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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない E02D
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない E02D
管理番号 1084536
審判番号 訂正2003-39046  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-04-19 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-03-03 
確定日 2003-10-06 
事件の表示 特許第3003751号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 〔1〕手続の経緯
本件特許第3003751号発明についての出願は、平成5年8月6日に出願(優先権主張平成4年8月11日)され、平成11年11月19日にその発明について特許権の設定登録がされ、その後、特許異議の申立てがされ、平成14年11月29日付けで「特許第3003751号の請求項1、2及び4に係る特許を取り消す。」旨の異議の決定がされ、平成15年1月15日に、この決定を不服とする訴えが東京高等裁判所に提起され(平成15年(行ケ)第20号)、平成15年3月3日に本件審判が請求され、平成15年4月14日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成15年6月16日付けで意見書が提出された。

〔2〕請求の趣旨
本件審判請求の趣旨は、特許第3003751号の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである。

〔3〕訂正の内容
本件審判請求に係る訂正の内容は、以下の訂正事項a〜eからなるものである。
訂正事項a
明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載「モルタルまたはコンクリートを主体とし、セメント:砂の重量比が、1:1〜4未満であり、スランプ値が8〜27cmの湿式法枠構築材料を、ポンプにより管路を介して圧送し、その管路の先端の吹付ノズルから、地山に固定した型枠内に吹き付けるとともに、前記ポンプと吹付ノズルとの間の管路の途中であり、かつ吹付ノズルから5〜40m離間した位置において、2〜10Nm3/分の量をもって空気を吹込み、前記湿式法枠構築材料を前記空気を連行した状態で前記吹付ノズルから吹き付けることを特徴とする法枠構築工法。」を、
「モルタルまたはコンクリートを主体とし、モルタルの場合セメント:砂の重量比が、1:1〜4未満であり、コンクリートの場合、セメント:砂:粗骨材の重量比が、1:1〜4未満:<2であり、水セメント比W/Cが40〜65%であり、スランプ値が10〜27cmであり、減水剤をセメントに対して3重量%以下添加した湿式法枠構築材料を、ポンプにより管路を介して圧送し、その管路の先端の吹付ノズルから、地山に固定され、鉄筋が配筋された隣接する側型枠内に吹き付けて充填するとともに、前記ポンプと吹付ノズルとの間の管路の途中であり、かつ吹付ノズルから5〜40m離間した位置において、2〜10Nm3/分の量をもって空気を吹込み、前記湿式法枠構築材料を前記空気を連行した状態でかつ急結剤の添加なしで前記吹付ノズルから吹き付けて法枠を構築することを特徴とする法枠構築工法。」
と訂正する。
訂正事項b
明細書の特許請求の範囲の請求項3の記載「型枠がパンチングメタルであり、その開口率が25〜60%である請求項1記載の法枠構築工法。」を、
「側型枠がパンチングメタルであり、その開口率が25〜60%である請求項1記載の法枠構築工法。」
と訂正する。
訂正事項c
