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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1084777
異議申立番号 異議2002-72128  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-07-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-08-30 
確定日 2003-07-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3263267号「浄化槽」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3263267号の訂正後の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.訂正の適否についての判断
1-1訂正の内容
別紙「訂正の内容」参照。
1-2(訂正の適否)
請求項1についての訂正事項(1)(訂正請求書では丸数字で表現されているが、以下、便宜上括弧数字で表現する。)は、第二散気装置(M)の位置を特定し、上昇路と膜分離槽(E2)の周壁との間に仕切り板(Ew)を設けるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。訂正事項(1)は特許明細書の【0015】に記載されていたことである。
以上のとおりであるから、訂正事項(1)は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
また、その他の訂正事項(2)〜(5)についても特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
2.特許異議申立について
2-1本件発明
上記のとおり、訂正は認められるから、本件特許の発明(請求項1)は、訂正された特許明細書に記載された次のとおりのものである。
請求項1:膜分離装置(M)を内装してなる膜分離槽(E2)を備え、前記膜分離装置(M)の下方に前記膜分離装置(M)に対して気泡を供給する第一散気装置(D1)を設けた浄化槽であって、前記膜分離槽(E2)内に前記第一散気装置(D1)の供給する気泡よりも小さな気泡を供給して上昇流を形成する第二散気装置(D2)を、前記第一散気装置(D1)の側方に且つ平面視で前記膜分離装置(M)の側方に隣接して設け、前記膜分離槽(E2)内に、前記第一、第二散気装置(D1)、(D2)からの気泡が槽内を上昇する上昇路と、前記膜分離槽(E2)の周壁とを仕切る仕切り板(Ew)を設けてある浄化槽。(以下、「本件発明」という)
2-2取消理由通知で引用された刊行物に記載された発明
刊行物1〜6(特許異議申立人の甲1〜6号証)には、以下の事項が記載されている。
刊行物1(特開平4-247288号公報):
a.図1には、第1曝気装置の側方に第2の曝気装置を備え、ろ過膜モジュールを有する生物処理槽が記載されている。
刊行物2(特開平5-237488号公報):図2には、ドラフトチューブ内に第1散気装置及びドラフト外周部に第2の散気装置を備えた循環流動床型の排水処理装置が記載されている。
刊行物3(特開平4ー247295号公報):図1には、バッフル板内に散気部材を備えた生物反応槽が記載されている。
刊行物4(特開昭50-80656号公報):図1〜4には、多数の揺動体を備えた散気装置が示されている。
刊行物5(特開昭52-16852号公報):「この発明は排水中に噴出された気泡を微細な気泡にして排水中の酸素溶存効率を上昇させて上述の欠点を除去しようとするものである。」(第1頁右欄)
刊行物6(バイオテクノロジー活用の高機能型活性汚泥法、1991年技報堂出版株式会社発行、第8〜9頁):「効率的な酸素供給方法は・・・気泡径・・を小にする、すなわち微細気泡にする、」
2-3対比・判断
(2-3-1)一致点・相違点の認定
本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、第一散気装置及び第二散気装置を備え、第二散気装置が第一散気装置の側方に設けられ、膜分離装置が内装された浄化槽である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:第二散気装置が第一散気装置が供給する気泡よりも小さな気泡を供給し、上昇路と膜分離槽の周壁とを仕切る仕切板を設けること。
この相違点について検討すると、刊行物2〜6には、前記相違点については、記載もなければ、示唆もない。
