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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1083109 |
異議申立番号 | 異議2002-70911 |
総通号数 | 46 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-10-11 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-04-09 |
確定日 | 2003-06-23 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3216770号「電子部品用冷却装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3216770号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許は、平成7年3月20日に出願したものであって、請求項1及び2に係る発明につき平成13年8月3日に特許権の設定登録がなされた後、平成14年4月9日に特許異議申立人である株式会社デンソーより請求項1及び2に係る発明についての特許に対して特許異議の申立がなされて、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成15年4月30日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 訂正事項a. 特許請求の範囲を「【請求項1】一面に電子部品(33)が装着されるコールドプレート(31)の他面にタンク部(37)を構成する凹部(31a)と前記凹部(31a)の外周に沿って嵌合凹部(31b)を形成し、蓋部材(35)を前記嵌合凹部(31b)に嵌合することにより前記凹部(31a)を覆い、冷媒が収容されるタンク部(37)を形成するとともに、前記蓋部材(35)に、前記タンク部(37)に両端部を連通するU字状の多穴管コンテナ(41)を突設し、前記タンク部(37)および前記多穴管コンテナ(41)内を真空にし、内部に冷媒を封入してなることを特徴とする電子部品用冷却装置。」と訂正する。 訂正事項b. 明細書の段落番号【0006】の記載を「【課題を解決するための手段】 請求項1の電子部品用冷却装置は、一面に電子部品(33)が装着されるコールドプレート(31)の他面にタンク部(37)を構成する凹部(31a)と前記凹部(31a)の外周に沿って嵌合凹部(31b)を形成し、蓋部材(35)を前記嵌合凹部(31b)に嵌合することにより前記凹部(31a)を覆い、冷媒が収容されるタンク部(37)を形成するとともに、前記蓋部材(35)に、前記タンク部(37)に両端部を連通するU字状の多穴管コンテナ(41)を突設し、前記タンク部(37)および前記多穴管コンテナ(41)内を真空にし、内部に冷媒を封入してなることを特徴とする。」と訂正する。 訂正事項c. 明細書の段落番号【0007】の記載を削除する。 訂正事項d. 明細書の段落番号【0010】の記載を「この伝導された熱量によりタンク部内の冷媒が蒸発し、多穴管コンテナ内に流入し、多穴管コンテナを上方に向けて流れる間に、外気と熱交換し冷却され凝縮し、液化した冷媒が、多穴管コンテナを落下して、タンク部に導かれる。 そして、多穴管コンテナを折曲し、その両端部を、タンク部に連通したので、多穴管コンテナの端部を封止する必要がなくなる。 そして、コールドプレートに、タンク部を構成する凹部を形成したので、電子部品から発熱した熱量が、凹部に効率的に伝導される。」と訂正する。 訂正事項e. 明細書の段落番号【0030】の記載を「また、コールドプレートに、タンク部を構成する凹部を形成したので、電子部品から発熱した熱量を、凹部に効率的に伝導することができる。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の適否 上記訂正事項aは、請求項2を請求項1に併合するとともに願書に添付した明細書【0014】の記載に基づいて特許請求の範囲を減縮し、それと同時に誤記の訂正も行ったものであり、これは特許請求の範囲の減縮および誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当するものである。また、上記訂正事項b〜eは、訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当するものである。 