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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1083045
異議申立番号 異議2002-72770  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-06-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-11-20 
確定日 2003-07-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3283867号「食品容器」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3283867号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 <1>手続の経緯
本件特許第3283867号発明についての出願は、平成12年12月1日に出願され、その発明について平成14年3月1日に設定の登録がなされ、その後、請求項1及び2に係る発明の特許に対して、異議申立人林 英一より特許異議の申立てがなされたものであり、当審において取消理由が通知され、その指定期間内の平成15年4月15日に特許権者から特許異議意見書、訂正請求書が提出されたものである。
<2>訂正の適否についての判断
特許権者は、訂正明細書のとおり訂正することを求めており、その内容は、次の<訂正A〜C>のとおりである。

<2-1>訂正の内容
<訂正A> 特許請求の範囲の請求項2の記載
「【請求項2】 上方視矩形状の上方に開口する容器である場合において、該容器の角壁部の少なくとも一つに、該角壁部を上下方向に切り落としたような形状を備える平坦面が形成され、
前記平坦面には、その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gへ傾斜しながら膨出してなる細長の条溝からなる水排出用凹部が形成されたことを特徴とする食品容器。」
を、
「【請求項2】 上方視矩形状の上方に開口する容器である場合において、該容器の角壁部の少なくとも一つに、該角壁部を容器底面から上方のフランジ部にかけて上下方向に切り落としたような形状を備える平坦面が形成され、
前記平坦面には、その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gへ傾斜しながら膨出してなる細長の条溝からなる水排出用凹部が形成されたことを特徴とする食品容器。」
と、訂正する。

<訂正B> 本件明細書の発明の詳細な説明の
「【0019】 次に、本発明では、湯切り又は水切り作業の作業傾向又は特徴を鋭意研究した結果、上方から見たときに長方形状の容器の長手フランジ部分と短辺フランジ部をそれぞれ手で把持して、該容器の角壁部分から湯を排出させて湯切りり作業を行なう場合においては、作業者の傾向として、長辺フランジ部を把持する手が短辺フランジ部を把持する手よりもやや上方に持ち上がった状態て湯切り又は水切り作業を行なうことが判明した。」
を、
「【0019】
次に、本発明では、湯切り又は水切り作業の作業傾向又は特徴を鋭意研究した結果、上方から見たときに長方形状の容器の長手フランジ部分と短辺フランジ部をそれぞれ手で把持して、該容器の角壁部分から湯を排出させて湯切り作業を行なう場合においては、作業者の傾向として、長辺フランジ部を把持する手が短辺フランジ部を把持する手よりもやや上方に持ち上がった状態で湯切り又は水切り作業を行なうことが判明した。」
と、訂正する。

<訂正C> 本件明細書の発明の詳細な説明の
「【0043】なお、容器1bにおいてもに、被せ蓋を採用し、各条溝7,7,7…に対応する位置に被せ蓋に切り欠き穴(図示せず)を設け、この切り欠き穴を介して、湯(水)Wを排出するようにしてもよい。」
を、
「【0043】なお、容器1bにおいても、被せ蓋を採用し、各条溝7,7,7…に対応する位置に被せ蓋に切り欠き穴(図示せず)を設け、この切り欠き穴を介して、湯(水)Wを排出するようにしてもよい。」
と、訂正する。
<2-2>訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の有無
上記訂正Aは、訂正前の請求項1に記載された
「該角壁部を上下方向に切り落としたような形状を備える平坦面が形成され、」
を、
「該角壁部を容器底面から上方のフランジ部にかけて上下方向に切り落としたような形状を備える平坦面が形成され、」
と、限定して訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記訂正B及びCは、誤記の訂正を目的とするものである。
上記訂正Aの訂正しようとする事項は、図11および図12に第4実施例として明確に表示されており、図11、図12、並びに、第3実施例に関連した訂正前の明細書の詳細な説明の段落【0047】に記載されている事項であり、上記訂正A乃至Cは、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

<2-3>むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き、及び第3項で準用する同法第126条第2,3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


<3>特許異議の申立てについての判断
<3-1>申立ての理由の概要
異議申立人は、証拠として次の甲第1及び2号証を提出し、請求項1及び2に係る発明は、下記の理由により特許を受けることができないから、それらの特許は取り消されるべきものである、と主張する。
甲第1号証:実公昭56-24216号公報
甲第2号証:実願平4-41837号(実開平5-94169号)のCD-ROM
理由:
本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1及び2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<3-2>本件発明
上記「<2>訂正の適否についての判断」において検討したように、上記訂正A〜Cが認められるから、本件請求項1及び2に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 上方に開口する容器の側壁のいずれかの部分に、該側壁から容器外側方向Gに突出する水排出用凹部と、前記水排出用凹部に形成された細長の条溝と、を備え、
前記水排出用凹部は、その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gに傾斜された構成とされ、容器下方から上方に向けて次第に深さDを増す形状とされるとともに、
前記条溝は、前記水排出用凹部よりも更に容器外側方向Gに傾斜しながら膨出し、上方のフランジ部にかけて深さdが徐々に深くなるように構成されていることを特徴とする食品容器。
【請求項2】 上方視矩形状の上方に開口する容器である場合において、該容器の角壁部の少なくとも一つに、該角壁部を容器底面から上方のフランジ部にかけて上下方向に切り落としたような形状を備える平坦面が形成され、
前記平坦面には、その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gへ傾斜しながら膨出してなる細長の条溝からなる水排出用凹部が形成されたことを特徴とする食品容器。」 (以下、「訂正後の請求項1及び2に係る発明」という)
<3-3>甲第1及び2号証の記載事項
甲第1及び2号証には、図面と共に次の記載がある。
<甲第1号証>実公昭56-24216号公報
a:
「図において、1は容器本体でスチロールその他プラスチック或は金属等から成り、上部開放の長方形である。又、該本体1の上部には外向縁1′を設けると共にその外側に上向縁2′を設け、この上向縁2′の上縁外側には全周に亙る平坦な接着面2があり、その外側は下方へ屈曲して屈曲縁3となっている。・・・・・接着面2の隅部の両側に左右一対の広幅接着面5を形成し、この接着面5間において、外向縁1′の部分の数個所を上方へ突出させることにより、上面が接着面5と同一の接着面6となる複数の小突起7を形成してこの部分を湯切り部Aとし、・・・」(第2欄第15〜30行 )
b:
「湯分り部Aにおいて、蓋10が小さい3角形に開かれるので、本体1を傾斜させて本体1内の湯を排出する。このさい、小突起7があるため、湯は小突起7間から流出するが内部の食品9は流出するおそれはない。」(第3欄第28行〜第4欄第4行)
c:
第3〜5図において、「接着面2の隅部の両側に左右一対の広幅接着面5を形成」(記載a)しているが、この左右の広幅接着面5の下方は、左右両側の垂直な上向縁2’から突出する突出壁になっており、容器本体1の側壁の最上部から容器外側方向に突出する外向縁1’上に凹部を形成している(以下、「外向縁1’と上向縁2’がなす入隅部」という)。
そして、上記左右両側の垂直な上向縁2’から突出する突出壁と湯切り部Aの2本の柱状の小突起7、7は、上記外向縁1’と上向縁2’がなす入隅部に一直線状に並んで、その容器中心側の内側面は、外向縁1’上に上下方向に切り落としたような平坦面となっている。該平坦面は、特に傾斜はしていない。
そして、上記湯切り部Aの2本の柱状の小突起7、7及び左右の広幅接着面5の下方の突出壁の間隙は、細長の条溝状の形状を呈している。
また、第4図において、該条溝の底面は、容器外側方向に向けて外向縁1’と同平面であり、傾斜はしていない。
<甲第2号証>実願平4-41837号(実開平5-94169号)のCD-ROM
d:
「【0004】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本考案に係わる電子レンジ加熱用容器は、開口全周縁にフランジ状部1を備えたプラスチック容器本体2の開口を、同フランジ状部1に対して全周縁をシールした蓋片3により密封する形式の電子レンジ加熱用容器において、蓋片3のシール線4の一部を外方へU字状に膨出すると共にフランジ状部1において上記U字状に膨出したシール線5により囲繞された個所を容器本体2内に連通する凹部6としたものである。
【0005】【作用】蓋片3において凹部6を被っている個所7を点線9の所まで開くことにより当該凹部6をオープン状態とし、よって蒸気排出口8を得るようになっている。」
e:
第2図、第3図において、容器本体2の側壁は、一つの角壁部が底面から上方のフランジ部にかけて切り落としたように平坦で垂直に近い傾斜面になっている;
「凹部6」の形状は、容器の上記角壁部の平坦面の上縁のコ字状の切欠きからフランジ状部の上面にかけて横長に浅く膨出している。
これを容器内面から見ると、「凹部6」は、上記平坦で垂直に近い傾斜面の上端のコ字状開口から、略水平方向に僅かに傾斜しながらフランジに向けて膨出しているように見える。

<3-4>対比・判断
<3-4-1>訂正後の請求項1に係る発明について
甲第1号証記載の発明を、訂正後の請求項1に係る発明と対比すると、
甲第1号証記載の発明において、容器本体の側壁の上部から容器外側方向に突出した外向縁1’上で該外向縁1’と上向縁2’とがなす入隅部(記載c)は、訂正後の請求項1に係る発明の「水排出用凹部」に相当し、該入隅部に設けられ、上記湯切り部Aを構成する2本の柱状の小突起7、7及び左右の広幅接着面5の下方の突出壁の間隙には、細長の条溝状の形状をした間隙が形成されている(記載c)から、該細長の条溝状の間隙は、訂正後の請求項1に係る発明における「細長の条溝」に相当し、「水排出用凹部」にも相当する。
そうすると、両者は、
「上方に開口する容器のいずれかの部分に、側壁から容器外側方向に突出する水排出用凹部と該水排出用凹部に形成された細長の条溝を備えた食品容器」
で一致するが、次の点で、相違する。
<相違点1>
「水排出用凹部」が、
