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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1084875
異議申立番号 異議2003-70863  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-07 
確定日 2003-10-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第3332294号「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3332294号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
特許第3332294号の請求項1〜2に係る発明は、平成6年11月8日に特許出願され、平成14年7月26日にその特許について設定登録がなされ、その後、日本ポリスチレン株式会社より特許異議の申立てがなされたものである。
II.請求項に係る発明
特許第3332294号の請求項1〜2に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】ポリブタジエンゴムとスチレン系単量体の合計100重量部に対して、下記のR1-R2の構造式(I)で示されるフェノール系酸化防止剤0.001〜1重量部の存在下で、ポリブタジエンゴムとスチレン系単量体を重合して得られたゴム変性スチレン系樹脂100重量部に、光安定剤0.01〜1重量部を含有させてなり、かつメタノール可溶分が6%以下であるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】フェノール系酸化防止剤が下記のR6-R7の構造式(II)で示される少なくとも1種の化合物又はその混合物からなる請求項1記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【化2】


III.特許異議の申立について
(1)特許異議申立の概要
特許異議申立人は、甲第1〜7号証を提出して、請求項1〜2に係る各発明は、前記甲第1号証に記載された発明であり、請求項1〜2に係る各発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1〜2に係る各発明は、前記甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜2に係る各発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべき旨主張している。
(2)特許異議申立についての判断
(i)甲号証の記載事項
甲第1号証(特開昭59-84945号公報)には、以下の記載がされている。
「(I)2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-第三ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン及びトリエチレングリコール-ビス-(3-メチル-5-第三ブチルフェニル)-プロピオネートからなる安定剤系を含有する、耐衝撃性ポリスチレン。」(特許請求の範囲)
「耐衝撃性スチレンは、酸化及び熱により分解し、着色する傾向があるので、この安定化のために多数の抗酸化剤及び光安定剤が提案されている。」(1頁右下欄15行〜17行)
「驚くべきことに、この安定剤系は、保護すべき基材に対し、各成分単独では、特に熱によりひき起こされる分解に対して満足でなかったところの高い耐酸化または耐熱分解性を与える。本発明により得られる相剰作用の外に、この安定剤系は、とりわけ耐衝撃性ポリスチレンの加工の為には決定的に重要である高い色彩品質を示す。」(2頁左上欄14行〜右上欄1行)
「この安定剤系は公知の方法で耐衝撃性ポリスチレンに添加することができる。また重合前に混合することもできる。」(2頁右上欄第20行〜左下欄2行)
「更に補助添加剤をも加えることができる。補助添加剤としては下記のものを上げることができる。
1.酸化防止剤
1.1,アルキル化された1価フェノール
2,6-ジ-第三ブチル-4-メチルフェノール、2-第三ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-第三ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-第三ブチル-4-イソブチルフェノール、・・・
1.7,β-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の1価または多価アルコール、・・・」(2頁左下欄6行〜3頁右下欄14行)
「2.紫外線吸収剤および光安定剤
2.1,2-(2’-ヒドロキシフェニル)-ベンズトリアゾールの例えば5’-メチル-・・・誘導体・・・2,4-ジ-第三ブチル-フェニル 3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート・・・
2.6,立体障害アミン、例えばビス-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)セバケート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)n-ブチル-3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル-マロネート、」(4頁左上欄15行〜右下欄17行)
