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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  G03C
管理番号 1084751
異議申立番号 異議2002-70401  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-11-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-02-20 
確定日 2003-07-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3200465号「ハロゲン化銀写真感光材料用の処理組成物及びそれを用いた処理方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3200465号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3200465号の請求項1、2に係る発明は、平成4年4月24日に出願され、平成13年6月15日に特許の設定登録がなされ、その後、コニカ株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年8月6日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知を兼ねる取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年2月12日に再度訂正請求がなされて、前回平成14年8月6日の訂正請求が取り下げられたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正事項
・訂正事項a
請求項1の記載において、
請求項末尾の「処理組成物。」を
「処理組成物。ただし、一般式[A]で表される化合物の第2鉄錯塩と、一般式[C]で示される化合物からなる固形補充処理剤及びこれから得られる処理組成物を除く。」と訂正する共に、

「【化1】

」を
「【化1】

」と、

「(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ水素原子、脂肪族基、芳香族基又はヒドロキシ基を表す。Wは炭素原子を含む二価の連結基を表す。M1、M2、M3及びM4はそれぞれ水素原子又はカチオンを表す。)」を
「(一般式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ水素原子、脂肪族基、芳香族基又はヒドロキシ基を表す。Wは炭素原子を含む二価の連結基を表す。M1、M2、M3及びM4はそれぞれ水素原子又はカチオンを表す。)
(一般式[A]中、A1〜A4は、各々同一でも異なってもよく、-CH2OH,-COOM又は-PO3M1M2を表す。M,M1,M2は各々水素原子,アルカリ金属又はその他の力チオンを表す。Xは、炭素数2〜6の置換もしくは無置換のアルキレン基又は(B1O)n-B2-を表す。nは1〜8の整数を表し、またB1及びB2は各々同一でも異なってもよく、炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)
(一般式[C]中、nは2以上の整数を表し、n=2のときA9は単結合又はn価の基を表し、n=3のときA9は3価の基を表す。Mはアルカリ金属又はその他の力チオンを表す。n個のMは、同一でも異なってもよい。)」と、
それぞれ訂正する。

・訂正事項b
請求項2の記載において、「水溶性Fe(III)化合物からなり」を「水溶性Fe(III)化合物として臭化鉄(III)又は硝酸鉄(III)からなり」と訂正する。

・訂正事項c
明細書段落【0004】の記載において、「処理組成物。」を「処理組成物。ただし、一般式[A]で表される化合物の第2鉄錯塩と、一般式[C]で示される化合物からなる固形補充処理剤及びこれから得られる処理組成物を除く。」と、

同【0005】の記載において、
「【化2】

」を
「【化2】

」と、

同【0006】の記載において、
「(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ水素原子、脂肪族基、芳香族基又はヒドロキシ基を表す。Wは炭素原子を含む二価の連結基を表す。M1、M2、M3及びM4はそれぞれ水素原子又はカチオンを表す。)」を
「(一般式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ水素原子、脂肪族基、芳香族基又はヒドロキシ基を表す。Wは炭素原子を含む二価の連結基を表す。M1、M2、M3及びM4はそれぞれ水素原子又はカチオンを表す。)
(一般式[A]中、A1〜A4は、各々同一でも異なってもよく、-CH2OH,-COOM又は-PO3M1M2を表す。M,M1,M2は各々水素原子,アルカリ金属又はその他の力チオンを表す。Xは、炭素数2〜6の置換もしくは無置換のアルキレン基又は(B1O)n-B2-を表す。nは1〜8の整数を表し、またB1及びB2は各々同一でも異なってもよく、炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)
(一般式[C]中、nは2以上の整数を表し、n=2のときA9は単結合又はn価の基を表し、n=3のときA9は3価の基を表す。Mはアルカリ金属又はその他の力チオンを表す。n個のMは、同一でも異なってもよい。)」と、
それぞれ訂正する。

・訂正事項d
同【0006】の記載において、「水溶性Fe(III)化合物からなり」を「水溶性Fe(III)化合物として臭化鉄(III)又は硝酸鉄(III)からなり」と訂正する。

・訂正事項e
同【0022】の記載において、「第二鉄塩(例えば、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、臭化第二鉄、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)アンモニウムなど)とを共存させて」を「第二鉄塩として臭化鉄(III)又は硝酸鉄(III)とを共存させて」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項aは、訂正前の請求項1に係る発明から、「一般式[A]で表される化合物の第2鉄錯塩と、一般式[C]で示される化合物からなる固形補充処理剤及びこれから得られる処理組成物」(なお、一般式[A]及び[C]で示される化合物は訂正後の請求項1を参照。)を除いて、甲第1号証に記載された発明と重複しないようにするためのものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項bは、請求項2の記載における「水溶性Fe(III)化合物」を「臭化鉄(III)又は硝酸鉄(III)」の2種に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項c〜eは、訂正事項a、bによって特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との間に生じた不整合を正すものであるから明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
そして、訂正事項a〜eは、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

2-3.訂正の適否の結論
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
請求項1、2に係る発明は、訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】下記一般式(I)で表される化合物のFe(III)錯塩と、酢酸とグリコール酸との混合物又は脂肪族系二塩基性酸、アミノ酸系二塩基性酸、芳香族系二塩基性酸及びその他の多塩基性酸から選ばれる酸の少なくとも一つと、を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料用の漂白能を有する処理組成物。ただし、一般式[A]で表される化合物の第2鉄錯塩と、一般式[C]で示される化合物からなる固形補充処理剤及びこれから得られる処理組成物を除く。
【化1】


(一般式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ水素原子、脂肪族基、芳香族基又はヒドロキシ基を表す。Wは炭素原子を含む二価の連結基を表す。M1、M2、M3及びM4はそれぞれ水素原子又はカチオンを表す。)
(一般式[A]中、A1〜A4は、各々同一でも異なってもよく、-CH2OH、-COOM又は-PO3M1M2を表す。M,M1,M2は各々水素原子,アルカリ金属又はその他の力チオンを表す。Xは、炭素数2〜6の置換もしくは無置換のアルキレン基又は(B1O)n-B2-を表す。nは、1〜8の整数を表し、またB1及びB2は各々同一でも異なってもよく、炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)
(一般式[C]中、nは2以上の整数を表し、n=2のときA9は単結合又はn価の基を表し、n=3のときA9は3価の基を表す。Mはアルカリ金属又はその他の力チオンを表す。n個のMは、同一でも異なってもよい。)
【請求項2】像様露光されたハロゲン化銀カラー写真感光材料を、漂白剤を含有する漂白能を有する処理液で処理する方法において、該漂白剤が請求項1記載の一般式(I)で表される化合物及び水溶性Fe(III)化合物として臭化鉄(III)又は硝酸鉄(III)からなり、該有機酸が酢酸とグリコール酸との混合物又は脂肪族系二塩基性酸、アミノ酸系二塩基性酸、芳香族系二塩基性酸及びその他の多塩基性酸から選ばれる酸の少なくとも一つであることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法。」

4.特許異議の申立ての概要
特許異議申立人 コニカ株式会社は、
甲第1号証:特開平5-333507号公報
参考資料1:特開昭62-272246号公報
参考資料2:特開平1-118838号公報
参考資料3:特開平3-216650号公報
参考資料4:特開平3-287262号公報
参考資料5:特開平4-101136号公報
を提出して、訂正前の請求項1、2に係る発明は、参考資料1〜5を参酌すると、甲第1号証に係る、本件出願の出願日前の出願である特願平4-73394号の願書に最初に添付した明細書(以下「先願明細書」という)に記載された発明と同一であるので、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないものであり、訂正前の請求項1、2に係る特許は取り消されるべきである旨主張している。

5.先願明細書等に記載された事項
先願明細書(特開平5-333507号公報参照)には、
(1)「【請求項1】少なくとも下記一般式[A]又は[B]で示される化合物の第2鉄錯塩を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料用の漂白能を有する固形補充処理剤。
【化1】

[式中、A1〜A4は各々同一でも異なってもよく、-CH2OH、-COOM又は-PO3M1M2を表す。M、M1、M2は各々、水素原子、アルカリ金属又はその他のカチオンを表す。Xは炭素数2〜6の置換若しくは無置換のアルキレン基又は-(B1O)n-B2-を表す。nは1〜8の整数を表わし、またB1及びB2は各々同一でも異なってもよく、炭素数1〜5のアルキレン基を表わす。]
【化2】

[式中、A5〜A8は各々同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、-COOM、-PO3M1M2、-CH2COOM、-CH2OH又は低級アルキル基を表す。ただし、A5〜A8の少なくとも1つは-COOM、-PO3M1M2、-CH2COOMである。M、M1、M2は各々、水素原子、アルカリ金属又はその他のカチオンを表す。]
【請求項2】下記一般式[C]で示される化合物を含有することを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀写真感光材料用の漂白能を有する固形補充処理剤。
【化3】