訂正後の請求項1に係る発明においては、「側壁のいずれかの部分に、該側壁から容器外側方向Gに突出する」もので、「その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gに傾斜された構成とされ、容器下方から上方に向けて次第に深さDを増す形状とされる」ものである(以下、「相違点1の構成」という。)のに対し、
甲第1号証記載の発明では、水排出用凹部は、そのような構成となっていない。
<相違点2>
訂正後の請求項1に係る発明においては、「細長の条溝」が、「水排出用凹部よりも更に容器外側方向Gに傾斜しながら膨出し、上方のフランジ部にかけて深さdが徐々に深くなるように構成されている」ものである(以下、「相違点2の構成」という。)のに対し、
甲第1号証記載の発明では、「細長の条溝」の底面は傾斜してはいないから、そのような構成となっていない。
上記相違点1および2について検討すると、甲第2号証には上記相違点1および2の構成は、記載も示唆もされてなく、また、本件特許に係る出願前に当該技術分野において周知の技術的事項であるということもできない。
これに対して、異議申立人は、「甲第1号証に記載の湯排出用凹部、および小突起7、7の湯切り用の溝として、前記甲第2号証に記載されているような公知の細長の条溝からなる凹部6のように、容器の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向に傾斜しながら膨出し、上方のフランジ部にかけて深さが徐々に深くなるように構成した技術を採用することは当業者が容易になし得ることである」(異議申立書第5頁第13〜17行)と、主張する。
しかしながら、甲第2号証記載の凹部は、単に一つの凹部6が記載されているに過ぎず、上記相違点2の構成のように凹部に条溝が形成されている構成を示唆するものではない。しかも、該凹部6は、蒸気排出口8を形成(記載d)するものであって、訂正後の請求項1に係る発明のように水排出用ではない。
そうすると、上記相違点1および2の構成は、甲第1及び2号証記載の発明から当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、訂正後の請求項1に係る発明は、甲第1及び2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの、とすることはできない。
<3-4-2>訂正後の請求項2に係る発明について
甲第1号証記載の発明を、訂正後の請求項2に係る発明と対比すると、
甲第1号証記載の発明において、湯切り部Aの2本の柱状の小突起7、7及び左右の広幅接着面5の下方の突出壁の容器中心側の内側面は、上下方向に切り落としたような平坦面を形成している。そして、上記湯切り部Aの2本の柱状の小突起7、7及び左右の広幅接着面5の下方の突出壁の間隙は、細長の条溝のような形状を呈しているから、上記平坦面に細長の条溝からなる湯排出用の凹部が形成されている、と認められるから、両者は、
「上方視矩形状の上方に開口する容器である場合において、
該容器に、上下方向に切り落としたような形状を備える平坦面が形成され、
前記平坦面には、細長の条溝からなる水排出用凹部が形成された食品容器」で、一致するが、次の点で、相違する。
<相違点1>
訂正後の請求項2に係る発明においては、上下方向に切り落としたような形状を備える平坦面が、該容器の「角壁部の少なくとも一つに、該角壁部を容器底面から上方のフランジ部にかけて」(以下、「相違点1の構成」という)上下方向に切り落としたような形状であるのに対し、
甲第1号証記載の発明においては、平坦面は、容器本体1の側壁の最上部から容器外側方向へ突出する外向縁1’上(フランジ部に相当)に形成したものである(記載c)から、そのような構成となっていない。
<相違点2>
訂正後の請求項2に係る発明においては、細長の条溝からなる水排出用凹部が、平坦面に「その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gへ傾斜しながら膨出してなる」(以下、「相違点2の構成」という。)ものであるのに対して、
甲第1号証記載の発明においては、「平坦面」を形成する、左右の広幅接着面5の下方の突出壁と2本の小突起7の容器中心側の内側面は、傾斜しておらず、しかも、「条溝」に相当する、左右の広幅接着面5の下方の突出壁と2本の小突起7の間の間隙の底面も、容器外側方向には傾斜していない(記載c)から、そのような構成となっていない。
次に、上記相違点1及び2について検討する。
ところで、甲第2号証の図2および図3には、上記相違点1の構成が記載されており(記載e)、相違点2の構成についても、凹部6が「その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gへ傾斜しながら膨出してなる」ものである点だけを取り出せば、記載されているともいうことができる。
しかしながら、甲第2号証記載の発明の容器は「電子レンジ加熱容器」であり、「開口全周縁に・・・フランジ状部1に対して全周縁をシールした蓋片3により密封する形式」で、凹部は、「フランジ状部1において上記U字状に膨出したシール線5により囲繞された個所を容器本体2内に連通する凹部6としたもの」であり、その作用も、「蓋片3において凹部6を被っている個所7を点線9の所まで開くことにより当該凹部6をオープン状態とし、よって蒸気排出口8を得る」(以上、記載d)というものであるから、「凹部6」の形状は、容器の上記角壁部の平坦面の上縁のコ字状の切欠きからフランジ状部の上面にかけて横長に浅く膨出しているもので(記載e)、このような「凹部6」の位置と形状は、電子レンジで加熱する際、容器内に充満した蒸気が自然に出て行きやすいことを目的として構成されたものであると認められる。
そうしてみると、甲第2号証に、平坦面に「その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gへ傾斜しながら膨出してなる」ものである点が記載されているとしても、そのような構成の意義と目的を勘案すれば、上記甲第2号証記載の発明の凹部を、上記相違点1の構成と共に甲第1号証記載の即席麺等の容器に適用して「水排出用 」とし、訂正後の請求項2に係る発明を構成することは、当業者といえども、容易に想到し得たということはできない。
