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審決分類 審判 全部申し立て 出願日、優先日、請求日  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1084763
異議申立番号 異議2003-70460  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-05-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-18 
確定日 2003-07-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3315908号「半導体発光装置とその製造方法」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3315908号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3315908号の請求項1ないし請求項6に係る発明についての出願は、平成4年12月17日に出願された特願平4-336901号の出願の一部を分割し、特願平9-300089号として特許出願されたものであって、平成14年6月7日にその特許権の設定の登録がなされ、その後、森下省吾により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成15年6月23日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否について
2-1.訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1〜6のうち、請求項1〜3及び5を削除し、請求項4を新たな請求項1とし、請求項6を「【請求項2】前記外囲器成型治具は、キャビティの間隔の半分ずつずらした複数列のキャビティを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置の製造方法。」に訂正する。

訂正事項b
特許明細書における、[発明の名称]及び段落番号[0001]における「半導体発光装置とその製造方法」を、「半導体発光装置の製造方法」と訂正する。同様に、段落番号[0008]における「半導体発光装置及びその製造方法」を、「半導体発光装置の製造方法」と訂正する。

訂正事項c
特許明細書における、段落番号[0009]の記載を、
「【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置の製造方法においては、並置された一対のリードが複数組一直線上に配置されたリードフレーム上の、前記一対のリードの一方の一端部に半導体発光素子をマウントする工程と、前記一対のリードの他方の一端部と前記半導体発光素子とをボンディングワイヤで接続する工程と、前記リードフレームの長手方向に沿って一列に配置された複数のキャビティを有する外囲器成型治具の前記複数のキャビティのそれぞれに充填された光透過性樹脂に前記半導体発光素子、前記ボンディングワイア、及び前記一対のリードの前記一端部のそれぞれが浸された状態とする工程と、前記光透過性樹脂のそれぞれを硬化させる工程と、前記光透過性樹脂のそれぞれを前記キャビティから取り出し前記一対のリードを前記リードフレームから分離する工程と、を備え、前記複数のキャビティのそれぞれは、前記一対のリードの長手方向に対して垂直な横断面の形状が楕円形であり、その長径が前記リードフレームの前記長手方向に対して略垂直な方向に形成され、且つ前記リードフレームの前記長手方向に対して平行な縦断面が略U字形であることを特徴とする。」
と訂正する。

訂正事項d
特許明細書における、段落番号[0010]の記載を、
「ここで、前記外囲器成型治具は、キャビティの間隔の半分ずつずらした複数列のキャビティを有するものとすることができる。」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲に記載された請求項1〜3及び請求項5を削除し、請求項4を新たな請求項1とし、請求項6を新たな請求項2とすると共に引用する請求項を実体に合わせて訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明に相当する。また、この訂正は、願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内での訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡大し又は変更するものではない。
また、上記訂正事項b〜dは、上記訂正事項aにより本件発明の対象を製造方法に限定したことに明細書の記載を整合させる訂正であるから、明りようでない記載の釈明に相当し、また、これら訂正事項b〜dは、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2-3.訂正の適否に対するむすび
以上のとおり、本件訂正は、平成11年改正前の特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立の理由の概要
特許異議申立人森下省吾は、概ね下記の理由により、本件発明の特許を取り消すべき旨主張している。
(1)甲第1号証として原出願(特願平4-336901号)の特許第2809951号公報及び甲第4号証として原出願の公開公報(特開平6-188459号公報)を提出し、本件特許は、原出願の適法な分割出願ではないから、本件特許の出願日は現実の出願日である平成9年10月31日であって、本件の請求項1,3及び4〜6に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であり、請求項2に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)請求項1〜3及び請求項4〜6に係る発明は、この出願前公知の刊行物である甲第5号証ないし甲第7号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)請求項1〜3における「光取り出し面」、及び請求項5における「縦断面が楕円状」は、発明の詳細な説明に記載されていないから、特許法第36条第5項1号の規定を満たすものではない。