したがって、本件発明と刊行物1に記載された発明との他の相違点についての検討、判断を示すまでもなく、本件発明は、前記の各刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
4結論
以上のとおり、本件請求項1に係る発明の特許は、特許異議申立の理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
別掲 別紙「訂正の内容」
(1)特許査定時の明細書(以下、「特許明細書」という)の特許請求の範囲の欄の請求項1に係る記載、「膜分離装置(M)を内装してなる膜分離槽(E2)を備え、前記膜分離装置(M)の下方に前記膜分離装置(M)に対して気泡を供給する第一散気装置(D1)を設けた浄化槽であって、前記膜分離槽(E2)内に前記第一散気装置(D1)の供給する気泡よりも小さな気泡を供給する第二散気装置(D2)を、前記第一散気装置(D1)の側方に設けてある浄化槽」を、「膜分離装置(M)を内装してなる膜分離槽(E2)を備え、前期膜分離装置(M)の下方に前記膜分離装置(M)に対して気泡を供給する第一散気装置(D1)を設けた浄化槽であって、前記膜分離槽(E2)内に前記第一散気装置(D1)の供給する気泡よりも小さな気泡を供給して上昇流を形成する第二散気装置(D2)を、前記第一散気装置(D1)の側方に且つ平面視で前記膜分離装置(M)の側方に隣接して設け、前記膜分離槽(E2)内に、前記第一、第二散気装置(D1),(D2)からの気泡が槽内を上昇する上昇路と、前記膜分離槽(E2)の周壁とを仕切る仕切り板(Ew)を設けてある浄化槽」に訂正する。
(2)特許明細書の特許請求の範囲の欄の請求項2及び3を削除する。 (3)特許明細書の第0006段落(本件特許公報第2頁左欄第30行から第37 行)の記載、「膜分離装置を内装してなる膜分離槽を備え、前記膜分離装置の下方に前記膜分離装置に対して気泡を供給する第一散気装置を設けた浄化槽において、上記目的を達成するための本発明の特徴構成は、前記膜分離槽内に前記第一散気装置の供給する気泡よりも小さな気泡を供給する第二散気装置を、前記第一散気装置の側方に設けてある」を、
「膜分離装置を内装してなる膜分離槽を備え、前記膜分離装置の下方に前記膜分離装置に対して気泡を供給する第一散気装置を設けた浄化槽において、上記目的を達成するための本発明の特徴構成は、前記膜分離槽内に前記第一散気装置の供給する気泡よりも小さな気泡を供給して上昇流を形成する第二散気装置を、前記第一散気装置の側方に且つ平面視で前記膜分離装置の側方に隣接して設け、前記膜分離槽内に、前記第一、第二散気装置からの気泡が槽内を上昇する上昇路と、前記膜分離槽の周壁とを仕切る仕切り板を設けてある」に訂正する。
(4)特許明細書の第0023段落(同公報第3頁右欄第32行から43第行)の記載、「前記第二散気装置を前記平面視で膜分離装置の側方に隣接して設けてあるものを示したが、必ずしも膜分離装置に隣接している必要はなく、第一散気装置と第二散気装置とを、第一散気装置の側方に設けてあればよい。前記第一、第二散気装置を各別に設けてあれば、各散気装置からの気泡が混ざりにくく、気泡が成長して大きくなるような不都合が生じにくいし、前記膜分離装置に沿って配設してあれば、前記第二散気装置による被処理水が乱れずに上昇流を形成するので、槽内での被処理水の循環が良好に行われて好都合であるため、結局、前記第二散気装置を前記平面視で膜分離装置の側方に隣接して設けてあるものが好ましい。」を、
「前記第二散気装置を前記平面視で膜分離装置の側方に隣接して設けてあるものを示したが、前記第一、第二散気装置を各別に設けてあれば、各散気装置からの気泡が混ざりにくく、気泡が成長して大きくなるような不都合が生じにくいし、前記膜分離装置に沿って配設してあれば、前記第二散気装置による被処理水が乱れずに上昇流を形成するので、槽内での被処理水の循環が良好に行われて好都合であるため、結局、前記第二散気装置を前記平面視で膜分離装置の側方に隣接して設けてあるものが好ましい。」に訂正する。
(5)特許明細書の第0024段落(同公報第3頁右欄第44行から50第行)の記載、「前記膜分離槽内に、前記第一、第二散気装置からの気泡が槽内を上昇する上昇路と、前記膜分離槽の周壁とを仕切る仕切り板を設けたが、構造の簡素化の為には特に設けなくてもよく、また、その形状についても、前記膜分離槽の長さにわたる全幅にわたって設けてあってもよいし、前記膜分離装置の幅のみにわたって設けてあってもよい。」を、
