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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1083114
異議申立番号 異議2000-72083  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-04-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-19 
確定日 2003-06-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2980765号「化粧シートの製造方法」の請求項1ないし4、6ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2980765号の請求項1ないし4、6ないし9に係る特許を維持する。 
理由 (I)手続きの経緯
本件特許第2980765号の請求項1〜9に係る発明は、平成4年3月11日(パリ条約による優先権主張1991年7月31日、米国)に特許出願され、平成11年9月17日に特許権の設定登録がされたものであるところ、当該請求項1〜4および6〜9に係る発明の特許について、渡辺忠雄(以下、「申立人」という。)から、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月10日に訂正請求がなされたものである。

(II-2)訂正請求について
(II-2-1)訂正事項
(あ)特許請求の範囲の請求項1中の「電離放射線重合性オリゴマー(ただし、シリコーンアクリレートを除く)、電離放射線重合性モノマーおよび離型剤を含有する組成物からなり、」を、「電離放射線重合性オリゴマー(ただし、シリコーンアクリレートを除く)、電離放射線重合性モノマーおよび離型剤を含有する組成物であって、該離型剤がエマルジョン型の分散状態で存在する組成物からなり、」と訂正する。
(い)明細書の段落番号【0011】中の「離型剤が分散状態で存在し、」を、「離型剤がエマルジョン型の分散状態で存在し、」と訂正する。
(う)明細書の段落番号【0017】中の「離型剤が分散状態で存在している。」を、「離型剤がエマルジヨン型の分散状態で存在している。」と訂正する。
(え)明細書の段落番号【0018】中の「離型剤を分散状態、特にエマルジョン型の分散状態で存在させて、」を、「離型剤をエマルジョン型の分散状態で存在させて、」と訂正する。

(II-2-2)訂正事項の検討
(A)訂正事項(あ)について:
訂正事項(あ)は、本件の願書に添付した明細書の段落番号【0018】の「離型剤を分散状態、特にエマルジョン型の分散状態で存在させて、」に基づいて、特許請求の範囲を減縮するものであり、訂正前の特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項(あ)に係る訂正は、本件の願書に添付した明細書に記載された範囲内のものであり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(B)訂正事項(い)〜(え)について:
いずれの訂正事項も、前記した訂正事項(あ)と整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当するものであり、訂正事項(あ)について前記したのと同様の理由により、願書に添付した明細書に記載した範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(C)訂正に対するむすび
上記訂正は、本件の願書に添付した明細書に記載された範囲内のものであり、かつ、特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明に該当するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、前記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書および同条第2項の規定に適合するものであり、適法なものとして認める。

(III)特許異議の申立てについて
(III-1)本件発明
本件の請求項1〜4および6〜9に係る発明(以下、「本件発明1〜4および6〜9」という。)は、前記訂正後の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4および6〜9に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】基材シート上に、(イ)それ自体撥液性を有するバインダーに顔料または(および)染料を添加してなる撥液性インキ、(口)それ自体撥液性のないバインダー中に撥液性の物質を添加し、さらに顔料または(および)染料を添加した撥液性インキ、および(ハ)それ自体撥液性のバインダーにさらに撥液性の添加剤ならびに顔料または(および)染料を添加した撥液性インキからなる群から選ばれたインキによって絵柄層を形成し、前記絵柄層上に、電離放射線重合性オリゴマー(ただし、シリコーンアクリレートを除く)、電離放射線重合性モノマーおよび離型剤を含有する組成物であって、該離型剤がエマルジョン型の分散状態で存在する組成物からなり、前記離型剤がシリコーンアクリレートまたはその変性物からなり、該組成物の粘度を1000cps以下に制御してなる電離放射線硬化型塗料組成物を塗工し、このようにして形成された前記撥液性絵柄層と前記塗工層との間の撥液作用によって前記絵柄層の上部に形成された塗工層に凹部を形成し、さらに このようにして形成された塗工層に対して電離放射線を照射して、前記絵柄層に同調した凹凸が形成された塗工層を硬化させることを特徴とする、絵柄に同調した凹凸形成層を有する化粧シートの製造方法。
【請求項2】前記組成物が、粒径0.1〜30μmの粒状物質からなるマット剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】前記組成物が、溶剤を含有せず、かつ、溶剤を使用することなくその塗工が可能な性状を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】前記電離放射線重合性オリゴマーが、分子量1000〜3000のアクリレート系プレポリマーからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】前記離型剤が、分子量1000〜10000、官能基当量2000以下のシリコーンアクリレートからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】前記基材が紙からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】前記絵柄層と基材との間に目止層が介在している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】前記電離照射線が電子線であり、照射を、2〜15Mradの照射量条件で行う、請求項1に記載の方法。」

(III-2)特許異議の申立て理由
申立人は、本件発明1〜4および6〜9は、下記甲第1〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるから、本件発明1〜4および6〜9に係る特許は取り消すべきものである旨を主張する。
引用甲各号証:
甲第1号証:特開昭62-74475号公報
甲第2号証:特開昭49-40381号公報
甲第3号証:特開昭63-218744号公報
甲第4号証:特開昭61-123677号公報
甲第5号証:特開昭56-144960号公報
甲第6号証:特開昭56-144775号公報
甲第7号証:特開昭60-104115号公報
甲第8号証:特開昭56-100816号公報
甲第9号証:特開平03-004969号公報