そして、上記訂正事項a〜eは、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書および第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立についての判断 (1)申立の理由の概要 特許異議申立人は、甲第1〜4号証を提出して、請求項1及び2に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反したものであり、請求項1及び2に係る発明の特許は同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきと主張している。 (2)本件の請求項1に係る発明 上記「2.訂正に適否についての判断」で示したように上記訂正が認められるから、訂正後の本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】一面に電子部品(33)が装着されるコールドプレート(31)の他面にタンク部(37)を構成する凹部(31a)と前記凹部(31a)の外周に沿って嵌合凹部(31b)を形成し、蓋部材(35)を前記嵌合凹部(31b)に嵌合することにより前記凹部(31a)を覆い、冷媒が収容されるタンク部(37)を形成するとともに、前記蓋部材(35)に、前記タンク部(37)に両端部を連通するU字状の多穴管コンテナ(41)を突設し、前記タンク部(37)および前記多穴管コンテナ(41)内を真空にし、内部に冷媒を封入してなることを特徴とする電子部品用冷却装置。」 (3)甲号各証の記載事項 甲第1号証(特開平4-198690号公報)には、以下の事項が記載されている。 (1-a)「本発明は、半導体素子などの発熱を拡散させる放熱器として好適なヒートパイプとその製造方法に関するものである。」(〔産業上の利用分野〕) (1-b)「第1の実施例のヒートパイプ10は、ベース部11と放熱部12とから構成されている。ベース部11は、平行平面を有する箱形の部分であり、一方側の外面には、フラットな吸熱面11bが形成されている。この吸熱面11bには、サイリスタやパワートランジスタなどの発熱素子90を接合することができる。放熱部12は、断面が正方形の有底筒状の部分であり、ベース部11の他方側に多数突出して設けられている。 ・・・第1C図に示すように、上側ベース部11Aに放熱部12がクシ状に並んだ形状に成形し、他方側から上側ベース部11Aに凹部11a1を形成するとともに、各放熱部12の略中心にドリル等で細長い孔12aを空ける。そして、下側から凹部11a2が形成された下側ベース部11Bをロー材13によって接合してある。ベース部11と放熱部12とは、凹部11aと細長孔12aとが連通して中空の内部空間が形成され、そこには作動液として純水等が封入されている。」(第3頁左上欄第9行〜右上欄第10行) (1-c)「第3の実施例では、・・・。この放熱部32の内部には、細長い孔32aが長方形断面の長手方向に均等に分布するように加工してあるので、放熱特性も優れている。」(第3頁左下欄第15〜20行) (1-d)「第4、5の実施例では、・・・。このとき、・・・、放熱部52の内部は、第3の実施例と同様にしてあるので、放熱特性も優れている。」(第3頁右下欄第8〜14行) 甲第2号証(特開平6-24279号公報)には、以下の事項が記載されている。 (2-a)「本発明は、電気自動車に搭載される電気部品の冷却装置に関する。 【従来の技術】 従来より、電気自動車では、パワートランジスタ等の発熱部品を含む電気部品の冷却方法として空気冷却が一般的である。ところが、この空気冷却は、外気温の高い夏場の始動時等で、速やかに冷却する必要のある電気部品、例えば、半導体素子ユニット等の重要機能を有する電気部品の冷却には適さない。」(【0001】、【0002】) (2-b)「本実施例の電気自動車用冷却装置1(以下冷却装置と略す)は、電気自動車に搭載される電気部品2を冷却するもので、冷却液が流れる2本のチューブ3と、各チューブ3の両端部に接続された一対のタンク4、5とを備える。 チューブ3は、断面が偏平形状を呈するアルミニウムの押出成型品で、チューブ3の長さ方向に延びる内柱3aにより内部が幅方向に複数に区画されて、それぞれ冷却液が流れる通路3bを成す。」(第3頁左欄第1〜9行) (2-c)「この実施例の冷却装置1は、図4に示すように、U字状に屈曲させたチューブ3を使用することでタンク4、5を一つにまとめたものである。この結果、より小型、軽量化を図ることができる。」