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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1084096
審判番号 不服2002-7030  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-12-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-23 
確定日 2003-09-17 
事件の表示 平成 5年特許願第148592号「景観の解析・予測システム」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年12月 2日出願公開、特開平 6-332993]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯等
本願は、平成5年5月26日の出願であって、平成14年3月7日付け、及び平成14年4月23日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「景観の解析・予測の対象となる地域の地形図から等高線の2次元位置情報と該等高線の高度データとを互いに関連付けて読み取る図形読取手段と、前記図形読取手段によって読み取られた前記等高線の2次元位置情報および高度データを標高メッシュデータに変換し、該標高メッシュデータに基づいて対象地域の地形に対する各種視点からの3次元画像データを生成する第1の画像処理手段と、前記対象地域内に構築される構造物の計画図より構造物に対する各種視点からの3次元画像データを生成する第2の画像処理手段と、前記地形の3次元画像データと前記構造物の3次元画像データとを合成して構造物とその背景からなる3次元の景観モデル画像を構成する画像データ合成処理手段と、前記景観モデル画像を表示する表示手段と、前記表示手段に表示される景観モデル画像中の構造物の形態を入力指令に基づいて調整し、該構造物とその背景とからなる景観モデル画像から対象地域の環境に及ぼす影響を予測し評価する解析処理手段と、を備えてなる景観の解析・予測システム。」
2.引用例
これに対して、原審の拒絶理由で引用された特開昭62-274469号公報(以下、引用例1という。)には次の記載がなされている。
(1)「地理情報システムにおいて、地形・建物・道路等の各地図要素の地図上の図形形状と、これらの要素名及び属性を表す数値情報とを蓄積・管理する第1の手段と、当該地図要素の図形形状及び属性情報に基づき、あらかじめ用意された地図要素の標準3次元形状データを選択または標準3次元形状データを変形することにより、上記各地図要素の3次元形状データを作成する第2の手段と、作成された個々の地図要素の3次元形状データを地形データ上に合成し、景観全体を表す3次元景観データを生成する第3の手段と、太陽の位置や観測位置等の観測条件を設定し、上記3次元景観データより陰影画像を生成する第4の手段と、を有することを特徴とする景観画像合成処理方式。」(第1頁左下段第5行〜右下段第3行、特許請求の範囲)
(2)「(発明の目的)
本発明は、(中略)地図情報と、これに付加された属性情報とをもとに、地形および建物等の各種要素の3次元形状データを作成して、利用者が要求する場所から眺めた景観画像を合成するものであり、その目的は、大量の情景写真をあらかじめ蓄積しておくことなしに、利用者の要求する場所の実際に近い景観画像を提供することにある。」(第2頁右上段第13行〜左下段3行)
(3)「(発明の構成及び作用)
(中略)
第2図は第1図における景観画像合成部3の一構成例であって、31は端子1から入力される第1図に示す情報記憶装置1に格納された地図情報及びこれに付加された属性情報をもとに、個々の景観要素、即ち山・建物・道路等の3次元形状データを作成する景観要素形状データ生成処理部であり、32は作成した個々の景観要素の形状データを合成する3次元景観データ合成部、33は合成された3次元景観データと、端子Sから入力される観測位置や方向、太陽の位置などの観測条件のデータに基づき、陰影のある景観画像を作成する陰影画像生成処理部である。また、合成された景観画像は、端子Oより出力され、画像表示装置4に表示される。」(第2頁右下段第3行〜第16行)
(4)「(実施例)