(III-3)甲各号証の記載事項
甲第1号証:
「基材シートの表面に、シリコン樹脂またはフッ素樹脂を含有する印刷インキによる印刷絵柄層(A)とシリコン樹脂や弗素樹脂を含有することのない印刷インキによる印刷絵柄層(B)とを形成し、次いで、前期基材シートにおける印刷絵柄層(A)、(B)面の全面に、未硬化状態においても常温で固体状態を呈する熱可塑性の電離放射線硬化型樹脂を主成分とする上塗り塗料を塗布し、更に、該上塗り塗料の塗布面に電離放射線を照射することにより、少なくとも前記電離放射線硬化型樹脂を架橋、硬化させることを特徴とする同調する凹凸模様を有する化粧シートの製造方法。」(特許請求の範囲)
「シリコン樹脂または弗素樹脂を含有する印刷インキによる印刷絵柄層(A)と対応する位置の上塗り塗料層の表面が凹部とされている化粧シート、すなわち、同調する凹凸表面を有する化粧シートを得るものである。」(3頁左上欄7〜11行)
「本各発明の同調する凹凸表面を有する化粧シートの製造方法における基材シートとしては、薄葉紙、チタン紙、各種加工紙の紙・・・各種の樹脂がコーティングされている塗工シート等が利用される。また、上塗り塗布層を形成する上塗り塗料中の主成分たる樹脂、すなわち、未硬化状態においても常温で固体状を呈する熱可塑性の電離放射線硬化樹脂は、ラジカル重合性不飽和基を具備する樹脂であり、(1)ラジカル重合性不飽和基を具備するガラス転移温度0〜250℃の重合体と、ラジカル重合性不飽和基を具備する融点20〜250℃の単量体化合物とが存し、以下に説明するようなものである。・・・ラジカル重合性不飽和単量体を、前記ラジカル重合体不飽和基が導入されている重合体の0.1〜100重量%程度添加することも可能である。」(3頁右上欄下より3行〜5頁右上欄9行)
「印刷絵柄層(A)はシリコン樹脂または弗素樹脂を含有する印刷インキによって形成されるものであり、印刷絵柄層(A)が、該層面の全面に適用される上塗り塗料に対する撥液性を発現するものである。従って、印刷絵柄層(A)を形成するための印刷インキは、普通2〜5重量%のシリコン樹脂または弗素樹脂を含有するものであるが、・・・また、着色のための着色顔料を含有させたりすることもある。また、この印刷絵柄層(A)を形成するための印刷インキは、通常、ウレタン、アクリル・・・等の公知の熱可塑性樹脂をべヒクルとするものである。」(5頁右下欄2〜最下行)
「上塗り塗料の塗布面に電離放射線を照射することにより、少なくとも基材シートの表面に存在している電離放射線硬化型樹脂を架橋、硬化させるものであるから、得られる化粧シート表面が、耐溶剤性、耐擦傷性、耐摩耗性等に極めて優れた性質を有しており」(7頁右下欄下より4行〜左上欄3行)。

甲第2号証:
「化粧材においては、その実用化に際して、種々の物性が必要とされるが、それらの物性のなかでも化粧材の表面に対する耐セロテープ性、引掻き強度、耐摩耗性等の表面物性は極めて重要なものである。・・・従来、上記の如き問題点を改良すべく種々の方法が試みられており、例えば、表面保護層を形成する際に離型性に富むシリコーン等の樹脂を使用する方法、・・・等が試みられている。しかしながら、上記の如き方法においても耐セロテープ性がいまだ満足すべきものでなく、更に・・・方法においては、・・・という欠点がある。」(1頁右欄18行〜2頁右上欄15行)
「本発明者は、化粧材における上記の問題点を改良すべく種々研究の結果、任意の基材の上に、必要な場合には、表面の平滑化、目止め塗料の塗布或は下塗り塗料の塗布等の任意の前処理を任意に施し、次に該基材の上に印刷方法或は描画方法等によって直接任意の模様を形成するか或は上記の如き方法であらかじめ任意の模様を形成した化粧紙を貼り合わせ、次いで上記の任意の模様又は化粧紙を含む全面に、従述(後述の誤記と解される。)する一般式(1)又は(2)で表わされる単量体を施し、しかる後電子線を照射したところ諸堅牢性、特に、耐セロテープ性、引掻き強度、耐摩耗性等の表面物性に極めて優れた耐久性に富むと共に高級な外観を与えて極めて美麗な化粧材を製造し得ることを見出して本発明を完成したものである。則ち、本発明は、任意の基材の上に任意の化粧模様を設け、次に該化粧模様を含む全面に、一般式

で表わされる単量体を施し、しかる後電子線を照射することを特徴とする化粧材の製造法である。」(2頁左下欄15行〜3頁左上欄2行)
「本発明において、上記の如き単量体のnが10以上になると、耐セロテープ性、引掻き強度、耐摩耗性等の表面物性に優れている化粧材を得ることができないので好ましくない。」(4頁左上欄16〜19行)。
(なお、前記「セロテープ」は、ニチバン株式会社の商品の登録商標である。以下、同様)