また、実施例には、スチレンモノマー中ポリブタジエン8重量%溶液にトリエチレングリコールービス-(3-メチル-5-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネートを濃度0.075%で加えて重合させて得られる耐衝撃性ポリスチレンが記載されている(6頁左上欄1行〜右上欄11行及び表1〜4表)。
甲第2号証(高分子製造プロセスのアセスメント10 耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)製造プロセスのアセスメント)には、以下の記載がされている。
「塊状-懸濁重合法は、HIPSの工業的製造法として一般に用いられている。通常PBR,SBR,EPT等の合成ゴムを粉砕機で細片にしてスチレン中に溶解し、重合開始剤、連鎖移動剤、酸化防止剤等の添加剤を加えて重合させている。」(19頁下から2行〜20頁第1行)
甲第3号証(特開平5-301992号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】熱可塑性樹脂(A)にフェノール系酸化防止剤およびチタン酸化物を添加してなる樹脂組成物において、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し有機酸の亜鉛塩(B)0.001〜5.0重量部および/またはヒンダードアミン系光安定剤(C)0.001〜3.0重量部を配合してなることを特徴とする耐黄変性樹脂組成物。
【請求項2】熱可塑性樹脂(A)がスチレン系樹脂である請求項1記載の耐黄変性樹脂組成物。
【請求項3】熱可塑性樹脂(A)がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂を主成分とする樹脂である請求項1記載の耐黄変性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
「【0002】【従来の技術】従来、スチレン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂は、その優れた成形性、良好な機械的物性バランス、表面外観等から、成形材料として家庭電化製品、OA機器、雑貨、自動車内外装等多くの用途に用いられている。最近、特に家庭電化製品、OA機器等のハウジング材料等として用いられる場合、その外観の黄色着色が小さい材料に対する要望が強くなっている。樹脂材料の成形時または使用時に、熱、光、酸素等により樹脂が劣化することを防止するため、樹脂に予めフェノール系酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤等を添加することが一般的である。
【0003】上記フェノール酸化防止剤等を添加すると、樹脂の酸化劣化等による物性の低下及び黄色着色は防止できる。しかしながら、フェノール系酸化防止剤を添加した場合、その酸化防止剤自体が酸化あるいは変性され、着色性物質が生成することにより樹脂ペレットの保管、押出、乾燥、成形時、あるいはこの成形品の保管中に変色を生じるという問題があった。」(段落【0002】、【0003】)
「【0008】本発明の対象となる熱可塑性樹脂(A)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、MBS樹脂、MS樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体などのスチレン系樹脂、・・・など、酸化防止剤の添加を必要とする樹脂を例示することができ、これらを単独あるいは2種以上のブレンドまたはアロイとする樹脂材料である。
【0009】これらの熱可塑性樹脂(A)に添加されるフェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト、N-N’ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、2,2’メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ビス(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルベンジル)4-メチルフェノール、1,1,3-トリス(2’-メチル-5’-t-bブチル-4’-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3’-5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート] 、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレートなどを例示することができる。これらのフェノール系酸化防止剤の一般的な添加量は、0.01〜3重量%程度であり、単独であるいは併用して用いられる。」(段落【0008】、【0009】)
「【0011】本発明は、このようにチタン酸化物を含有する樹脂の黄変性を改良するために、有機酸の亜鉛塩(B)またはヒンダードアミン系光安定剤(C)を配合することに特徴がある。」(段落【0011】)
「【0015】ヒンダードアミン系光安定剤(C)は、熱可塑性樹脂(A)100重量部当たり0.001〜3.0重量部添加する必要があり、好ましくは0.01〜1.0重量部の範囲量である。この配合量が0.001重量部より少なくなると、樹脂の変色防止効果が十分でないし、また、3.0重量部を越えると、剛性、耐熱性等の物性が低下する。」(段落【0015】)
甲第4号証(特開平4-63855号公報)には、以下の事項が記載されている。