4.当審の判断
(1)分割要件違反について
異議申立人は、下記(イ)〜(ハ)の理由により、本件特許出願は特許法第44条第1項に規定する要件を満足していないので、出願日は遡及せず、本件特許出願の出願日は、平成9年10月31日であり、したがって、本件発明は、甲第4号証に記載された発明であるか、これに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
(イ)本件の請求項1において「前記外囲器の前記長軸に対して平行な縦断面における前記光取り出し面の形状が楕円状である」点が付加されたが、この点は原出願に完全に包含されているので、本件の請求項1に係る発明は、原出願の特許掲載公報(甲第1号証)の請求項1に係る発明と同一である。
(ロ)本件の請求項4に係る発明は、原出願の請求項2に係る発明と同一である。
(ハ)本件の請求項2における「外囲器の第1及び第2のリードの長手方向に対して垂直な横断面の形状が円形である」ことなどは、原出願の願書に最初に添付した明細書(甲第4号証)に記載されていない。

しかしながら、訂正請求により、請求項1及び2は削除された。
また、請求項4に係る発明は、原出願の請求項2に係る発明と比べて、「前記リードフレームの長手方向に沿って一列に配置された複数のキャビティを有する外囲器成型治具の前記複数のキャビティのそれぞれに充填された光透過性樹脂に前記半導体発光素子、前記ボンディングワイア、及び前記一対のリードの前記一端部のそれぞれが浸された状態とする工程と、前記光透過性樹脂のそれぞれを硬化させる工程と、前記光透過性樹脂のそれぞれを前記キャビティから取り出し前記一対のリードを前記リードフレームから分離する工程と、を備え、前記複数のキャビティのそれぞれは、前記リードフレームの前記長手方向に対して平行な縦断面が略U字形である」構成が限定付加されおり、この点が周知の事項とも認められないから両者が同一であるということはできない。
以上のとおり、訂正請求により請求項1,2が削除されたので、上記(イ)及び(ハ)の主張は理由のないものとなり、(ロ)の主張は、もともと採用できないものであるから、本件出願は適法に分割されたものであり、その出願日は、原出願の出願日である平成4年12月17日と認める。
したがって、出願日が現実の出願日に繰り下がることを前提とし、甲第4号証に記載された発明であるか、または甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとする、異議申立人の主張は採用できない。

(2)特許法第29条違反について
(2-1)本件発明
本件発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】並置された一対のリードが複数組一直線上に配置されたリードフレーム上の、前記一対のリードの一方の一端部に半導体発光素子をマウントする工程と、
前記一対のリードの他方の一端部と前記半導体発光素子とをボンディングワイヤで接続する工程と、
前記リードフレームの長手方向に沿って一列に配置された複数のキャビティを有する外囲器成型治具の前記複数のキャビティのそれぞれに充填された光透過性樹脂に前記半導体発光素子、前記ボンディングワイア、及び前記一対のリードの前記一端部のそれぞれが浸された状態とする工程と、
前記光透過性樹脂のそれぞれを硬化させる工程と、
前記光透過性樹脂のそれぞれを前記キャビティから取り出し前記一対のリードを前記リードフレームから分離する工程と、
を備え、
前記複数のキャビティのそれぞれは、前記一対のリードの長手方向に対して垂直な横断面の形状が楕円形であり、その長径が前記リードフレームの前記長手方向に対して略垂直な方向に形成され、且つ前記リードフレームの前記長手方向に対して平行な縦断面が略U字形であることを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項2】前記外囲器成型治具は、キャビティの間隔の半分ずつずらした複数列のキャビティを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置の製造方法。」

(2-2)甲各号証記載の発明
申立人が提出したこの出願前公知の刊行物である甲第5号証(特開昭55-70079号公報)には、下記の記載が認められる。
「この発光ダイオードは、第1図で示すように、所定間隔をもって並設された2本のリード1および2の一方のリード1の頂面に発光ダイオードの基板3が、接着され、この発光ダイオード基板3の上面側の電極と他方のリード2の頂面の間が、金属細線4で接続された組立構体を、透光性の樹脂5に封入した構造となっている。」(1頁左下欄17行〜右下欄3行)
「リードフレームは、投入装置を用いて組立装置へ自動的に送り込まれて順次移送され、この移送過程でリード1の頂部へ発光ダイオード基板3の接着ならびに接着された、発光ダイオード基板3の上面側電極への金属細線4によるリード2の接続を行ったのち、光拡散物質の添加された透光性樹脂5によって、凸字状あるいは直方体状に樹脂封止がなされる。・・・そして、最後に共通接続部6の切り離しと、橋絡細条8の切断除去をなすことによって個々に独立した発光ダイオードが得られる。」(1頁右下欄15行〜2頁左上欄7行)
「第3図は本発明の発光ダイオードを上面から見た図であり、図示するように、リードフレームの面、すなわち、並設されたリードの配列方向に対し、封止樹脂外殻の長手方向が直交している。」(2頁左下欄1〜4行)

