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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1083069
異議申立番号 異議2002-72281  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-10-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-09-18 
確定日 2003-07-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3267319号「押し出しラミネート用アンカーコート剤」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3267319号の請求項1〜3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3267319号の請求項1〜5に係る発明は、平成4年3月19日に出願され、平成14年1月11日に設定登録されたところ、当該請求項1〜5に係る発明の特許について、菅沼良介、小林慎子(以下、「申人1」、「申立人2」という。)から、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
本件の訂正請求は、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。
(ア)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の2箇所に記載されている、「有機ポリイソシアネート化合物」を「ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物」に訂正する。
(イ)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(ウ)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(エ)訂正事項d
発明の詳細な説明の項の記載について、段落番号[0006]の「有機ポリイソシアネート化合物」を「ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物」に訂正する。
(オ)訂正事項e
段落番号[0015]の「としては脂肪族ジイソシアネート誘導体がとりわけ好ましい。特に、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体」を「はへキサメチレンジイソシアネート誘導体」に訂正する。
(カ)訂正事項f
段落番号[0015]の「75重量%以上含有したものを使用すると、」を「75重量%以上含有したものであり、」に訂正する。
(キ)訂正事項g
段落番号[0016]の2箇所に記載されている、「有機ポリイソシアネート化合物」を「ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(ア)訂正事項aは、訂正前の請求項1を、訂正前の願書に添付された明細書の記載(特許公報の請求項5及び段落番号【0015】の記載)に基づいて、有機ポリイソシアネート化合物についてヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有するものに減縮したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項b及びcは、特許請求の範囲の請求項4及び5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(エ)訂正事項d〜gは、訂正事項aに係る特許請求の範囲の訂正と発明の詳細な欄の記載との整合性を図るために訂正するもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項(a)〜(g)は、ともに、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び同条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1〜3」という。)は、前記訂正請求において添付された訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 分子鎖中にカルボキシル基を有する部分酸変性ポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物を含有し、部分酸変性ポリオールの重量平均分子量が5000〜50000であり、部分酸変性ポリオールのカルボン酸当量が2500〜25000であり、部分酸変性ポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物との固形分重量比が75:25〜25:75の範囲であって、固形分換算の塗布量が0.1〜0.3g/m2であることを特徴とする押し出しラミネート用アンカーコート剤。
【請求項2】 部分酸変性ポリオールが部分酸変性ポリエステルポリオール、部分酸変性ポリエステルウレタンポリオールまたは部分酸変性ポリエーテルウレタンポリオールである請求項1記載のアンカーコート剤。
【請求項3】 請求項1記載の押し出しラミネート用アンカーコート剤を用いて得られるラミネートフィルム。」

(2)異議申立人の主張
申立人1は、下記の刊行物2、5を提示して、訂正前の請求項1〜5に係る発明は、刊行物2、5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、旨を主張している。(なお、異議申立書中の「第29条第1項第3号」の表示はc.の発明の対比の項及びd.むすびの項の記載からみて「特許法第29条第2項」の誤記であると認める。)
また、申立人2は、訂正前の請求項1〜5に係る発明は、刊行物1〜9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、旨を主張している。

(3)当審で通知した取消の理由