したがって、訂正後の請求項2に係る発明は、甲第1及び2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの、とすることはできない。

<3-4-3>
上記検討したとおりであるから、訂正後の請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものということはできない。


<4>むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
食品容器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 上方に開口する容器の側壁のいずれかの部分に、該側壁から容器外側方向Gに突出する水排出用凹部と、前記水排出用凹部に形成された細長の条溝と、を備え、
前記水排出用凹部は、その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gに傾斜された構成とされ、容器下方から上方に向けて次第に深さDを増す形状とされるとともに、
前記条溝は、前記水排出用凹部よりも更に容器外側方向Gに傾斜しながら膨出し、上方のフランジ部にかけて深さdが徐々に深くなるように構成されていることを特徴とする食品容器。
【請求項2】 上方視矩形状の上方に開口する容器である場合において、
該容器の角壁部の少なくとも一つに、該角壁部を容器底面から上方のフランジ部にかけて上下方向に切り落としたような形状を備える平坦面が形成され、
前記平坦面には、その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gへ傾斜しながら膨出してなる細長の条溝からなる水排出用凹部が形成されたことを特徴とする食品容器。
【請求項3】 上方視円形又は楕円形状の上方に開口する容器であって、
該容器の湾曲する側壁の一部領域に少なくとも一つの平坦面が形成され、
前記平坦面には、その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gへ傾斜しながら膨出してなる細長の条溝からなる水排出用凹部が形成されたことを特徴とする食品容器。
【請求項4】 前記容器が上方視長方形状を備え、該容器を上方視したときに形成できる対角線のうち、前記平坦面に交差する対角線と該平坦面が直交しないように形成し、
前記容器の前記平坦面に左右に位置する長辺フランジ部と短辺フランジ部を、それぞれ手で把持して湯切り又は水切作業を行なう状態において、前記平坦面に交差する対角線と該平坦面とによって長辺フランジ側に形成される角度が、鈍角になるように形成されたことを特徴とする請求項2記載の食品容器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食する際に、湯切り又は水切り作業を必要とする即席焼きそばその他の食品を収容する食品容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
即席焼きそば、即席スパゲッティ等を食する際においては、麺を湯戻しするために容器に投入した湯を排出する、いわゆる湯切り作業が必要となる。また、ところてん、豆腐等が収容された容器においても、水きり作業が必要になる場合がある。
【0003】
湯切り作業は、熱湯を排出する作業であることから、その作業途中で火傷を被ったりすることがなく、かつ、簡便性が求められる即席麺の商品性格上、簡単、迅速かつ確実に、麺及び具材を排出させずに湯だけを排出できる、容器包装形態が要求されている。また、水きり作業においても、収容された食品をこぼさず、水が周辺に飛び散ったりしないように、水を容器外にスムーズに排出できることが要求されている。
【0004】
そこで、湯切り又は水切り作業の容易化、迅速化を図り、安全性を確保するために、従来から容器包装において様々な改良が試みられてきた。とくに、近年、食品容器用の蓋に関しては、所定箇所に湯排出に適した切り欠き穴が設けられた合成樹脂製蓋や、迅速に湯を排出できるように工夫されたヒートシール蓋などが開発されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、湯切り又は水切り作業が必要となる食品が収容される容器においては、蓋に比べて形態的改良がいまだ不充分である。
【0006】
即ち、容器においては、湯又は水を容器外にスムーズに流出させることができる機能を備えるように工夫することによって、湯切り用又は水きり用の穴が設けられた被せ蓋又はヒートシール蓋との協働的な水排出作用を発揮きるようにして、迅速かつ確実に湯切り又は水切り作業を完遂できるようにするという技術的課題を有している。
【0007】
そこで、本発明の目的は、前記技術的課題を解決できる食品容器を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成して、上記技術的課題を解決するために、本発明では次の手段を採用する。
【0009】
本発明に係る食品容器は、円形、楕円形、矩形等の底面と該底面を取り囲むように上方に向けて立ち上がる側壁によって構成され、上方に開口する容器であって、この側壁の適宜選択可能ないずれかの部分に、該側壁から外側方向に突出する水排出用凹部を設ける。なお、この水排出用凹部は、湯又は水を容器外に排出するために、凹面を容器内側に方向に向けた状態で、容器側壁に凹状に形成された部位を意味する。
【0010】
この水排出用凹部は、排出される湯又水の流出路として機能して、湯又は水の排出を促進させて湯切り又は水切り作業を容易化するという作用を有効に発揮する。
【0011】
また、本発明では、容器側壁に形成された水排出用凹部を、容器下方から上方に向けて次第に深さを増す形状とする。即ち、開口部を上に向けて容器を定置させた状態で容器を観察したときに、水排出用凹部が周辺の側壁よりも、より外側に傾斜していく形状とする。