同じく、甲第6号証(特開平2-29686号公報)には、
「発光ダイオードの形状を円の上下部を削除した形状で説明したが、円の上部、下部のいずれか一方を削除しても良く、もしくは横長の楕円形、長方形などの形状を変えても良いことは言うまでもない。」(4頁右下欄3〜7行)と記載され、第1図(a)〜(c)には、一対の電極が一直線状に配置された発光ダイオードにおいて、該発光ダイオードの形状は、前記一対の電極が並ぶ方向に垂直な横断面の形状が円の上下部を削除した形状であり、その長径が前記一対の電極が並ぶ方向に対してほぼ平行な方向に形成され、前記一対の電極が並ぶ方向に対して平行な縦断面が略U字型であるものが図示されている。

同じく、甲第7号証(実開平2-52463号公報)には、発光ダイオードの樹脂モールドが平面視楕円形の柱状体をなし、その前面を、中央部が半円柱状もしくは半樽状の曲面で、両端部が球面状曲面からなる凸曲面とし、一対のリードが長径方向に並んで配置されたものが図面と共に記載されている。

(2-3)対比・判断
[請求項1について]
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と上記甲第5号証記載のものとを対比するに、甲第5号証には、実質上、本件発明1の「並置された一対のリードが複数組一直線上に配置されたリードフレーム上の、前記一対のリードの一方の一端部に半導体発光素子をマウントする工程と、前記一対のリードの他方の一端部と前記半導体発光素子とをボンディングワイヤで接続する工程と、光透過性樹脂を硬化させる工程と、前記光透過性樹脂のそれぞれを前記キャビティから取り出し前記一対のリードを前記リードフレームから分離する工程とを備え、キャビティの長径が前記リードフレームの前記長手方向に対して略垂直な方向に形成されている半導体発光装置の製造方法。」に相当する発明が記載されている。
しかし、甲第5号証には、樹脂封止のための、特定の形状をした外囲器成形治具を用いる具体的な製造方法が記載されておらず、本件発明1の「前記リードフレームの長手方向に沿って一列に配置された複数のキャビティを有する外囲器成型治具の前記複数のキャビティのそれぞれに充填された光透過性樹脂に前記半導体発光素子、前記ボンディングワイア、及び前記一対のリードの前記一端部のそれぞれが浸された状態とする工程と、前記複数のキャビティのそれぞれは、前記一対のリードの長手方向に対して垂直な横断面の形状が楕円形であり、且つ前記リードフレームの前記長手方向に対して平行な縦断面が略U字形である」(以下、「相違点」という。)構成が備わっていない。
上記相違点について検討するに、甲第6号証及び甲第7号証には、本件発明1の上記相違点のような製造方法については一切記載がないばかりでなく、樹脂封止部の形状については、リードの長手方向に対して垂直な横断面の形状が楕円形あるいはそれに類似する形状のものが記載されているものの、リードフレームの方向と樹脂封止部の長径との関係は本件発明1とは異なるものである。
よって、甲第5号証に、甲第6号証及び甲第7号証に記載されたものを適用しても、本件発明1の上記相違点の構成を得ることはできない。したがって、本件発明1は、甲第5号証〜甲第7号証に記載された発明であるとも、それらに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともすることができない。