当審における取消理由通知の内容は上記(2)の異議申立て理由の内容と同じであり、本件の請求項1〜5に係る発明は、本件の出願前に頒布された下記刊行物1〜9に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する分野における通常の知識を有するものが、容易に発明をすることができたものと認められるから、本件の請求項1〜5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(4)各刊行物及びその記載内容
刊行物1:特開昭63-179987号公報(申立人2の提出した甲第1号 証)
刊行物2:特開昭60-243182号公報(申立人2の提出した甲第2号 証、申立人1の提出した甲第1号証)
刊行物3:「新実験化学講座19 高分子化学I」昭和53年5月20日、 丸善株式会社発行、第119〜120頁(申立人2の提出した甲 第3号証)
刊行物4:「大有機化学 第23巻 合成高分子化合物II」昭和40年1 0月30日6版発行、株式会社朝倉書店、第12〜15頁(申立 人2の提出した甲第4号証)
刊行物5:「最新ラミネート加工便覧」1989年6月30日、加工技術研 究会発行、第122〜131頁(申立人2の提出した甲第5号証 申立人1の提出した甲第2号証)
刊行物6:特開昭51-101039号公報(申立人2の提出した甲第6号 証)
刊行物7:特開昭54-90239号公報(申立人2の提出した甲第7号証 )
刊行物8:特開平3-281589号公報(申立人2の提出した甲第8号証 )
刊行物9:特開昭64-1736号公報(申立人2の提出した甲第9号証)

刊行物1〜9には、以下のことが記載されている。
(a)刊行物1には、
(a-1)「下記組成を有する数平均分子量6,000〜40,000、酸価50〜200当量/106gであるポリウレタン樹脂(I)100部に対し、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を含有するポリイソシアネート化合物3〜40部を配合することを特徴とするポリウレタン系接着剤組成物。
ポリウレタン樹脂(I):酸成分として、イソフタル酸50モル%以上、イソフタル酸以外の芳香族ポリカルボン酸50モル%以下、アルコール成分として、ネオペンチルグリコール50モル%以上、ネオペンチルグリコール以外で炭素数2〜10の脂肪族または脂環族ポリオール50モル%以下を含有する数平均分子量600〜5,000のポリエステルポリオール(A)と必要により分子量300以下の鎖延長剤(B)とポリイソシアネート化合物(C)とを(A)と(B)中のヒドロキシル基の和1等量に対して(C)のイソシアネート基を0.85〜0.99当量配合することにより得られるポリウレタン樹脂。」(特許請求の範囲)
(a-2)イソシアネート化合物の例示としてヘキサメチレンジイソシアネート(第3頁左上欄1行)、
(a-3)産業上の利用分野として、「本発明は・・・プラスチックフィルムとガラス、金属等極性の高い被着体とを接着する・・・接着剤に関するものである(第1頁右下欄7〜11行)、
(a-4)その接着剤の使用について、実施例1〜5には接着剤溶液として燐酸亜鉛処理鋼板上に塗布、乾燥し、次いで軟質塩化ビニルシートやポリエチレンテレフタレートフィルムを接着剤上に張り合わせ接着させること及び得られたラミネートが耐熱、耐沸水接着性に優れること、
が記載されている。
(b)刊行物2には、
(b-1)「1.分子末端にカルボキシル基を含有するポリエステル組成物およびイソシアネート化合物からなるドライラミネート用接着剤であって、上記ポリエステル組成物は、末端に2個以上の水酸基を有する分子量5,000〜100,000のポリエステル(A)に上記末端水酸基の少なくとも30%が消費される量の無水芳香族多価カルボン酸を反応せしめることにより少なくとも1つの末端をカルボキシル基化したポリエステル(B)を含んでなることを特徴とする上記ドライラミネート用接着剤。」(特許請求の範囲第1項)、
(b-2)イソシアネート化合物として、「例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、」(第3頁右上欄7行)
(b-3)前記ポリエステル(B)として、ポリエステル(b)の合成例に無水トリメリット酸による酸価が17である酸変性ポリエステルポリオール(第4頁左上欄1〜10行)、
(b-4)接着剤塗布量について4〜5g/m2 (第5頁左上欄5行参照)
が記載されている。
(c)刊行物3には、重縮合反応において分子量分布は「Floryの確率分布に従うことが多いと記載されている(第120頁の表3.1参照)。
(d)刊行物4には、Floryの実証を基にした分子量分布について縮合反応が十分に進行した状態では重量平均分子量と数平均分子量の比率はMn:Mw=1:2となることが示されている(甲第4号証14頁)。
(e)刊行物5には、
(e-1)各種のラミネート法としてドライラミネートやエクストルージョンラミネートの記載があり、押し出し(エクストルージョン)ラミネート法においては接着剤(アンカーコート剤)の塗布量が0.05〜1.0g/m2で、ドライラミネート法においては1.5〜5.0g/m2であることが示されている(第123頁の表1参照)。
(e-2)ドライラミネーションに用いる接着剤の主剤として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、あるいはそれらのウレタン変性物が記載されている(第122頁右欄5〜10行参照)。
(f)刊行物6には、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレートを主成分とする多価カルボン酸とアリール基含有多価アルコールとの縮合反応によって生成された初期縮合物を硬化重合触媒として水溶性遷移金属塩と過酸化水素等の過酸化物を添加し固化重合させた、特定の接着剤組成物が押し出しラミネート法およびドライラミネート法による複合フィルムの製造に使用できることが記載されている(第2頁右上欄下から14行〜同欄下から8行、参考例1,参考例2参照)。
(g)刊行物7には、ラミネート加工用接着剤のポリオール成分として、ポリエステルグリコール、ポリエステルポリウレタンポリオールが記載されている(特許請求の範囲参照)