「前記膜分離槽内に、前記第一、第二散気装置からの気泡が槽内を上昇する上昇路と、前記膜分離槽の周壁とを仕切る仕切り板を設けたが、その形状についても、前記膜分離槽の長さにわたる全幅にわたって設けてあってもよいし、前記膜分離装置の幅のみにわたって設けてあってもよい。」に訂正する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
浄化槽
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 膜分離装置(M)を内装してなる膜分離槽(E2)を備え、前記膜分離装置(M)の下方に前記膜分離装置(M)に対して気泡を供給する第一散気装置(D1)を設けた浄化槽であって、前記膜分離槽(E2)内に前記第一散気装置(D1)の供給する気泡よりも小さな気泡を供給して上昇流を形成する第二散気装置(D2)を、前記第一散気装置(D1)の側方に且つ平面視で前記膜分離装置(M)の側方に隣接して設け、
前記膜分離槽(E2)内に、前記第一、第二散気装置(D1),(D2)からの気泡が槽内を上昇する上昇路と、前記膜分離槽(E2)の周壁とを仕切る仕切り板(Ew)を設けてある浄化槽。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、膜分離装置を内装してなる膜分離槽を備え、前記膜分離装置の下方に前記膜分離装置に対して気泡を供給する第一散気装置を設けた浄化槽に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の浄化槽としては、単に、膜分離装置の下方に、その膜分離装置に対して気泡を供給し、前記膜分離装置の外表面を洗浄すると同時に、前記膜分離槽内に酸素供給する散気装置を設けてあるものが知られていた。尚、このような浄化槽においては、前記膜分離装置を洗浄するために比較的大きな気泡を供給する構成としてあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、側壁をコンクリートで成形してある浄化槽であれば、前記膜分離槽の水深を深く形成できるために、比較的大きな気泡を供給したとしても、その気泡は十分に被処理水と接触し、被処理水中に酸素を溶解させることができるものの、FRP製等の浄化槽では内部に収容する水圧に耐える大きさ、形状のものとしては、水深を浅く形成せざるを得ず、前記気泡は、大きな浮力を得て急速に浮上し、短時間で水面に達してしまうので、気液の接触時間が短く、被処理水への酸素溶解が不充分になり、高負荷な原水が流入した時に、酸素量が不足したり、硝化効率が低下したりする問題があって、より酸素溶解効率の高い浄化槽が望まれていた。
【0004】
そこで、前記気泡を小さなものに変更して、気液の接触効率を高くすることも考えられるが、小さな気泡にすると、その気泡は小さな浮力しか得られず、緩慢に浮上するので気液接触時間が長くなる反面、前記膜分離装置への衝突の際に大きな衝突力が得られず、前記膜分離装置の表面に付着した汚れを剥離させるのに十分な力が得られないという欠点があり、そのため、気泡の大きさを維持して、気泡供給量を増やすことも考えられるが、ブロワの風量を増やさねばなず、運転コストが高くつくなどの問題点があって好ましくなかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記実情に鑑み、ブロワの気泡供給量をあまり増やすことなく、酸素溶解効率の高い浄化槽を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
膜分離装置を内装してなる膜分離槽を備え、前記膜分離装置の下方に前記膜分離装置に対して気泡を供給する第一散気装置を設けた浄化槽において、上記目的を達成するための本発明の特徴構成は、
前記膜分離槽内に前記第一散気装置の供給する気泡よりも小さな気泡を供給する第二散気装置を、前記第一散気装置の側方に且つ平面視で前記膜分離装置の側方に隣接して設け、前記膜分離槽内に、前記第一、第二散気装置からの気泡が槽内を上昇する上昇路と、前記膜分離槽の周壁とを仕切る仕切り板を設けてあることにあり、その作用効果は以下の通りである。
【0007】
【作用】
つまり、第一散気装置を設けてあることで、前記膜分離装置を洗浄する機能を維持させながら、第二散気装置によって、第一散気装置の供給する気泡よりも小さな気泡を供給するものであるから、前記第二散気装置から供給される気泡は、小さな浮力を持って被処理水中を上昇するので気液の接触時間が長く、かつ、小さな気泡とすることで、気泡の総表面積を大きく出来るので、気液接触効率が高く、あまり大量に気泡供給しなくても、比較的水深の浅い浄化槽においても酸素溶解効率を向上させることが出来る。尚、水深の浅い浄化槽においては、第一散気装置の散気に要する空気吹き込み圧は、深い浄化槽に比べて小さくて済むから場合によっては、RC(強化コンクリート)製の浄化槽を設計した場合に必要なブロワと同じ規模のブロワを転用することで、同程度の酸素溶解効率が得られる。