[式中、nは2以上の整数を表わし、n=2のときA9は単結合又はn価の基を表わし、n=3のときA9は3価の基を表わす。Mはアルカリ金属又はその他のカチオンを表す。n個のMは同一でも異なってもよい。]
【請求項3】前記漂白能を有する固形補充処理剤中のアンモニウムイオンが全カチオンの50モル%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のハロゲン化銀写真感光材料用の漂白能を有する固形補充処理剤。
【請求項4】ハロゲン化銀写真感光材料を発色現像後、漂白液で処理を行い、次いで定着液で処理を行うハロゲン化銀写真感光材料の処理方法において、前記ハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤中の塩化銀含有比率が80モル%以上であり、かつ前記漂白液が請求項1、2又は3記載の固形補充処理剤から得られる処理液であることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【請求項5】ハロゲン化銀写真感光材料を発色現像後、漂白定着液で処理を行うハロゲン化銀写真感光材料の処理方法において、前記ハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤中の塩化銀含有比率が80モル%以上であり、かつ前記漂白定着液が請求項1、2又は3記載の固形補充処理剤から得られる処理液であることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【請求項6】ハロゲン化銀写真感光材料を発色現像後、漂白液で処理を行い、次いで定着液で処理を行うハロゲン化銀写真感光材料の処理方法において、前記ハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤中のヨウ化銀含有比率が15モル%以下であり、かつ前記漂白液が請求項1、2又は3記載の固形補充処理剤から得られる処理液であることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。」(請求項1〜6)、
(2)一般式[A]で示される化合物の第2鉄錯塩と、一般式[C]で示される化合物とを含有する固形補充処理剤、漂白液、漂白補充剤、漂白定着液、漂白定着補充剤〔実施例1の第1表-1の実験No.1-19〜1-24、第1表-2の実験No.1-25〜1-36(段落【0182】〜【0189】);実施例2の第1表-2の実験No.1-25〜1-36(段落【0189】〜【0192】);実施例3の第2表-1の実験No.3-19〜3-24、第2表-2の実験No.3-25〜3-36(段落【0193】〜【0197】);実施例4の第3表の実験No.4-13〜4-24(段落【0198】〜【0261】);実施例5の第4表ー1の実験No.5-13〜5-30(段落【0262】〜【0267】);実施例6の第5表ー2の実験No.6-19〜6-30(段落【0268】〜【0316】);実施例7の第6表ー1の実験No.7-25〜7-30、第6表ー2の実験No.7-31〜7-42(段落【0317】〜【0325】);実施例8の第7表の8-13〜8-24(段落【0326】〜【0337】);実施例9の第8表ー1の実験No.9-13〜9-30(段落【0338】〜【0346】)〕、
(3)一般式[A]で示される化合物の比較化合物として、エチレンジアミン四酢酸第2鉄錯塩(EDTA-Fe)、ジエチレントリアミン五酢酸第2鉄錯塩(DTPA-Fe)、1,3-ジアミノプロパン四酢酸第2鉄錯塩(PDTA-Fe)を用いて、そのそれぞれと、一般式[C]で示される化合物からなる固形補充処理剤、漂白液、漂白補充剤、漂白定着液、漂白定着補充剤〔実施例1の第1表-1の実験No.1-1〜1-18(段落【0182】〜【0189】);実施例3の第2表-1の実験No.3-1〜3-18(段落【0193】〜【0197】);実施例4の第3表の実験No.4-1〜4-12(段落【0198】〜【0261】);実施例5の第4表ー1の実験No.5-1〜5-12(段落【0262】〜【0267】);実施例6の第5表ー1の実験No.6-1〜6-18(段落【0268】〜【0316】);実施例7の第6表ー1の実験No.7-1〜7-24(段落【0317】〜【0325】);実施例8の第7表の8-1〜8-12(段落【0326】〜【0337】);実施例9の第8表ー1の実験No.9-1〜9-12(段落【0338】〜【0346】)〕が、
それぞれ記載されている。

参考資料1〜5には、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理における漂白液及び漂白定着液に用いられるアミノポリカルボン酸第二鉄錯塩は、錯塩の形で含有するか、第2鉄塩とアミノポリカルボン酸とから水溶液中で錯塩を形成させて含有してもよいことが記載されている。

6.対比・判断
6-1.請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という)の「漂白能を有する処理組成物」について、本件明細書には「本発明において特に有効な使用法であるハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白能を有する処理液は、像様露光後の発色現像処理を施された感光材料の漂白処理にて使用される。
本件発明において、漂白能を有する処理液(組成物)としては、漂白液(組成物)、漂白定着液(組成物)が挙げられる。
該処理組成物は、キットの如き粉体であってもよいし、処理で使用されるような処理液や補充液等の水溶液であってもよい。」(段落【0022】参照)と記載されていることから、本件発明1の「漂白能を有する処理組成物」は、漂白液、漂白定着液、粉体、補充液の各態様のものを含む。また、該処理組成物は、一般式(I)で表される化合物のFe(III)錯塩と、酢酸とグリコール酸との混合物又は脂肪族系二塩基性酸、アミノ酸系二塩基性酸、芳香族系二塩基性酸及びその他の多塩基性酸から選ばれる酸の少なくとも一つとを含有するが、一般式[A]で示される化合物と、一般式[C]で示される化合物とを含有する固形補充処理剤及びこれらから得られる処理組成物が除かれたものである。

一方、先願明細書の請求項4には、「ハロゲン化銀写真感光材料を発色現像後、漂白液で処理を行い、次いで定着液で処理を行うハロゲン化銀写真感光材料の処理方法において、前記ハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤中の塩化銀含有比率が80モル%以上であり、かつ前記漂白液が請求項1、2又は3記載の固形補充処理剤から得られる処理液であることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。」と記載されており、該処理方法で用いる漂白液は、請求項1、2又は3記載の固形補充処理剤から得られる処理液である。
その請求項1、2又は3に記載の固形補充処理剤のうち、請求項2に記載の固形補充処理剤は、一般式[A]で示される化合物と、一般式[C]で示される化合物とを含有する固形補充処理剤である(摘記事項(1)参照)。そうすると、請求項2に記載された固形補充処理剤から得られる請求項4に記載の漂白液は、一般式[A]で示される化合物と、一般式[C]で示される化合物とを含有する、「漂白能を有する処理組成物」であることになる。
そこで、本件発明1と、先願明細書の請求項4の「ハロゲン化銀写真感光材料の処理方法」で用いられている「漂白液」とを対比すると、
前者が含有する、「脂肪族系二塩基性酸、アミノ酸系二塩基性酸、芳香族系二塩基性酸及びその他の多塩基性酸」は、カルボン酸基を2以上有する化合物であるから、後者が含有する一般式[C]で示される化合物に相当する。
しかし、本件発明1からは、明らかに先願明細書に記載の固形補充処理剤及びこれらから得られる処理組成物が除かれているから、本件発明1の、漂白能を有する処理組成物と、先願明細書の請求項4に記載された「漂白能を有する処理組成物」とは同一でない。

先願明細書の請求項5には、「ハロゲン化銀写真感光材料を発色現像後、漂白定着液で処理を行うハロゲン化銀写真感光材料の処理方法において、前記ハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤中の塩化銀含有比率が80モル%以上であり、かつ前記漂白定着液が請求項1、2又は3記載の固形補充処理剤から得られる処理液であることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。」と記載されており、該処理方法で用いる漂白定着液は、請求項1、2又は3に記載の固形補充処理剤から得られる処理液である。
その請求項1、2又は3に記載の固形補充処理剤のうち、請求項2に記載の固形補充処理剤は、一般式[A]で示される化合物と、一般式[C]で示される化合物とを含有する固形補充処理剤である(摘記事項(1)参照)。そうすると、請求項2に記載された固形補充処理剤から得られる請求項5に記載の漂白定着液は、一般式[A]で示される化合物と、一般式[C]で示される化合物とを含有する、「漂白能を有する処理組成物」であることになる。
そこで、本件発明1と、先願明細書の請求項5の「ハロゲン化銀写真感光材料の処理方法」で用いられている「漂白定着液」とを対比すると、
上記したように、前者が含有する、「脂肪族系二塩基性酸、アミノ酸系二塩基性酸、芳香族系二塩基性酸及びその他の多塩基性酸」は、カルボン酸基を2以上有する化合物であるから、後者が含有する一般式[C]で示される化合物(先願明細書の請求項2)に相当する。
しかし、本件発明1からは、明らかに先願明細書に記載の固形補充処理剤及びこれらから得られる処理組成物が除かれているから、本件発明1には先願明細書の請求項5に記載の漂白定着液の発明は含まれない。