(h)刊行物8には、ラミネート加工用接着剤のポリオール成分としてポリウレタンポリオールが記載されている(特許請求の範囲参照)。
(i)刊行物9には、ラミネート加工用接着剤のポリオール成分としてポリエーテルウレタンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオールが記載されている(実施例1〜3参照)。

(5)当審の判断
(ア)本件発明1について
刊行物1には、ポリウレタン樹脂にポリイソシアネート化合物を配合したポリウレタン系接着剤組成物が記載され、ポリウレタン樹脂は、イソフタル酸50モル%以上の芳香族ポリカルボン酸とネオペンチルグリコール50モル%以上のアルコール成分より得られたポリエステルポリオールとポリイソシアネート化合物とを配合して得られた、数平均分子量6,000〜40,000、酸価50〜200当量/106gであるポリウレタン樹脂である点、ポリウレタン樹脂(I)100部に対し、ポリイソシアネート化合物3〜40部を配合すること(上記(a-1)の記載参照)、イソシアネート化合物の例示としてヘキサメチレンジイソシアネート(上記(a-2)の記載参照)、この接着剤組成物を基材に塗布、乾燥し、その上に貼り合わせるプラスチックフィルム、シートの接着に使用するという、いわゆるドライラミネート用の接着剤に用いること(上記(a-3)、(a-4)の記載参照)が記載されている。そして、本件発明1のアンカーコート剤と刊行物1の接着剤を比較すると、刊行物1の「ポリウレタン樹脂」は本件発明1の「分子鎖中にカルボキシル基を有する部分酸変性ポリオール」に相当し、その重量平均分子量及びカルボン酸当量はそれぞれ、本件発明1における数値範囲と重なっている(申立人2の特許異議申立書の第3頁14〜17行、第6頁10〜15行参照)。
そして、刊行物2は、分子末端にカルボキシル基を含有するポリエステル組成物及びイソシアネート化合物からなるドライラミネート用接着剤が記載され、ポリエステル組成物は、末端に2個以上の水酸基を有する分子量5,000〜100,000のポリエステル(A)に上記末端水酸基の少なくとも30%が消費される量の無水芳香族多価カルボン酸を反応せしめることにより少なくとも1つの末端をカルボキシル基化したポリエステル(B)である点(上記(b-1)の記載参照)、イソシアネート化合物の例示としてヘキサメチレンジイソシアネート(上記(b-2)の記載参照)、実施例には、ポリエステル(B)の酸価が記載されている(上記(b-3)の記載参照)。そして、本件発明1のアンカーコート剤と刊行物2の接着剤を比較すると刊行物2の「ポリエステル組成物」は本件発明1の「分子鎖中にカルボキシル基を有する部分酸変性ポリオール」に相当し、その重量平均分子量及びカルボン酸当量はそれぞれ、本件発明1における数値範囲と重なっている(申立人1の特許異議申立書の第7頁8〜15行、第7頁15〜18行参照)。

してみると、本件発明1のものと刊行物1、2のものとは、(i)本件発明1が押し出しラミネート用アンカーコート剤であるのに対し、刊行物1、2はドライラミネート用接着剤である点、(ii)部分酸変性ポリオールと有機ポリイソシアネート化合物との固形分重量比において、本件発明が75:25〜25:75の範囲であるのに対し、刊行物2にはそのような特定がなされておらず、また刊行物1にはポリウレタン樹脂100部に対し、ポリイソシアネート化合物3〜40部を配合すると記載されている点、(iii)固形分換算の塗布量において、本件発明1が0.1〜0.3g/m2 であるのに対し、刊行物1にはそのような特定がなく、刊行物2には4〜5g/m2 と記載されている(上記(b-4)の記載参照)点において相違している。
まず、相違点(i)について「ドライラミネート用接着剤」を「押し出しラミネート用のアンカーコート剤」に転用することが容易であるかどうかについて検討する。
ドライラミネートも押し出しラミネートも共にフィルム状の積層体を得る方法に関するものではあるが、ドライラミネートは、基材のフィルムに接着剤を塗布、乾燥し、その接着剤面に貼り合わせフィルムを圧着積層するのに対し、押し出しラミネートは基材のフィルムに接着剤(アンカーコート剤)を塗布、乾燥した後、その接着剤面にプラスチック材料を溶融押し出して、溶融フィルムを形成しながら圧着積層するものであって、両者は圧着の態様を大きく異にしているうえに、接着剤の塗布量も、押し出しラミネート法が0.05〜1.0g/m2であるのに対し、ドライラミネート法は1.5〜5.0g/m2であり(上記(e-1)の記載参照)、全く異にするものである。
そして、特許権者が提出した特許異議意見書に添付した乙第2号証の実験例の記載によれば、本件発明1のイソシアネート化合物がヘキサメチレンジイソシアネートである組成物は押し出しラミネートに用いた方がドライラミネートに用いた場合よりも接着強度及び耐煮沸性において優れているものであり、同じ接着剤を用いた場合のドライラミネートにおける効果と押し出しラミネートにおける効果は異なることからみても、片方における効果が他方にも同様に奏されるとは予測し得るものではない。
刊行物6には、押し出しラミネート用アンカーコート剤とドライラミネート用接着剤との両方に好適な接着剤としてトリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレートを主成分とする多価カルボン酸とアリール基含有多価アルコールとの縮合反応によって生成された初期縮合物を硬化重合触媒として水溶性遷移金属と過酸化水素等の過酸化物を添加し固化重合させた、特定の接着剤組成物が記載されているが、刊行物6の特定の接着剤組成物以外の一般的な接着剤についてもドライラミネート用と押し出しラミネート用の両方に使用できると記載されているものではなく、この一例をもって、刊行物6の接着剤と構造が異なる本件発明1のような分子鎖中にカルボキシル基を有する部分酸変性ポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物との縮合硬化反応に基づく特定の接着剤組成物がドライラミネート用とアンカーコート剤の両方に使用できることを示すものではない。