【0008】
【発明の効果】
従って、ブロワの容量を維持しながら、深さの浅い浄化槽においても酸素溶解効率を高く維持でき、例えばFRP製の浄化槽などでも、内部に生育する微生物は十分な酸素を得て浄化処理可能になるので、高い水処理性能を維持できる。
【0009】
また、前記第二散気装置を前記平面視で膜分離装置の側方に隣接して設けてあれば、前記第一、第二散気装置それぞれから供給される気泡は混ざりにくいので、前記第二散気装置から供給された小さな気泡は前記第一散気装置から供給された大きな気泡に衝突して成長するようなことは起こりにくく、また、膜分離装置の膜面間の狭い通路を上昇するものでもないから、前記第二散気装置から供給された小さな気泡同士が衝突して成長することは起こりにくく、気泡が成長して酸素溶解効率を低下させるような不都合は起きにくい。
また、膜分離装置外に上昇流を形成する事になって、平面視で浄化槽内に占める上昇流の割合が増え、上昇流の占める割合と、下降流の占める割合とが近くなり、その結果、従来は下降流の占める割合が、上昇流の占める割合よりも大きいために、下降流の流速は上昇流の流速よりも遅くなりがちであるのに対して、下降流の流速を速く設定でき、被処理水が上昇流内で気泡から酸素供給を受け、下降流内で酸素を微生物に供給するという循環が効率よく行われ、被処理水の好気処理が十分行われやすい。
【0010】
前記膜分離槽内に、前記第一、第二散気装置からの気泡が槽内を上昇する上昇路と、前記膜分離槽の周壁とを仕切る仕切り板を設ければ、上昇流と下降流とを隔てて形成することが出来るので、上昇流と下降流とのあいだに乱流を形成してしまうという不都合が生じないので、更に下降流の流速を速く設定でき、前記下降流が浄化槽内の底部まで行き渡り、浄化槽内に汚泥が過剰に沈殿して被処理水の処理能力が低下するのを防止することが出来、槽内全体の接触効率を向上させられる。
【0011】
【実施例】
以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、上流側から順に、沈殿分離槽N1、嫌気瀘床槽N2、脱窒槽E1、膜分離槽E2、消毒槽Q、処理水槽Tを被処理水が移流するように設けて浄化槽を構成してある。
【0012】
前記沈殿分離槽N1は、流入口Iから浄化槽内に流入した被処理水の原水を受けて、その被処理水中の來雑物を沈澱除去しつつ、内部に生育する嫌気性菌により、被処理水を嫌気処理し、嫌気瀘床槽N2に移流自在に構成してある。
【0013】
前記嫌気瀘床槽N2は、流入した被処理水を嫌気処理する嫌気性菌を育成うる嫌気瀘床Fを内装してあり、前記沈殿分離槽N1から移流してきた被処理水を嫌気処理して前記脱窒槽E1に移流するように構成してある。
【0014】
前記脱窒槽E1は、前記嫌気瀘床槽N2から流入した比較的固形成分濃度の低い被処理水を一次貯留しつつ、被処理水を主に脱窒処理する脱窒菌を内部に育成する構成にしてある。また、前記脱窒槽E1にはエアリフト作用で被処理水を汲み上げて膜分離槽E2に移送させる移送ポンプAを内装してあり、定常的に被処理水を膜分離槽E2に移送する構成にしてある。
【0015】
前記膜分離槽E2は、図1〜2に示すように、多数の平膜を並設してなる膜分離装置Mを内装してなり、その膜分離装置Mの下方には、前記膜分離槽E2内に気泡を供給する第一散気装置D1を前記膜分離装置の直下方に設け、ブロワBからの空気供給によって、前記膜分離装置Mに気泡を供給し、前記膜面に汚泥等の付着しすぎるのを防止し、かつ、膜分離槽E2内に被処理水の上昇流を形成しながら被処理水に酸素を供給可能に構成してある。また、前記膜分離装置Mの側方に隣接して第二散気装置D2を設け、かつ、前記膜分離装置Mと前記膜分離槽E2の周壁Eaとの間に、仕切り壁Ewを設けて前記第二散気装置D2からの気泡が前記膜分離装置Mと前記仕切り壁Ewとの間を上昇して、被処理水に酸素を供給しつつ被処理水の上昇流aを形成するとともに、膜分離槽E2内を上昇した被処理水が前記仕切り壁Ewと前記膜分離槽E2の周壁Eaとの間を下降する下降流bを形成する構成にしてある。
また、前記膜分離装置Mのそれぞれの平膜には集水管M1を連設するとともに、前記集水管M1からの濾過水を合流させて膜分離槽E1外へ導く取水管M2を接続してあり、前記膜分離槽E2の水面よりも下方で前記膜分離槽E2に隣接して設けてある消毒槽Qに連通接続してある。
【0016】
