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審決分類 審判 一部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C08G
管理番号 1084874
異議申立番号 異議2003-70922  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-07-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-10 
確定日 2003-09-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第3337040号「ポリカーボネート系樹脂、その製造方法及び樹脂組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3337040号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
特許第3337040号の請求項1〜3に係る発明は、平成5年12月17日に特許出願され、平成14年8月9日にその特許について設定登録がなされ、その後、請求項1に係る発明の特許について特許異議の申立てがなされたものである。
II.請求項に係る発明
特許第3337040号の請求項1〜3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりのものであって、請求項1には、次のとおり記載されている。
「【請求項1】二価フェノール及び一価フェノールの存在下で、ポリカーボネートオリゴマーと、片末端が封止された反応性ポリオルガノシロキサンを反応させることによって得られ、一般式(I)
【化1】

〔式中、R1及びR2は、それぞれハロゲン原子,炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を示し、それぞれ同じであっても異なるものであってもよく、p及びqは、0〜4の整数であり、mは1〜150である。R3はハロゲン原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を示し、rは0〜5の整数である。Zは、単結合,炭素数1〜20のアルキレン基又はアルキリデン基,炭素数5〜20のシクロアルキレン基又はシクロアルキリデン基,-O-,-S-,-SO2-結合もしくは一般式(II)あるいは(II’)
【化2】

で表される結合を示す。また、R4〜R7は、それぞれ炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を示し、それぞれ同じであっても異なるものであってもよく、nは1〜500である。R8は脂肪族及び/又は芳香族を含む二価の有機残基を示し、またR9 は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を示す。そして、Aは単結合,-O-又は-NH-を示す。〕で表されるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を含有してなるポリカーボネート系樹脂であって、該ポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量が、10,000〜50,000であり、かつ該ポリカーボネート系樹脂中のポリオルガノシロキサン含有率が0.1〜20重量%であることを特徴とするポリカーボネート系樹脂。」
III.特許異議の申立について
1.特許異議申立の概要
特許異議申立人 渡辺由里子は、請求項1に係る発明の特許は、その明細書の記載が不備であり、特許法第36条に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから取り消されるべき旨主張している。
2.特許異議申立についての判断
(1)特許異議申立人の主張
(イ)請求項1の発明は、実施例にて具体的に製造されたポリカーボネート系樹脂に比し、不当に広範囲である。
(a)R1及びR2に関しては、種々規定しているが、実施例には、結局、p及びqで表される整数が0の化合物しか記載されていない。
(b)R3に関しては、「ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアリールアルキル基」と規定するが、実施例には、R3が「アルキル基」である「tert-ブチル基」の化合物しか記載されておらず、また、R3の位置に関しては、「p位」の化合物のみである。
(c)Zに関しては、「単結合,炭素数1〜20のアルキレン基又はアルキリデン基,炭素数5〜20のシクロアルキレン基又はシクロアルキリデン基,-O-、-S-、-SO2-結合もしくは一般式(II)あるいは(II’)・・・で表される結合を示す」と規定するが、実施例には、Zが「アルキレン基」の化合物しか記載されていない。
(d)Aに関しては、「単結合,-O-又は-NH-を示す」と規定するが、実施例には、Aが「-O-」の化合物しか記載されていない。
(e)R4〜R7に関しては、「それぞれ炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を示し」と規定するが、斯かる規定は、実施例に記載された化合物の範囲からして不当に広範囲である。
(f)R8に関しては、「脂肪族及び/又は芳香族を含む二価の有機残基を示し」と規定するが、実施例には、R8として、「2-アリルフエノール」から「-OH」を除いた有機基の化合物しか記載されていない。
(g)R9に関しては、「炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を示す」と規定するが、斯かる規定は、実施例に記載された化合物の範囲からして不当に広範囲である。
(ロ)請求項1は、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである」とは言えず、(改正前)特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない。なお、実施例を追加する訂正は、未完成発明を完成することになり、明細書の要旨を変更するものであるから、認められない。
(ii)判断
本件請求項1に係る発明(以下、本件発明、という。)は、明細書に記載のとおり、「離型性,耐衝撃性,流動性及び剛性に優れたポリカーボネート系樹脂・・・に関するもの」(段落【0001】)であり、
「ポリカーボネート樹脂は、ガラス繊維を添加することによって、成形時の離型性が大幅に低下する問題がある。従来、このガラス繊維をポリカーボネート樹脂に添加することによって低下する成形時の離型性を向上させる方法として、ポリオルガノシロキサン(シリコーンオイル)を少量添加する技術が開発されている。しかし、この方法では、離型性の向上は認められるが、未だ十分満足の行くものではない。そして、シリコーンオイルを多量に添加すると、樹脂の混練が困難となる問題がある。また、例えば、特開平2-173061号公報には、ポリオルガノシロキサンとポリカーボネート樹脂との共重合体とガラス繊維をブレンドする技術が開示されており、離型性の向上がみられるが、さらに離型性を向上させた技術の開発が強く要望されている。」(段落【0002】)との問題において、
「従来法の欠点を解消し、離型性,耐衝撃性,流動性及び剛性に優れたポリカーボネート系樹脂、その製造方法及び樹脂組成物を開発すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、ポリカーボネート(A)とポリオルガノシロキサン(B)とを共重合して得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であるAB型のブロックポリマーを含有したポリカーボネート系樹脂を用いることによって、目的とする離型性がさらに向上することを見出した。」(段落【0003】)というものである。
そして、本件発明は、前記の問題の解決手段として、請求項1に記載の構成を採用したものである。
確かに、請求項1に記載されている一般式(I)については、R1〜R9、Z、Aについては、特許異議申立人が指摘するとおり、限られたものの実施例しか示されていない。
しかしながら、発明の詳細な説明においては、前記R1〜R9の置換基の種類について具体的に記載され、Z、Aについてもその種類が具体的に記載されている。
そうすると、当業者であれば、実施例に従って、前記R1〜R9、Z、Aに相応する各化合物を採用してポリカーボネート系樹脂を得ることは可能といえるし、しかも、表1〜3には、実施例で得られた各樹脂の物性乃至は効果も示されている。
そうであれば、本件請求項1に記載されたポリカーボネート系樹脂は、一応表1〜3で示された範囲において同等の物性乃至効果を奏するものであろうと把握できるものである。
そして、請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂について、前記R1〜R9、Z、Aのいずれかにおいて、実施例に従っても同様に実施できないとか、理論的に製造することができないとか、さらに、各実施例で得られたポリカーボネート系樹脂組成物に比較して、効果の劣るものも含まれている、というのであればともかく、本件請求項1に記載されたポリカーボネート系樹脂が、表1〜3で示されたものと著しく異なることが示されていない以上、本件発明のポリカーボネート系樹脂について、当業者が容易に実施できないものまでが記載されているとまではいえないから、「本件請求項1は、本件発明の詳細な説明に記載したものを明確に記載しておらず、不当に広範囲である」とはいえない。
したがって、本件請求項1の記載については、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでない、とまではいえない。
IV.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-09-01 
出願番号 特願平5-317968
審決分類 P 1 652・ 531- Y (C08G)
P 1 652・ 534- Y (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森川 聡  
特許庁審判長 谷口 浩行
特許庁審判官 船岡 嘉彦
佐野 整博
登録日 2002-08-09 
登録番号 特許第3337040号(P3337040)
権利者 出光石油化学株式会社
発明の名称 ポリカーボネート系樹脂、その製造方法及び樹脂組成物  
代理人 大谷 保  
代理人 東平 正道  

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