本件発明1と、先願明細書に請求項6に記載された「漂白液」とを対比する。
先願明細書の、請求項6には、「ハロゲン化銀写真感光材料を発色現像後、漂白液で処理を行い、次いで定着液で処理を行うハロゲン化銀写真感光材料の処理方法において、前記ハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤中のヨウ化銀含有比率が15モル%以下であり、かつ前記漂白液が請求項1、2又は3記載の固形補充処理剤から得られる処理液であることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。」と記載されている。
該記載と先願明細書の請求項4の記載とは、ハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤は異なるが、漂白液については全く同一であるから、上記先願明細書の請求項4に記載された「漂白液」との対比で、先願明細書の請求項4に記載された漂白液が、本件発明1の、漂白能を有する処理組成物と同一ではないとしたのと全く同じ理由により、本件発明1の、漂白能を有する処理組成物と、先願明細書の請求項6に記載された「漂白能を有する処理組成物」とは同一でない。

さらに、先願明細書の実施例1〜9の、固形補充処理剤、漂白液、漂白補充剤、漂白定着液、漂白定着補充剤(以下「処理剤等」という)も、一般式[A]で示される化合物の第2鉄錯塩と、一般式[C]で示される化合物を含有する処理剤の具体例にすぎないから、請求項4〜6に記載の漂白液又は漂白定着液が本件発明1と同一でないのと同様に、前記処理剤等は、本件発明1の、漂白能を有する処理組成物と同一ではない。

また、一般式[A]で示される化合物の比較化合物として、エチレンジアミン四酢酸第2鉄錯塩(EDTA-Fe)、ジエチレントリアミン五酢酸第2鉄錯塩(DTPA-Fe)、1,3-ジアミノプロパン四酢酸第2鉄錯塩(PDTA-Fe)を用いて、そのそれぞれと、一般式[C]で示される化合物からなる固形補充処理剤、漂白液、漂白補充剤、漂白定着液、漂白定着補充剤も記載されているが、これらの比較化合物は、一般式(I)で表される化合物のFe(III)錯塩(訂正後の請求項1参照)とは化学構造が異なるものであるから、これらの比較化合物を含有する固形補充処理剤、漂白液、漂白補充剤、漂白定着液、漂白定着補充剤も、本件発明1の、漂白能を有する処理組成物と同一となるものではない。

6-2.請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明(以下「本件発明2」という)は、本件発明1の漂白能を有する処理組成物に含有される一般式(I)で表される化合物のFe(III)錯塩が、一般式(I)で表される化合物と、臭化鉄(III)又は硝酸鉄(III)とからなるという限定を加え、特定の有機酸を含む漂白能を有する処理組成物を用いる「ハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法」である。
そうすると、請求項2は、一般式(I)で表される化合物(請求項1参照)のFe(III)錯塩を、一般式(I)で表される化合物と、臭化鉄(III)又は硝酸鉄(III)とからなるとし、水溶性Fe(III)化合物について限定したものであるから、上記したのと同様な理由により、本件発明2も、先願明細書に記載された発明と同一になるものではない。

なお、参考資料1〜5には、アミノポリカルボン酸第二鉄錯塩は、錯塩の形で含有するか、第2鉄塩とアミノポリカルボン酸とから水溶液中で錯塩を形成させて含有してもよいことが記載されているにすぎないので、これらの資料は上記した判断を左右するものではない。

7.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ハロゲン化銀写真感光材料用の処理組成物及びそれを用いた処理方法
(57)【特許請求の範囲】
『【請求項1】 下記一般式(I)で表される化合物のFe(III)錯塩と、酢酸とグリコール酸との混合物又は脂肪族系二塩基性酸、アミノ酸系二塩基性酸、芳香族系二塩基性酸及びその他の多塩基性酸から選ばれる酸の少なくとも一つと、を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料用の漂白能を有する処理組成物。ただし、一般式[A]で表される化合物の第2鉄錯塩と、一般式[C]で示される化合物からなる固形補充処理剤及びこれから得られる処理組成物を除く。
【化1】

(一般式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ水素原子、脂肪族基、芳香族基又はヒドロキシ基を表す。Wは炭素原子を含む二価の連結基を表す。M1、M2、M3及びM4はそれぞれ水素原子又はカチオンを表す。)
(一般式[A]中、A1〜A4は、各々同一でも異なってもよく、-CH2OH,-COOM又は-PO3M1M2を表す。M,M1,M2は各々水素原子,アルカリ金属又はその他のカチオンを表す。Xは炭素数2〜6の置換もしくは無置換のアルキレン基又は(B1O)n-B2-を表す。nは、1〜8の整数を表し、またB1及びB2は各々同一でも異なってもよく、炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)
(一般式[C]中、nは2以上の整数を表し、n=2のときA9は単結合又はn価の基を表し、n=3のときA9は3価の基を表す。Mはアルカリ金属又はその他のカチオンを表す。n個のMは、同一でも異なってもよい。)
【請求項2】像様露光されたハロゲン化銀カラー写真感光材料を、漂白剤を含有する漂白能を有する処理液で処理する方法において、該漂白剤が請求項1記載の一般式(I)で表される化合物及び水溶性Fe(III)化合物として臭化鉄(III)又は硝酸鉄(III)からなり、該有機酸が酢酸とグリコール酸との混合物又は脂肪族系二塩基性酸、アミノ酸系二塩基性酸、芳香族系二塩基性酸及びその他の多塩基性酸から選ばれる酸の少なくとも一つであることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料用の処理組成物に関するものであり、特に脱銀性、写真性及び処理後の画像保存性に優れるハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に感光材料と記すこともある)用の漂白処理組成物及び処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】感光材料は、露光後、発色現像された後、漂白能を有する処理液などで処理される。その漂白能を有する処理液に含まれる漂白剤としては、第二鉄錯塩が広く知られているが、特にその中でもエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の第二鉄錯塩が古くから用いられており、数年前からより強力な漂白能力をもつ1,3-ジアミノプロパン四酢酸(1,3-PDTA)の第二鉄錯塩も広く用いられるようになってきた。1,3-PDTAの第二鉄錯塩はEDTAの第二鉄錯塩に比べて迅速処理性に優れるが、その強い酸化力のために漂白かぶりが起きやすく、また処理後の画像保存性が悪化(マゼンタステインが増加)しやすいことなど、いくつかの問題点を有しており1,3-PDTAの第二鉄錯塩を実用するにあたって、現在まで多くの努力が費やされてきた。また、近年の地球環境の保全に対する認識の高まりから、環境汚染負荷の少ない処理剤の開発が求められている写真業界においては、生分解が困難なEDTAの第二鉄錯塩や1,3-PDTAの第二鉄錯塩に代わる漂白剤の研究が進められている。またこれら金属錯塩は、漂白処理組成物のほか補力、減力、調色といった後処理の処理組成物としても使用されるが、生分解に関する点では同じ問題を抱えている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の第一の課題は、環境汚染負荷の少ない処理剤を用いた処理組成物及びそれを用いた処理方法を提供することである。更に第二の課題は、脱銀性に優れ、漂白かぶりが起こらず、処理後の画像保存性に優れた漂白能を有する処理組成物及びそれを用いた脱銀方法を提供することである。
【0004】
【課題を達成するための手段】本発明者は上記課題に対して検討した結果、その目的が以下に示す処理組成物及び処理方法により達成されることを見いだした。即ち、(1)下記一般式(I)で表される化合物のFe(III)錯塩と、酢酸とグリコール酸との混合物又は脂肪族系二塩基性酸、アミノ酸系二塩基性酸、芳香族系二塩基性酸及びその他の多塩基性酸から選ばれる酸の少なくとも一つと、を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料用の漂白能を有する処理組成物。ただし、一般式[A]で表される化合物の第2鉄錯塩と、一般式[C]で示される化合物からなる固形補充処理剤及びこれから得られる処理組成物を除く。
【0005】
【化2】