甲第3号証:
「エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、必要に応じて光重合開始剤を含む、プラスチック用活性エネルギー線硬化型被覆剤において、エチレン性不飽和二重結合を有するシリコン化合物を0.1〜10重量%含有することを特徴とするプラスチック用活性エネルギー線硬化型被覆剤。」(特許請求の範囲1)
「本発明は紫外線等の活性エネルギー線照射により反応硬化し、耐摩擦性およびスクラッチが良好であり、更に経時によるその性能低下が極めて少ないプラスチック用活性エネルギー線硬化型印刷インキに関するものである。」(1頁右欄3〜7行)
「本発明で使用されるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、モノマー、オリゴマー、またはプレポリマーの少なくとも1種が用いられる。モノマーとしては、・・・オリゴマーまたはプレポリマーとしては、・・・を単独もしくは混合して使用することもできる。」(3頁左上欄14行〜同頁左下欄12行参照)
「エチレン性不飽和二重結合を有するシリコン化合物としては、一般的にシリコン(メタ)アクリレートとして市販されているものが使用でき、例えば・・・がある。」(3頁右下欄14〜20行参照)

甲第4号証:
「1種又はそれ以上のポリアクリレート又はポリメタクリレート、重合可能な物質の総重量に基いて5%乃至15%の、アクリル不飽和又はメタクリル不飽和を含むカルボン酸及び得られる組成物を紫外線に対して感受性にする光開始剤から成ることを特徴とする輻射線硬化性の液状被覆組成物。」(特許請求の範囲1)前記輻射線硬化性の液状被覆組成物がシリコーンジカルビノールジウレタンジアクリレート又は同ジメタクリレートを含み、該シリコーンジカルビノールジウレタンジアクリレートが40%乃至60%までエトキシル化された分子量が600〜10000のメチル又はフェニル置換ポリシロキサンに基づいていること(特許請求の範囲5、6)、
前記シリコーンジカルビノールジウレタンジアクリレート又は同ジメタクリレートを含み、該シリコーンジカルビノールジウレタンジアクリレートは被覆からにじみ出ることなしに表面張力を下げて磨耗耐性を高めること(4頁左上欄15〜18行)。

甲第5号証:
「紙の一方の面に、電子線硬化コーティング剤を塗布し、次いで該塗布した層を電子線で硬化させることを特徴とする強光沢紙の製造法」(特許請求の範囲第2項)
「ここでいう電子線硬化コーティング剤とは、分子内にラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーの単独もしくは2種以上から成り、必要に応じて、これにビニルモノマー・・・を・・・加えてもよい。」(2頁左下欄17〜22行)
「本発明において電子線とは・・・等の各種電子線加速器から放出される・・・電子線を言う。・・・。尚、照射量は0.1Mrad以上10Mrad以下、好ましくは・・・であり」(3頁右上欄4〜16行)。

甲第6号証:
化粧材の製造において、粘度1000CPS以下である比較的低粘度の電子線硬化型樹脂を使用すること(特許請求の範囲の第1項および第2項参照)

甲第7号証:
「一般式(省略)[式中Xはビニル基、アリル基、メルカプト基、又は(メタ)アクリル基を表わし・・・]で表示される・・・オルガノポリシロキサン(a)100重量部と、・・・からなるウレタンアクリレート(b10000〜50重量部とのウレタンアクリレート組成物を被膜形成成分として含有することを特徴とする電離性放射線硬化型ウレタン組成物。」(特許請求の範囲参照)
「本発明は、・・・に関するものであり、恒久的な、優れた耐水性と透湿性及び吸湿性とを併せ有する硬化被膜形成能を有し、かつ、無溶剤で塗工可能で、安全性に於いても優れた性質を有するウレタン組成物を提供するものである。」(1頁右下欄6〜12行参照)

甲第8号証:
「(イ)エチレン性不飽和基を両末端に有するプレポリマー、(ロ)エチレン性不飽和基を有するモノマー及び(ハ)光重合開始剤を硬化成分とする光硬化性組成物において、(イ)成分のプレポリマーの一部として、一般式(略)・・・で表わされるウレタンアクリレートまたはウレタンメタクリレートを含有させたことを特徴とする光硬化性被覆組成物。」(特許請求の範囲1)
「近年、環境汚染の防止、溶剤型に比較して硬化が早く作業能率が良好などの利点があることから無溶剤型光硬化性塗料が注目を集めるようになってきた。しかしながら、光硬化性樹脂組成物は・・・まだ十分なものとはいえない。本発明者らはこのような従来の光硬化性樹脂組成物のもつ欠点を克服し、・・・光硬化性樹脂組成物を開発するために研究を重ねた結果、・・・本発明をなすに至った。」(2頁左上欄5行〜右上欄4行)
「本件組成物においては、(イ)成分として用いられるプレポリマーが、感度と硬度の向上、レオロジー特性の付与などの点で非常に重要な役割を果たしている。・・・これらのプレポリマーは、500〜2000の分子量を有するものが好ましい。」(2頁左下欄3〜16行)
「これまで、前記した(イ)成分に相当するエポキシ基含有アクリレート・・・と(ロ)成分に相当するモノマーと(ハ)成分に相当する光重合開始剤と無機充てん剤から成る塗料やインキは知られていた。」(3頁右上欄1〜5行)
「本組成物には、必要に応じて、シリカ、アルミナ・・・などの体質顔料を配合することができる。」(4頁左下欄4〜9行)