第3図は、第2図の景観画像合成部3の処理の流れを示した図であり、第4図は、第3図の処理によって地図情報から景観画像を合成するまでの経過をモデルで表した図である。ここで、第1図の情報記憶装置1内に格納されている地図情報は、第4図の(b)の例に示すように、等高線で表された地形情報、多角形で表された建物情報、及び帯状の図形で表された道路情報、などの個々の地図要素毎に分類されており、かつこれらの属性、例えば建物の色や種類等が記録されているものとする。上記のように表された要求する場所の地図情報が、情報記憶装置1から抽出され、第2図及び第3図に示した景観画像合成部の入力端子1に入力されると、景観要素標準形状データテーブル41を参照しつつ、個々の景観要素毎に3次元の形状データを作成する処理を行う。ここで、景観要素標準形状データテーブル41は、例えば以下に示すような地形形状データを表すための地図の分割数や、上記建物や道路等の地理要素の標準的な3次元形状データを格納したものである。以下第4図により、景観要素形状データ生成処理の例を説明する。第4図に示したように、地形形状データは等高線を用いて、メッシュデータ、即ち、地図上に座標軸X,Yを定め、高さ方向をZ軸とするとき、地図をM×N分割したデータの組{Xij,Yij,Zij}で表す。ただし、i=1,2,・・,M、j=1,2,・・,N、であり、M,NはX及びY方向の地図の分割数である。また、建物に対しては、地図上で表された多角形の形及び建物の種別をもとに、景観要素標準形状データテーブル41を参照して、最も近いものを抽出するか、またはこれを地図上の形状に適合するように変形する。(中略)このようにして作成された個々の景観要素形状データは、第2図及び第3図の3次元景観データ合成部32において、合成処理を行う。これは例えば第4図(d)に示したように、メッシュデータで表された地形データに、個々の要素の形状データを埋込むことによって合成する。以上の如き景観を表す3次元形状データを作成した後、これをもとに第2図の陰影画像生成処理部33で実際の景観に近い画像を生成する。すなわち、第2図及び第3図の観測条件入力端子Sから利用者が指定した観測条件、例えば観測する場所や観測方向等が入力されると、第3図に示すように、形状データをもとにした隠れ面消去処理、即ち、視点に近い物体により遠い物体が隠されることを判定する処理、及び個々の物体の輝度を計算して陰影づけする処理を行なう。このような3次元形状データをもとに、陰影画像を生成する処理は、コンピュータ・グラフィックス等において良く知られた既知の技術があり、ハードウェアによる高速処理も可能である。なお、以上の説明では、地図に記載されている情報をもとに、景観画像を合成する方式をとっているために、特徴のある建物や場所を実際に近く表すことが困難であるという問題がある。これに対処するためには、特徴的な建物や目印、あるいは実際に近い状態を表すのが望ましい景観要素については、それの3次元構造を表すデータを例えば地図情報の属性として、第1図の情報記憶装置1内に蓄積しておき、第3図に示した景観画像合成処理時にこれを景観要素の3次元形状データとして使用するのが効果的である。また、もととなる実際の地図情報の代わりに、架空の地図情報、例えば地域開発計画図や、建設を予定している建物の3次元構造等の情報を用いて、景観画像を合成することにより、地域開発による実際の景観の状態を確認するなどの用途に効果的である。」(第3頁左上段第1行〜右下段第14行)
(5)「(効果の説明)
以上述べたように、本発明によれば、任意の場所の地図情報をもとにして、3次元景観データを作成し、望みの観測場所から眺めた景観画像を合成することができるので、実際の景観写真を大量に蓄積することなく、目的地や道順の確認、任意場所の情景把握などに有効な景観画像を生成・表示することができる。特に地図のみでは認識しにくい高低のある情景の把握に有効と考えられる。」(第3頁右下段第16行〜第4頁左上段第5行)
これらの記載より引用例1には次のことが記載されている。
「情報記憶装置内に格納されている地図情報が、等高線で表された地形情報、多角形で表された建物情報、及び帯状の図形で表された道路情報、などの個々の地図要素毎に分類され、かつこれらの属性を表す数値情報を有し、要求する場所の地図情報を、情報記憶装置から抽出し、景観画像合成部に入力して、個々の景観要素毎に3次元の形状データを作成する処理を行い、作成された個々の景観要素形状データを、メッシュデータで表された地形データに、個々の要素の形状データを埋込むこと等により、データ合成部において合成処理を行って、景観を表す3次元形状データを作成した後、これをもとに陰影画像生成処理部で、観測条件入力端子から観測位置や観測方向等、利用者が指定した観測条件に基づき、実際の景観に近い画像を生成する景観画像合成処理方式。」