(【0029】)と記載され、図4には電機部品2がU字状に屈曲させたチューブ3の外壁面に接触していることが示されている。 甲第3号証(特開平2-130948号公報)には、以下の事項が記載されている。 (3-a)「この発明は、平形半導体素子の両端に配置され、金属ブロックと、冷却片とから成るヒートパイプ冷却器を備えた半導体冷却装置に関するものである。」(〔産業状の利用分野〕) (3-b)「図において、1は平形半導体素子、2はヒートパイプ冷却器で、この冷却器は金属ブロック23、パイプ24、冷却片25とで構成されている。そして、パイプ24は金属ブロック23の内部に設けた穴23Aに挿入され、半田付又はロー付等により固着されている。またこの中空パイプ24内には作動液7が真空中で充填され両端を封止している。」(第1頁右欄第1〜7行) 甲第4号証(特開昭61-130786号公報)には、以下の事項が記載されている。 (4-a)「互いに隣り合う複数のU字形管体の開口を連通ヘッダで結合して管体群を構成し、この管体群の内部に真空減圧后作動液を封入したことを特徴とする熱交換装置。」(特許請求の範囲(1)) (4-b)「・・・作動液であり、U字形ヒートパイプ(7)、連通ヘッダ(8)から成る管体群の内部に真空脱気后封入されている。」(第2頁右上欄第7〜9行) (4-c)「この発明によれば、互いに隣り合う複数のU字形管体の開口を連通ヘッダで結合して管体群を構成したので、管体群を1回の製造工程(真空脱気・作動液注入・封止)で制作でき、安価に、短期に制作できる効果がある。」(第2頁右下欄第5〜9行) (4)対比・判断 本件発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証についての摘記事項(1-b)における「下側ベース部B」、「上側ベース部11A」、「ベース部11」及び「放熱部12」は、それぞれ順に本件発明1における「一面に電子部品が装着されるコールドプレート」、「蓋部材」、「タンク部」及び「タンク部に連通するコンテナ」に相当している。そして、放熱部12、すなわちタンク部に連通するコンテナは、摘記事項(1-c)及び(1-d)から、多穴管であることも示されている。してみると、両者は、「一面に電子部品が装着されるコールドプレートの他面にタンク部を構成する凹部を形成し、蓋部材により前記凹部を覆い、冷媒が収容されるタンク部を形成するとともに、前記蓋部材に、前記タンク部に連通する多穴管コンテナを突設し、前記タンク部および前記多穴管コンテナ内部に冷媒を封入してなる電子部品用冷却装置」で一致するが、甲第1号証記載の発明では上記多穴管コンテナが「タンク部に両端部を連通するU字状」ではないこと(相違点1)、甲第1号証には、蓋部材により上記凹部を覆う際に「凹部の外周に沿って嵌合凹部を形成し、蓋部材を前記嵌合凹部に嵌合すること」が記載されていないこと(相違点2)及び上記タンク部およびパイプ部材内部に冷媒を封入する際に当該内部を「真空」にする点が記載されていないこと(相違点3)で両者は相違している。 上記相違点1について検討する。甲第2号証記載の発明は、摘記事項(2-a)に「パワートランジスタ等」、「半導体素子ユニット等」の冷却装置であることが記載されているから、電子部品用冷却装置である。摘記事項(2-b)及び(2-c)には、当該冷却装置は、チューブ、すなわち本件発明におけるコンテナに冷媒を流して冷却するものであり、そのコンテナは両端部をタンク部に連通するU字状であることが記載されているが、電子部品が接触する場所が本件発明ではタンク部を形成するコールドプレートであるのに対し、摘記事項(2-c)ではU字状に屈曲させたチューブの外壁面となっており、電子部品とU字状コンテナとの設置関係が異なっている。また、本件発明ではコンテナ端部の封止を不要とし気密性を上げるためにコンテナをU字状としているが、甲第2号証記載の発明では冷却装置の小型、軽量化を図るためにコンテナをU字状としており、その目的も異なっている。したがって、その装置における部品の設置関係、部品の目的が異なるものを、部品の形状が一致しているからといって転用できるものではないため、甲第2号証に記載のU字状のコンテナ形状から相違点1の構成が導き出せるものではない。 また、甲第4号証の摘記事項(4-a)、(4-b)における「作動液」、「連通ヘッダ」及び「U字形ヒートパイプ」は、それぞれ順に本件発明における「冷媒」、「タンク部」、「U字状のコンテナ」に相当するにしても、そもそも甲第4号証記載の発明は熱交換装置に関するものであり、本件発明の電子部品冷却装置とは明らかにその装置としての構成が異なるものである。