甲第9号証:
化粧材等の表面保護を図る目的で、ラジカル重合性の二重結合を有するポリマー、オリゴマー、モノマー等を主成分とする電離放射線硬化型塗料や紫外線硬化型塗料等の塗料を塗布して硬化させて塗膜を形成するに際して、艶消し材としてシリカ等の無機質粒子を用いること(1頁左欄下より4行〜最下行、及び2頁右上欄1〜8行)。

(III-4)比較・検討
本件発明1〜4および6〜9は、前記したとおり、いずれの発明も、請求項1に記載の方法を構成とするものであり、したがって、「離型剤を含有する組成物であって、該離型剤がエマルジョン型の分散状態で存在する組成物からなり、前記離型剤がシリコーンアクリレートまたはその変性物からなる電離放射線硬化型塗料組成物」を構成(以下、「本件構成1」という。)とするものであって、当該構成の採用により、明細書に比較例を用いて記載されているとおりの、耐溶剤性、耐摩耗性、耐汚染性等の特性を低下させることなく耐セロテープ性を良好にするという化粧材において顕著な効果(以下、「本件効果」という。)を奏したものである。
これに対して、前記したように、甲第1号証には、未硬化状態においても常温で固体状を呈する熱可塑性の電離放射線硬化樹脂を主成分とする上塗り塗料を用いることにより、化粧シート表面を、耐溶剤性、耐擦傷性、耐摩耗性等に優れたものとすることが記載され、甲第2号証には、ケイ素を含有しない前記特定の単量体を塗布し硬化させることにより、化粧材において極めて重要とされる耐セロテープ性、引掻き強度、耐摩耗性等の表面物性を得ることが記載されているものの、前記本件構成1および前記本件効果を示唆するところはない。
甲第5、6、8、9号証にも、前記相違点1に係る構成について記載するところがなく、前記本件効果を示唆する記載もない。
また、甲第3号証には、プラスチック用活性エネルギー線硬化型印刷インキにおける耐摩擦性やスクラッチ性を改善する目的で、シリコン(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和二重結合を有するシリコン化合物を使用することが記載され、甲第4号証には、磨耗耐性を高めるために、輻射線硬化性の液状被覆組成物に、シリコーンジカルビノールジウレタンジアクリレート又は同ジメタクリレートを含ませることが記載され、甲第7号証には、恒久的で優れた耐水性と透湿性と吸湿性とを得るために、電離性放射線硬化型ウレタン組成物に、アクリレート基を有するオルガノポリシロキサンを使用することが記載されており、ケイ素含有のアクリレートを電離放射線硬化型塗料組成物に使用することが記載されているといえるものの、撥液性インキによる絵柄層を有する化粧シートに係るといえるものでないうえに、前記アクリレートの分散状態についての言及もなく、甲第3、4、7号証に、前記本件構成1が示唆されているとすることはできず、耐セロテープ性について記載するところもないから、甲第3、4、7号証に、前記本件効果が示唆されているとすることもできない。
してみると、本件発明1〜4および6〜9は、甲第1〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとすることができず、申立人の前記主張は採用できない。