[請求項2について]
請求項2係る発明(以下、「本件発明2」という。)は、本件発明1の外囲器成形治具について「キャビティの間隔の半分ずつずらした複数列のキャビティを有する」ことをさらに限定するものであるから、本件発明1に対すると同様の理由により、甲第5号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)特許法第36条第5項第1号違反について
異議申立人は、請求項1〜3における「光取り出し面」、及び請求項5における「縦断面が楕円状」は、発明の詳細な説明に記載されていないから、特許法第36条第5項1号の規定を満たすものではない旨主張する。
しかし、訂正請求により、訂正前の請求項1〜3及び5は削除されたので、上記主張は理由のないものとなった。

5.むすび
以上のとおり、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件の請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体発光装置の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並置された一対のリ-ドが複数組一直線上に配置されたリ-ドフレ-ム上の、前記一対のリードの一方の一端部に半導体発光素子をマウントする工程と、
前記一対のリ-ドの他方の一端部と前記半導体発光素子とをボンディングワイヤで接続する工程と、
前記リードフレームの長手方向に沿って一列に配置された複数のキャビティを有する外囲器成型治具の前記複数のキャビティのそれぞれに充填された光透過性樹脂に前記半導体発光素子、前記ボンディングワイア、及び前記一対のリードの前記一端部のそれぞれが浸された状態とする工程と、
前記光透過性樹脂のそれぞれを硬化させる工程と、
前記光透過性樹脂のそれぞれを前記キャビティから取り出し前記一対のリードを前記リードフレームから分離する工程と、
を備え、
前記複数のキャビティのそれぞれは、前記一対のリードの長手方向に対して垂直な横断面の形状が楕円形であり、その長径が前記リードフレームの前記長手方向に対して略垂直な方向に形成され、且つ前記リードフレームの前記長手方向に対して平行な縦断面が略U字形であることを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記外囲器成型治具は、キャビティの間隔の半分ずつずらした複数列のキャビティを有することを特徴とする請求項1記載の半導体発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体発光装置の製造方法に係り、特に半導体発光装置の外囲器の形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の半導体発光装置は次のように製造されている。図9、10、11は、その製造工程を示す図であって、図9はリードフレームに半導体発光素子をマウント・ボンディングした状態を示す図、図10(a)は外囲器成型治具の上面図、図10(b)は同図(a)のF-F´線に沿う縦断面図、図11(a)は外囲器成型後の状態を示す上面図、図11(b)は同図(a)のG-G´線に沿う縦断面図、図12(a)は完成された半導体発光装置の上面図、図12(b)は同図(a)のH-H´線に沿う縦断面図である。図9において8はリードフレームで2本のリード9、9´からなるリード群が等間隔をおいてリードフレームの長手方向に沿って形成されている。
【0003】
図10において、12は外囲器成型治具で、横断面が円形でかつ、縦断面が略U字形のキャビティ13が、リードフレームのリード群と同じ間隔を置いて一直線上に整列配置されている。
【0004】
まず、図9に示すようにリードフレーム8の各リード群における一方のリード9の上端部に半導体発光素子10をマウントし、かつ、この半導体発光素子10上面と各他方のリード9´とをボンディングワイヤ11により電気的に接続する。
【0005】
次に図10に示す外囲器成型治具12の各キャビティ13に光透過性樹脂を注入した後、この各キャビティ13にリードフレーム8の各リード群を浸し、光透過性樹脂を加熱硬化させて、図11に示す様に各リード群の半導体発光素子10のマウント部分、ボンディングワイヤ11及びリード9、9´の上端部分を光透過性樹脂からなる外囲器14で封止する。その後、図11の破線で示す部分より、各リード群をリードフレーム8から切離し、図12に示すように半導体装置を完成する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
最近、半導体発光装置においては高出力化が要求されている。そして、高出力化に当たって外囲器14の径をできる限り大きくすればよいことが知られている。
【0007】