してみれば、甲第4号証についても、U字状のコンテナが記載されているからといって相違点1の構成が導き出せるものではない。 甲第3号証にはU字状のコンテナについて何ら記載されていないため、甲第2〜4号証をいかに組み合わせても、本件発明における相違点1について当業者が容易になし得たこととは認められない。 そして、このように相違点1が当業者が容易になし得たこととは認められない以上、上記相違点2および3について検討するまでもなく、本件発明は甲第1〜4号証記載の発明に基づいて容易に発明することができたものでではない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許については、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとすることができないし、しかも他に拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとする理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 電子部品用冷却装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 一面に電子部品(33)が装着されるコールドプレート(31)の他面にタンク部(37)を構成する凹部(31a)と前記凹部(31a)の外周に沿って嵌合凹部(31b)を形成し、蓋部材(35)を前記嵌合凹部(31b)に嵌合することにより前記凹部(31a)を覆い、冷媒が収容されるタンク部(37)を形成するとともに、前記蓋部材(35)に、前記タンク部(37)に両端部を連通するU字状の多穴管コンテナ(41)を突設し、前記タンク部(37)および前記多穴管コンテナ(41)内を真空にし、内部に冷媒を封入してなることを特徴とする電子部品用冷却装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、整流ダイオード,LSIチップ等のように発熱する電子部品を冷却するための電子部品用冷却装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、整流ダイオード,LSIチップ等のように発熱する電子部品を冷却するためのヒートシンクとして、例えば、実開昭55-75198号公報に開示されるものが知られている。 図7は、この公報に開示されるヒートシンクを示すもので、このヒートシンクでは、取付部材11の一側に整流ダイオード等のように発熱する電子部品13がビス15により固定され、取付部材11の他側に複数の放熱プレート17が固定されている。 【0003】 そして、放熱プレート17の間に波形放熱フィン19が配置されている。 このようなヒートシンクでは、電子部品13で発生した熱量が、取付部材11および放熱プレート17を介して波形放熱フィン19に伝達され、波形放熱フィン19から大気中に放熱されるため、電子部品13を効率的に冷却することができる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、このような従来のヒートシンクでは、放熱プレート17と波形放熱フィン19との自然放熱により電子部品13を冷却しているため、冷却効率が低いという問題があった。 また、電子部品13が大型化し放熱量が増大した場合に、放熱プレート17を長くする程、熱を放熱フィン19に伝える放熱プレート17の効率が、熱伝導率分だけ低下するため、放熱フィン19を増加して放熱面積を増大しても、冷却能力が増大せず、電子部品13の放熱量を増大することが困難になるという問題があった。 【0005】 本発明は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、電子部品の冷却効率を従来より大幅に向上することができる電子部品用冷却装置を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】 請求項1の電子部品用冷却装置は、一面に電子部品(33)が装着されるコールドプレート(31)の他面にタンク部(37)を構成する凹部(31a)と前記凹部(31a)の外周に沿って嵌合凹部(31b)を形成し、蓋部材(35)を前記嵌合凹部(31b)に嵌合することにより前記凹部(31a)を覆い、冷媒が収容されるタンク部(37)を形成するとともに、前記蓋部材(35)に、前記タンク部(37)に両端部を連通するU字状の多穴管コンテナ(41)を突設し、前記タンク部(37)および前記多穴管コンテナ(41)内を真空にし、内部に冷媒を封入してなることを特徴とする。 