明細書の段落【0010】の記載「上記課題は、……吹き付けることで解決できる。」を、「上記課題は、モルタルまたはコンクリートを主体とし、モルタルの場合セメント:砂の重量比が、1:1〜4未満であり、コンクリートの場合、セメント:砂:粗骨材の重量比が、1:1〜4未満:<2であり、水セメント比W/Cが40〜65%であり、スランプ値が10〜27cmであり、減水剤をセメントに対して3重量%以下添加した湿式法枠構築材料を、ポンプにより管路を介して圧送し、その管路の先端の吹付ノズルから、地山に固定され、鉄筋が配筋された隣接する側型枠内に吹き付けて充填するとともに、前記ポンプと吹付ノズルとの間の管路の途中であり、かつ吹付ノズルから5〜40m離間した位置において、2〜10Nm3/分の量をもって空気を吹込み、前記湿式法枠構築材料を前記空気を連行した状態でかつ急結剤の添加なしで前記吹付ノズルから吹き付けて法枠を構築することで解決できる。」と訂正する。
訂正事項d
明細書の段落【0014】の記載「スランプ値が8〜27cm」(本件特許公報4欄38行)を、「スランプ値が10〜27cm」と訂正する。
訂正事項e
明細書の段落【0026】の記載「型枠」(本件特許公報7欄7行)を、「側型枠」と訂正する。

〔4〕当審の判断
1 訂正の目的等について
上記訂正について検討すると、訂正事項aの訂正は、請求項1において、湿式法枠構築材料について、セメント、砂等の配合比、水セメント比、スランプ値の限定をし、減水剤を添加するものに限定し、型枠について限定をし、湿式法枠構築材料を急結剤の添加なしで吹付ノズルから吹き付けることの限定をするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。訂正事項bの訂正は、請求項3において、型枠について限定をするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項c〜eの訂正は、特許請求の範囲の訂正に伴い、それとの整合を図るために発明の詳細な説明の記載を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項a〜eの訂正は、願書に添付した明細書の段落【0003】、【0023】、【0024】、【0030】、【0035】の記載及び図4,図5に基づくものであり、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内においてなされるものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2 独立特許要件について
(1)訂正後の請求項1〜4に係る発明
訂正後の請求項1〜4に係る発明(以下、「訂正発明1」〜「訂正発明4」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりの、次のものと認められる。
「【請求項1】モルタルまたはコンクリートを主体とし、モルタルの場合セメント:砂の重量比が、1:1〜4未満であり、コンクリートの場合、セメント:砂:粗骨材の重量比が、1:1〜4未満:<2であり、水セメント比W/Cが40〜65%であり、スランプ値が10〜27cmであり、減水剤をセメントに対して3重量%以下添加した湿式法枠構築材料を、ポンプにより管路を介して圧送し、その管路の先端の吹付ノズルから、地山に固定され、鉄筋が配筋された隣接する側型枠内に吹き付けて充填するとともに、前記ポンプと吹付ノズルとの間の管路の途中であり、かつ吹付ノズルから5〜40m離間した位置において、2〜10Nm3/分の量をもって空気を吹込み、前記湿式法枠構築材料を前記空気を連行した状態でかつ急結剤の添加なしで前記吹付ノズルから吹き付けて法枠を構築することを特徴とする法枠構築工法。
【請求項2】前記吹付ノズルは作業員が保持しながら吹付を行う請求項1記載の法枠構築工法。
【請求項3】側型枠がパンチングメタルであり、その開口率が25〜60%である請求項1記載の法枠構築工法。
【請求項4】吹付ノズルにおいて、法枠材料の流れの周囲部分から空気を環状に前方に噴出させる請求項1記載の法枠構築工法。」

(2)引用例の記載事項
当審で通知した訂正拒絶理由に引用した、本件特許に係る出願前に国内において頒布された刊行物である、特開昭61-286456号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
a「(1)資料をポンプから所定距離まで剛性管路で圧送し、この剛性管路の終端位置で圧送用エアを添加し、吹付ノズルまで可とう管路で気流搬送して吹付ける工法であつて、前記圧送用エアの回路に流量定値制御弁を設け、該流量定値制御弁により吹付エア量を常時制御しながら吹付けることを特徴とする湿式吹付け工法」(特許請求の範囲第1項)、