【0012】
この手段によって、湯切り又は水切り作業を行なうために、容器を手で把持して容器を傾斜させたときには、水排出用凹部に周囲から湯又は水が流れ込んできて、外部に排出されやすくなるので、より迅速に湯切り又は水切り作業を行なうことができる。
【0013】
ここで、容器が矩形状である場合、この容器を傾けて湯切り又は水切り作業を行なう際には、いずれかの角壁部分を最下方にした状態で容器を傾けて湯切り又は水切り作業を行なう方が、この角壁部分に湯又は水が集まって、湯又は水が排出されやすくなる。このため、とりわけ最近の即席麺等の湯切り作業は、矩形状容器の角壁部分を用いて湯を排出する方法が採用される場合が多くなっている。
【0014】
しかしながら、角壁部には、湯だけでなく麺や具材等の食品が集積してしまい易いことから、集積した食品が蓋材に設けられた切り欠き穴等の湯排出用穴を塞いでしまって、湯又を塞き止め、その流出を滞らせてしまう場合がある。
【0015】
そこで、本発明では、上方から見たときに矩形状を呈する食品容器においては、該容器の四角壁部の少なくとも一つを平坦面に形成し、この平坦面に水排出用凹部を設けるように工夫する。
【0016】
この構成によれば、角壁部分が平坦な側壁になる結果、麺や具材等の食品が1箇所に集積し難くなり、仮にある程度集積しても、この平坦面の水排出用凹部に湯又は水が抜け落ちて、この水排出用凹部から湯又は水がスムーズに排出されるという作用が発揮されることになる。
【0017】
また、上方から見たときに、円形又は楕円形状を呈する容器である場合においても、湾曲する側壁部の一部領域に少なくとも一つの平坦面を形成し、この平坦面に前記水排出用凹部を形成することによって、前記作用と同様の作用が発揮される。
【0018】
ここで、前記水排出用凹部は、容器の側壁の所定幅領域部分を外側方向に膨出させた幅広の流出路として形成することもできるし、細長い条溝として形成することも可能である。なお、条溝を採用した場合では、この条溝を所定間隔で複数設けることによって、単位時間当たりの湯又は水の排出量を多くすることができる。
【0019】
次に、本発明では、湯切り又は水切り作業の作業傾向又は特徴を鋭意研究した結果、上方から見たときに長方形状の容器の長手フランジ部分と短辺フランジ部をそれぞれ手で把持して、該容器の角壁部分から湯を排出させて湯切り作業を行なう場合においては、作業者の傾向として、長辺フランジ部を把持する手が短辺フランジ部を把持する手よりもやや上方に持ち上がった状態で湯切り又は水切り作業を行なうことが判明した。
【0020】
そこで、本発明では、前記容器が上方視長方形状を備え、該容器を上方視したときに形成できる対角線のうち、前記平坦面に交差する対角線と該平坦面が直交しないように構成し、この容器の平坦面の左右に位置する長辺フランジ部と短辺フランジ部をそれぞれ手で把持して湯切り又は水切り作業を行なう状態において、前記平坦面に交差する対角線と該平坦面によって長辺フランジ側に形成される角度が、鈍角となるように工夫した。
【0021】
この手段によって、長辺フランジ部を把持する手が短辺フランジ部を把持する手よりも上方に位置させた湯切り又は水切り態勢でも、容器角壁部分に形成された平坦面は、略水平に保持されるようになるので、この平坦面から左右方向均等に湯を排出できるようになる。
【0022】
この結果、容器角壁部に平坦面に形成した水排出用凹部、とりわけ、前記平坦面に複数の条溝が形成された構成の場合には、全ての条溝から均等量の湯又は水を流出させることができるという作用が得られる。
【0023】
以上のように、本発明は、湯切り又は水切り作業が必要となる食品容器に対して、湯又は水の排出促進機能を付加するという技術的意義を有している。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の好適な実施形態について、添付した図1〜図15を参照しながら、実施例に基づき説明する。
【0025】
まず、図1は、本発明に係る食品容器1の第1実施例を上方か見た平面図、図2(A)は、同第1実施例に係る食品容器1aを図1の矢印I方向から見た側面図であって、側壁4から外側方向に膨出する幅広の流出路である水排出用凹部5のみを実線で示す図、図2(B)は、同食品容器1aを図1の矢印II方向から見た側面図であって、側壁4から外側方向に膨出する幅広の流出路5のみを実線で示す図、図3は、ヒートシール蓋9を一部切り取った状態の食品容器1aの平面図、図4は、被せ蓋10が装着された状態の食品容器1aの部分平面図、である。
【0026】
図1〜図4に示されている、本発明の第1実施例である食品容器1a(以下、「容器1a」と称する)は、上方から見たときに略矩形状を呈する合成樹脂製の容器である。この容器1aは、略矩形状の底面3と、該底面の外周端部から斜め上方に立ちあがる側壁4と、から構成され、略矩形の上方開口部6を形成している。そして、側壁4の上端部には、鍔状に外側にせり出している、上面平坦なフランジ部2が形成されている。
【0027】
側壁4には、外側方向G(図2(B)参照)にせり出す水排出用凹部5,5が一対形成されている。この水排出用凹部5,5は、図2(B)に示すように、容器底面3から上方のフランジ部2にかけて、その周辺の側壁面の傾斜よりも、さらに外側に傾斜した構成とされ、底面3側の深さD1よりもフランジ部2側の深さD2が、より深くなるように工夫されている(D1<D2)。
【0028】
この構成により、フランジ部2を両手で把持して容器1aを傾け、湯切り又は水切り作業を行なう場合においては、(下方側の)水排出用凹部5は、周辺から湯又は水が流下してくる流路として機能する。なお、水排出用凹部5は、一対設けるのではなく、一つだけ設けるようにしてもよい。
【0029】
ここで、図3に基づいて、容器1aの蓋として、ヒートシール蓋9が採用された場合における好適な湯切り又は水切り作業の具体例について説明する。
【0030】