【0007】 【0008】 【0009】 【作用】 請求項1の電子部品用冷却装置では、コールドプレートの一面に装着される電子部品から発熱した熱量が、コールドプレートの他面に伝導される。 【0010】 この伝導された熱量によりタンク部内の冷媒が蒸発し、多穴管コンテナ内に流入し、多穴管コンテナを上方に向けて流れる間に、外気と熱交換し冷却され凝縮し、液化した冷媒が、多穴管コンテナを落下して、タンク部に導かれる。 そして、多穴管コンテナを折曲し、その両端部を、タンク部に連通したので、多穴管コンテナの端部を封止する必要がなくなる。 そして、コールドプレートに、タンク部を構成する凹部を形成したので、電子部品から発熱した熱量が、凹部に効率的に伝導される。 【0011】 【0012】 【実施例】 以下、本発明の詳細を図面に示す実施例について説明する。 【0013】 図1および図2は、本発明の電子部品用冷却装置の一実施例を示すもので、図において符号31は、矩形状のコールドプレートを示している。 このコールドプレート31は、例えば、アルミニュウム等の熱伝導性の良好な金属により形成されている。 コールドプレート31の一面には、例えば、LSIチップあるいはLSIを集積したマルチチップモジュール(MCM)等の電子部品33が、熱伝導性の良好な接着剤により接着されている。 【0014】 コールドプレート31の他面には、図3に示すように、矩形状の凹部31aが形成されている。 凹部31aの外周に沿って嵌合凹部31bが形成され、この外側にカシメ爪31cが形成されている。 嵌合凹部31bには、矩形状の蓋部材35の底部35aが嵌合され、カシメ爪31cによりコールドプレート31に固定されている。 【0015】 そして、蓋部材35と凹部31aによりタンク部37が形成されている。 蓋部材35は、例えば、アルミニュウム等の熱伝導性の良好な金属により形成されている。 蓋部材35には、冷媒注入口35bが形成され、この冷媒注入口35bは、封止部材39により封止されている。 【0016】 蓋部材35には、長穴状の取付穴35cが形成され、これ等の取付穴35cに、多穴管コンテナ41が嵌挿されている。 多穴管コンテナ41は、例えば、アルミニュウム等の熱伝導性の良好な金属により形成されている。 この多穴管コンテナ41は、押し出し成形により形成され、幅方向に所定間隔を置いて、複数の管路41aが形成されている。 【0017】 多穴管コンテナ41は、中央においてU字状に折曲され、その両端部を、蓋部材35の取付穴35cに嵌挿されている。 多穴管コンテナ41の両端面は、図4に示すように、斜めに切断され、その切断部41bの頂部が、コールドプレート31の凹部31aの底面31dに当接されている。 【0018】 多穴管コンテナ41の熱交換部41cには、コルゲートフィンからなる放熱フィン43が配置されている。 この放熱フィン43は、例えば、アルミニュウム等の熱伝導性の良好な金属により形成されている。 上述した電子部品用冷却装置は、コールドプレート31の嵌合凹部31bに蓋部材35の底部35aを嵌合し、カシメ爪31cを折曲することにより蓋部材35をコールドプレート31に固定した後、蓋部材35の取付穴35cに多穴管コンテナ41の両端部を嵌挿し、多穴管コンテナ41に、放熱フィン43を組み付けることにより組み立てられる。 【0019】 そして、この後、ろう付け炉内においてろう付けされ、一体接合される。 そして、さらに、蓋部材35に形成される冷媒注入口35bから水等の冷媒がタンク部37内に所定量注入され、この後、冷媒注入口35bからタンク部37および多穴管コンテナ41内が真空引きされ、封止部材39により冷媒注入口35bが封止される。 【0020】 上述した電子部品用冷却装置では、コールドプレート31の一面に装着される電子部品33から発熱した熱量が、コールドプレート31の凹部31aの底面31dに伝導される。 この伝導された熱量によりタンク部37内の冷媒が蒸発し、多穴管コンテナ41の管路41a内に流入し、管路41aを上方に向けて流れる間に、外気と熱交換し冷却され凝縮し、液化した冷媒が、管路41aを落下して、タンク部37に導かれる。 【0021】 以上のように構成された電子部品用冷却装置では、電子部品33から発熱した熱量によりタンク部37内の冷媒が蒸発し、多穴管コンテナ41の管路41a内に流入し、管路41aを上方に向けて流れる間に、外気と熱交換し冷却され凝縮し、液化した冷媒が、管路41aを落下して、タンク部37に導かれるため、電子部品33の冷却効率を従来より大幅に向上することができる。 