【0006】
(一般式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ水素原子、脂肪族基、芳香族基又はヒドロキシ基を表す。Wは炭素原子を含む二価の連結基を表す。M1、M2、M3及びM4はそれぞれ水素原子又はカチオンを表す。)
(一般式[A]中、A1〜A4は、各々同一でも異なってもよく、-CH2OH,-COOM又は-PO3M1M2を表す。M,M1,M2は各々水素原子,アルカリ金属又はその他のカチオンを表す。Xは炭素数2〜6の置換もしくは無置換のアルキレン基又は(B1O)n-B2-を表す。nは、1〜8の整数を表し、またB1及びB2は各々同一でも異なってもよく、炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)
(一般式[C]中、nは2以上の整数を表し、n=2のときA9は単結合又はn価の基を表し、n=3のときA9は3価の基を表す。Mはアルカリ金属又はその他のカチオンを表す。n個のMは、同一でも異なってもよい。)
(2)像様露光されたハロゲン化銀カラー写真感光材料を、漂白剤を含有する漂白能を有する処理液で処理する方法において、該漂白剤が請求項1記載の一般式(I)で表される化合物及び水溶性Fe(III)化合物として臭化鉄(III)又は硝酸鉄(III)からなり、該有機酸が酢酸とグリコール酸との混合物又は脂肪族系二塩基性酸、アミノ酸系二塩基性酸、芳香族系二塩基性酸及びその他の多塩基性酸から選ばれる酸の少なくとも一つであることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法。
まず、一般式(I)で表される化合物について以下に詳細に述べる。
【0007】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6で表される脂肪族基は直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、炭素数1ないし10のものが好ましい。脂肪族基としてはより好ましくはアルキル基であり、更に炭素数1ないし4のアルキル基が好ましく、特にメチル基、エチル基が好ましい。R1、R2、R3、R4、R5及びR6で表される芳香族基としては、単環または2環のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられ、フェニル基がより好ましい。R1、R2、R3、R4、R5及びR6で表される脂肪族基、芳香族基は置換基を有していてもよく、例えばアルキル基(例えばメチル、エチル)、アラルキル基(例えばフェニルメチル)、アルケニル基(例えばアリル)、アルキニル基、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ)、アリール基(例えばフェニル、p-メチルフェニル)、アミノ基(例えばジメチルアミノ)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ)、ウレイド基、ウレタン基、アリールオキシ基(例えばフェニルオキシ)、スルファモイル(例えばメチルスルファモイル)、カルバモイル基(例えばカルバモイル、メチルカルバモイル)、アルキルチオ基(メチルチオ)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル)、スルフィニル基(例えばメタンスルフィニル)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、
ホスホノ基、アリールオキシカルボニル基(例えばフェニルオキシカルボニル)、アシル基(例えばアセチル、ベンゾイル)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ)、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基などが挙げられ、可能な場合にはその解離体又は塩であってもよい。上記置換基で炭素原子を有する場合、好ましくは炭素数1ないし4のものである。R1、R2、R3、R4、R5及びR6として好ましくは水素原子又はヒドロキシ基であり、水素原子がより好ましい。
【0008】
Wで表される二価の連結基は好ましくは下記一般式(W)で表すことができる。
一般式(W)
-(W1-D)m-(W2)n-
式中、W1及びW2は同じであっても異なっていてもよく、炭素数2から8の直鎖又は分岐のアルキレン基(例えばエチレン、プロピレン)、炭素数5から10のシクロアルキレン基(例えば1,2‐シクロヘキシル)、炭素数6から10のアリーレン基(例えばo‐フェニレン)、炭素数7から10のアラルキレン基(例えばo‐キシレニル)又はカルボニル基を表す。Dは-O-、-S-、-N(RW)-、二価の含窒素ヘテロ環基を表す。RWは水素原子又は-COOMa、-PO3Mb、Mc、-OHもしくは-SO3Mdで置換されてもよい炭素数1から8のアルキル基(例えばメチル)もしくは炭素数6から10のアリール基(例えばフェニル)を表す。Ma、Mb、Mc及びMdはそれぞれ水素原子又はカチオンを表す。カチオンとしては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム(例えば、アンモニウム、テトラエチルアンモニウム)やピリジニウムなどを挙げることができる。Wで表される連結基は置換基を有していてもよく、置換基としては例えばR1からR4の置換基として挙げたものが適用できる。二価の含窒素ヘテロ環基としてはヘテロ原子が窒素である5又は6員環のものが好ましく、イミダゾリル基の如きとなりあった炭素原子にてW1及びW2と連結しているものが更に好ましい。W1及びW2としては炭素数2から4のアルキレン基が好ましい。mは0から3の整数を表し、mが2又は3の時にはW1-Dは同じであっても異なっていてもよい。mは0から2が好ましく、0又は1が更に好ましく、0が特に好ましい。nは1から3の整数を表し、nが2又は3のときにはW2は同じでも異なってもよい。nは好ましくは1又は2である。Wの具体例としては例えば以下のものが挙げられる。
【0009】
【化3】

【0010】
【化4】

【0011】
M1、M2、M3及びM4で表されるカチオンとしては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)アンモニウム(例えば、アンモニウム、テトラエチルアンモニウム)やピリジニウムなどを挙げることができる。
【0012】
本発明において、上述した一般式(I)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0013】
【化5】

【0014】
【化6】

【0015】
【化7】

【0016】
【化8】

【0017】
【化9】

【0018】
【化10】

【0019】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、特開昭63-199295号公報、特開平3-173857号公報等の記載に準じて合成することが出来る。尚、これらの文献に記載されているように、本発明の一般式(I)で表される化合物には、光学異性体(〔R,R〕、〔S,S〕、〔S,R〕、〔R,S〕)が存在する。例えば、本発明の一般式(I)で表される化合物の例示化合物(I-1)には3つの光学異性体(〔R,R〕、〔S,S〕、〔S,R〕)が存在し、これらは個々に合成したり、混合物として合成することもできる。本発明にこれらの個々の光学異性体やこれらの混合物が含まれることは言うまでもない。しかしながら、これらの文献は、本発明の一般式(I)で表される化合物をキレート剤として用いた洗剤組成物に関するものであって、そのFe(III)錯塩がハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白剤等として有効であることは何ら記述されていない。また、これらの文献にはその化合物のFe(III)錯体化合物が、生分解性を有するかどうかについても記載されていないが、本発明のFe(III)錯体化合物において〔S,S〕体の如きL体のアミノ酸を原料として合成される化合物のFe(III)錯体化合物の方が他の光学異性体より好ましい。次に、本発明のFe(III)錯塩の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