ヒートシール蓋9は、フランジ部2の上面に全周に渡って熱溶着され、容器1aを密封している。この場合、水排出用凹部5が設けられたフランジ部2’の一つに熱溶着されているヒートシール部分9を、該フランジ部2’に沿って、水排出用凹部5の略U字状の上方開口領域51を横切るように延設されている切り取り線91部分から切り離しながら細長状に剥離し、符号E1で示す水排出口を形成する。なお、図3中の符号9aは完全に切り離されたヒートシール蓋部分を示している。
【0031】
この構成では、水排出口E1を挟んだ左右のシール部分92,92は、依然として熱溶着された状態で留まっている。このため、フランジ部2’以外の所定部分においてヒートシール蓋9を剥離開口し、該開口部分から容器1a内部に注ぎ入れられ、麺や具材の戻しに使用された湯(水)Wは、この水排出口E1からのみ集中的に流出する。また、湯(水)Wは、この水排出口E1のみから流出されるように制限されているので、麺や具材を流失させてしまうおそれがほとんど無い。
【0032】
続いて図4に基づいて、食品容器1aの蓋として、フランジ部2の外周端部に係着する構成の被せ蓋10が採用された場合における好適な湯切り又は水切り作業の具体例について説明する。
【0033】
まず、湯又は水は、被せ蓋9を容器1aから取り外すことによって、該容器1a内部に注ぎ入れられる。そして、被せ蓋9を該容器1aに再び嵌着させたときに、側壁4に設けられた水排出用凹部5の上方に位置する被せ蓋9部分に複数形成された爪状の切り欠き10aを上方に引き上げることによって水排出口E2を形成し、この水排出口E2から湯(水)Wを排出させる。
【0034】
次に、図5は、容器1aの変形例1a’の要部構成を示している。容器1a’に設けられた水排出用凹部5’には、その左右方向中心位置に、上下方向に延びる窪み5’aが設けられている。
【0035】
この窪み5’aは、水排出用凹部5’の中央部において、該水排出用凹部5’の最深部を形成し、水排出用凹部5’に対して周辺から湯がより集まり易くする。また、この窪み5’aにおいては、外側方向G(図2(B)参照)側により傾斜させることによって、湯切り又は水切り作業時に湯又は水を流下し易くする。更に、ヒートシール蓋9を採用した場合の水排出口Eの開口量を、上記水排出口E1と比較してより大きくし、湯又は水の排出をより迅速に行なうことができるようにする。
【0036】
次に、図6、図7に基づいて、本発明に係る食品容器1の第2実施例の形態構成について説明する。図6(A)は、第2実施例である食品容器1bを上方か見た平面図、図6(B)は、同食品容器1bの側面図、図7は、ヒートシール蓋9の一部を切り取った状態の同食品容器1bの部分平面図、である。
【0037】
本発明の第2実施例である食品容器1b(以下、「容器1b」と称する)は、側壁4の一面に、それぞれが外側方向G(図2(B)参照)へ膨出するように形成された細長の条溝7,7,・・・複数形成されているのが特徴である。なお、条溝7の数は、適宜選択可能である。
【0038】
各条溝7,7,・・・は、上記した幅広の水排出用凹部5同様に、容器底面3から上方のフランジ部2にかけて、その周辺の側壁面の傾斜よりも、さらに外側に傾斜した構成とされ、図2(B)同様に、底面3側の深さD1よりもフランジ部2側の深さD2が、より深くなるように工夫されている(D1<D2)。
【0039】
即ち、各条溝7,7,・・・は、それぞれ水排出用凹部として機能し、湯切り又は水切り作業時において容器1bを傾けると、湯(水)Wはこの条溝7,7,・・・に流れ集まってきて流下し、外部に排出される。
【0040】
ここで、図7に基づいて、容器1bの蓋として、ヒートシール蓋9が採用された場合における好適な湯切り又は水切り作業の具体例について説明する。
【0041】
ヒートシール蓋9は、フランジ部2の上面に全周に渡って熱溶着され、容器1bを密封している。この場合、条溝7,7,・・・が設けられたフランジ部2’に熱溶着されているヒートシール部分を、該フランジ部2’に沿って、条溝7,7,・・・の略U字状の上方開口領域71を横切るように延設されている切り取り線91部分から切り離しながら細長状に剥離し、符号E3で示す水排出口を形成する。
【0042】
この構成では、水排出口E3以外のフランジ2’のシール部’分92は、依然として熱溶着された状態で留まっている。このため、麺や具材の湯戻しに使用された湯(水)Wは、この水排出口E3,E3,E3…からのみ集中的に流出する。また、湯(水)Wは、この水排出口E3のみから流出されるように制限されているので、麺や具材を流失させてしまうおそれがほとんど無くなる。
【0043】
なお、容器1bにおいても、被せ蓋を採用し、各条溝7,7,7・・・に対応する位置に被せ蓋に切り欠き穴(図示せず)を設け、この切り欠き穴を介して、湯(水)Wを排出するようにしてもよい。
【0044】
続いて、図8〜図10に基づいて、本発明に係る食品容器1の第3実施例の形態構成について説明する。図8(A)は、第3実施例である食品容器1cを上方から見た平面図、図8(B)は、同食品容器1cの側面図、図9は、フランジ部2に熱溶着されたヒートシール蓋9の一部を切り取った状態の食品容器1cの部分平面図、図10は、同食品容器1cの水排出用凹部のみを実線で示す部分側面図、である。
【0045】
第3実施例である食品容器1c(以下、「容器1c」と称する)は、第1実施例で採用した水排出用凹部5に、第2実施例で採用した(水排出用凹部としての)条溝7を設けた点に特徴がある。なお、水排出用凹部5の幅、傾斜角度、条溝7の数は適宜選択可能である。
【0046】
本容器1cにおいても、蓋としてはヒートシール蓋9、被せ蓋10のいずれも採用することができる。図9は、本容器1cにヒートシール蓋9が採用された場合において、湯(水)排出用の開口部E4を形成するための好適な手段を表している。この構成は、第1実施例の場合の図3、第2実施例の場合の図7と同様であるので、説明を割愛する。
【0047】
