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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B32B |
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管理番号 | 1084879 |
異議申立番号 | 異議2001-71037 |
総通号数 | 47 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-08-03 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-04-02 |
確定日 | 2003-09-17 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3095278号「積層材料」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3095278号の請求項1、2、5に係る特許を取り消す。 同請求項3ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件の手続の経緯は以下のとおりである。 特許出願 平成 4年 1月20日 特許権設定登録 平成12年 8月 4日 特許異議申立て 申立人住友化学工業株式会社 平成13年 4月 2日 取消理由通知 平成13年10月 5日 訂正請求・意見書 平成13年12月20日 訂正請求取下書 平成15年 7月 7日 2.特許異議申立についての判断 2-1.特許異議申立の理由の概要 特許異議申立人住友化学工業株式会社は、甲第1、第2号証を提出し、本件請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1ないし5」という。)は、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、又は、本件発明4、5は、甲第1及び第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨主張している。 2-2.本件発明 平成13年12月20日付け訂正請求は平成15年7月7日付けで取り下げられたので本件特許第3095278号の請求項1ないし5に係る発明は、特許権の設定登録がなされた明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 少なくとも表皮材料、熱可塑性樹脂、基板材からなる多層構造物であって、該熱可塑性樹脂が以下の(1)及び(2)からなるポリオレフィン系樹脂組成物であることを特徴とする積層材料。 (1)エチレンとラジカル重合性酸無水物及びこれ以外のラジカル重合性コモノマーからなる多元共重合体であり、共重合体中のラジカル重合性酸無水物に由来する単位の割合が0.1重量%以上で5重量%以下、他のラジカル重合性コモノマーに由来する単位の割合が3重量%以上で50重量%以下であるエチレン系共重合体10〜90重量%及び (2)融点が100℃以上のポリオレフィン系樹脂90〜10重量% 【請求項2】 融点が100℃以上のポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレンおよびポリエチレンから選ばれた請求項1記載の積層材料。 【請求項3】 融点が100℃以上のポリオレフィン系樹脂が、プロピレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1から選ばれるコモノマーを用いた直鎖状低密度ポリエチレン及び/またはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1から選ばれるコモノマーを用いたプロピレン系共重合体である請求項1に記載の積層材料。 【請求項4】 直鎖状低密度ポリエチレンまたはプロピレン共重合体の融点が120〜150℃であり、140℃以上の高温下での接着強度が120℃での接着強度に対して1/3以下になる熱可塑性樹脂である請求項3に記載の積層材料。 【請求項5】 積層材料が自動車内装用材料である請求項1ないし請求項4記載の積層材料。」 なお、請求項1の記載において、「ラジカル重合体酸無水物」、「ラジカル重合体コモノマー」との記載は、請求項1に記載された事項から、「重合体」は「重合性」の明かな誤記と認められるので、「ラジカル重合体酸無水物」を「ラジカル重合性酸無水物」、「ラジカル重合体コモノマー」を「ラジカル重合性コモノマー」と認定した。 2-3.各甲号証等の記載 (a)甲第1号証(特表昭63-500179号公報) (a-1).「1.100重量部当り、エチレンを構成要素とし0.905から0.945の密度を有する少なくとも一種の重合体または共重合体(A)を1から93重量部含む熱可塑性組成物であって、 さらに、エチレンと無水マレイン酸とから構成される少なくとも一種の共重合体(B)を7から99重量部含むことを特徴とする熱可塑性組成物。 