【0022】本発明において特に有効な使用法であるハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白能を有する処理液は、像様露光後の発色現像処理を施された感光材料の漂白処理にて使用される。本発明において、漂白能を有する処理液(組成物)としては、漂白液(組成物)、漂白定着液(組成物)が挙げられる。該処理組成物は、キットの如き粉体であってもよいし、処理で使用されるような処理液や補充液等の水溶液であってもよい。漂白能を有する処理液で使用される第二鉄錯塩は、予め錯形成された鉄錯塩として添加して溶解してもよく、また、錯形成化合物と第二鉄塩として臭化鉄(III)又は硝酸鉄(III)とを共存させて漂白能を有する処理液中で錯塩を形成させてもよい。錯形成化合物は、第二鉄イオンとの錯形成に必要とする量よりもやや過剰にしてもよく、過剰に添加するときには通常0.01〜10%の範囲で過剰にすることが好ましい。
【0023】
本発明の漂白能を有する処理液(組成物)中の第二鉄錯塩を形成する化合物としては、好ましくはその50モル%以上が前記した一般式(I)で表される化合物であり、より好ましくは、80モル%以上を占めると良い。なお、本発明において、漂白能を有する処理液中の第二鉄錯塩を形成する化合物としては、上述した一般式(I)で表される化合物を、単独で使用しても、二種類以上併用してもよい。また、本発明の範囲内であれば、漂白能を有する処理液中の第二鉄錯塩を形成する化合物としては、前記した一般式(I)で表される化合物以外の化合物を併用しても構わない。このような化合物としては、EDTA、1,3-PDTA、ジエチレントリアミン五酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、メチルイミノ二酢酸、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、N-(2-カルボキシエチル)イミノ二酢酸、N-(2-カルボキシメチル)イミノジプロピオン酸等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0024】
本発明において、漂白能を有する処理液の漂白剤としては、上述した第二鉄錯塩に加え、無機酸化剤を漂白剤として併用してもよい。このような無機酸化剤としては過酸化水素や過硫酸塩、臭素酸塩などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。本発明の漂白能を有する処理液における第二鉄錯塩の濃度としては、0.003〜1.0モル/リットルの範囲が適当であり、0.02〜0.50モル/リットルの範囲が好ましく、より好ましくは、0.05〜0.40モル/リットルの範囲であるが、上述したような無機酸化剤を併用する場合は、第二鉄錯塩の濃度としては0.005〜0.030モル/リットルの範囲が好ましい。
【0025】
本発明による漂白能を有する処理液は漂白剤として該第二鉄錯塩を含有する他、銀の酸化を促進する為の再ハロゲン化剤として、塩化物、臭化物、ヨウ化物の如きハロゲン化物を加えるのが好ましい。また、ハロゲン化物の代わりに難溶性銀塩を形成する有機性配位子を加えてもよい。ハロゲン化物はアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩、あるいはグアニジン、アミンなどの塩として加える。具体的には臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、塩化カリウム、塩酸グアニジンなどがある。また、腐食防止剤としては、硝酸塩を用いるのが好ましく、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウムや硝酸カリウムなどが用いられる。その添加量は、0.01〜2.0モル/リットル、好ましくは0.05〜0.5モル/リットルである。本発明の漂白液中の臭化物イオン濃度は、好ましくは1.8モル/リットル以下であり、より好ましくは0.1〜1.6モル/リットルの範囲が好ましい。また、上述したような無機酸化剤を併用する場合、臭化物イオンの濃度は、好ましくは0.05〜0.10モル/リットルの範囲である。本発明の漂白定着液中にも臭化物イオンを添加してもよく、1.0モル/リットル以下の範囲が好ましい。
【0026】
なお本発明においては、臭化物イオンの対カチオンとして、アンモニウムイオンやナトリウムイオン、カリウムイオンなどを用いることが出来る。この中で、処理の迅速性を考慮するときはアンモニウムイオンを使用することが好ましく、一方で、環境保全に重点をおく場合は、実質上アンモニウムイオンを含まない方が好ましい。なお本発明において、実質上アンモニウムイオンを含まないとは、アンモニウムイオンの濃度が0.1モル/リットル以下の状態をさし、好ましくは0.08モル/リットル以下、より好ましくは0.01モル/リットル以下、特に好ましくは全く存在しない状態を表す。アンモニウムイオンの濃度を上記の領域にするには、代わりのカチオン種としてアルカリ金属イオンが好ましく、特にナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましいが、具体的には、漂白剤としてのアミノポリカルボン酸第二鉄錯塩のナトリウム塩やカリウム塩、漂白液中の再ハロゲン化剤としての臭化カリウム、臭化ナトリウムの他、腐食防止剤としての硝酸カリウム、硝酸ナトリウム等が挙げられる。また、pH調整用に使用するアルカリ剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。
【0027】
本発明の漂白液において好ましいpHは3.0〜7.0であり、特に3.5〜6.5が好ましい。一方、本発明の漂白定着液において好ましいpHは3.0〜8.0、より好ましくは4.0〜7.5である。本発明の漂白能を有する処理液を上記pHの範囲に調節するには、公知の有機酸を使用することが出来る。本発明においては漂白能を有する処理液中に、pKaが2.0〜5.5である有機酸を、0.1〜1.2モル/リットル含んでも良い。本発明におけるpKaは酸解離定数の逆数の対数値を表し、イオン強度0.1モル/リットル、25℃で求められた値を示す。本発明で用いるpKaが2.0〜5.5の有機酸は、一塩基酸であっても多塩基酸であってもよい。多塩基酸の場合、そのpKaが上記の範囲にあれば金属塩(例えばナトリウムやカリウム塩)やアンモニウム塩として使用できる。またpKaが上記の範囲にある有機酸は2種以上混合使用することもできる。本発明に使用するpKa2.0〜5.5の有機酸の好ましい具体例を挙げると、酢酸とグリコール酸の混合物;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、オキサロ酢酸、グルタル酸、アジピン酸等の脂肪族系二塩基性酸;アスパラギン酸、グルタミン酸、シスチン、アスコルビン酸等のアミノ酸系二塩基性酸;フタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基性酸;クエン酸などの多塩基性酸など各種有機酸を列挙することが出来る。本発明においては、これらの中でも酢酸及びグリコール酸の混合物が好ましい。漂白能を有する処理液の補充量は感光材料当り1m2あたり20〜1000mlに設定されるが、好ましくは、40ml〜750mlである。
【0028】
脱銀工程としては、具体的に次のものが挙げられる。
漂白定着漂白-定着漂白-水洗-定着漂白-漂白定着漂白-水洗-漂白定着漂白-漂白定着-定着定着、漂白定着液(以下、定着能を有する処理液と総称することあり)に含まれる定着剤としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸アンモニウムナトリウム、チオ硫酸カリウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウムのようなチオシアン酸塩(ロダン塩)チオ尿素、チオエーテル等を用いることが出来る。
【0029】
定着剤としてチオ硫酸塩を単独で使用する場合は定着液、漂白定着液1リットル当たり、0.3〜3モル、好ましくは0.5〜2モル程度であり、チオシアン酸塩を単独で使用する場合には1〜4モル程度である。一般に併用する場合も含めて、定着剤の量は、定着液または漂白定着液1リットル当たり、0.3〜5モル、好ましくは0.5〜3.5モルとすればよい。但し併用する場合は合計量で上記範囲とすればよい。その他、チオ硫酸塩と併用することが出来るチオシアン酸塩以外の化合物としては、チオ尿素、チオエーテル(例えば3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール)等を挙げることが出来る。
【0030】
定着液または漂白定着液には、保恒剤としての亜硫酸塩(例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム)及び、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、アセトアルデヒド化合物の重亜硫酸塩付加物(例えばアセトアルデヒド重亜硫酸ナトリウム)などを含有させることが出来る。さらに、各種の蛍光増白剤や消泡剤あるいは界面活性剤、ポリビニルピロリドン、メタノール等の有機溶剤を含有させることが出来るが、特に保恒剤としては特開昭60-283881号公報に記載のスルフィン酸化合物を用いることが望ましい。定着液のpHとしては、5〜9が好ましく、さらには6.5〜8が好ましい。定着能を有する処理液をこのような領域に調節する為、また緩衝剤としてpKaが6〜9の範囲の化合物を含有してもよい。これらの化合物としては、イミダゾール、2-メチル-イミダゾールのようなイミダゾール類が好ましい。これらの化合物は好ましくは、処理液1リットル当たり10モル以下、好ましくは0.1〜3モルである。定着液の補充量としては感光材料1m2当たり、3000ml以下が好ましく、より好ましくは、200〜1000ml以下である。さらに定着液には液の安定化の目的で各種アミノポリカルボン酸類や、有機ホスホン酸類の添加が好ましい。
【0031】
本発明において、漂白能を有する処理液またはその前浴には各種漂白促進剤を添加することが出来る。このような漂白促進剤については、例えば、米国特許第3,893,858号明細書、ドイツ特許第1,290,812号明細書、英国特許第1,138,842号明細書、特開昭53-95630号公報、リサーチ・ディスクロージャー第17129号(1978年7月号)に記載のメルカプト基またはジスルフィド基を有する化合物、特開昭50-140129号公報に記載のチアゾリジン誘導体、米国特許第3,706,561号明細書に記載のチオ尿素誘導体、特開昭58-16235号公報に記載のヨウ化物、ドイツ特許第2,748,430号明細書に記載のポリエチレンオキサイド類、特公昭45-8836号公報に記載のポリアミン化合物などを用いることが出来る。特に好ましくは英国特許第1138842号明細書に記載のようなメルカプト化合物が好ましい。
【0032】