3.対比
そこで、本願発明と引用例1の発明とを比較すると、両者は、
「景観の対象となる地域の等高線で表された地形情報から対象地域の地形に対する3次元画像データを生成する画像処理手段と、対象地域内の多角形で表された建物情報から構造物に対する3次元画像データを生成する画像処理手段と、前記地形の3次元画像データと前記構造物の3次元画像データとを合成して構造物とその背景からなる3次元の景観モデル画像を構成する画像データ合成処理手段と、前記景観モデル画像を表示する表示手段と、前記表示手段に表示される景観モデル画像から構造物とその背景とからなる景観モデル画像から実際の景観の状態を確認する景観画像合成処理システム。」
である点で一致し、下記の点において相違する。
相違点1
本願発明では、「景観の解析・予測の対象となる地域の地形図から等高線の2次元位置情報と該等高線の高度データとを互いに関連付けて読み取る図形読取手段」を具備している点。
相違点2
本願発明では、「対象地域内に構築される構造物の計画図」に基づいて構造物に対する各種視点からの3次元画像データを生成している点。
相違点3
本願発明では、「表示手段に表示される景観モデル画像中の構造物の形態を入力指令に基づいて調整し、該構造物とその背景とからなる景観モデル画像から対象地域の環境に及ぼす影響を予測し評価する解析処理手段」を備えている点。
4.相違点に対する判断
相違点1
原審の拒絶査定で引用された特開昭61-282595号公報(以下、引用例2という。)には、原石山や造成地等の掘削される作業予定地を適宜作業条件を基にシミュレートして作業中乃至作業後に想定される外観形状を立体図等の図形として外部表示する作業シミュレーションシステムにおいて、「システムへの等高線図の入力において、光学的に図形を読取ってデータとして入力するデジタイザ、スキャナーその他の入力手段を用いて入力してもよい点。その場合、予め所定間隔のメッシュ乃至格子点を設定しておき、上記入力手段によって等高線だけのデータを入力してから、両者をディスプレイで表示し、それを見ながら各格子点の標高データを順次テンキー等で入力する構成でもよい点(第5頁右上段第4行〜第13行)。」が記載されており、引用例2の等高線図の入力方法を、等高線が含まれる地形図の読取手段に適用することには格別の困難性は認められない。また、外部表示を目的とする3次元データを作成するため、等高線が含まれる地形図の読取において、読取った等高線の2次元位置情報と高度データとを互いに関連付けることは、技術常識から見て当然のことと認められから、引用例1の景観画像合成処理システムに、引用例2に記載の地図情報の読み取り手段を適用して本願発明を図形読取手段を構成することは、当業者であれば容易に推考できる程度のものと認める。
相違点2
前記2.(4)のとおり、引用例1には、特徴的な建物や目印、あるいは実際に近い状態を表すのが望ましい景観要素については、それの3次元構造を表すデータを例えば地図情報の属性として、第1図の情報記憶装置1内に蓄積しておき、第3図に示した景観画像合成処理時にこれを景観要素の3次元形状データとして使用するのが効果的であること。また、もととなる実際の地図情報の代わりに、架空の地図情報、例えば地域開発計画図や、建設を予定している建物の3次元構造等の情報を用いて、景観画像を合成することにより、地域開発による実際の景観の状態を確認するなどの用途に効果的であること(第3頁右下段第2行〜右下段第14行)、が記載されているので、引用例1の実施例である情報記憶装置に予め格納されている地図情報である建物情報に換えて、建設を予定している建物の3次元構造等の情報、すなわち構築される構造物の計画図を用いて構造物の3次元画像データを生成して合成することは、当業者が容易になし得ることと認める。
相違点3