また、刊行物3、4には、数平均分子量と重量平均分子量との関係が記載されているのみであり、刊行物7〜9には、ラミネート加工用接着剤のポリオール成分として、ポリエステルポリオール、ポリエステルウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール等が記載されているにすぎず、刊行物3〜4、7〜9にはラミネート加工用接着剤を押し出しラミネート用アンカーコート剤に転用することについては記載も示唆されていない。
してみれば、刊行物1〜9の記載事項を参照してみても、ドライラミネートと押し出しラミネートとが同種の技術であるとすることはできず、用いられる接着剤に要求される特性も異なると解されるから、「ドライラミネート用接着剤」を「押し出しラミネート用のアンカーコート剤」に転用することが容易であるとすることはできない。
刊行物1には密着力(本件の接着強度)、沸水後密着力(本件の耐煮沸性)、刊行物2には剥離強度(本件の接着強度)、レトルト後の剥離強度(本件の耐煮沸性)についての記載もあるが、その効果が押し出しラミネートにおいても必ずしも奏されるとすることができないものであるところ、本件発明1はウレタン系の押し出しラミネート用アンカーコート剤のポリオール成分として、その分子鎖中にカルボキシル基を有する部分酸変性ポリオールを、有機ポリイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有したものからなる組成物を押し出しラミネート用アンカーコート剤に使用するという構成により本件発明1は「貼り合わせる基材の種類、印刷インキの品種、得られたラミネートフィルムの用途を問わず、全構成、全用途において、接着強度、耐熱性、耐水性、耐煮沸性や耐薬品性等の特性にすぐれ、広範囲に使用し得る性能を有するアンカーコート剤が得られる」という効果を奏するものである。
したがって、刊行物1、2に記載の「ドライラミネート用接着剤」を「押し出しラミネート用のアンカーコート剤」に転用して本件発明1を想到することが容易になし得るものとはいえないから、本件発明1はその余の相違点を検討するまでもなく、刊行物1〜9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
なお、申立人1は、甲第2号証(刊行物5)ではドライラミネートの一種としてエクストルージョンラミネート(押し出しラミネート)が記載されていることからみても、ドライラミネート用接着剤を押し出しラミネート用の接着剤(アンカーコート剤)に転用する程度のことは当業者であれば容易である旨主張しているが、刊行物5にはラミネートの方法の例として、ドライラミネートと押し出しラミネートが各種ラミネート法と共に単に列挙されているにすぎず、ドライラミネートの一種として押し出しラミネートが記載されているものではないので、申立人1の主張は採用しえない。
また、申立人2は、接着剤が塗布される基材が同一であれば、いずれの加工法にも同じ接着剤が使用できるのであって、それぞれの方法にのみ有用で他方には使用不可という関係にあるものではなく、ドライラミネート用接着剤を押し出しラミネート用の接着剤(アンカーコート剤)に転用する程度のことは当業者であれば容易である旨主張しているが、貼り合わされる基材の組み合わせが同一であれば、いずれの加工法にも同じ接着剤が使用できるとする理論的な根拠を何も示しておらず、申立人2の主張は採用しえない。

(イ)本件発明2、3について
本件発明2は本件発明1を引用し、部分酸変性ポリオールについて更に技術的に限定するものであるから、また本件発明3は本件発明1の押し出しラミネート用アンカーコート剤を用いて得られたラミネートフィルムに係る発明であるから、上記本件発明1と同様な理由により、刊行物1〜9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(6)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、本件発明1〜3に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとすることはできない。
また、他に本件発明1〜3に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとする理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
押し出しラミネート用アンカーコート剤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 分子鎖中にカルボキシル基を有する部分酸変性ポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物を含有し、部分酸変性ポリオールの重量平均分子量が5000〜50000であり、部分酸変性ポリオールのカルボン酸当量が2500〜25000であり、部分酸変性ポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物との固形分重量比が75:25〜25:75の範囲であって、固形分換算の塗布量が0.1〜0.3g/m2であることを特徴とする押し出しラミネート用アンカーコート剤。
【請求項2】 部分酸変性ポリオールが部分酸変性ポリエステルポリオール、部分酸変性ポリエステルウレタンポリオールまたは部分酸変性ポリエーテルウレタンポリオールである請求項1記載のアンカーコート剤。
【請求項3】 請求項1記載の押し出しラミネート用アンカーコート剤を用いて得られるラミネートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、貼り合わせる基材の種類、得られるラミネートフィルムの用途を問わず巾広い押し出しラミネート加工に用いられる高機能押し出しラミネート用アンカーコート剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、押し出しラミネートの分野では、ウレタン系のアンカーコート剤を用いることで、耐水性、耐ボイル性に優れたラミネートフィルムを得られることが知られている。しかし、実際には、貼り合わせるプラスチックフィルム、又は、金属箔等の基材の種類、特に、貼り合わせる基材がプラスチックフィルムである場合には、フィルム上になされる印刷インキの品種あるいは得られるラミネートフィルムの用途等によって、数種類のウレタン系アンカーコート剤あるいは同種のアンカーコート剤の塗布量を変化させる等の使い分けがなされている。