b「(従来の技術とその問題点)コンクリートやモルタルなどの水硬性資料の施工法として乾式および湿式の吹付け工法があり、特に後者は近年実積の多くなつているNATMを始めとして、空洞、法面などのライニング工法として広く利用されている。この湿式吹付け工法は、セメントと骨材と水の混練物をポンプから吹付けノズルまでホースにより濃密状態で圧送し、吹付けノズル付近で圧縮エアを添加して噴射する方法など各種手法がある。しかし、いずれにしても、吹付け工法は、……容易に良好な施工を行えず、特に、吹付けノズルから発生する粉塵、施工面からのはね返り、……などが大きな問題となつている。」(1頁右下欄3行〜2頁左上欄2行)
c「本発明は前記のような問題点を解決するために創案されたもので、その目的とするところは、高度の熟練や経験を要さずに常に最適な吹付け状態を保持することができ、粉塵およびはね返り少なく、品質性状の良好、安定した吹付層を形成することができる湿式吹付工法を提供することにある。」(2頁左上欄8〜13行)
d「第1図ないし第3図は本発明による湿式吹付け工法の実施例を示すもので、1は湿状資料の圧送用ポンプ、2は圧送用ポンプ1に接続された剛性管路で、……4は可とう管路で、……6は剛性管路2と可とう管路4の境界部位に介在接続された圧縮エア添加部であり、この添加部6は、湿状資料の分離を防止する点から、一般に、吹付けノズルから後方約20mの位置までとすることが好ましい。」(2頁左下欄13行〜右下欄6行)
e「本発明により吹付けを行うに当つては、第1図の実施例では、エア回路7,7’の流量定値制御弁9,9’に施工条件に最適なエア量をセツトする。このエア量は、湿状資料および混和剤に浮力を与え気流搬送するのに充分でかつその条件を満す範囲で粉塵濃度が低く保たれる値であり、具体的には、4.5Nm3/min〜7Nm3/minの範囲から選定する。」(3頁右下欄9〜16行)
f「次に本発明により実地に吹付けを行つた結果を示す。直径10mのトンネル切羽にコンクリート吹付けを行つた。配合はセメント……W/c:53%、……Sl:8±2cm……とした。」(4頁左下欄9〜14行)
以上の記載及び第1図によれば、引用例1には、
「モルタルまたはコンクリートを主体とする湿状資料を、ポンプにより管路を介して圧送し、ポンプと吹付ノズルとの間の管路の途中であり、かつ吹付ノズルから約20mまでの位置において4.5〜7Nm3/分の量をもって空気を吹込み、湿状資料を空気を連行した状態で吹付けノズルから吹き付ける、吹付け法面ライニング工法」
の発明が記載されているものと認められる。

同じく特開昭56-141862号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
g「この発明は例えばコンクリートあるいはセメントモルタル等を吹付けるための材料吹付けノズルに関する。……この発明の要旨は材料噴射ノズル
外周に空気噴射ノズルを設け空気噴射ノズルから噴射される空気によつてエアカーテンを形成し、このエアカーテンによつて材料噴射ノズルから噴射される材料の周囲を囲むように構成するものである。」(1頁左下欄8行〜右下欄11行)
h「この発明の作用効果について説明する。前述の材料送給装置によつて流動状の材料が圧縮空気とともにホース4によつて圧送され、材料ノズル5の先端から噴射される。他方空気圧縮機よりの圧縮空気はホースからソケット6d、円筒6aとパイプ2の外周との間隙を経て調整リング6bとパイプ2の外周との間隙から噴出して、材料噴射ノズル5から噴射された材料の周囲を囲むように円筒形のエアカーテンを形成する。そしてこのエアカーテンの流速は材料の噴射速度よりも速く、そのため材料の噴射形状は拡散の度合の小さいものとなり、それだけ空気抵抗も小さくなり、途中で地上へ落下する材料の量も少なく、また、吹付け対象物の面に対する噴射材料外筒部の傾斜の度合も小さいので、材料のはねかえり率が低くなり、無駄となる材料が減少し、歩留りが向上する。」(2頁右上欄4〜20行)
以上の記載並びに第1図及び第2図によれば、引用例2には、
「モルタルまたはコンクリート等の材料の流れの周囲部分から空気を環状に前方に噴出させる吹付けノズル」
の発明が記載されているものと認められる。

(3)対比・判断
(3-1)訂正発明1について
(3-1-1)対比