(III-5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由および証拠によっては、本件発明1〜4および6〜9に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとすることはできない。
また、他に本件発明1〜4および6〜9に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとする理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
化粧シートの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に、(イ)それ自体撥液性を有するバインダーに顔料または(および)染料を添加してなる撥液性インキ、(ロ)それ自体撥液性のないバインダー中に撥液性の物質を添加し、さらに顔料または(および)染料を添加した撥液性インキ、および(ハ)それ自体撥液性のバインダーにさらに撥液性の添加剤ならびに顔料または(および)染料を添加した撥液性インキからなる群から選ばれたインキによって絵柄層を形成し、
前記絵柄層上に、電離放射線重合性オリゴマー(ただし、シリコーンアクリレートを除く)、電離放射線重合性モノマーおよび離型剤を含有する組成物であって、該離型剤がエマルジョン型の分散状態で存在する組成物からなり、前記離型剤がシリコーンアクリレートまたはその変性物からなり、該組成物の粘度を1000cps以下に制御してなる電離放射線硬化型塗料組成物を塗工し、
このようにして形成された前記撥液性絵柄層と前記塗工層との間の撥液作用によって前記絵柄層の上部に形成された塗工層に凹部を形成し、さらに
このようにして形成された塗工層に対して電離放射線を照射して、前記絵柄層に同調した凹凸が形成された塗工層を硬化させることを特徴とする、絵柄に同調した凹凸形成層を有する化粧シートの製造方法。
【請求項2】
前記組成物が、粒径0.1〜30μmの粒状物質からなるマット剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、溶剤を含有せず、かつ、溶剤を使用することなくその塗工が可能な性状を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電離放射線重合性オリゴマーが、分子量1000〜3000のアクリレート系プレポリマーからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電離放射線重合性モノマーが、分子量100〜400のアクリレート系またはメタクリレート系モノマーからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記離型剤が、分子量1000〜10000、官能基当量2000以下のシリコーンアクリレートからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基材が紙からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記絵柄層と基材との間に目止層が介在している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電離照射線が電子線であり、照射を、2〜15Mradの照射量条件で行う、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は塗料組成物に関し、さらに詳しくは、建築物の内装、家具あるいは各種キャビネットなどの表面装飾用塗料組成物として好適な電離放射線硬化型塗料組成物ならびにこの組成物を用いて形成されてなる化粧シートなどの化粧部材に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
建築物の内装、家具あるいは各種キャビネットなどの表面装飾に用いられる化粧紙としては、従来、たとえば紙に木目印刷を施したのち、この木目印刷表面にウレタン系塗料を塗布してトップコート層を形成したものが主流である。このようなウレタンコート紙は塗膜の表面特性に比較的すぐれたものが得られるが、製造工程において塗膜の養生に数日を要する場合もあり、生産性の点で不利であり、また耐摩耗性や耐溶剤性の点でも必ずしも十分満足のいくものではない。
【0003】
一方、電離放射線硬化性樹脂を用いて塗膜形成を行う方法も知られており、たとえば基材紙上に絵柄を印刷したのち、アクリレート系樹脂などの電子線硬化性樹脂組成物を塗布ないし含浸させたものに電子線を照射してこれを硬化することによって化粧紙の迅速な製造が可能である(特公平1-55991号など)。しかしながら、上記のような従来知られている電離放射線硬化性塗料は、形成される被膜の特性において、必ずしも十分満足のいくものではない。
【0004】
一般に建築物の内装、家具あるいは各種キャビネットなどの表面装飾に用いられる化粧材としては、塗膜表面の耐摩耗性は勿論のこと、耐薬品性、耐セロテープ性、耐汚染性などの特性において総合的にすぐれていることが要請される。さらに化粧材の製造プロセスに着目しても、工程の簡略化、迅速性の観点、さらには経済性の観点においても有利であることが重要なファクターとなる。
【0005】
しかしながら、従来の化粧材用塗料組成物においては、塗膜特性ならびに製造工程の操作性の双方においてすぐれたものは未だ得られていないのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述した従来技術に鑑みてなされたものであり、製造工程が迅速で連続的な製造が可能であり、しかも塗膜の表面特性にもすぐれた塗料組成物ならびにこれを用いた化粧材を提供することを目的としている。
【0007】
本発明による塗膜組成物は、電離放射線硬化型の塗料組成物であって、電離放射線重合性オリゴマーと電離放射線重合性モノマーとを組合わせて含有しさらにこれに離型剤を添加した組成物からなり、該組成物の粘度を1000cps以下に制御してなることを特徴とするものである。
【0008】
さらに本発明による化粧シートは、上記塗料組成物を基材上に塗布形成し、電離放射線を照射して前記塗料組成物層を硬化させてなることを特徴とするものである。
【0009】
さらにまた、本発明による化粧板は、上記化粧シートの基材の裏面側(塗料組成物層が形成されていない方の面)に接着剤層を介して板を接合してなることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明による化粧シートの製造方法は、上記電離放射線硬化型塗料組成物を、好ましくは溶剤を用いないで塗布形成し、この塗布形成された組成物層に対して電離放射線を照射してこれを硬化させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明による塗料組成物においては、組成物中でシリコーンアクリレートのような離型剤がエマルジョン型の分散状態で存在し、また粘度が特定範囲内に制限されているので、基材上への組成物層の形成は迅速かつ良好に行うことができ、さらに塗布後に最適状態に分散されている離型剤が組成物層の表面に適度に局在化するので、形成される塗膜は表面特性(特に耐セロテープ性)にすぐれたものとなる。
【0012】
さらに本発明による塗料組成物は、粘度が特定範囲内に制限され、しかも溶剤を用いないで塗布形成することが可能となるので、繁雑な溶剤の除去(乾燥)工程が不要となり工程上あるいは安全性、経済性においても有利である。
【0013】
本発明による電離放射線硬化型塗料組成物において使用する電離放射線重合性オリゴマーは、硬化後の物性(特に、硬さ、密着性、電気特性)や耐薬品性の向上において重要であり、このような観点で、分子量1000〜3000のアクリレート系プレポリマーが好ましく用いられ得る。具体的には、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキッドアクリレート、ポリオールアクリレートなどが挙げられるが、粘度の低減化ならびに低コスト化の観点からは、ポリエステルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0014】