【0003】しかし、これらのことは、配合残液のロス、アンカーコート剤の切り替えの手間あるいは手違い等の種々の問題を生む。特に、近年においては、基材の種類、印刷インキの品種は、多品種に及び、また、押し出しラミネート品に要求される性能も広範囲にわたっていることから、全構成、全用途を1種類のアンカーコート剤で満足させることができない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の押し出しラミネートにおける上記した問題を解決するためになされたものであって、貼り合わせる基材の種類、印刷インキの品種、得られたラミネートフィルムの用途を問わず、全構成、全用途において、優れた性能を有することを特徴とする押し出しラミネート用アンカーコート剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく種々検討を行なった結果、ウレタン系押し出しラミネート用アンカーコート剤のポリオール成分として、その分子鎖中にカルボキシル基を有する部分酸変性ポリオールを用いれば特に接着強度、耐熱性、耐水性、耐煮沸性や耐薬品性等の特性にすぐれ、広範囲に使用し得る性能を有するアンカーコート剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明は、分子鎖中にカルボキシル基を含有する部分酸変性ポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物を含有する押し出しラミネート用アンカーコート剤に関する。本発明において、部分酸変性ポリオールとしては、官能基数が約2〜6、とりわけ約2〜4ものが好ましい。特に官能基を2個有するものが好適である。又、好ましい部分酸変性ポリオールとしては重量平均分子量が約5000〜50000、好ましくは、15000〜30000の化合物が挙げられる。より好ましい具体例としては、部分酸変性ポリエステルポリオール、部分酸変性ポリエステルウレタンポリオール、部分酸変性ポリエーテルウレタンポリオールまたはそれらの混合物が挙げられる。
【0007】かかるポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸などの二塩基酸もしくはその低級アルキルエステルまたはそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6ーヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタンジオールなどの二官能ポリオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三官能ポリオールなどの分子量200以下の低分子量ポリオールもしくはそれらの混合物との反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0008】ポリエステルウレタンポリオールとしては、例えば、分子量が約200〜10000、好ましくは、約300〜5000のポリエステルポリオールと有機ポリイソシアネート単量体とをNCO/OHが約1以下で反応させて得られるものが好ましい。また、ポリエステルポリオール以外にポリオール成分の平均分子量を調節する目的で、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示した低分子量ポリオールを混合してもよい。ポリエーテルウレタンポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどのオキシラン化合物を、例えば、水もしくは先に例示した低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られる分子量が約200〜10000、好ましくは、約300〜5000のポリエーテルポリオールまたはそれらと上記低分子量ポリオールとの混合物と有機ポリイソシアネート単量体とを上記ポリエステルウレタンポリオールと同様にNCO/OHが約1以下で反応させて得られるものが一般に好ましい。
【0009】本発明に用いられる有機ポリイソシアネート単量体としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’4”-トリイソシアネート、1,3,5,-トリイソシナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族又は芳香脂肪族の有機トリイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネートなどの芳香脂肪族テトライソシアネートで代表される有機テトライソシアネートなどのポリイソシアネート単量体などがあげられる。
【0010】本発明の部分酸変性ポリオールは、上記したようなポリエステルポリオール、ポリエステルウレタンポリオール、ポリエーテルウレタンポリオールの分子鎖中にカルボキシル基を導入する酸変性反応によって得られる。ここで酸変性反応とは上記するようなポリオールの分子鎖中の水酸基と無水多価カルボン酸との反応、または、上記したようなポリエステルポリオール、ポリエステルウレタンポリオール、ポリエーテルウレタンポリオールをラジカル発生剤の存在下でエチレン性不飽和カルボン酸もしくはその酸無水物と反応させ、ポリオールの分子鎖中にカルボキシル基を導入する反応、あるいは特にポリエステルウレタンポリオール、ポリエーテルウレタンポリオールの場合は、合成反応の際、ポリオール成分の中に、ジメチロールプロピオン酸のように分子中に二つの水酸基と一つのカルボキシル基を有するモノカルボン酸ジオールを混合し、分子鎖中にカルボキシル基を導入する反応等をいう。