また、本発明における漂白能を有する処理時間は、4分以内の時間に設定することが好ましい。本発明の漂白能を有する処理液は、処理に際し、エアレーションを実施することが特に好ましい。エアレーションには当業界で公知の手段が使用でき、漂白液中への空気の吹き込みやエゼクターを利用した空気の吸収などが実施できる。空気の吹き込みに際しては、微細なポアを有する散気管を通じて、液中に空気を放出させることが好ましい。このような散気管は、活性汚泥処理における曝気槽等に、広く使用されている。エアレーションに関してはイーストマン・コダック社発行のZ-121、ユージング・プロセス・C-41第3版(1982年)、BL-1〜BL-2頁に記載の事項を利用できる。本発明の漂白能を有する処理液を用いた処理に於いては、撹拌が強化されていることが好ましく、その実施には特開平3-33847号公報の第8頁、右上欄、第6行〜左下欄、第2行に記載の内容が、そのまま利用できる。その中でも特に感光材料の乳剤面に漂白液を吹き付けるジェット撹拌方式が好ましい。また、処理温度に特に制限はないが、好ましくは25〜50℃であり、特に好ましくは35〜45℃である。
【0033】
また、本発明の漂白液は、処理に使用後のオーバーフロー液を回収し、成分を添加して組成を修正した後、再利用することが出来る。このような使用方法は、通常、再生と呼ばれるが、本発明はこのような再生も好ましくできる。再生の詳細に関しては、富士写真フイルム株式会社発行の、富士フイルム・プロセシングマニュアル、フジカラーネガティブフィルムCN-16処理(1990年8月改訂)第39頁〜40頁に記載の事項が適用できる。本発明の漂白液を調整するためのキットは、液体でも粉体でも良いが、アンモニウム塩を排除した場合、ほとんどの原料が粉体で供給され、また吸湿性も少ないことから、粉体を作るのが容易になる。上記再生用のキットは、廃液量削減の観点から、余分な水を用いず、直接添加できることから、粉体が好ましい。
【0034】
漂白液の再生に関しては上述したエアレーションの他、「写真工学の基礎-銀塩写真編-」(日本写真学会編、コロナ社発行、1979年刊)等に記載の方法が利用できる。具体的には、電解再生の他、臭素酸や、亜塩素酸、臭素、臭素プレカーサー、過硫酸塩、過酸化水素、触媒を利用した過酸化水素、亜臭素酸、オゾン等による漂白液の再生方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。電解による再生においては、陰極及び陽極を同一漂白浴に入れたり、あるいは隔膜を用いて陽極槽と陰極槽を別浴にして再生したりするほか、やはり隔膜を用いて、漂白液と現像液及びまたは定着液を同時に再生処理したりすることもできる。
【0035】
本発明に使用される発色現像液は、特開平3-33847号公報の第9頁、左上欄の第6行〜第11頁右下欄の第6行に記載の内容のものが好ましい。具体的には、富士写真フイルム株式会社製のカラーネガフィルム用処理剤、CN-16、CN-16X、CN-16Q、CN-16FAの発色現像液及び発色現像補充液、或は、イーストマン・コダック社製のカラーネガフィルム用処理剤、C-41、C-41B、C-41RAの発色現像液が好ましく使用できる。
【0036】
定着または漂白定着工程において、漂白と同様に撹拌が強化されていることが好ましく、具体的には前記のジェット撹拌方式が最も好ましい。また、定着液、漂白定着液からは公知の方法で銀を除去する事で、補充量の削減や、再生使用を行うことが出来る。
【0037】
本発明において実施される水洗及び安定工程に関しては、同じく特開平3-33847号公報第11頁右下欄第9行〜第12頁右上欄第19行に記載の内容を好ましく実施することが出来る。安定液においては、普通、安定化剤としてホルムアルデヒドが使用されてきたが、作業環境安全の点から、N-メチロールピラゾール、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアルデヒド重亜硫酸付加物、ジメチロール尿素、1、4ービス(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ピペラジンの如きトリアゾール誘導体などが好ましい。中でも、ホルムアルデヒドとピラゾールの反応で得られるN-メチロールピラゾールや、1,2,4-トリアゾールの如きトリアゾールと1、4ービス(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ピペラジンの如きその誘導体の併用(特開平4-359249号)が、画像安定性が高く、且つホルムアルデヒド蒸気圧が少なく好ましい。
【0038】
本発明は、カラーネガフィルム、カラー反転フィルム、カラーペーパー、カラー反転ペーパー、映画用カラーネガフィルム、映画用カラーポジフィルム等、多くのカラー写真感光材料の漂白処理方法として特に有効に利用できる。例えば、特開平3-33847号公報第12頁右上欄、第19行〜第17頁右上欄、第17行や特開平4-359249号に記載された内容の感光材料が好ましい。特に、乾燥膜厚が20μm以下の感光材料は漂白が良好であることから好ましく、特に18μm以下の感光材料が好ましい。また、膨潤速度が速いことも好ましく、具体的には上記特開平3-33847号公報第14頁左上欄第7行〜14行に記載されたものが特に好ましい。
【0039】
本発明においては、漂白能を有する処理液に上記一般式(I)で示される化合物のFe(III)錯塩を含有するが、それ以外に本発明の一般式(I)で示される化合物のMn(III)、Co(III)、Rh(II)、Rh(III)、Au(II)、Au(III)又はCe(IV)錯塩を含有してもよい。また、Fe(III)錯塩を含めたこれら重金属錯塩は、漂白処理組成物のほか補力液、減力液、調色液といった黒白フィルム等の後処理の処理組成物としても使用できる。
【0040】
【実施例】以下に実施例をもって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1下塗りを施した三酢酸セルロースフィルム支持体上に、下記に示すような組成の各層を重層塗布し、多層カラー感光材料である試料101を作製した。(感光層組成)各層に使用する素材の主なものは下記のように分類されている;ExC:シアンカプラー,UV:紫外線吸収剤,ExM:マゼンタカプラー,HBS:高沸点有機溶剤,ExY:イエローカプラー,H:ゼラチン硬化剤,ExS:増感色素。各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については、銀換算の塗布量を示す。ただし増感色素については、同一層のハロゲン化銀1モルに対する塗布量をモル単位で示す。
【0041】
(試料101)
第1層(ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.18
ゼラチン 1.40
ExM-1 0.18
ExF-1 2.0×10-3
HBS-1 0.20
【0042】
第2層(中間層)
乳剤G 銀 0.065
2,5-ジ-t-ペンタデシルハイドロキノン 0.18
ExC-2 0.020
UV-1 0.060
UV-2 0.080
UV-3 0.10
HBS-1 0.10
HBS-2 0.020
ゼラチン 1.04
【0043】
第3層(低感度赤感乳剤層)
乳剤A 銀 0.25
乳剤B 銀 0.25
ExS-1 6.9×10-5
ExS-2 1.8×10-5
ExS-3 3.1×10-4
ExC-1 0.17
ExC-3 0.030
ExC-4 0.10
ExC-5 0.020
ExC-7 0.0050
ExC-8 0.010
Cpd-2 0.025
HBS-1 0.10
ゼラチン 0.87
【0044】
第4層(中感度赤感乳剤層)
乳剤D 銀 0.70
ExS-1 3.5×10-4
ExS-2 1.6×10-5
ExS-3 5.1×10-4
ExC-1 0.13
ExC-2 0.060
ExC-3 0.0070
ExC-4 0.090
ExC-5 0.025
ExC-7 0.0010
ExC-8 0.0070
Cpd-2 0.023
HBS-1 0.10
ゼラチン 0.75
【0045】第5層(高感度赤感乳剤層)
乳剤E 銀 1.40
ExS-1 2.4×10-4
ExS-2 1.0×10-4
ExS-3 3.4×10-4
ExC-1 0.12
ExC-3 0.045
ExC-6 0.020
ExC-8 0.025
Cpd-2 0.050
HBS-1 0.22
HBS-2 0.10
ゼラチン 1.20
【0046】
第6層(中間層)
Cpd-1 0.10
HBS-1 0.50
ゼラチン 1.10
【0047】
第7層(低感度緑感乳剤層)
乳剤C 銀 0.35
ExS-4 3.0×10-5
ExS-5 2.1×10-4
ExS-6 8.0×10-4
ExM-1 0.010
ExM-2 0.33
ExM-3 0.086
ExY-1 0.015
HBS-1 0.30
HBS-3 0.010
ゼラチン 0.73
【0048】
第8層(中感度緑感乳剤層)
乳剤D 銀 0.80
ExS-4 3.2×10-5
ExS-5 2.2×10-4
ExS-6 8.4×10-4
ExM-2 0.13
ExM-3 0.030
ExY-1 0.018
HBS-1 0.16
HBS-3 8.0×10-3
ゼラチン 0.90
【0049】
第9層(高感度緑感乳剤層)
乳剤E 銀 1.25
ExS-4 3.7×10-5
ExS-5 8.1×10-5
ExS-6 3.2×10-4
ExC-1 0.010
ExM-1 0.030
ExM-4 0.040
ExM-5 0.019
Cpd-3 0.040
HBS-1 0.25
HBS-2 0.10
ゼラチン 1.44
【0050】
第10層(イエローフィルター層)
黄色コロイド銀 銀 0.030
Cpd-1 0.16
HBS-1 0.60
ゼラチン 0.60
【0051】
第11層(低感度青感乳剤層)
乳剤C 銀 0.18
ExS-7 8.6×10-4
ExY-1 0.020
ExY-2 0.22
ExY-3 0.50
ExY-4 0.020
HBS-1 0.28
ゼラチン 1.10
【0052】
第12層(中感度青感乳剤層)
乳剤D 銀 0.40
ExS-7 7.4×10-4
ExC-7 7.0×10-3
ExY-2 0.050
ExY-3 0.10
HBS-1 0.050
ゼラチン 0.78
【0053】
第13層(高感度青感乳剤層)
乳剤F 銀 1.00
ExS-7 4.0×10-4
ExY-2 0.10
ExY-3 0.10
HBS-1 0.070
ゼラチン 0.86
【0054】
第14層(第1保護層)
乳剤G 銀 0.20
UV-4 0.11
UV-5 0.17
HBS-1 5.0×10-2
ゼラチン 1.00
【0055】
第15層(第2保護層)
H-1 0.40
B-1(直径1.7μm) 5.0×10-2
B-2(直径1.7μm) 0.10
B-3 0.10
S-1 0.20
ゼラチン 1.20
【0056】
更に、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・防菌性、帯電防止性及び塗布性をよくするためにW-1ないしW-3、B-4ないしB-6、F-1ないしF-17及び、鉄塩、鉛塩、金塩、白金塩、イリジウム塩、ロジウム塩が含有されている。
【0057】
【表1】