前記2.(4)(5)のとおり、引用例1には、景観を表す3次元形状データを作成した後、これをもとに第2図の陰影画像生成処理部33で実際の景観に近い画像を生成する場合に、第2図及び第3図の観測条件入力端子Sから利用者が指定した観測条件、例えば観測する場所や観測方向等が入力されると、第3図に示すように、形状データをもとにした隠れ面消去処理、即ち、視点に近い物体により遠い物体が隠されることを判定する処理、及び個々の物体の輝度を計算して陰影づけする処理を行なう点。このような3次元形状データをもとに、陰影画像を生成する処理は、コンピュータ・グラフィックス等において良く知られた既知の技術があり、ハードウェアによる高速処理も可能である点が記載されている。また、もととなる実際の地図情報の代わりに、架空の地図情報、例えば地域開発計画図や、建設を予定している建物の3次元構造等の情報を用いて、景観画像を合成することにより、地域開発による実際の景観の状態を確認するなどの用途に効果的であること、任意の場所の地図情報をもとにして、3次元景観データを作成し、望みの観測場所から眺めた景観画像を合成することができるので、実際の景観写真を大量に蓄積することなく、目的地や道順の確認、任意場所の情景把握などに有効な景観画像を生成・表示することができ、特に地図のみでは認識しにくい高低のある情景の把握に有効と考えられることが記載されている(第3頁左上段第1行〜右下段第14行)。
他方本願発明の「表示手段に表示される景観モデル画像中の構造物の形態を入力指令に基づいて調整し、該構造物とその背景とからなる景観モデル画像から対象地域の環境に及ぼす影響を予測し評価する解析処理手段」とは、発明の詳細な説明の「計画地形の3次元画像データと構造物の3次元画像データとを合成し、この合成画像に対し陰線/陰面消去処理を施す。(【0017】第7行〜8行)」、「CRTの表示画面を見ながら計画地内での構造物の形態、即ち色、質感、形状等が構造物の背景と調和するように景観モデル画像上で構造物の形態を調整する。この調整操作は、ディジタイザ及び入力装置16を利用して行う。その後、ステップ27において、上記調整された景観モデル画像を見ながら構造物が計画地域の環境にどのような影響を及ぼすかを解析し評価する。ここで、評価結果がOKであると判断された場合は、景観モデル画像を画像出力装置15に出力する。(中略)また、ステップS27において、評価結果がNGであると判断されたときは、ステップS26に戻り、OKが得られるまで構造物の形態処理を繰り返し実行する。(【0018】第1行〜13行)」との記載、また「構造物とその背景とからなる景観モデル画像から対象地域の環境に及ぼす影響を予測し評価する解析処理手段」についての具体的記載はないことから、本願発明の解析処理手段とは具体的には、「表示手段を見ながら計画地内での構造物の形態、即ち色、質感、形状等が構造物の背景と調和するように景観モデル画像上で構造物の形態を調整し、調整された景観モデル画像がOKか否かを判断するもの」と認められる。
してみると、引用例1に記載の「地域開発計画図や、建設を予定している建物の3次元構造等の情報を用いて、景観画像を合成することにより、地域開発による実際の景観の状態を確認する」ことと「構造物とその背景とからなる景観モデル画像から対象地域の環境に及ぼす影響を予測し評価する解析処理を行う」こととは、単なる表現上の相違に過ぎず、「地域開発による実際の景観の状態を確認する」という同様の評価を行うものであって、両者は格別相違するものではない。
また、本願発明の「表示手段に表示される景観モデル画像中の構造物の形態を入力指令に基づいて調整」する点も、3次元形状データをもとに、画像中の構造物の形態(色、質感、形状等)を、コンピュータ・グラフィックス等を用いて調整処理することは広く知られた周知の事項である。
5.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例1、2記載の発明および技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-07-18 
結審通知日 2003-07-22 
審決日 2003-08-04 
出願番号 特願平5-148592
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加舎 理紅子田中 幸雄猪瀬 隆広  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 江頭 信彦
森川 幸俊
発明の名称 景観の解析・予測システム  
代理人 野田 茂  

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