【0011】無水多価カルボン酸及びエチレン性不飽和カルボン酸もしくはその無水物とポリエステルポリオール、ポリエステルウレタンポリオール、ポリエーテルウレタンポリオールとの反応割合は、カルボン酸当量が2500〜25000,好ましくは、5000〜10000となる量を使用する。また、ポリエステルウレタンポリオール、ポリエーテルウレタンポリオール合成時に、モノカルボン酸ジオールを導入する場合にも上記カルボン酸当量となる量を使用する。また特に、ポリエステルウレタンポリオール、ポリエーテルウレタンポリオールの場合には、無水多価カルボン酸あるいはエチレン性不飽和カルボン酸とその無水物とモノカルボン酸ジオールとを併用することもできる。
【0012】無水多価カルボン酸としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水コハク酸などがある。また、エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸などのモノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのジカルボン酸などがあげられ、エチレン性不飽和カルボン酸無水物としては、無水イタコン酸、無水マレイン酸などがあげられる。さらにモノカルボン酸ジオールには、ジメチロールプロピオン酸の他にジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸などがある。
【0013】上記カルボン酸当量が、25000より大きいときは、アルミニウム箔に対する接着力が十分でなく、また、2500より小さいときは、有機ポリイソシアネート化合物との反応が遅くなるため好ましくない。ラジカル発生剤としては、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾビス系の化合物がある。これらの化合物と還元剤を組み合わせたレドックス系も同様に用いることができる。ラジカル発生剤の使用量はエチレン性不飽和カルボン酸に対して5〜50重量%が好ましい。
【0014】本発明の有機ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート単量体と水もしくは低分子量ポリオールとを反応させて得られる付加体、ビューレット、アロハネートなどの誘導体および上記有機ポリイソシアネート単量体から誘導された二量体、三量体などの誘導体、炭酸ガスと上記有機ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有する誘導体またはそれらの混合物などがあげられる。上記低分子量ポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として、先に例示した二官能ポリオール、三官能ポリオールなどのものがあげられる。
【0015】上記有機ポリイソシアネート化合物はヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有したものであり、耐水性、耐ボイル性等の諸物性、特に、印刷インキに対する諸物性が著しく向上する。
【0016】部分酸変性ポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物は固形分重量比75/25-25/75の範囲で配合される。ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物を、75/25より少なく配合すると、プラスチックフィルム上になされた印刷インキ面に対する接着強度が十分でなく、さらに、印刷インキの品種による性能のばらつきが大きく、また、25/75より多く配合されると、基材にかかわらず、耐ボイル性が低下する。また、シランカップリング剤を併用することにより、アルミニウム箔に対して、さらに良好な接着強度を得ることができる。
【0017】シランカップリング剤としては、一般式X-Si(OR)3(式中、Xは、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、またはメルカプト基を有する有機基を、Rは、低級アルキル基を表す。)で示されるものならいずれでも良く、例えば、n-(ジメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、n-(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミンなどの、アミノシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシランなどが挙げられる。シランカップリング剤の添加量は、酸変性ポリエステル組成物に対して、0.1-5重量%程度が好ましい。また、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤などを使用することができる。
【0018】本発明のアンカーコート剤が適用される押し出しラミネートのラミネート基材としては、無色または必要に応じて文字や模様等を印刷してなるポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどのプラスチックフィルムあるいはこれらプラスッチクフィルムに塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等を塗布したフィルム、セロハン、紙、アルミニウム箔等の金属箔などが挙げられる。
【0019】また、本発明のアンカーコート剤を適用するもう一方の被着剤である押し出し樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン,線状低密度ポリエチレン,ポリプロピレン,アイオノマー樹脂,エチレン酢酸ビニル共重合樹脂,エチレン-アクリル酸エチル共重合樹脂,エチレン-アクリル酸共重合樹脂が挙げられるが必ずしもこれらに限定されるものではない。これらのうち、特に繁用されて好ましいのは、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。押し出し樹脂の押し出し温度は、樹脂にもよるが、通常、100〜400℃好ましくは240〜330℃の範囲である。