【0058】
表1において、(1)乳剤A〜Fは特開平2-191938号の実施例に従い、二酸化チオ尿素とチオスルフォン酸を用いて粒子調製時に還元増感されている。
(2)乳剤A〜Fは特開平3-237450号の実施例に従い、各感光層に記載の分光増感色素とチオシアン酸ナトリウムの存在下に金増感、硫黄増感とセレン増感が施されている。
(3)平板状粒子の調製には特開平1-158426号の実施例に従い、低分子量ゼラチンを使用している。
(4)平板状粒子および粒子構造を有する正常晶粒子には特開平3-237450号に記載されているような転位線が高圧電子顕微鏡を用いて観察されている。
【0059】
【化13】

【0060】
【化14】

【0061】
【化15】

【0062】
【化16】

【0063】
【化17】

【0064】
【化18】

【0065】
【化19】

【0066】
【化20】

【0067】
【化21】

【0068】
【化22】

【0069】
【化23】

【0070】
【化24】

【0071】
【化25】

【0072】
【化26】

【0073】
【化27】

【0074】
以上の如くのカラー写真感光材料を露光したのち、自動現像機を用い以下に記載の方法で、(現像液の累積補充量がそのタンク容量の3倍になるまで)処理した。

【0075】
次に、処理液の組成を記す。

【0076】

【0077】

【0078】
(安定液) タンク液/補充液共通(g)
p-トルエンスルフィン酸ナトリウム 0.03
ポリオキシエチレン-p-モノノニルフェニルエーテル(平均重合度10)
0.2
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.05
1,2,4-トリアゾール 1.3 1,4-ビス(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ピペラジン
0.75
水を加えて 1.0リットル
pH 8.5
【0079】
上記方法で処理された感光材料について、下記に示す方法により、残留銀量、漂白かぶり、ステインの経時変化を求めた。
残留銀量:蛍光X線分析法により、感光材料中のDmax部に残存している銀量を測定した。
漂白かぶり:上記の方法で処理された感光材料について濃度測定を行ない、特性曲線から、緑色光(G光)で測定したDminを各々読み取った。また、漂白液を下記の基準漂白液処方にかえ、漂白時間を6分30秒にする他は、上記と同様の処理を行なった試料に対して同様にDminを求め、これを基準Dminとした。そして、マゼンタ色素の漂白かぶりを下記式のように定義し、評価した。
漂白かぶり=各Dmin-基準Dmin
(基準漂白液)
水 700ml
エチレンジアミン四酢酸 0.28モル
硝酸鉄(III)9水和物 0.25モル
臭化アンモニウム 1.4モル
硝酸アンモニウム 0.2モル
水を加えて 1000ml
pH(アンモニア水、硝酸で調整) 6.0
【0080】
ステインの経時変化:上記方法で処理された感光材料について濃度測定を行ない、特性曲線から緑色光(G光)で測定したDminをそれぞれ読み取った。次いで、測定後の試料を下記条件で保存し、経時後のDminを同様に測定した。そして下記のようにしてマゼンタ色素のステインの経時変化を求めた。
保存条件:60℃、70%、4週間ステインの経時変化(ΔD)=(保存後のDmin)-(保存前のDmin)
上記方法で得られた結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2の結果より本発明の第二鉄錯塩は比較化合物に比べ残留銀量を低減できると同時に漂白カブリや処理後の色画像保存時のステインについても優れた効果を示すことがわかる。
【0083】
実施例2本願実施例1と同様の感光材料を、同様に加工、露光したのち、自動現像機を用い以下に記載の方法で、(現像液の累積補充量がそのタンク容量の3倍になるまで)処理した。


【0084】
次に、処理液の組成を記す。

【0085】
(漂白剤) タンク液、補充液共通(単位g)
表3に記載の化合物の鉄(III)錯塩 0.30モル
表3に記載の化合物 27ミリモル
臭化カリウム 100.0
硝酸カリウム 10.0
漂白促進剤 0.005モル
(CH3)2N-CH2-CH2-S-S-CH2-CH2-N(CH3)2・2HCl
水を加えて 1.0リットル
pH(KOHで調整) 6.3
【0086】

【0087】
(水洗水) タンク液、補充液共通
水道水をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライトIR-120B)と、OH型アニオン交換樹脂(同アンバーライトIR-400)を充填した混床式カラムに通水してカルシウム及びマグネシウムイオン濃度を3mg/リットル以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌール酸ナトリウム20mg/リットルと硫酸ナトリウム0.15g/リットルを添加した。この液のpHは6.5〜7.5の範囲にあった。
【0088】
(安定液) タンク液、補充液共通(g)
p-トルエンスルフィン酸ナトリウム 0.03
p-ノニルフェニルーボリグリシドール(平均重合度7) 0.2
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.05
1,2,4-トリアゾール 1.31、4-ビス(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ピペラジン
0.75
水を加えて 1.0リットル
pH 8.5
【0089】
上記方法で処理された感光材料について、本願実施例1と同様に、残留銀量、漂白かぶり、ステインの経時変化を求めた。結果を表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
表3の結果より本願実施例1と同様に本発明の第二鉄錯塩は比較化合物に比べ残留銀量を低減できると同時に漂白カブリや処理後の色画像保存時のステインについても優れた効果を示すことがわかる。
【0092】
実施例3本願実施例1と同様の感光材料を35mm巾に裁断し、カメラで撮影したものを1日1m2ずつ15日間にわたり下記の処理を行なった。尚、各処理は富士写真フイルム社製自動現像機FP-560Bを用いて以下により行なった。処理工程及び処理液組成を以下に示す。
【0093】


安定液は(2)から(1)への向流方式であり、水洗水のオーバーフロー液は全て定着浴へ導入した。漂白定着液への補充は、自動現像機の漂白槽の上部並びに定着槽の上部に切りかきを設け、漂白槽、定着槽への補充液の供給により発生するオーバーフロー液の全てが漂白定着浴に流入されるようにした。尚、発色現像液の漂白工程への持ち込み量、漂白液の漂白定着工程への持ち込み量、漂白定着液の定着工程への持ち込み量及び定着液の水洗工程への持ち込み量は、感光材料1m2当たりそれぞれ65ml、50ml、50ml及び50mlであった。また、クロスオーバーの時間はいずれも6秒であり、この時間は前工程の処理時間に包含される。
【0094】
以下に処理液の組成を示す。


【0095】

【0096】
(漂白定着タンク液)
上記漂白タンク液と下記定着タンク液の15対85(容量比)混合液。(pH7.0)
【0097】

【0098】
(水洗水)本願実施例2記載の水洗水と同じ組成のものを使用した。
【0099】
(安定液)本願実施例2記載の安定液と同じ組成のものを使用した。
【0100】
上記方法で処理された感光材料について、本願実施例1と同様に、残留銀量、漂白かぶり、ステインの経時変化を求めた。結果を表4に示す。
【0101】
【表4】

