を形成し、ついでこれを100℃の加熱雰囲気下で3分間放置して溶媒を除去した後、厚さ60μmの多孔質ー軸延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムを貼り合わせて貼付剤をえた。えられた貼付剤を23℃で24時間保存したのち、1cm幅に切断した5枚のサンプルを180度角定速剥離強度試験したところ、膏体層とポリエチレンテレフタレートフィルム間の剥離力が、平均6g/cmであった。なお、上記180度角定速剥離強度試験は、テンシロン引張り試験機(商品名テンシロンSTM-T50BP 東洋ボールドウイン社製)を使用し、膏体層とポリエチレンテレフタレートフィルムとを180度方向に300mm/分の速さで剥離させてその接着力を測定した。 【0060】 【比較例】 比較例1 実施例1において、180度剥離力が平均20g/cmを示すシリコーン剥離処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる以外は、全て同様の操作を行ない貼付剤を得た。 【0061】実施例2〜3 実施例1において、180度剥離力が平均2.5g/cm(実施例2)、平均13g/cm(実施例3)を示すシリコーン剥離処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる以外は、全て同じ操作を行いそれぞれ貼付剤をえた。 【0062】比較例2 実施例1において、180度剥離力が平均0.5g/cmを示すシリコーン剥離処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる以外は、全て同様の操作を行ない貼付剤を得た。 【0063】実験例 上記実施例1〜3および比較例1〜2でえられた各貼付剤を27mm×56mm(R=5mm)の大きさに調製し、ボランティア5名の上胸部にそれぞれ貼付し、各貼付剤の貼付前と貼付後の大きさの変化を表1に示した。ただし、比較例2の貼付剤は、上記大きさに調製する際に、膏体層がポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離して試験片が作成できず、実験がなされなかった。 【0064】 【表1】 【0065】その結果、実施例の貼付剤は、貼付後も全く変化しなかったが、比較例のものは、短辺、長辺ともに大きく変化し、一定面積の貼付は困難であった。 【0066】 【発明の効果】本発明の貼付剤および貼付製剤は、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであるので、上記膏面被覆材剥離時に、膏面被覆材が容易に剥離でき、貼付剤および貼付製剤が変形することなく、常に一定面積の貼付剤および貼付製剤を与える。 |
訂正の要旨 |
a)特許請求の範囲を次のとおりに訂正する。 「膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体と、この膏体層表面を被覆する膏面被覆材とで構成される貼付剤であって、上記貼付剤を180度角定速剥離強度試験したとき、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであり、膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体を1分間に300mmの速さで自長の100%の長さに引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、150〜200%であることを特徴とする貼付剤。 【請求項2】 請求項1の膏体層に、薬物を含有させたことを特徴とする貼付製剤。」 b)同【0007】を次のとおり訂正する。 「【0007】すなわち、請求項1の貼付剤は、膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体と、この膏体層表面を被覆する膏面被覆材とで構成される貼付剤であって、上記貼付剤を180度角定速剥離強度試験したとき、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであり、膏体層を有する伸張性のプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体を1分間に300mmの速さで自長の100%の長さに引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、150〜200%であることを特徴とする。また、請求項2の貼付製剤は、上記膏体層に、薬物を含有させたことを特徴とする。本発明において「180度角定速剥離強度試験」は、テンシロン引張り試験機(商品名テンシロンSTM-T50BP 東洋ボールドウイン社製)を使用して行われ、23℃で24時間保存した後の貼付剤を1cm幅に切断して5枚のサンプルを調製し、膏体層と膏面被覆材とを180度方向に300mm/分の速さで剥離させてその接着力を測定して、膏体層と膏面被覆材間の剥離力を求めるものである。」 c)同【0008】を次のとおり訂正する。 「【0008】 【作用】上記構成によれば、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであるので、上記膏面被覆材剥離時に、この膏面被覆材が容易に剥離できる。また、膏面被覆材が容易に剥離できるので、貼付剤が変形することがない。」 d)同【0009】を次のとおり訂正する。 「【0009】本発明をより詳細に説明すると、貼付剤に使用するプラスチックフィルムまたはシートからなる支持体(以下、「伸張性を有する支持体」、「伸張性の支持体」、「伸張性支持体」と称する。)は、伸張性を有するもの、すなわち、膏体層を有する支持体を一定方向に荷重を掛けて引張ったとき、上記支持体が引張り前の長さと比較して100%復元しないことを意味する。具体的には、1分間に300mmの速さで自長の100%の長さを引っ張った時の復元率が、引っ張り前の長さと比較して、150〜200%のものである。」 e)同【0013】を次のとおり訂正する。 「【0013】本発明の貼付剤は、膏体層を有する伸張性の支持体と、この膏体層を被覆する膏面被覆材とで構成され、上記膏体層と膏面被覆材間の180度剥離力が2.5〜13g/cm、好ましくは2.5〜12g/cm、より好ましくは3〜9g/cmを有するものである。上記剥離力が2.5g/cm未満であれば、貼付剤加工時に膏体層と膏面被覆材とが剥離して加工が困難であり、一方、13g/cmを越えると、膏面被覆材剥離時に、膏体層を有する伸張性の支持体が変形して、常に一定面積を貼付することが困難となり好ましくない。なお、本発明において、上記の剥離力は、前記膏体層と膏面被覆材との組合せによって調整される。」 f)同【0066】を次のとおり訂正する。 「【0066】 【発明の効果】本発明の貼付剤および貼付製剤は、膏体層と膏面被覆材間の剥離力が2.5〜13g/cmであるので、上記膏面被覆材剥離時に、膏面被覆材が容易に剥離でき、貼付剤および貼付製剤が変形することなく、常に一定面積の貼付剤および貼付製剤を与える。」 |
異議決定日 | 2003-06-03 |
出願番号 | 特願平3-359046 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(A61K)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 内田 淳子、新留 素子 |
特許庁審判長 |
竹林 則幸 |
特許庁審判官 |
深津 弘 横尾 俊一 |
登録日 | 2000-11-17 |
登録番号 | 特許第3131262号(P3131262) |
権利者 | 日東電工株式会社 |
発明の名称 | 貼付剤および貼付製剤 |
代理人 | 谷口 操 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 草間 攻 |
代理人 | 谷口 操 |