「1.下記の(A)〜(E)からなる耐候性に優れた熱可塑性樹脂組成物;
(A)ABS系樹脂100重量部、
(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.01〜5.0重量部、
(C)ヒンダードアミン系光安定剤0.01〜5.0重量部、
(D)フェノール系抗酸化剤0.01〜5.0重量部、
(E)ホスファイト系抗酸化剤0.01〜5.0重量部。」(特許請求の範囲1)
「本発明において上記ヒンダードアミン系光安定剤の配合量は(A)のABS系樹脂100重量部に対し0.01〜5.0重量部で、0.01重量部未満では耐候性の改良効果がほとんど見られず、また、5重量部を超えると耐熱性や機械的性質が低下したり、該光安定剤が成形体表面にでてきたりするといった欠点が生じる。好ましくは1重量部以下がよい。
(D)のフェノール系抗酸化剤は、樹脂に用いることができるものであれば特に制限されないが、具体例を挙げると次のような式(4)で示されるトリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、式(5)で示されるステアリル-β-(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。・・・
本発明において上記フェノール系抗酸化剤の配合量は(A)のABS系樹脂100重量部に対し0.01〜5.0重量部で、0.01重量部未満では酸化劣化が生じやすく耐候性の効果がほとんど見られず、また5重量部を超えると耐熱性や機械的性質が低下したり、該フェノール系抗酸化剤が成形体表面にでてきたりするといった欠点が生じる。好ましくは2重量部以下である。」(4頁左上欄下から2行〜左下欄下から2行)
甲第5号証(マテリアルライフ第5回研究発表会要旨集)には、「ABS樹脂の暗所黄変の改良」と題して、「一般的に加工時などで起こる熱黄変はフェノール系酸化防止剤(AO)とリン系(AO)の併用で防止される。しかし暗所黄変はAOの使用では防止することが出来ない。本研究では、・・・ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)と紫外線吸収剤(UVA)を併用することが黄変防止に有効であることが判ったのでその検討結果について報告する。」(53頁緒言の項)と記載され、「3-1.ABS樹脂の暗所黄変」、「3-2.TiO2の影響」、「3-3.フェノール系AOの影響」、「3-4.光安定剤の効果」について記載されている。
甲第6号証には、「トーポレックスの銘柄と物性値一覧表」が示されている。
(ii)判断
(a)請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)について
甲第1号証には、ポリブタジエンゴムとスチレン系単量体の存在下に安定剤系を添加して重合することが記載され、安定剤系として用いるものとして本件発明で用いるフェノール系酸化防止剤が示されている。
また、甲第1号証には、更に補助添加剤をも加えることができるとして補助添加剤として、酸化防止剤、光安定剤が示されている。
しかしながら、甲第1号証の安定剤系は、特許請求の範囲の記載から明らかなように、特定の「2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-第三ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン及びトリエチレングリコール-ビス-(3-メチル-5-第三ブチルフェニル)-プロピオネートからなる安定剤系」であり、これにより、「保護すべき基材に対し、各成分単独では、特に熱によりひき起こされる分解に対して満足でなかったところの高い耐酸化または耐熱分解性を与える。本発明により得られる相乗作用の外に、この安定剤系は、とりわけ耐衝撃性ポリスチレンの加工の為には決定的に重要である高い色彩品質を示す」というものであって、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-第三ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン及びトリエチレングリコール-ビス-(3-メチル-5-第三ブチルフェニル)-プロピオネートとが相俟って安定剤系をなすものであるから、本件発明が、甲第1号証に記載の一方のトリエチレングリコール-ビス-(3-メチル-5-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート化合物のみを採用することは予想外のことというべきである。
さらに、甲第1号証には、ポリブタジエンゴムとスチレン系単量体を重合して得られたゴム変性スチレン系樹脂について、メタノール可溶分が6%以下であるゴム変性スチレン系樹脂組成物については記載がされていない。また、フェノール系酸化防止剤0.001〜1重量部の存在下で、ポリブタジエンゴムとスチレン系単量体を重合して得られたゴム変性スチレン系樹脂が、一般に、メタノール可溶分が6%以下であるゴム変性スチレン系樹脂組成物となるものであることも示されていないし、周知であるということもできない。
そうであれば、本件発明は甲第1号証に記載された発明ということはできないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとも言えない。
甲第2号証には、耐衝撃性ポリスチレンの製造プロセスにおいて、合成ゴムを粉砕機で細片にしてスチレン中に溶解し、重合開始剤、連鎖移動剤、酸化防止剤等の添加剤を加えて重合させることが記載されているが、特定のフェノール系酸化防止剤の存在下に重合することまでは記載がされていないし、フェノール系酸化防止剤の存在下でポリブタジエンゴムとスチレン系単量体を重合して得られたゴム変性スチレン系樹脂が、一般に、メタノール可溶分が6%以下であるゴム変性スチレン系樹脂組成物となることも示されていない。