一方、電離放射線重合性モノマーとしては、その選択にあたっては、▲1▼低粘度であること、▲2▼溶解性が大きいこと、▲3▼揮発性が小さいこと(特にEB硬化においては瞬時に温度が上昇する)、▲4▼官能基を2個以上持っていること、▲5▼皮膚刺激性が小さいなどの安全性が良好であること、が考慮されるべきである。このような観点から、本発明における電離放射線重合性モノマーとしては、分子量100〜400のアクリレート系またはメタクリレート系モノマーが好ましく用いられ得る。具体的には、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどが特に好ましく用いられ得る。
【0015】
上記オリゴマーとモノマーとの配合比は、その種類に応じて適宜選択され得るが、通常、オリゴマー5重量%以上、モノマー95重量%以下の範囲で選択することが好ましい。ポリエステル系のものを使用する場合においては、たとえば、オリゴマー100重量部に対して約70重量部のモノマーを配合することが好ましい。
【0016】
モノマーの配合量が少なすぎると、粘度がいきおい増大してレベリング性が低下し、高速コーティングに適さなくなり、生産性が低下することになるので好ましくない。一方、モノマーの配合量が多すぎる場合には、硬化反応時(たとえばEB照射時)に発煙してフィラメントの劣化などの弊害が生じ、また製造環境的にも好ましくない。
【0017】
本発明による塗料組成物においては、上記のような電離放射線重合性オリゴマーと電離放射線重合性モノマーとの組合わせからなる混合物に対してシリコーンアクリレートのような離型剤がエマルジョン型の分散状態で存在している。
【0018】
一般に、建材用の化粧シートとしては、▲1▼耐セロテープ性、▲2▼耐溶剤性、▲3▼耐熱性、▲4▼耐摩耗性、▲5▼耐薬品性、▲6▼耐汚染性ならびに▲7▼耐水性にすぐれていることが要求される。上記特性の内▲2▼から▲7▼の特性については上記オリゴマーおよびモノマーを適宜選択することによってある程度すぐれた特性のものにすることが可能であるが、上記▲1▼の耐セロテープ性については、オリゴマーおよびモノマーの選択のみによっては十分ではない。耐セロテープ性を良好なものにするためには塗膜表面の表面エネルギーを小さくしてテープの粘着作用を抑制する必要があるが、本発明者の知見によれば、組成物中においてシリコーンアクリレートのような離型剤をエマルジョン型の分散状態で存在させて、塗工、硬化させることによって、上記▲2▼から▲7▼の特性を低下させることなく耐セロテープ性を良好なものにすることができることを見出している。
【0019】
このようなシリコーンアクリレートとしては、下記の条件を満足するものが好ましく用いられる。
分子量:
500〜10,000さらに好ましくは2,000〜4,000
官能基当量(分子量/官能基数):
400〜8,000さらに好ましくは500〜2,000
官能基の種類:
特にEB硬化(電子線照射)を考慮した場合、メタクリル基、アクリル基、メルカプト基が好ましい。
【0020】
なお、本発明においては、上記のシリコーンアクリレートは、上記オリゴマーおよびモノマーの混合物中にそのままの状態で存在していてもよいが、ある程度上記オリゴマーまたはモノマーとコポリマー化していてもよく、本発明はこのような態様をも包含する。
【0021】
上記のようなシリコーンアクリレートの含有量は、5重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.1〜3.0重量%であり、特に0.5〜2.0の範囲が好ましい。前述したように、離型剤の添加による耐セロテープ性の向上とレベリング性の向上とは互いに相殺し合う傾向があるが、離型剤として上記のシリコーンアクリレートを選択し、量範囲を上記範囲にすることにより、耐セロテープ性とレベリング性(すなわちピンホールの無い)の双方にすぐれた塗膜を得る上で有利である。
【0022】
本発明による塗料組成物においては、その粘度を1000cps以下に制御することが、塗工工程の高速化ならびに上記離型剤の組成物中での移動度や塗膜表面への局在化において重要である。また、塗工方法に応じても、好ましい粘度範囲を適宜調整することが望ましい。たとえば、グラビアコート法を採用する場合においては、1000cpsよりもさらに低い値、たとえば常温において400cps以下に粘度を調整することが好ましい。このような粘度の調整は、塗料組成物や塗工装置の加温や、上述したようなモノマー成分の配合範囲の調整によって行うことができる。
【0023】
本発明による塗料組成物においては、塗膜表面をマット化することを目的として、粒径0.1〜30μm、さらに好ましくは粒径10〜20μmの粒状物質からなるマット剤を含有させることができる。このようなマット剤としては、シリカ、シリコーン樹脂(パウダー、ビーズ)などの無機粒子、架橋アルキル、架橋スチレン、インゾグアナミン樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ナイロンなどの有機材料パウダーないしビーズなどが用いられ得る。マット剤の添加量は、0.5〜40重量%が好ましく、さらに好ましくは、5〜30重量%である。
【0024】
さらに本発明による塗料組成物においては、組成物中に硬化を阻害しない範囲内で、顔料や染料などを添加して着色してもよい。
【0025】
本発明による塗料組成物は溶剤を含有させることもできるが、溶剤を含有させる必要はなく、また塗工時においても溶剤を使用する必要はない。この点、本発明による塗料組成物は、粘度が特定範囲内に制限され、しかも溶剤を用いないで塗布形成することが可能となるので、繁雑な溶剤の除去(乾燥)工程が不要となり工程上あるいは安全性、経済性においても有利である。
【0026】
次に、上記塗料組成物を用いて化粧材を製造する方法について説明する。
【0027】
たとえば、化粧紙などの化粧シートを形成する場合の基材としては、チタン紙、薄様紙、クラフト紙、パルプボード、板紙、石膏ボード紙、合成紙などの秤量20〜300g/m2程度の紙質材、あるいは紙以外でも、布や各種塗工紙などが適宜用いられ得る。
【0028】
塗料組成物の塗布量は、基材の性質や目的に応じて適宜選択され得るが、3〜60g/m2の範囲が適当である。
【0029】
硬化は、紫外線や電子線などの電離放射線により行う。電子線により硬化させる場合においては、2〜15Mradの範囲、さらに好ましくは3〜5Mradの範囲でEB照射を行うことが望ましい。2Mrad未満では線量不足による硬化不良が発生するので好ましくなく、一方15Mradを超えて照射すると線量過剰による基材の劣化が生じ、基材割れや破断(たとえば巻取時やさらに板への積層時)が発生する要因となるので好ましくない。
【0030】
特に、紙などの塗料組成物が浸透しやすい基材シートに対しては、電離放射線の内でも、電子線が好ましい。紫外線の場合、基材中に組成物が浸透しにくく、基材中の塗料の硬化が不十分となること、また塗料中に顔料などを添加した場合にも、顔料に紫外線が吸収されて硬化が不十分になりやすくなる。したがって、このような場合には電子線を使用することが好ましい。
【0031】
上記のような塗工ならびに硬化方法を採用することによって迅速かつ連続的な化粧シートの製造が可能となる。
【0032】
紫外線照射によって硬化を行う場合においては、光開始剤や増感剤を塗料組成物に添加することが好ましい。光開始剤は、紫外線を吸収して重合反応を開始させる作用を有するものであり、たとえば公知のカルボニル化合物、イオウ化合物、アゾ化合物、有機過酸化物などが用いれ得る。また、増感剤は、光開始剤とともに使用するとさらに効果があり、公知の化合物、たとえばアミン類、イオウ化合物、ニトリル、リン化合物、塩素化合物、窒素化合物などが用いられ得る。
【0033】
本発明による化粧材においては、基材の表面に予め印刷層や絵柄層を形成したり、基材表面に目止層を形成することもできる。
【0034】