2.上記重合体(A)がエチレンと少なくとも3つの炭素原子を有する少なくとも一種のαオレフィンとの共重合体であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の熱可塑性組成物。 3.上記重合体または共重合体(A)がフリーラジカル重合法で得られ且つ密度が0.910から0.935の間にあることを特徴とする請求の範囲第1項記載の熱可塑性組成物。 4.上記共重合体(B)がアクリル酸またはメタクリル酸の少なくとも一種のエステルから誘導された基をさらに含むことを特徴とする請求の範囲第1項から第3項のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。 5.上記共重合体(B)が、エチレンから誘導された基を83から98.7モル%と、アクリル酸またはメタクリル酸の少なくとも一種のエステルから誘導された基を1から14モル%と、無水マレイン酸から誘導された基を0.3から3モル%と、を含むことを特徴とする請求の範囲第4項記載の熱可塑性組成物。」(特許請求の範囲第1〜第5項) (a-2).「本発明は特に優れた接着性を有するフィルムを製造するためのエチレンと無水マレイン酸とをベースとした共重合体を含む熱可塑性組成物に関するものである。・・・耐衝撃性の向上した工業物品を作るのに利用できる。」(第2頁上右欄6〜10行) (a-3).「「エチレンを構成要素とした重合体または共重合体」という表現はフリーラジカル重合によって得られるエチレンのホモポリマー、あるいはチグラー触媒の存在下で得られる・・・α-オレフィンとの共重合体、・・・一般に0.910から0.935の間の密度を有している。上記ポリマー(A)の結晶化度は、十分な熱安定性を有する組成物を得るという観点から、少なくとも30%であるのが好ましい。」(第2頁上右欄18行〜同頁下左欄3行) (a-4).「本発明は、次に、上記組成物を加工して得られる少なくとも一種の製品を含む工業的物品を提供する。・・・接着性を有するフィルム・・・か、特に自動車分野および家庭用および工業用物品の製造に要求される特性への適用に満足できる・・・成形された充填物である。」(第3頁上左欄3〜9行) (a-5).「本発明の組成物は寸法安定性が高いため、この組成物を押出しブロー成形して得られるフィルム・・・は例えば110℃から130℃の間の温度の反復露出に耐えなければならない積層体を作るのに用いることができる。」(第3頁上左欄10〜14行) (a-6).「実施例1〜5 ・・・(B)の(100-x)重量部:エチレンから誘導された基を92.3モル%と、エチルアクリレートから誘導された基を6.7モル%と、無水マレイン酸から誘導された基を1モル%とを含む、・・・三元共重合体。」(第3頁上右欄5〜13行) (a-7).「実施例6および7 以下の原料を熱混練して組成物を調整した: (A2)のx重量部:0.945の密度と・・・、エチレン/1-ブテン共重合体、 実施例1〜5に記載の三元共重合体(B)の(100-x)重量部。 ・・・第II表 実施例7 x=50 F 128℃ ・・・ 実施例7の組成物を押出しブロー成形でフィルム(膜厚50μm)にした。このフィルムはポリウレタン-ポリエーテル発泡体とポリプロピレン織布とのカレンダー加工による145℃でのヒートシールに用いた。」(第3頁下左欄下から6行〜同頁下右欄下から16行) (b)甲第2号証(有機合成化学、第39巻、第6号(1981)、第98〜104頁) 「中低圧法低密度ポリエチレンの製法と物性」と題し、下記事項が記載されている。 (b-1)Fig5 融点対密度 LLDPEのコモノマー ○ プロピレン △ ブテン-1 □ ヘキセン-1とオクテン-1 ・・・・コンベンショナルLDPE と記載され、エチレン-ブテン-1共重合体の融点と密度の関係が記載されている。 即ち、Fig5の△-△のグラフからみて、一般的な密度が0.945g/cm3であるエチレン-ブテン-1共重合体の融点は120℃近傍の値を有するものと認められる。 (c)刊行物2(高分子学会編「高分子辞典」朝倉書店、P810;ポリエチレンの項、一般的性質の融点の欄参照(S60.4.1));(取消理由通知で引用した刊行物) (c-1).ポリエチレン 低密度/高密度 融点[℃] 108〜120/126〜135。 2-4.取消理由の概要 当審における平成13年10月5日付けの取消理由の概要は以下のとおりである。 『 本件発明1について 本件発明1は、刊行物1(甲第1号証)に記載された発明と比較すると、 記載事項a.、f.