【0022】 すなわち、上述した電子部品用冷却装置では、冷媒の潜熱を利用して、電子部品33から発熱した熱量を熱交換部41cに導くようにしたので、電子部品33から発熱した熱量を効率的に熱交換部41cに導くことが可能になり、電子部品33の冷却効率を従来より大幅に向上することができる。 従って、自然放熱により電子部品を冷却する従来のヒートシンクに比較して、小型化を図ることが可能になり、また、大きな熱量を放出することができる。 【0023】 また、上述した電子部品用冷却装置では、コールドプレート31に、タンク部37を構成する凹部31aを形成したので、電子部品33から発熱した熱量を、凹部31aに効率的に伝導することができる。 さらに、多穴管コンテナ41を折曲し、その両端部を、タンク部37に連通したので、多穴管コンテナ41の端部を封止する必要がなくなり、気密性を向上することができる。 【0024】 また、上述した電子部品用冷却装置では、多穴管コンテナ41の熱交換部41cに、放熱フィン43を配置したので、外気との熱交換効率を向上することができる。 さらに、多穴管コンテナ41により複数の管路41aを形成したので、複数の管路41aを容易,確実に形成することが可能になり、また、気密信頼性の高い管路41aを形成することができる。 【0025】 また、上述した電子部品用冷却装置では、コールドプレート31の全面に、均一に冷媒が流れるため、ヒートスポットがなくなり、電子部品33を確実に保護することができる。 【0026】 図5および図6は、本発明の電子部品用冷却装置の他の実施例を示すもので、この実施例では、多穴管コンテナ41の内側にのみ放熱フィン43が配置されている。 また、多穴管コンテナ41の側方には、ファン45がビス47により固定されている。 【0027】 この電子部品用冷却装置では、ファン45により、放熱フィン43で熱交換し暖められた空気を外部に確実に排出することができ、熱交換効率をより向上することができる。 なお、以上述べた実施例では、MCMからなる電子部品33に本発明を適用した例について説明したが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、電気的な発熱を伴う電子素子等に広く適用できる。 【0028】 【0029】 【発明の効果】 以上述べたように、請求項1の電子部品用冷却装置では、電子部品から発熱した熱量によりタンク部内の冷媒が蒸発し、多穴管コンテナ内に流入し、多穴管コンテナを上方に向けて流れる間に、外気と熱交換し冷却され凝縮し、液化した冷媒が、多穴管コンテナを落下して、タンク部に導かれるため、電子部品の冷却効率を従来より大幅に向上することができる。 そして、多穴管コンテナをU字状に折曲し、その両端部を、タンク部に連通したので、多穴管コンテナの端部を封止する必要がなくなり、気密性を向上することができる。 【0030】 また、コールドプレートに、タンク部を構成する凹部を形成したので、電子部品から発熱した熱量を、凹部に効率的に伝導することができる。 【0031】 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の電子部品用冷却装置の一実施例を示す断面図である。 【図2】 図1の▲2▼-▲2▼線に沿う断面図である。 【図3】 図1のコールドプレートと蓋部材との分解斜視図である。 【図4】 図1の多穴管コンテナを示す斜視図である。 【図5】 本発明の電子部品用冷却装置の他の実施例を示す断面図である。 【図6】 図5の斜視図である。 【図7】 従来のヒートシンクを示す側面図である。 【符号の説明】 31 コールドプレート 31a 凹部 33 電子部品 35 蓋部材 37 タンク部 41 多穴管コンテナ 41a 管路 |
訂正の要旨 |
(1)特許請求の範囲の請求項1および請求項2 【特許請求の範囲】 【請求項1】 一面に電子部品(33)が装着されるコールドプレート(31)の他面を蓋部材(35)により覆い、冷媒が収容されるタンク部(37)を形成するとともに、前記蓋部材(35)に、前記タンク部(37)に両端部を連通するU字状の多穴管コンテナ(41)を突設し、前記タンク部(37)およびパイプ部材(41)内を真空にし、内部に冷媒を封入してなることを特徴とする電子部品用冷却装置。 【請求項2】 請求項1記載の電子部品用冷却装置において、 前記コールドプレート(31)の他面には、前記タンク部(37)を構成する凹部(31a)が形成されていることを特徴とする電子部品用冷却装置。 