【0020】本発明の押し出しラミネート用アンカーコート剤は常法に従い使用される。通常適当な溶媒で希釈して用いられる。溶媒を用いる時、通常1〜10%、好ましくは3〜8%の濃度に希釈して使用される。溶剤としては、イソシアネートと反応しない限り、巾広い溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、例えばトルエン,キシレンなどの芳香族系炭化水素,アセトン,メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤,酢酸エチル,酢酸ブチルなどのエステル系溶剤などがあげられる。またこれらの混合溶剤を用いてもよい。また、塗布量としては、固形分で、0.1-0.3g/m2程度で使用すると好都合である。
【0021】
【実施例】以下に、実施例ならびに比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下において、部は重量部を示す。
【0022】ポリエステルポリオール(a)の合成テレフタル酸137.52部、イソフタル酸137.52部、アジピン酸90.73部、エチレングリコール73.46部、ネオペンチルグリコール92.45部、1,6-ヘキサンジオール104.89部を仕込み、窒素気流下にして撹拌しながら、160-230℃に加熱し、エステル化反応させた。酸価が、5以下になったところで、反応系を徐々に真空にし、1mmHg以下、230℃で2時間エステル交換反応させ、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール(a)を得た。ポリエステルポリオール(a)の水酸基価20、酸価は0.5、分子量は重量平均分子量で約20000であった。
【0023】部分酸変性ポリエステルポリオール(b)の合成上記で得られるポリエステルポリオール(a)の100部に対して無水マレイン酸1.3部を加え、140℃で1時間反応させた。ポリエステルポリオール(b)の酸価5、水酸基価は15であった。
【0024】部分酸変性ポリエステルポリオール(c)の合成上記で得られるポリエステルポリオール(a)の100部に対して無水フタル酸1.3部を加え、140℃で1時間反応させた。ポリエステルポリオール(c)の酸価5、水酸基価は15であった。上記ポリオール(a),(b),(c)は、酢酸エチルで50重量%の溶液に希釈した。
【0025】部分酸変性ポリエステルポリオール(d)の合成上記で得られるポリエステルポリオール(a)の100部を100部の酢酸エチルに約80℃で溶解した後、アクリル酸1.3部と過酸化ベンゾイル0.25部の50%酢酸エチル溶液を滴下し、終了後80℃で10時間反応させた。ポリエステルポリオール(d)の固形分酸価4、固形分水酸基価は20であった。
【0026】ポリエステルウレタンポリオール(e)の合成イソフタル酸/セバチン酸=1/1モル比、エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=1/1モル比よりなるポリエステルポリオール(分子量2000)100部、トリレンジイソシアネート(2,4-体/2,6-体=80/20)8.7部、酢酸エチル109部の混合液を60℃で5時間反応後、エチレングリコール1.0gを加え、さらに、1時間反応して、固形分50重量%、固形分水酸基価20のポリエステルウレタンポリオール(e)を得た。
【0027】部分酸変性ポリエステルウレタンポリオール(f)の合成上記で得られるポリエステルウレタンポリオール(e)の固形分100部に対して無水マレイン酸1.3部を加え、80℃で5時間反応させた。ポリエステルウレタンポリオール(f)の固形分酸価5、固形分水酸基価は15であった。
【0028】ポリエーテルウレタンポリオール(g)の合成ポリオキシプロピレングリコール(分子量1000)497部、ジプロピレングリコール70.27部、トリレンジイソシアネート(2,4-体/2,6-体=80/20)162部、酢酸エチル730部の混合液を70℃で5時間反応後、トリメチロールプロパン4.93部を加え、さらに、1時間反応して、固形分50重量%、固形分水酸基価は17のポリエーテルウレタンポリオール(g)を得た。
【0029】部分酸変性ポリエーテルウレタンポリオール(h)の合成上記で得られるポリエーテルウレタンポリオール(g)の固形分100部に対して無水マレイン酸1.3部を加え、80℃で5時間反応させた。ポリエステルウレタンポリオール(h)の固形分酸価5、固形分水酸基価は15であった。
【0030】部分酸変性ポリエステルウレタンポリオール(i)の合成アジピン酸、エチレングリコールよりなるポリエステルポリオール(分子量1000)180部、ジメチロールプロピオン酸20.1部、ジプロピレングリコール22.8部、テトラメチルキシリレンジイソシアネート136.9部、酢酸エチル359.8部の混合液を60℃で5時間反応後、エチレングリコール1.0部を加え、さらに、1時間反応して、固形分50重量%、固形分酸価15、固形分水酸基価20のポリエステルウレタンポリオール(i)を得た。
【0031】部分酸変性ポリエ-テルウレタンポリオール(j)の合成ポリオキシプロピレングリコール(分子量1000)180部、ジメチロールプロピオン酸20.1部、ジプロピレングリコール22.8部、テトラメチルキシリレンジイソシアネート136.9部、酢酸エチル359.8部の混合液を60℃で5時間反応後、エチレングリコール1.0部を加え、さらに、1時間反応して、固形分50重量%、固形分酸価15、固形分水酸基価20のポリエーテルウレタンポリオール(j)を得た。
【0032】比較例1〜3,実施例1〜8ポリオール(a),(e),(g)および部分酸変性ポリオール(b),(c),(d),(f),(h),(i)(j)を有機ポリイソシアネート化合物であるタケネートA-3(武田薬品工業製75%酢酸エチル溶液、トリレンジイソシアネートの誘導体)およびタケネートA-65(武田薬品工業製100%無溶剤、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体)と表1のように配合し、アンカーコート剤とした。
【表1】