甲第3号証には、熱可塑性樹脂にフェノール系酸化防止剤および光安定剤を配合することが記載され、熱可塑性樹脂としてゴム強化ポリスチレン、ABS樹脂が記載されているが、フェノール系酸化防止剤の存在下にポリブタジエンゴムとスチレン系単量体を重合することまでは記載がされていないし、フェノール系酸化防止剤の存在下でポリブタジエンゴムとスチレン系単量体を重合して得られたゴム変性スチレン系樹脂が、一般に、メタノール可溶分が6%以下であるゴム変性スチレン系樹脂組成物となることも示されていない。
甲第4号証には、ABS系樹脂にフェノール系抗酸化剤および光安定剤を配合することが記載されされているが、フェノール系酸化防止剤の存在下にポリブタジエンゴムとスチレン系単量体を重合することまでは記載がされていないし、フェノール系酸化防止剤の存在下でポリブタジエンゴムとスチレン系単量体を重合して得られたゴム変性スチレン系樹脂が、一般に、メタノール可溶分が6%以下であるゴム変性スチレン系樹脂組成物となることも示されていない。
甲第5号証には、ABS樹脂の加工時などで起こる熱黄変がフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の併用で防止されること、暗所黄変防止にヒンダードアミン系光安定剤と紫外線吸収剤を併用することが有効であることが記載されている。
しかしながら、フェノール系酸化防止剤として、本件発明の化合物が示されているものではないし、フェノール系酸化防止剤の存在下でポリブタジエンゴムとスチレン系単量体を重合して得られたゴム変性スチレン系樹脂が、一般に、メタノール可溶分が6%以下であるゴム変性スチレン系樹脂組成物となることも示されていない。
甲第6号証には、トーポレックスHIについて、スチレンと合成ゴムとのグラフト型ポリマーであることが記載されている。そして、甲第7号証によれば、甲第6号証に示されたトーポレックスHIについては、メタノール可溶分が6%以下のものであるといえる。
しかしながら、甲第6号証に記載されたトーポレックスHIが、スチレンと合成ゴムとのグラフト型ポリマーであることは記載されているとしても、トーポレックスHIが、ポリブタジエンゴムとスチレン系単量体の合計100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤0.001〜1重量部の存在下で、ポリブタジエンゴムとスチレン系単量体を重合して得られたゴム変性スチレン系樹脂100重量部に、光安定剤0.01〜1重量部を含有したものであることまでは示されていないから、甲第6号証、甲第7号証からは、ポリブタジエンゴムとスチレン系単量体の合計100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤0.001〜1重量部の存在下で、ポリブタジエンゴムとスチレン系単量体を重合して得られたゴム変性スチレン系樹脂100重量部に、光安定剤0.01〜1重量部を含有したゴム変性スチレン系樹脂組成物におけるメタノール可溶分が6%以下である、と直ちにはいえないことである。
そして、甲第1号証に記載されている技術は、特定の2成分からなる安定剤系の相乗作用を期待するものであり、甲第2号証に記載の技術は一般的な技術を示しているものであるから、これらの技術に甲第3〜6号証に記載の技術を合わせても、ゴム変性スチレン系樹脂組成物におけるメタノール可溶分が6%以下とすることについて示されていない以上、本件発明を構成することが容易に想到できたとはいえない。
そして本件発明は、明細書記載の格別の効果を奏するものといえる。
したがって、本件発明は、前記甲第1号証に記載された発明ということはできないし、前記甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
(b)請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、本件発明におけるフェノール系酸化防止剤をさらに限定するものであるから、請求項1に係る発明と同様、前記甲第1号証に記載された発明ということはできないし、前記甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1〜2に係る各発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜2に係る各発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-09-16 
出願番号 特願平6-273528
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C08L)
P 1 651・ 121- Y (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 谷口 浩行
特許庁審判官 佐藤 健史
佐野 整博
登録日 2002-07-26 
登録番号 特許第3332294号(P3332294)
権利者 電気化学工業株式会社
発明の名称 ゴム変性スチレン系樹脂組成物  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 伊藤 克博  
代理人 金田 暢之  
代理人 石橋 政幸  

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