ここで、図10に示すように、本容器1cの水排出用凹部は、幅広の凹部5と該凹部5に形成された細長の条溝7,7,7と、から構成されている。凹部5は、側壁4から容器外側方向Gに傾斜しながら膨出し、条溝7は、この凹部5よりも更に容器外側方向Gに傾斜しながら膨出している。即ち、凹部5と条溝7は、ともに容器底面3から上方のフランジ部2にかけて深さが徐々に深くなるように構成されている(D1<D2,d1<d2)。
【0048】
この構成によって、凹部5と条溝7,7,7の協働的作用が発揮されて、湯又は水の排出が迅速に行なわれる。仮に、湯切り又は水切り作業の際に、凹部5に麺や具材等の食品が集積されて来ても、湯(水)は、集積した食品の隙間から条溝7,7,7に流れ落ち、速やかに外部に排出されることになる。
【0049】
続いて、図11〜図14に基づいて、本発明に係る食品容器1の第4実施例の形態構成について説明する。図11は、本発明の第4実施例である食品容器1dの側面図、図12は、同食品容器1dを上方から見た平面図、図13は、同食品容器1dを両手で把持して湯切り又は水切り作業を行なう時の同容器1dの状態を表す図、図14は、同容器1dの角壁部11部分に、切り取り部9’aが設けられたヒートシール蓋9’が装着された食品容器1dの湯切り又は水切り作業状態を表す図、である。
【0050】
本発明の第4実施例である食品容器1d(以下、「容器1d」と称する)は、上方から見たときに長辺フランジ部21a,21bと短辺フランジ部22a,22bによって囲まれた略長方形状を呈し、全部で四つある角壁部11,11,11,11の少なくとも一箇所には、その角壁部分を上下方向に切り落としたような形状の平坦面8が形成されている。そして、この平坦面8には、第2、第3実施例同様の細長の条溝7,7,7が形成されている。なお、条溝7,7,7の代わりに、幅広の凹部5を平坦面8に形成してもよい。
【0051】
平坦面8を設けた理由は、尖った形状の角壁部11部分を用いて湯又は水を排出する場合は、該角壁部11部分がじょうろ状の作用を発揮するので湯又は水が排出され易くなる一方、この角壁部11には麺や具材等の食品が滑り落ちてきて一箇所に集積し易く、湯又は水の排出の妨げになる場合があるからである。
【0052】
そこで、平坦面8は、麺や具材等の食品の集積を分散して、一箇所に集積しないようにするとともに、集積した食品の隙間から流れ落ちてくる湯(水)Wを条溝7,7,7を通過させることによって、速やかに外部に排出する。
【0053】
ここで、図12に示すように、容器1dを上方から見たときに形成できる対角線X1,X2のうち、該平坦面8と交差する対角線X1と(以下、「交差対角線X1」と称する)平坦面8は、直交しないように構成されている。
【0054】
即ち、平坦面8は、この平坦面8を上方から見たときに該平坦面8を通過する上方視線Yと前記交差対角線X1とによって形成される角度αが90°にならないように形成されている。図示された容器1dの場合は、角度αは鈍角(90°より大きい角度)とされている。
【0055】
この理由は、容器1dの平坦面8の両側に位置する長辺フランジ部21aと短辺フランジ部22aをそれぞれ左右の手で把持し、平坦面8を最下方にして湯切り又は水切り作業を行なう場合において、該平坦面8を通過する上方視線Yが水平(水平線Hと平行)のポジションを確保し易くするためである。
【0056】
これは、容器1dのような長方形状容器の場合、作業者は、長辺フランジ部21aを把持する手(図13では右手)が短辺フランジ部22aを把持する手(図13では左手)よりもやや持ち上がった状態(R線の方がL線よりも上方にある状態)で湯切り又は水切り作業を行なう傾向にあることから、予めそれを見込んで、平坦面8と交差対角線X1とによって形成される長辺フランジ部22a側の角度αが、鈍角となるように形成しておくと、湯切り又は水切り状態で平坦面8の水平を確保され易くなる。
【0057】
湯切り又は水切り作業において、平坦面8が水平状態となると、湯(水)Wが平坦面8の左右方向から均等に排出され、麺や具材等の食品も一箇所に集積し難くなるので、湯(水)Wの排出を円滑に行なうことができる。
【0058】
容器1dを閉塞する蓋としては、図14に示すようなヒートシール蓋9’や図4で示すような被せ蓋10を採用することができる。
【0059】
ヒートシール蓋9’を選択した場合は、平坦面8が形成された角壁部11上方の略三角形のフランジ面23に熱溶着される部分9’aを、条溝7,7,7の上方開口部71を横切る切り離し線91’から切り取って、開口部E5を形成する構成が好適である(図14参照)。
【0060】
最後に、図15に基づいて、本発明に係る食品容器1の第4実施例の形態構成について説明する。図15は、本発明の第5実施例である食品容器1eを上方から見た平面図である。
【0061】
本発明の第5実施例である食品容器1e(以下、「容器1e」と称する)は、上方から見たときに円形の容器である。この容器1eの湾曲する側壁4’の一部には、平坦面8’が形成され、この平坦面8’には、条溝7,7,7が形成されている。
【0062】
この容器1eを用いて湯切り又は水切り作業を行なう場合には、この平坦面8’を最下方位置にして、湯又は水を排出する。この場合の平坦面8’と条溝7,7,7の作用は、第4実施例である容器1dと同様故、説明を割愛する。なお、容器1eが上方視正円でなく、楕円形状のような場合でも平坦面8’と条溝7,7,7を形成することができ、上方視円形又は楕円形の容器の場合でも、蓋は、ヒートシール蓋、被せ蓋のいずれも採用することができる。
【0063】
【発明の効果】
本発明によって奏される主な効果は、以下の通りである。
【0064】
本発明に係る食品容器には、該容器の側壁の適宜選択可能ないずれかの部分に、該側壁から外側方向に突出する幅広の水排出用凹部又は/及び条溝状の水排出用凹部が設けられ、この水排出用凹部が、排出される湯又は水の流出路として機能するので、湯切り又は水切り作業を円滑に行なうことができる。
【0065】
また、水排出用凹部を容器下方から上方に向けて次第に深さを増す形状としたことによって、この水排出用凹部に周囲から湯又は水が流れ込んできて排出されやすくなるので、より迅速に湯切り又は水切り作業を行なうことができる。