(なお、それぞれ上記摘示記載(a-1)、(a-6)に対応)から、刊行物1記載の実施例7に記載の発明における、「(A)密度が0.945の、チグラー型触媒によって得られたエチレン/1-ブテン共重合体」(以下、エチレン系樹脂(A)という)、「エチレンから誘導された基」、「エチルアクリレートから誘導された基」、「無水マレイン酸から誘導された基」、「実施例1〜5に記載の三元共重合体(B)」(以下、三元共重合体(B)という)、「熱可塑性組成物」、「ポリウレタン-ポリエーテル発泡体」、「ポリプロピレン織布」が、それぞれ、本件発明1の「(2)に記載のポリオレフィン系樹脂」、「エチレン」、「これ以外のラジカル重合性コモノマー」、「ラジカル重合体酸無水物」、「多元共重合体」(以下、本件三元共重合体という)、「熱可塑性樹脂」、「基板材」、「表皮材料」に相当するものと認められるから、両者は共に、表皮材料と基板材との間に、同じ成分からなるポリオレフィン系樹脂と同じ成分からなる三元共重合体とからなる熱可塑性樹脂を介在させてなる積層材料である点で一致している。また、それぞれの成分含有量も、刊行物1の上記記載事項a.、f.から、エチレン系樹脂(A):三元共重合体(B)は、実施例から50:50であることが記載されており、本件発明1のポリオレフィン系樹脂:本件三元共重合体が90-10重量%:10-90重量%と重複している。ここで、両者の三元共重合体の成分組成についてみると、記載事項f.の実施例の成分比率モル%を本件発明の三元共重合体の成分組成を重量%に換算すると、「エチレン」:「これ以外のラジカル重合性コモノマー」:「ラジカル重合体酸無水物」が、77.1重量%:20.0重量%:2.9重量%となることから、両者は、成分組成比率の点においても構成上の相違するところがないが、本件発明1では、ポリオレフィン系樹脂が、融点が100℃以上のものと特定されているのに対し、刊行物1記載の発明では、密度が特定されたエチレン系樹脂(A)であって、融点が明記されていない点で一応相違する。 この相違点について、検討する。 刊行物1に記載の上記エチレン系樹脂(A)は、実施例では、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレンホモポリマーであってもよく、その密度が、一般的には0.905〜0.945の間にあるものであり、具体的には0.945であるものが記載されている。 ところで、ポリエチレンは、低密度、中密度、高密度に密度で分類されており、刊行物1に記載されたポリエチレンは、当該技術分野の技術常識(上記刊行物2参照)から、低密度から中密度ポリエチレンのものを意味するものと認められ、そのようなポリエチレンの融点についてみると、一般的に107℃から120℃範囲のものとなることが技術常識(上記刊行物2参照)となっており、本件発明と同じように融点が100℃以上であることを満足していることは明らかである。そうすると、刊行物1に記載のエチレン系樹脂(A)がホモポリマーであれば、本件発明の融点が100℃以上のポリオレフィン系樹脂に相当するから、上記相違点は実質的に刊行物1に記載されているものと認められる。実施例では、エチレン/1-ブテン共重合体が例示されており、当該共重合体の融点については明記されていないが、記載事項c.(上記摘示記載(a-3)に対応)から結晶化度30%以上であること、当該技術分野の技術常識としてエチレンとのα-オレフィンの共重合体では、α-オレフィン成分が増加するほど、短鎖分岐が増加すること、短鎖分岐がエチル基、ブチル基程度であると結晶構造内に分岐が包含可能であること等は技術常識であり、共重合体密度は増加し、融点は低下するが低密度ポリエチレンでは既に短鎖分岐が存在することから、融点の変動は小さいことが知られており、実施例の密度0.945のエチレン/1-ブテン共重合体も、基本となるポリエチレンの密度、融点の知見に基づいて、共重合体において結晶化度が上昇し、密度が上昇したものと認められることから、100℃以上の融点を有するものと推認できる。 してみると、本件発明1は、刊行物1に記載された発明と認められる。 本件発明2について 本件発明2は本件発明1のポリオレフィン系樹脂を、ポリプロピレン又はポリエチレンに特定したものである。一方、刊行物1に記載された発明でもポリエチレンホモポリマーを用いることが記載事項a.及びc.の記載から明らかであり、使用しているポリエチレンは、刊行物2に記載のポリエチレンの一般的特性を参酌すると、特定された密度から100℃以上であると推認できる。 してみると、本件発明2は、刊行物1に記載された発明と認められる。 本件発明5について 本件発明5は、本件発明1を自動車内装用材料と用途を特定したものである。刊行物1に記載された発明も記載事項b.、d.(それぞれ、上記摘示記載(a-2)、(a-4)に対応)及びf.の記載から、自動車用内装材として用いているものと認められる。 してみると、本件発明5は、刊行物1に記載された発明と認められる。 本件請求項1、2、5に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明と認められるので、請求項1、2、5に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。 』 3.当審の判断 3-1.