ところで、従来の半導体発光装置の製造方法においては、生産効率の関係上、一枚のリードフレームから10〜30個程度の半導体発光装置を形成できるように、各リード群の間隔が決められており、しかも外囲器の径はリードフレームの各リード群の間隔に依存している。そのため、高出力化のために外囲器の径を大きくしようとしても、各リード群の間隔で制限され、大きくできないという欠点がある。また、外囲器の径を大きくするために各リード群の間隔を大きくすると一枚のリードフレームから得られる半導体発光装置の個数が低下し、生産効率が悪くなるという欠点がある。
【0008】
本発明は上記欠点に鑑みなされたもので、リードフレームの各リード群の間隔を大きくすることなく、高出力を得ることができる半導体発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置の製造方法においては、並置された一対のリ-ドが複数組一直線上に配置されたリ-ドフレ-ム上の、前記一対のリードの一方の一端部に半導体発光素子をマウントする工程と、前記一対のリ-ドの他方の一端部と前記半導体発光素子とをボンディングワイヤで接続する工程と、前記リードフレームの長手方向に沿って一列に配置された複数のキャビティを有する外囲器成型治具の前記複数のキャビティのそれぞれに充填された光透過性樹脂に前記半導体発光素子、前記ボンディングワイア、及び前記一対のリードの前記一端部のそれぞれが浸された状態とする工程と、前記光透過性樹脂のそれぞれを硬化させる工程と、前記光透過性樹脂のそれぞれを前記キャビティから取り出し前記一対のリードを前記リードフレームから分離する工程と、を備え、前記複数のキャビティのそれぞれは、前記一対のリードの長手方向に対して垂直な横断面の形状が楕円形であり、その長径が前記リードフレームの前記長手方向に対して略垂直な方向に形成され、且つ前記リードフレームの前記長手方向に対して平行な縦断面が略U字形であることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記外囲器成型治具は、キャビティの間隔の半分ずつずらした複数列のキャビティを有するものとすることができる。
【0011】
半導体発光装置の外囲器の横断面の形状を、長軸、短軸を持ち、それぞれの軸において軸対称である非円形とし、その短軸をリードフレームの長手方向と平行に、かつ長軸をその短軸と垂直になるように配置することにより、リードフレームの各リード群の間隔を変えることなく長軸を長くすることができる。短軸の長さを直径とする円形と比較して面積を大きくすることができるので、発光素子の外部効率が向上し、半導体発光装置の外部に出射する光出力を大きくすることができる。さらに、リードフレームをそれぞれ平行に複数段並べ、長手方向に交互にずらすことにより、長軸をリードフレーム間隔より長くすることが可能になり、光出力を大きくすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図1から図5を参照して本発明の第一の実施例を説明する。図1はリードフレームに半導体発光素子をマウント・ボンディングした状態を示す図、図2(a)は、本発明の第一の実施例の外囲器成型治具の上面図、図2(b)は同図(a)のA-A´線に沿う縦断面図、図3は半導体発光素子、金ワイヤ、リードの上部を樹脂で封止する工程の概念図、図4(a)は本発明の第一の実施例において外囲器成型後の状態を示す上面図、図4(b)は同図(a)のB-B´線に沿う縦断面図、図5(a)は完成された本発明の第一の実施例の半導体発光装置の上面図、図5(b)は同図(a)のC-C´線に沿う縦断面図である。図1において1はリードフレームで2本のリード2、2´からなるリード群が等間隔をおいてリードフレームの長手方向に沿って形成されている。
【0013】
図2において、5は外囲器成型治具で、横断面が円形でかつ、縦断面が略U字形のキャビティ6が、リードフレームのリード群と同じ間隔を置いて一直線上に整列配置されている。
【0014】
各リード群において、一方のリード2の上端部の板厚部分に凹部を設け、凹部の底に半導体発光素子3を導電性の接着剤でマウントする。接着温度はここでは、200℃〜300℃である。そして、半導体発光素子3と他方のリード2´の上端部を金ワイヤ102で電気的に接続する。
【0015】
次に、図2の外囲器成型治具の各キャビティ6に光透過性樹脂(エポキシ樹脂と硬化剤との混合液)を充填し、各リード群を外囲器成型治具の各キャビティ6に充填された光透過性樹脂に浸し、100℃〜130℃に保ったオ-ブンの中に2〜10数時間入れ、硬化させる。ここまでの図が図3である。図3において、上記混合液に浸す部分は、半導体発光素子と金ワイヤ、リード群の上部である。熱硬化させた後、各リード群を外囲器成型治具5から離し、図4の点線に沿って各リード群をリードフレーム1から切り離して完成する。
【0016】