とあるのを、 【特許請求の範囲】 【請求項1】 一面に電子部品(33)が装着されるコールドプレート(31)の他面にタンク部(37)を構成する凹部(31a)と前記凹部(31a)の外周に沿って嵌合凹部(31b)を形成し、蓋部材(35)を前記嵌合凹部(31b)に嵌合することにより前記凹部(31a)を覆い、冷媒が収容されるタンク部(37)を形成するとともに、前記蓋部材(35)に、前記タンク部(37)に両端部を連通するU字状の多穴管コンテナ(41)を突設し、前記タンク部(37)および前記多穴管コンテナ(41)内を真空にし、内部に冷媒を封入してなることを特徴とする電子部品用冷却装置。 と訂正する。 (2)明細書の段落番号「0006」 【0006】 【課題を解決するための手段】 請求項1の電子部品用冷却装置は、一面に電子部品が装着されるコールドプレートの他面を蓋部材により覆い、冷媒が収容されるタンク部を形成するとともに、前記蓋部材に、前記タンク部に両端部を連通するU字状の多穴管コンテナを突設し、前記タンク部およびパイプ部材内を真空にし、内部に冷媒を封入してなることてなることを特徴とする。 とあるのを、 【0006】 【課題を解決するための手段】 請求項1の電子部品用冷却装置は、一面に電子部品(33)が装着されるコールドプレート(31)の他面にタンク部(37)を構成する凹部(31a)と前記凹部(31a)の外周に沿って嵌合凹部(31b)を形成し、蓋部材(35)を前記嵌合凹部(31b)に嵌合することにより前記凹部(31a)を覆い、冷媒が収容されるタンク部(37)を形成するとともに、前記蓋部材(35)に、前記タンク部(37)に両端部を連通するU字状の多穴管コンテナ(41)を突設し、前記タンク部(37)および前記多穴管コンテナ(41)内を真空にし、内部に冷媒を封入してなることを特徴とする。 と訂正する。 (3)明細書の段落番号「0007」 【0007】 請求項2の電子部品用冷却装置は、請求項1において、前記コールドプレートの他面には、前記タンク部を構成する凹部が形成されていることを特徴とする。 とあるのを削除する。 (4)明細書の段落番号「0010」 【0010】 この伝導された熱量によりタンク部内の冷媒が蒸発し、多穴管コンテナ内に流入し、多穴管コンテナを上方に向けて流れる間に、外気と熱交換し冷却され凝縮し、液化した冷媒が、多穴管コンテナを落下して、タンク部に導かれる。 そして、多穴管コンテナを折曲し、その両端部を、タンク部に連通したので、多穴管コンテナの端部を封止する必要がなくなる。 請求項2の電子部品用冷却装置では、コールドプレートに、タンク部を構成する凹部を形成したので、電子部品から発熱した熱量が、凹部に効率的に伝導される。 とあるのを、 【0010】 この伝導された熱量によりタンク部内の冷媒が蒸発し、多穴管コンテナ内に流入し、多穴管コンテナを上方に向けて流れる間に、外気と熱交換し冷却され凝縮し、液化した冷媒が、多穴管コンテナを落下して、タンク部に導かれる。 そして、多穴管コンテナを折曲し、その両端部を、タンク部に連通したので、多穴管コンテナの端部を封止する必要がなくなる。 そして、コールドプレートに、タンク部を構成する凹部を形成したので、電子部品から発熱した熱量が、凹部に効率的に伝導される。 と訂正する。 (5)明細書の段落番号「0030」 【0030】 請求項2の電子部品用冷却装置では、コールドプレートに、タンク部を構成する凹部を形成したので、電子部品から発熱した熱量を、凹部に効率的に伝導することができる。 とあるのを、 【0030】 また、コールドプレートに、タンク部を構成する凹部を形成したので、電子部品から発熱した熱量を、凹部に効率的に伝導することができる。 と訂正する。 |
異議決定日 | 2003-05-21 |
出願番号 | 特願平7-61307 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(H01L)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中澤 登 |
特許庁審判長 |
城所 宏 |
特許庁審判官 |
三崎 仁 伊藤 明 |
登録日 | 2001-08-03 |
登録番号 | 特許第3216770号(P3216770) |
権利者 | カルソニックカンセイ株式会社 |
発明の名称 | 電子部品用冷却装置 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |
代理人 | 古谷 史旺 |
代理人 | 加藤 大登 |
代理人 | 古谷 史旺 |