【0066】
上方から見たときに矩形状、円形、楕円形状等を呈する食品容器においては、側壁に平坦面を形成し、この平坦面に水排出用凹部を設けるように工夫することによって、麺や具材等の食品が1箇所に集積し難くなり、仮にある程度集積しても、この平坦面の水排出用凹部に湯又は水が抜け落ちて、この水排出用凹部から湯又は水をスムーズに排出することができる。
【0067】
上方から見たときに長方形状の容器の長手フランジ部分と短辺フランジ部をそれぞれ手で把持して、該容器の角壁部分から湯又は水を排出させて湯切り又は水切り作業を行なう場合においては、作業者の傾向として、長辺フランジ部を把持する手が短辺フランジ部を把持する手よりもやや上方に持ち上がった状態て湯切り又は水切り作業を行なう傾向にあることから、該容器を上方視したときに形成できる対角線のうち、交差対角線と該平坦面が直交しないように形成し、この容器の平坦面の左右に位置する長辺フランジ部と短辺フランジ部をそれぞれ手で把持して湯切り又は水切り作業を行なう状態において、前記平坦面に交差対角線と該平坦面とによって長辺フランジ側に形成される角度が、鈍角になるように工夫した。その結果、長辺フランジ部を把持する手が短辺フランジ部を把持する手よりも上方に位置する湯切り又は水切り態勢においても、容器角壁部分に形成された平坦面は、略水平に保持されるようになるので、この平坦面から左右方向均等に湯又は水を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る食品容器(1)の第1実施例を上方か見た平面図
【図2】
(A)同第1実施例に係る食品容器(1a)を図1の矢印I方向から見た側面図であって、側壁(4)から外側に膨出する幅広の流出路(5)のみを実線で示す図
(B)同食品容器(1a)を図1の矢印II方向から見た側面図であって、側壁(4)から外側に膨出する幅広の流出路(5)のみを実線で示す図
【図3】
ヒートシール蓋(9)を一部切り取った状態の食品容器(1a)の平面図
【図4】
被せ蓋(10)が装着された状態の食品容器(1a)の部分平面図
【図5】
第1実施例の変形例である食品容器(1a’)の幅広の流出路(5’)付近の部分平面図
【図6】
(A)本発明に係る食品容器の第2実施例を上方か見た平面図
(B)同第2実施例に係る食品容器(1b)の側面図
【図7】
ヒートシール蓋(9)の一部を切り取った状態の第2実施例に係る食品容器(1b)の部分平面図
【図8】
(A)本発明に係る食品容器の第3実施例を上方か見た平面図
(B)同第3実施例に係る食品容器(1c)の側面図
【図9】
ヒートシール蓋(9)の一部を切り取った状態の第3実施例に係る食品容器(1c)の部分平面図
【図10】
同食品容器(1c)の一部のみを実線で示す部分側面図
【図11】
本発明に係る食品容器の第4実施例の側面図
【図12】
第4実施例に係る食品容器(1d)を上方から見た平面図
【図13】
同食品容器(1d)を両手で把持して湯切り又は水切り作業を行なう時の同容器の状態を表す図
【図14】
角壁部に切り取り部が設けられたヒートシール蓋(9’)が装着された食品容器(1d)の湯切り又は水切り作業状態を表す図
【図15】
本発明に係る食品容器の第5実施例を上方から見た平面図
【符号の説明】
1(1a,1a’,1b,1c,1d) 食品容器
 
訂正の要旨 1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項2を、
「上方視矩形状の上方に開口する容器である場合において、該容器の角壁部の少なくとも一つに、該角壁部を容器底面から上方のフランジ部にかけて上下方向に切り落としたような形状を備える平坦面が形成され、前記平坦面には、その周辺の側壁面の傾斜よりもさらに容器外側方向Gへ傾斜しながら膨出してなる細長の条溝からなる水排出用凹部が形成されたことを特徴とする食品容器。」
と訂正する。
2)訂正事項b
本件特許明細書の段落0019を、
「次に、本発明では、湯切り又は水切り作業の作業傾向又は特徴を鋭意研究した結果、上方から見たときに長方形状の容器の長手フランジ部分と短辺フランジ部をそれぞれ手で把持して、該容器の角壁部分から湯を排出させて湯切りり作業を行なう場合においては、作業者の傾向として、長辺フランジ部を把持する手が短辺フランジ部を把持する手よりもやや上方に持ち上がった状態て湯切り又は水切り作業を行なうことが判明した。」を、「次に、本発明では、湯切り又は水切り作業の作業傾向又は特徴を鋭意研究した結果、上方から見たときに長方形状の容器の長手フランジ部分と短辺フランジ部をそれぞれ手で把持して、該容器の角壁部分から湯を排出させて湯切り作業を行なう場合においては、作業者の傾向として、長辺フランジ部を把持する手が短辺フランジ部を把持する手よりもやや上方に持ち上がった状態で湯切り又は水切り作業を行なうことが判明した。」と訂正する。
3)訂正事項c
本件特許明細書の段落0043を、
「なお、容器1bにおいてもに、被せ蓋を採用し、各条溝7,7,7・・・に対応する位置に被せ蓋に切り欠き穴(図示せず)を設け、この切り欠き穴を介して、湯(水)Wを排出するようにしてもよい。」を、「なお、容器1bにおいても、被せ蓋を採用し、各条溝7,7,7・・・に対応する位置に被せ蓋に切り欠き穴(図示せず)を設け、この切り欠き穴を介して、湯(水)Wを排出するようにしてもよい。」と訂正する。
異議決定日 2003-06-23 
出願番号 特願2000-366557(P2000-366557)
審決分類 P 1 652・ 121- YA (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 西村 綾子
大町 真義
登録日 2002-03-01 
登録番号 特許第3283867号(P3283867)
権利者 東名化学工業株式会社
発明の名称 食品容器  
代理人 渡邊 薫  
代理人 渡邊 薫  

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