地山に固定され、鉄筋が配筋された隣接する側型枠内にモルタル又はコンクリートからなる湿式材料を吹き付けて充填し法枠を構築する法枠構築工法は、本件特許に係る出願前に周知の工法(例えば、(1)「土木特殊工法シリーズ3 のり面緑化工法ーのり面の安定と緑化ー」森北出版株式会社、1983年11月8日1版2刷発行、131頁〜148頁、(2)特公昭60-5734号公報、(3)特開平3-25122号公報、(4)特開昭55-126614号公報、(5)特開平4-14520号公報、参照。)である。
訂正発明1と上記周知の法枠構築工法(以下、「周知工法」という。)とを対比すると、周知工法の「湿式材料」は、訂正発明1の「湿式法枠構築材料」に相当することは明らかであり、また、上記周知工法において、モルタル又はコンクリートからなる湿式材料を吹き付ける場合、管路の先端の吹付ノズルから吹き付けるのは技術常識であるから、両者は、
「モルタルまたはコンクリートを主体とする湿式法枠構築材料を、管路の先端の吹付ノズルから、地山に固定され、鉄筋が配筋された隣接する側型枠内に吹き付けて充填し、法枠を構築する法枠構築工法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
訂正発明1では、湿式法枠構築材料が、モルタルの場合セメント:砂の重量比が、1:1〜4未満であり、コンクリートの場合、セメント:砂:粗骨材の重量比が、1:1〜4未満:<2であり、水セメント比W/Cが40〜65%であり、スランプ値が10〜27cmであり、減水剤をセメントに対して3重量%以下添加したものであるのに対し、周知工法では、湿式法枠構築材料の詳細が不明である。
相違点2
訂正発明1は、湿式法枠構築材料をポンプにより管路を介して圧送し、ポンプと吹付ノズルとの間の管路の途中であり、かつ吹付ノズルから5〜40m離間した位置において、2〜10Nm3/分の量をもって空気を吹込み、湿式法枠構築材料を空気を連行した状態で吹付ノズルから吹き付けるのに対し、周知工法は、湿式法枠構築材料をどのようにして吹付ノズルまで搬送するのか不明であり、また、湿式法枠構築材料を空気を連行した状態で吹付ノズルから吹き付けるのか否か不明である。
相違点3
訂正発明1は、湿式法枠構築材料を急結剤の添加なしで吹付ノズルから吹き付けるのに対し、周知工法は、湿式法枠構築材料を急結剤の添加なしで吹付ノズルから吹き付けるのか否か不明である。

(3-1-2)相違点についての判断
相違点1について
モルタル又はコンクリートを主材とする湿式材料を吹き付ける工法において、モルタルの場合、セメント:砂の重量比を1:4、コンクリートの場合、セメント:砂:砂利の重量比を1:4:2、水・セメント比を55〜60%とすることは、本件特許に係る出願前に周知の技術事項(上記周知例(1)参照。)である。また、モルタル又はコンクリートのスランプ値が大きいと、型枠内への打設が容易であることは技術常識であり、引用例1には、トンネルに吹き付けるコンクリートの場合ではあるが、吹き付け工法におけるコンクリートの水・セメント比を53%とし、スランプ値を8±2cmとする例が示されており、訂正発明1のスランプ値と重複する数値が示されている。さらに、減水剤は、モルタル又はコンクリートの混和剤として普通に用いられているものにすぎず、上記周知例(5)には、側型枠内に湿式材料を吹き付けて充填する法枠構築工法において、セメントに対し4重量%以下の減水剤を使用することが示されている。そして、湿式材料のセメント、砂等の配合比や水セメント比、スランプ値を如何にするか、減水剤を添加するか否か及びその量は、吹き付けにより構築されるものに要求される強度、材料コスト、作業性等を考慮して適宜決定される設計事項であり、訂正発明1の湿式法枠構築材料のセメント、砂等の配合比や水セメント比、スランプ値、減水剤の添加量としたことに格別の技術的意義も認められないから、周知工法における湿式法枠構築材料を訂正発明1のようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
相違点2について