アンカーコート剤No.1-No.11を、アルミニウム箔および白インキのべた印刷を施したポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、乾燥炉にて酢酸エチルを蒸発させた後、これに押し出された低密度ポリエチレン樹脂フィルムを貼り合わせた。このようにして得たラミネートフィルムに対して、接着強度、食品を充填しての耐煮沸性、湿布薬を充填しての耐薬品貯安性試験をおこなった。結果を表2に示す。
【0033】試験試料構成A;接着面に白インキ(ウレタン系2液タイプ)のべた印刷を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μ)、押し出し低密度ポリエチレン樹脂(厚み35μ)構成B;接着面に白インキ(ウレタン系1液タイプ)のべた印刷を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μ)、押し出し低密度ポリエチレン樹脂(厚み35μ)構成C;ポリエチレンテレフタレート(厚み12μ)、アルミニウム箔(厚み9μ)(ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム箔間は、あらかじめドライラミネーターでラミネートしたものを用いた)、押し出し低密度ポリエチレン樹脂(厚み35μ)【0034】接着強度試験上記試験試料を15mm幅に切断し、構成AとBでは、インキと低密度ポリエチレン樹脂間、構成Cでは、アルミニウム箔と低密度ポリエチレン樹脂間の剥離強度をインテスコ205引っ張り試験機によって、荷重速度300mm/minでT型剥離試験をおこなった。
【0035】耐煮沸性試験上記試験試料で作成した袋に、市販の4.2%食酢,サラダ油,ケチャップを1/1/1に混合したモデル食品を充填した。この袋を90℃の熱水中で、1時間煮沸殺菌処理をおこなった後、内容物を取り出し、上記接着強度試験と同様に剥離強度を測定した。
【0036】耐薬品性試験上記試験試料で作成した袋に、市販の湿布薬を充填した。この袋を50℃、1週間保存した後、内容物を取り出し、上記接着強度試験と同様に剥離強度を測定した。
【表2】

上記試験結果から明らかなように部分酸変性ポリオールと有機ポリイソシアネート化合物を含有する本発明の押し出しラミネート用アンカーコート剤は、特に耐煮沸性、対薬品性においてすぐれている。
【0037】
【発明の効果】本発明の押し出しラミネート用アンカーコート剤は、例えば、食品包装材用のアンカーコート剤として、アルミニウム箔のような金属箔、無色または必要に応じて文字や模様等を印刷してなるポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどのプラスチックフィルム等の基材フィルムと、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂などの押し出し樹脂との間に、極めて優れた接着強度、耐熱性、耐水性を有し、包装材に食品を充填して密封した状態で、85℃以上の熱水中での煮沸殺菌処理においても、基材フィルムと押し出し樹脂との間が剥離することのない耐煮沸性と耐食品性の良好な、しかも、食品の長期保存安定性も良好な包装材として、また、例えば、湿布薬、浴用材などの薬品包装材用のアンカーコート剤として、アルミニウム箔のような金属箔と上記したような押し出し樹脂との間に極めて優れた接着強度、耐薬品性の良好な包装材として有利に用いられる。このように本発明により特に接着強度、耐熱性、耐水性、耐煮沸性・耐薬品性等の点ですぐれた特性を有し、接着する基材の種類や、得られるラミネートフィルムの目的を問わず巾広く適用し得る押し出しラミネート用アンカーコート剤が得られる。
 
訂正の要旨 (3-1):特許第3267319号明細書における[特許請求の範囲]の訂正
▲1▼ 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1記載の「有機ポリイソシアネート化合物」を「ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物」に訂正する。
▲2▼ 訂正事項b
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
▲3▼ 訂正事項c
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(3-2):特許第3267319号明細書における[発明の詳細な説明]の訂正
▲1▼ 訂正事項d
明細書段落[0006]の
「有機ポリイソシアネート化合物」を「ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物」に訂正する。
▲2▼ 訂正事項e
明細書段落[0015]の
「としては脂肪族ジイソシアネート誘導体がとりわけ好ましい。特に、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体」を「はヘキサメチレンジイソシアネート誘導体」に訂正する。
▲3▼ 訂正事項f
明細書段落[0015]の
「75重量%以上含有したものを使用すると、」を「75重量%以上含有したものであり、」に訂正する。
▲4▼ 訂正事項g
明細書段落[0016]の2箇所に記載されている、
「有機ポリイソシアネート化合物」を「ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を75重量%以上含有する有機ポリイソシアネート化合物」に訂正する。
異議決定日 2003-06-26 
出願番号 特願平4-63545
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 昌広  
特許庁審判長 雨宮 弘治
特許庁審判官 鈴木 紀子
井上 彌一
登録日 2002-01-11 
登録番号 特許第3267319号(P3267319)
権利者 三井武田ケミカル株式会社
発明の名称 押し出しラミネート用アンカーコート剤  
代理人 岩谷 龍  
代理人 岡本 寛之  
代理人 岩谷 龍  
代理人 岡本 寛之  

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