なお、絵柄層を形成するインキのビヒクルとしては、基材との密着性が良く凝集力の強い樹脂系を選定すべきである。これは、本発明で用いる電離放射線硬化型塗料は硬化時に急速に収縮する為、インキと基材との密着性の悪いインキを用いた場合、硬化収縮により発生するインキと基材界面の剪断応力の為、インキと基材が、微視的に1部剥離し、塗膜の耐セロテープ性が大きく低下する為であると推測される。
【0035】
基材として紙を作った場合は水溶塩型アクリル、ウレタン、ウレタンと塩化ビニル酢酸ビニル共重合体との混合体が好ましく用いられる。
【0036】
また、硝酸繊維素等繊維系のビヒクルでは満足な耐セロテープ性が出ないことが判明している。
【0037】
さらに目的に応じて、上記のような化粧シートを他の被装飾部材(たとえば木材製品など)の表面に接着剤を介して接合し一体化することができる。
【0038】
次に、本発明による組成物を用いて、絵柄に同調した凹凸が形成された化粧シートの製造方法について説明する。
【0039】
上記のような同調凹凸が形成された化粧シートを得るにあたっては、まず、基材シート上に撥液性の絵柄層を形成し、この絵柄層上に、上述した本発明の塗料組成物を塗工し、このようにして形成された前記撥液性絵柄層と前記塗工層との間の撥液作用によって前記絵柄層の上部に形成された塗工層に凹部を形成し、さらにこのようにして形成された塗工層に対して電離放射線を照射して、前記絵柄層に同調した凹凸が形成された塗工層を硬化させることによって、絵柄に同調した凹凸形成層を有する化粧シートを得ることができる。
【0040】
上述したような撥液性の絵柄層を形成するためには、グラビア、シルクスクリーンなどの常法にしたがった印刷法を使用することができる。撥液性のインキとしては、下記のようなものを用いることができる。
(1)それ自体撥液性を有するバインダーに顔料、染料などを添加してなる撥液性インキ。
【0041】
この場合のバインダー樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂、ポリシロキサン、シリコーンアクリレートなどのシリコーン樹脂が用いられ得るが、特に、下記の条件を満足するバインダー樹脂が用いられ得る。
【0042】
結合剤の臨界表面張力<塗料組成物(液体状態)の表面張力
(2)それ自体撥液性のないバインダー中に撥液性の物質を添加し、更に顔料、染料などを添加したもの。
【0043】
この場合の撥液性物質としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、上記(1)の物質、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリプロピレン、ワックス類などが用いられ得る。またこの場合のバインダーとしては、アミノアルキド樹脂などが用いられ得る。
(3)それ自体撥液性のバインダーに、さらに撥液性の添加剤を添加し、さらに顔料などを添加したもの。
【0044】
【実施例】
実施例1
下記の組成からなる電子線硬化型塗料組成物を調製した。
ポリエステルアクリレート(諸星インキ(株)製) 60重量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成(株)製)10重量部
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製)29重量部
シリコーンアクリレート(MEB-1:信越化学(株)製) 1重量部
一方、基材としての紙間強化紙(30g/m2、三興製紙(株)製)に、グラビア輪転機にてアクリル系インキ(諸星インキ(株)製:HAT)を用いて木目模様を印刷した。
【0045】
次いで、上記の塗料組成物を、上記木目印刷がなされた基材上に塗布した。塗布前の上記塗料組成物の性状、特に粘度ならびにシリコンアクリレートの分散状態は次の通りであった。
粘度:
湿度(℃) cps
25 100
30 95
40 70
50 55
60 35
70 25
分散状態:
一部分溶解のある懸濁状態
上記塗料組成物の塗布方法は、グラビアダイレクトコート法を用い、塗布量12g/m2で塗布した。ラインスピードは、100m/分であった。
【0046】
次いで、得られた塗工物に対して、電子線照射を行って塗工層を硬化させた。この電子線照射は、スキャニング方式の電子線照射機を用いて、下記の条件で行った。
【0047】
加速電圧 : 175kV
ポリエステルアクリレート(諸星インキ(株)製) 60重量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成(株)製)10重量部
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製)19重量部
シリコーンアクリレート(MEB-1:信越化学(株)製) 1重量部
シリカ粉末(触媒化成工業(株)製) 20重量部
一方、基材としての紙間強化紙(30g/m2、三興製紙(株)製)に、グラビア輪転機にてアクリル系インキ(諸星インキ(株)製:HAT)を用いて木目模様を印刷した。
【0048】
得られた化粧板を用いて耐セロテープ性(テープデラミネーションテスト)、耐溶剤性、耐摩耗性、ならびに耐汚染性を試験した。各試験の方法は以下の通りである。
耐セロテープ試験:
プリント合板・カラー合板の標準規格(日本プリント・カラー合板工業組合)の基準に従い、ニチバンテープによる剥離(40℃±3℃、2時間後)を行い、表面状態を観察した。
耐溶剤試験:
化粧シート表面にシンナー(JISK5538)を塗布して、500g荷重の条件でラビングを行い、溶剤による塗膜のダメージを観察した(前記標準規格による)。
耐摩耗性:
JAS摩耗C試験の基準に従い、軟質摩耗輪2個を用いて荷重1kgの条件下で摩耗試験を行い、塗膜のダメージの状態を観察した。
耐汚染性:
油性インキ、水性インキならびにクレヨンを用いて塗膜表面に10m/m幅のラインを形成し、4時間放置後、メタノールで拭き取り、これにより汚染状態を観察した(JAS汚染A試験)。
【0049】
各特性試験の結果を下記第1表に示す。
実施例2
下記の組成からなる電子線硬化型塗料組成物を調製した。
ポリエステルアクリレート(諸星インキ(株)製) 60重量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成(株)製)10重量部
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製)19重量部
シリコンアクリレート(MEB-1:信越化学(株)製) 1重量部
シリカ粉末(触媒化成工業(株)製) 20重量部
一方、基材としての紙間強化紙(30g/m2、三興製紙(株)製)に、グラビア輪転機にてアクリル系インキ(諸星インキ(株)製:HAT)を用いて木目模様を印刷した。
【0050】
次いで、上記の塗料組成物を、上記木目印刷がなされた基材上に塗布した。塗布前の上記塗料組成物の性状、特に粘度ならびにシリコーンアクリレートの分散状態は次の通りであった。
粘度:
温度(℃) cps
40 550
70 160
分散状態:
一部分溶解のある懸濁状態
上記塗料組成物の塗布方法は、グラビアダイレクトコート法を用い、塗布量12g/m2で塗布した。ラインスピードは、100m/分であった。
【0051】
次いで、得られた塗工物に対して、電子線照射を行って塗工層を硬化させた。この電子線照射は、スキャニング方式の電子線照射機を用いて、下記の条件で行った。
【0052】
加速電圧 : 175kV
ビーム電流: 183mA
電子線 : 5Mrad
このようにして得られた木目模様の化粧シートは、表面に良好なマット感を有する仕上(75度鏡面仕上光沢(JISZ8741)が40)のシートであった。得られた化粧シートを酢酸ビニル系接着剤(AC500:中央理化(株)製)を用いて、MDF板にラミネートして一体化し、化粧板とした。
【0053】
得られた化粧板を用いて、耐セロテープ性(テープデラミネーションテスト)、耐溶剤性、耐摩耗性、ならびに耐汚染性を試験した。結果を下記第1表に示す。
比較例1
下記の組成の塗料組成物を用いた他は実施例1と同様の方法で化粧板を作製し、その特性を試験した。結果を下記第1表に示す。
【0054】
アクリルポリオール 60(重量部)
変性シリコーンオイル 2
アマイドワックス 1
トリレンジイソシアネート 15
トルエン 7
酢酸エチル 15