尚、前記第一、第二散気装置への空気供給は、一つのブロワからの空気供給を配管により分配し、バルブで調整して、前記第一散気装置に約5〜10mm径の気泡を、膜分離装置を洗浄可能な程度に大量供給するとともに、前記第二散気装置に約3〜5mm径の気泡を、被処理水に上昇流を形成可能な程度の少量供給する構成にしてあり、運転制御等が不要で簡単に空気供給運転することが出来る構成となっている(図2参照)。また、このブロワとしては、水深の深いRC製浄化槽に用いるブロワを容量を変えることなくそのまま転用することが出来た。
【0017】
このとき、前記上昇流aは、断面視で前記仕切り壁Ew間の全面に発生し、前記仕切り壁Ewと前記周壁Eaの間に下降流bが生じているわけであるから、前記下降流の流速は、上昇流の流速とほぼ等しくなり、被処理水の循環が良好に行われる(図2参照)。
【0018】
前記消毒槽Qは、図1に示すように、前記膜分離槽E1と、前記処理水槽Tとを仕切る隔壁に処理水受け容器を設けて構成してあり、前記容器には下部に小孔hを形成してある。前記消毒槽Qに流入した処理水は、消毒されたのち処理水槽Tに流入する。
【0019】
前記処理水槽Tは、水中ポンプPを内装してあり、前記処理水を貯留したのち、水中ポンプPで処理水を汲み上げ、排出管4を介して放流口Zから浄化槽外へ放流可能に構成してある。
【0020】
このような浄化槽においては、前記流入口Iから流入した被処理水は、前記沈殿分離槽N1、前記嫌気瀘床槽N2を経て嫌気処理されつつ前記脱窒槽E1に流入し、前記移送ポンプAで前記膜分離槽E2に流入したのち、前記膜分離装置Mで膜分離処理され、膜分離処理された濾過水は、消毒槽において消毒処理されたのち処理水槽で一時貯留され、水中ポンプPで排出管4を介して放流口Zから浄化槽外へ放流される。
【0021】
〔別実施例〕
以下に別実施例を説明する。
先の実施例では、浄化槽を、流入口I側から順に沈殿分離槽N1、嫌気濾床槽N2、脱窒槽E1、膜分離槽E2、処理水槽Tを設けて構成したが、これに限らず、例えば、前記嫌気濾床槽N2に替えて、被処理水中の固形成分を濾過するためのスクリーンと、そのスクリーンに気泡供給し、前記固形成分を破砕するための曝気装置とを備えてなるスクリーン濾過槽を設けて浄化槽を構成してあってもよく、また、被処理水を好気処理する好気性菌を育成する好気濾床を内装してなる好気濾床槽を設けて浄化槽を構成してあってもよく、要するに、膜分離槽E2を備えてなる浄化槽であれば良いものである。
【0022】
また、先の実施例においては、膜分離装置Mの一例として平膜を並設して構成したものを示したが、これに限らず、中空糸膜等を用いたものでもよく、これらを総称して膜分離装置Mと呼ぶものである。
【0023】
前記第二散気装置を前記平面視で膜分離装置の側方に隣接して設けてあるものを示したが、前記第一、第二散気装置を各別に設けてあれば、各散気装置からの気泡が混ざりにくく、気泡が成長して大きくなるような不都合が生じにくいし、前記膜分離装置に沿って配設してあれば、前記第二散気装置による被処理水が乱れずに上昇流を形成するので、槽内での被処理水の循環が良好に行われて好都合であるため、結局、前記第二散気装置を前記平面視で膜分離装置の側方に隣接して設けてあるものが好ましい。
【0024】
前記膜分離槽内に、前記第一、第二散気装置からの気泡が槽内を上昇する上昇路と、前記膜分離槽の周壁とを仕切る仕切り板を設けたが、その形状についても、前記膜分離槽の長さにわたる全幅にわたって設けてあってもよいし、前記膜分離装置の幅のみにわたって設けてあってもよい。
【0025】
尚、特許請求の範囲の項に、図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
浄化槽の縦断側面図
【図2】
浄化槽の膜分離槽における横断側面図
【符号の説明】
M 膜分離装置
E2 膜分離槽
D1 第一散気装置
D2 第二散気装置
Ew 仕切り板
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-07-08 
出願番号 特願平7-945
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 敬子  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 野田 直人
山田 充
登録日 2001-12-21 
登録番号 特許第3263267号(P3263267)
権利者 株式会社クボタ
発明の名称 浄化槽  
代理人 新井 清子  
代理人 北村 修一郎  
代理人 北村 修一郎  

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