訂正明細書の「従来のフリーフレーム工法においては、材料はポンプ圧送ではなく、材料の混練タンクの出側に設けたエアガンによる空気に材料を乗せて搬送するものであるので、ホース内の搬送形態は希薄流となり、作業員が保持できる利点はあるものの、材料の搬送力は空気に頼るものであるために、搬送流が密な部分と粗な部分が生じ、断続的な搬送となり、リバウンドロスが多量に発生し、材料の分離が発生し、強度が不均一となる。これに対して本発明では、材料をポンプ圧送し、均一な材料の流れの中に空気を連行させるものであるから、吹付ノズルからの吐出時点においても、材料が均一な状態で吐出され、前述のフリーフレーム工法における問題点は生じない。」(段落【0017】)との記載によれば、訂正発明1は、材料をポンプ圧送し、均一な材料の流れの中に空気を連行させることにより、従来の吹き付け工法におけるリバウンドロスの多量発生が生じないようにしたものと解されるところ、引用例1には、「モルタルまたはコンクリートを主体とする湿状資料を、ポンプにより管路を介して圧送し、ポンプと吹付けノズルとの間の管路の途中であり、かつ吹付ノズルから約20mまでの位置において4.5〜7Nm3/分の量をもって空気を吹込み、湿状資料を空気を連行した状態で吹付ノズルから吹き付ける、吹付け法面ライニング工法」の発明が記載されており、引用例1記載の発明も、施工面からのはね返り(リバウンドロス)を少なくすることを目的とし(上記(2)の記載b参照。)、訂正発明1と同様の問題を解決するものである。
そして、吹き付け工法を用いる先の周知工法においても、はね返り(リバウンドロス)を少なくする課題があることは広く知られているから、周知工法において、はね返りを少なくするために、引用例1記載の発明における、湿状資料を、ポンプにより管路を介して圧送し、ポンプと吹付ノズルとの間の管路の途中で空気を吹込み、湿状資料を空気を連行した状態で吹付ノズルから吹き付ける、という湿状資料の搬送及び吹き付け方法を、周知工法における湿式法枠構築材料の搬送及び吹き付け方法として採用し、相違点2における訂正発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことといえる。
相違点3について
周知工法は、湿式法枠構築材料を急結剤の添加なしで吹付ノズルから吹き付けるのか否か不明であるが、鉄筋が配筋された隣接する側型枠内にモルタル又はコンクリートからなる湿式法枠構築材料を吹き付けて充填し法枠を構築する周知工法においては、通常は、湿式法枠構築材料に急結剤を添加しないから、相違点3は、実質的な差異ではない。
しかも、全体として訂正発明1が奏する効果も、周知工法、引用例1記載の発明及び周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、訂正発明1は、周知工法、引用例1記載の発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(3-1-3)平成15年6月16日付けの意見書における請求人の主張に対して
請求人は、相違点3についての上記判断に関連して、同意見書において、
「ア.湿式法枠構築材料に急結剤を添加しないことは、特許権者も認めるところである。たとえば、汎用のフリーフレーム工法。」(5頁2〜3行)、「引用例1の方法は、スランプが6cm〜10cmのやや柔らかい材料をポンプ圧送して、ノズルから後方20mの位置においてエア添加し、さらにノズル部または最大4mまでの位置において圧縮エアにより急結剤を気送することにより添加する(3頁右上欄17行〜18行)ものである。そして、引用例1には、急結剤を添加しなくともよいことは示唆すらない。」(5頁17〜21行)、「従来、材料の調製(特にスランプ)及びエア添加の形態において別異の方法について、一方(…)は急結剤を添加しないこと、他方(…)は急結剤を添加することが必須のものとの当業者の認識があった情況下において、一方の方法に他方の方法を適用した場合において、その組み合わせた方法において、急結剤を添加しなくともよいとの結論には到底到るものではない。ウ.引用例1の方法において、急結剤の添加は文言とおり材料を急結するためのものであり、材料の急結によって『粉塵およびはね返り』が減少させるものである。」(5頁下から1行〜6頁8行)、「引用例1では、急結剤の添加により、材料は急結するので、流動性が極端に低下し、訂正発明1の法枠構築工法に必須のものとして要求される、次記の作用効果を奏しないものである。『【0014】(2)しかも、スランプ値が10〜27cmであるために、流動性に良好であり、型枠内に配筋する鉄筋の裏に対しても充分に回り込み、巣の生成による強度の低下がない。また、リバンドロスが無くまたはあっても極く少量であるために、強度の低下を防止できる。』……以上のとおり、訂正拒絶理由において、少なくとも相違点3の単に周知工法の延長で過小評価したもので、認定を誤れるものである。」(6頁下から3行〜7頁7行)と主張している。