上記第一の実施例の半導体発光装置とその製造方法では、外囲器の形状は楕円形であるので、横断面の楕円の短軸の長さを円の径の長さと同等とすることにより一本のリードフレームから従来例と同数の半導体発光装置を生産することができる。このとき、外部に取り出せる光出力を従来例と本実施例とで比べてみると、横断面の断面積は、本実施例の外囲器の横断面形状である楕円の短軸の長さと従来例の外囲器の横断面形状である円の径長とが同一であるので、楕円の長軸の長さ分本実施例の方が大きくなる。外囲器の横断面積が大きくなると半導体発光素子を大きさを持たない点発光源とみなすことができる。そのため、素子を光学上理想的な幾何学的位置に配置することが可能となるため、集光性の飛躍的向上を実現でき、かつ、樹脂内部を通過する光が光透過性樹脂表面で反射される率が低くなる。よって、発光の外部効率が向上し、従来より高出力の半導体発光装置が得られる。
【0017】
次に本発明の他の実施例を図面を参照して説明する。図6(a)、(b)は本発明の第二の実施例を示す図、図7(a)、(b)に本発明の第三の実施例を示す図であって、第一の実施例と同一部分には同一番号を付し、詳細な説明を省略する。即ち、第二の実施例では、外囲器の横断面形状を円の一部を長軸に沿って切り落とした形状にしている。また、第三の実施例では、外囲器の横断面形状を楕円の一部を長軸に沿って切り落とした形状にしている。そしてこれらの外囲器の形状は外囲器成型治具のキャビティの横断面形状をそのような形状にすることによって得られる。これら2つの実施例においても、第一の実施例と同様の効果が得られる。
【0018】
第三に、本発明の第四の実施例を図8を用いて説明する。図8は図2の外囲器成型治具を縦方向に、交互にキャビティ間隔の半分ずつずらすようにして並べたものである。こうすることにより、縦方向にキャビティをそろえて並べるより横断面がさらに長軸方向に長い、即ちより高出力の半導体発光装置が得られる。また、横断面の形状を変更しなかったとしても、縦方向のキャビティ間隔を詰めることができるので、同じスペ-ス内で、より多くのリードフレームを並べることができる。従って生産効率を向上させることができる。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、一本のリードフレームから得られる半導体発光装置の数をそのままにして、従来より高出力の半導体発光装置を得ることができる。また、出力はそのままにして、一本のリードフレームから得られる半導体発光装置の数を増やし、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
リードフレームに半導体発光素子をマウント・ボンディングした状態を示す図
【図2】
本発明の第一の実施例の外囲器成型治具の図
【図3】
半導体発光素子、金ワイヤ、リードの上部を樹脂で封止する工程の概念図
【図4】
本発明の第一の実施例において外囲器成型後の状態を示す図
【図5】
完成された本発明の第一の実施例の半導体発光装置の図
【図6】
本発明の第二の実施例において外囲器成型後の状態を示す図
【図7】
本発明の第三の実施例において外囲器成型後の状態を示す図
【図8】
本発明の第四の実施例(外囲器成型治具)の上面図
【図9】
従来例においてリードフレームに半導体発光素子をマウント・ボンディングした状態を示す図
【図10】
従来における外囲器成型治具の図
【図11】
従来における、外囲器成型後の状態を示す図
【図12】
従来における、完成された半導体発光装置の図
【符号の説明】
1、8 リードフレーム
2、2´、9、9´ リード
3、10 半導体発光素子
4、11 ボンディングワイヤ(金ワイヤ)
5、12 外囲器成型治具
6、13 キャビティ
7、14 外囲器
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-07-02 
出願番号 特願平9-300089
審決分類 P 1 651・ 113- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 03- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 柏崎 康司  
特許庁審判長 青山 待子
特許庁審判官 稲積 義登
町田 光信
登録日 2002-06-07 
登録番号 特許第3315908号(P3315908)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 半導体発光装置の製造方法  
代理人 小田島 平吉  
代理人 松山 允之  
代理人 日向寺 雅彦  
代理人 江角 洋治  
代理人 日向寺 雅彦  
代理人 松山 允之  

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