 
訂正の要旨 ▲1▼ 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1中の「電離放射線重合性オリゴマー(ただし、シリコーンアクリレートを除く)、電離放射線重合性モノマーおよび離型剤を含有する組成物からなり、」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「電離放射線重合性オリゴマー(ただし、シリコーンアクリレートを除く)、電離放射線重合性モノマーおよび離型剤を含有する組成物であって、該離型剤がエマルジョン型の分散状態で存在する組成物からなり、」と訂正する。
▲2▼ 訂正事項b
明細書の段落〔0011〕中の「離型剤が分散状態で存在し、」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「離型剤がエマルジョン型の分散状態で存在し、」と訂正する。
▲3▼ 訂正事項c
明細書の段落〔0017〕中の「離型剤が分散状態で存在している。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「離型剤がエマルジョン型の分散状態で存在している。」と訂正する。
▲4▼ 訂正事項d
明細書の段落〔0018〕中の「離型剤を分散状態、特にエマルジョン型の分散状態で存在させて、」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「離型剤をエマルジョン型の分散状態で存在させて、」と訂正する。
異議決定日 2003-05-19 
出願番号 特願平4-52872
審決分類 P 1 652・ 121- YA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川上 美秀近藤 政克  
特許庁審判長 雨宮 弘治
特許庁審判官 井上 彌一
佐藤 修
登録日 1999-09-17 
登録番号 特許第2980765号(P2980765)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 化粧シートの製造方法  
代理人 横田 修孝  
代理人 中村 行孝  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 紺野 昭男  
代理人 紺野 昭男  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 中村 行孝  
代理人 横田 修孝  
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