しかしながら、鉄筋が配筋された隣接する側型枠内にモルタル又はコンクリートからなる湿式法枠構築材料を吹き付けて充填し法枠を構築する周知工法においては、通常、湿式法枠構築材料に急結剤を添加しないものである。(これについては、請求人も認めている。)
引用例1には、特許請求の範囲第1項に、「(1)資料をポンプから所定距離まで剛性管路で圧送し、この剛性管路の終端位置で圧送用エアを添加し、吹付ノズルまで可とう管路で気流搬送して吹付ける工法であつて、前記圧送用エアの回路に流量定値制御弁を設け、該流量定値制御弁により吹付エア量を常時制御しながら吹付けることを特徴とする湿式吹付け工法」(上記(2)の記載a)が記載され、資料に急結剤を添加することは言及されていない。
また、引用例1の3頁右上欄13〜19行には、「なお、本実施例では、吹付けノズル5またはその近傍(通常の場合、最大で約4mの位置まで)に、混和剤の添加ノズル15を取付けており、この混和剤添加ノズル15は供給ホース16により混和剤供給装置17と接続され、圧縮エアにより混和剤すなわち通常の場合急結剤を気送するようになつている。」と記載されているが、これは、「なお、……」と書かれていることからもわかるように、実施例として、吹付けノズル5またはその近傍(通常の場合、最大で約4mの位置まで)に混和剤の添加ノズル1を取付けて、急結剤を気送するようになっているものを示しているにすぎないのであり、急結剤を添加する必要がない場合には吹き付け材料に急結剤を添加しないのは当然であるから、引用例1記載の湿式吹付け工法は、急結剤を添加する必要がない場合には急結剤を添加しないものであると解され、上記実施例のなお書きは、急結剤を添加する必要がある場合を示しているにすぎないといえる。
そして、湿式法枠構築材料に急結剤を添加しない周知工法において、はね返りを少なくするために、引用例1記載の発明における、湿状資料を、ポンプにより管路を介して圧送し、ポンプと吹付ノズルとの間の管路の途中で空気を吹込み、湿状資料を空気を連行した状態で吹付ノズルから吹き付ける、という引用例1記載の湿状資料の搬送及び吹き付け方法を、周知工法における湿式法枠構築材料の搬送及び吹き付け方法として採用すれば、湿式法枠構築材料を急結剤の添加なしで吹付ノズルから吹き付けることになることは明らかである。しかも、引用例1に、トンネル切羽にコンクリート吹付けを行う場合ではあるが、コンクリ-トのスランプ値を10にすることが記載されており、上記周知工法に引用例1記載の湿状資料の搬送及び吹き付け方法を採用する際に、コンクリートのスランプ値を10にした場合には、流動性に良好であり、型枠内に配筋する鉄筋の裏に対しても充分に回り込み、巣の生成による強度の低下がない、リバンドロスが無くまたはあっても極く少量であるために強度の低下を防止できるという、訂正発明1と同様の作用効果を奏するものと認められる。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。

(3-2)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1において構成をさらに付加したものであるから、訂正発明2と周知工法とを対比すると、両者は、上記「(3-1)訂正発明1について」で挙げた点で一致し、上記相違点1〜3に加えて、以下の点でさらに相違する。
相違点4
訂正発明2では、前記吹付ノズルは作業員が保持しながら吹付を行うのに対し、周知工法では、吹付ノズルは作業員が保持しながら吹付を行うのか否か不明である。

上記相違点1〜3についての検討は、既述したとおりである。
そこで、上記相違点4について検討すると、コンクリート又はモルタルの吹付け工法において、吹付ノズルを作業員が保持しながら吹付を行うことは、本件特許に係る出願前に周知の技術事項(例えば、特開昭53-38105号公報参照。)であり、相違点4における訂正発明2の構成とすることに何ら困難性は認められない。