【0102】
表4の結果より本願実施例1と同様に本発明の金属キレート化合物は比較化合物に比べ残留銀量を低減できると同時に漂白カブリや処理後の色画像保存時のステインについても優れた効果を示すことがわかる。
【0103】
実施例4ポリエチレンで両面ラミネートした紙支持体表面にコロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設け、更に種々の写真構成層を塗布して以下に示す層構成の多層カラー印画紙(試料001)を作製した。塗布液は以下の様にして調製した。
【0104】
第一層塗布液調製イエローカプラー(ExY)158.0g、色像安定剤(Cpd-1)15.0g、色像安定剤(Cpd-2)7.5g、色像安定剤(Cpd-3)16.0gを、溶媒(Solv-1)25g、溶媒(Solv-2)25g及び酢酸エチル180ccに溶解し、この溶液を10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム60cc及びクエン酸10gを含む10%ゼラチン水溶液1000gに乳化分散させて乳化分散物Aを調製した。一方、塩臭化銀乳剤A(立方体、平均粒子サイズ0.88μmの大サイズ乳剤Aと0.70μmの小サイズ乳剤Aとの3:7混合物(銀モル比)。粒子サイズ分布の変動係数は、それぞれ0.08と0.10、各サイズ乳剤とも臭化銀0.3モル%を粒子表面の一部に局在含有)が調製された。この乳剤には下記に示す青感性増感色素A、Bが銀1モル当たり大サイズ乳剤Aに対しては、それぞれ2.0×10-4モル、また小サイズ乳剤Aに対しては、それぞれ2.5×10-4モル添加されている。また、この乳剤の化学熟成は硫黄増感剤と金増感剤が添加して行なわれた。前記の乳化分散物Aとこの塩臭化銀乳剤Aとを混合溶解し、後述の組成となるように第一層塗布液を調製した。尚、乳剤塗布量は銀量換算塗布量を示している。
【0105】
第二層から第七層の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、1-オキシ-3,5-ジクロロ-s-トリアジンナトリウム塩を用いた。また、各層にCpd-14とCpd-15をそれぞれ全量が25.0mg/m2と50mg/m2となるように添加した。各感光性乳剤層の塩臭化銀乳剤には下記の分光増感色素をそれぞれ用いた。
〔青感性乳剤層〕
【0106】
【化28】

【0107】
(ハロゲン化銀1モル当たり、大サイズ乳剤に対しては各々2.0×10-4モル、また小サイズ乳剤に対しては各々2.5×10-4モル)
〔緑感性乳剤層〕
【0108】
【化29】

【0109】(ハロゲン化銀1モル当たり、大サイズ乳剤に対しては4.0×10-4モル、小サイズ乳剤に対しては5.6×10-4モル)
【0110】
【化30】

【0111】
(ハロゲン化銀1モル当たり、大サイズ乳剤に対しては7.0×10-5モル、また小サイズ乳剤に対しては、1.0×10-4モル)
〔赤感性乳剤層〕
【0112】
【化31】

【0113】
(ハロゲン化銀1モル当たり、大サイズ乳剤に対しては0.9×10-4モル、また小サイズ乳剤に対しては、1.1×10-4モル)更に、赤感性乳剤層には下記の化合物Fをハロゲン化銀1モル当たり2.6×10-3モル添加した。
【0114】
【化32】

【0115】
また、青感性乳剤層、緑感性乳剤層、赤感性乳剤層に対し、1-(5-メチルウレイドフェニル)-5-メルカプトテトラゾールをそれぞれハロゲン化銀1モル当たり8.5×10-5モル、7.7×10-4モル、2.5×10-4モル添加した。また、青感性乳剤層と緑感性乳剤層に対し、4-ヒドロキシ-6-メチル-1,3,3a,7-テトラザインデンをそれぞれハロゲン化銀1モル当たり、1×10-4モルと2×10-4モル添加した。また、イラジエーション防止のために、乳剤層に下記の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0116】
【化33】

【0117】
(層構成)以下に各層の組成を示す。数字は塗布量(g/m2)を表す。ハロゲン化銀乳剤は銀換算塗布量を表す。
支持体ポリエチレンラミネート紙〔第一層側のポリエチレンに白色顔料(TiO2)と青味染料(群青)を含む〕
【0118】
第一層(青感性乳剤層)
前記の塩臭化銀乳剤A 0.27
ゼラチン 1.36
イエローカプラー(ExY) 0.79
色像安定剤(Cpd-1) 0.08
色像安定剤(Cpd-2) 0.04
色像安定剤(Cpd-3) 0.08
溶媒(Solv-1) 0.13
溶媒(Solv-2) 0.13
第二層(混色防止層)
ゼラチン 1.00
混色防止剤(Cpd-4) 0.06
溶媒(Solv-7) 0.03
溶媒(Solv-2) 0.25
溶媒(Solv-3) 0.25
【0119】
第三層(緑感性乳剤層)
塩臭化銀乳剤(立方体、平均粒子サイズ0.55μmの大サイズ乳剤Bと、0.39μmの小サイズ乳剤Bとの1:3混合物(Agモル比)。粒子サイズ分布の変動係数はそれぞれ0.10と0.08、各サイズ乳剤ともAgBr0.8モル%を粒子表面の一部に局在含有させた)
0.13
ゼラチン 1.45
マゼンタカプラー(ExM) 0.16
色像安定剤(Cpd-5) 0.15
色像安定剤(Cpd-2) 0.03
色像安定剤(Cpd-6) 0.01
色像安定剤(Cpd-7) 0.01
色像安定剤(Cpd-8) 0.08
溶媒(Solv-3) 0.50
溶媒(Solv-4) 0.15
溶媒(Solv-5) 0.15
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.70
混色防止剤(Cpd-4) 0.04
溶媒(Solv-7) 0.02
溶媒(Solv-2) 0.18
溶媒(Solv-3) 0.18
【0120】
第五層(赤感性乳剤層)
塩臭化銀乳剤(立方体、平均粒子サイズ0.50μmの大サイズ乳剤Cと、0.41μmの小サイズ乳剤Cとの1:3混合物(Agモル比)。粒子サイズ分布の変動係数は、0.09と0.11、各サイズ乳剤ともAgBr0.8モル%を粒子表面の一部に局在含有させた)
0.20
ゼラチン 0.85
シアンカプラー(ExC) 0.33
紫外線吸収剤(UV-2) 0.18
色像安定剤(Cpd-1) 0.30
色像安定剤(Cpd-9) 0.01
色像安定剤(Cpd-10) 0.01
色像安定剤(Cpd-11) 0.01
溶媒(Solv-6) 0.22
色像安定剤(Cpd-8) 0.01
色像安定剤(Cpd-6) 0.01
溶媒(Solv-1) 0.01
【0121】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.55
紫外線吸収剤(UV-1) 0.38
色像安定剤(Cpd-12) 0.15
色像安定剤(Cpd-5) 0.02
第七層(保護層)
ゼラチン 1.13
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体(変性度17%) 0.05
流動パラフィン 0.02
色像安定剤(Cpd-13) 0.01
【0122】
【化34】

【0123】
【化35】

【0124】
【化36】

【0125】
【化37】

【0126】
【化38】

【0127】
【化39】

【0128】
【化40】

【0129】
上記感光材料を像様露光後、ペーパー処理機を用いて、下記処理工程にてカラー現像のタンク容量の2倍補充するまで、連続処理(ランニングテスト)を行った。

*感光材料1m2当たりの補充量
**上記60mlに加えて、リンス(1)より感光材料1m2当たり120mlを流し込んだ。(リンスは(3)から(1)への3タンク向流方式とした)
【0130】
各処理液の処方は以下の通りである。

【0131】


【0132】
[リンス液] (タンク液と補充液は同じ)
塩化イソシアヌール酸ナトリウム 0.02g
脱イオン水(導電率5μs/cm以下) 1リットル
pH 6.5
【0133】
上記方法で処理された感光材料は、未露光部の黄色の最小濃度をマクベス濃度にて測定し、漂白カブリを評価した。また、最大濃度部(10CMS)の残留銀量を蛍光X線にて測定し、脱銀性を評価した。結果を表5に示す。
【0134】
【表5】

【0135】
表5から判るように、本発明の態様においては、脱銀性に優れているばかりでなく、漂白カブリも比較化合物に比べて著しく低減されていることが判る。
【0136】
実施例5
EDTAのFe(III)錯塩と本発明例示化合物(I-1)の〔S,S〕体のFe(III)錯塩に対して、OECD化学品テストガイドラインの302B修正Zahn-Wellens試験に従ってそれぞれの生分解性を評価した。その結果、EDTAのFe(III)錯塩が殆ど分解しないのに対して、本発明例示化合物(I-1)のFe(III)錯塩は70%分解した。このことから、地球環境保全の点で本発明の処理組成物が好ましいことが判る。
【0137】
【発明の効果】
本発明により、脱銀性、写真性および処理後の画像保存性に優れ、環境汚染付加の少ない処理剤を用いた処理が出来るようになった。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-07-01 
出願番号 特願平4-129769
審決分類 P 1 651・ 16- YA (G03C)
最終処分 維持  
特許庁審判長 嶋矢 督
特許庁審判官 阿久津 弘
伏見 隆夫
登録日 2001-06-15 
登録番号 特許第3200465号(P3200465)
権利者 富士写真フイルム株式会社
発明の名称 ハロゲン化銀写真感光材料用の処理組成物及びそれを用いた処理方法  
代理人 本多 弘徳  
代理人 小栗 昌平  
代理人 市川 利光  
代理人 栗宇 百合子  
代理人 市川 利光  
代理人 高松 猛  
代理人 栗宇 百合子  
代理人 高松 猛  
代理人 小栗 昌平  
代理人 本多 弘徳  

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