しかも、全体として訂正発明2が奏する効果も、周知工法、引用例1記載の発明及び周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、訂正発明2は、周知工法、引用例1記載の発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(3-3)訂正発明3について
訂正発明3は、訂正発明1において構成をさらに付加したものであるから、訂正発明3と周知工法とを対比すると、両者は、上記「(3-1)訂正発明1について」で挙げた点で一致し、上記相違点1〜3に加えて、以下の点でさらに相違する。
相違点5
訂正発明3は、側型枠がパンチングメタルであり、その開口率が25〜60%であるのに対し、周知工法は、側型枠が開口率が25〜60%のパンチングメタルであるのか否か不明である。

上記相違点1〜3についての検討は、既述したとおりである。
そこで、上記相違点5について検討すると、法枠の側型枠をパンチングメタルとすることは、本件特許に係る出願前に周知の技術事項(例えば、上記周知例(2)及び(6)特開平2-274920号公報参照。)であり、さらに、パンチングメタルであるのかは不明であるが、多数の小孔を設けた型枠板を用いた上記周知例(4)には、有孔部分と無孔部分との面積比が0.3〜1.5であることが示されているから、相違点5における訂正発明3の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことといえる。
しかも、全体として訂正発明3が奏する効果も、周知工法、引用例1記載の発明及び周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、訂正発明3は、周知工法、引用例1記載の発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(3-4)訂正発明4について
訂正発明4は、訂正発明1において構成をさらに付加したものであるから、訂正発明4と周知工法とを対比すると、両者は、上記「(3-1)訂正発明1について」で挙げた点で一致し、上記相違点1〜3に加えて、以下の点でさらに相違する。
相違点6
訂正発明4は、吹付ノズルにおいて、法枠材料の流れの周囲部分から空気を環状に噴出させるのに対し、周知工法は、吹付ノズルにおいて、法枠材料の流れの周囲部分から空気を環状に噴出させるのか否か不明である。

上記相違点1〜3についての検討は、既述したとおりである。
そこで、上記相違点6について検討すると、引用例2には、モルタル又はコンクリート等の材料の流れの周囲部分から空気を環状に前方に噴出させる吹付けノズル、が記載されている。そして、周知工法と引用例2記載の発明は共に、コンクリート又はモルタルの吹付の技術に関するものであるから、周知工法における吹付ノズルとして、引用例2記載の吹付けノズルを採用することに格別の困難性はなく、相違点6における訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
しかも、訂正発明4が奏する効果も、周知工法、引用例1及び2記載の発明並びに周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明4は、周知工法、引用例1及び2記載の発明並びに周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

〔4〕むすび
以上のとおり、訂正発明1〜4は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件審判請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法126条3項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-08-05 
結審通知日 2003-08-08 
審決日 2003-08-25 
出願番号 特願平5-196197
審決分類 P 1 41・ 856- Z (E02D)
P 1 41・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 田中 弘満
鈴木 憲子
登録日 1999-11-19 
登録番号 特許第3003751号(P3003751)
発明の名称 法枠構築工法  
代理人 永井 義久  
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