特許法第29条第1項第3号違反について 特許権者の意見書の内容を検討したが、本件発明1、2、5に対して、当審が通知した上記取消理由通知に記載した判断は、妥当なものと認められるから、本件請求項1、2、5に係る発明は、上記2-4.取消理由の概要に記載した理由により、上記刊行物1に記載された発明と認められるので、請求項1、2、5に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。 3-2.特許法第29条第2項違反について 3-2-1.本件発明3について 本件発明3は、本件発明1の融点が100℃以上のポリオレフィン系樹脂を(i)「プロピレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1から選ばれるコモノマーを用いた直鎖状低密度ポリエチレン及び/またはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1から選ばれるコモノマーを用いたプロピレン系共重合体である」と特定したものである。 そこで、本件発明3と甲第1号証に記載された発明と対比すると、両者は、接着性を有するフィルムに用いる、エチレン-ラジカル重合性酸無水物-その他のラジカル重合性コモノマー三元共重合体とポリオレフィン系樹脂とからなるポリオレフィン系樹脂組成物である点で一致し、少なくとも、下記の点で相違している。 相違点1:融点が100℃以上のポリオレフィン系樹脂として、本件発明3が上記特定(i)の共重合体であるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、密度が0.905〜0.945のエチレン-α-オレフィンとの共重合体を用いている点、 そこで、相違点1について検討する。 甲第1号証に記載のエチレンとα-オレフィンとの共重合体が密度は0.905〜0.945と特定されており、低密度ポリエチレン系のものを包含し得る記載となっていて、明細書には具体例として、0.92のものが記載されてはいるが、直鎖状であることや、直鎖状低密度ポリエチレンであることについて記載も示唆もされていない、また、プロピレン系共重合体についても何ら記載するところもないから、甲第1号証に記載されたエチレン-α-オレフィンとの共重合体に代えて、上記特定のα-オレフィンをコモノマーに用いた直鎖状低密度ポリエチレン及び/または上記特定のα-オレフィンをコモノマーに用いたプロピレン系共重合体となすことは当業者が容易に想到し得たものと認めることはできない。 甲第2号証には、上記摘示記載(b-1)によれば、単に、一般的なエチレン-ブテン-1共重合体の融点と密度の関係があり、融点が100℃以上であることが記載されているのみで、直鎖状のもの、あるいは直鎖状低密度ポリエチレン共重合体であることも、ましてや、プロピレン系共重合体について全く記載もなく、さらに、ポリオレフィン系樹脂組成物の成分として使用することについて何ら記載も示唆もないものであり、また、この記載をみて、当業者が甲第1号証に記載された発明において融点100℃以上のポリオレフィン系樹脂としてエチレン-α-オレフィン共重合体の直鎖状低密度ポリエチレン共重合体を採用するという動機付けも根拠もないから、相違点1は甲第2号証に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 刊行物2は取消理由通知において引用したもので、ポリエチレン樹脂の低密度、高密度がどの程度の融点のものか技術常識を示したもので、上記相違点1について何ら記載するものではない。 そして、本件発明3は、上記相違点により、「【作用】 本発明の積層材料、特に自動車内装用積層材料は次の要求に応えることができる。丸1 高級感のある表皮材を含む複合材に使用しても、その素材の風合い、感触を損なわないこと。丸2 酷寒、酷暑、特に炎天下においても複合材が亀裂、反り、剥離、クリープによる変形などを起こさないこと。丸3 コストが安く生産工程においては低温、低圧、短時間での接着が可能であり、各種の素材に対して常温接着強度、高温耐クリープ性に優れていること。丸4 リサイクル処理温度においては接着強度が著しく低下し、各構成部材への剥離が容易であること。これらの要求の中でも強度の高い低温接着性と高温における耐クリープ性とは相反する要求であって、通常の接着性樹脂においては低温接着性が良い時は高温クリープ特性が悪く、高温クリープ特性が良い時は低温接着性が低下するとされていた。また高温クリープ特性の良いことと、リサイクル処理温度における接着強度が著しく低下する要望も相反する要望であるが、本発明ポリオレフィン系樹脂組成物はこの要求に対してもこれを克服し、積層材料、特に自動車内装用積層材料の要求に応えたものである。」(【0031】〜【0033】)という優れた効果を奏するものである。 したがって、本件発明3は、甲第1、第2号証及び刊行物2に基づいて当業者が容易に発明できたものと認めることはでない。 (なお、丸付き数字は、「丸n」(ただし、nは整数)と標記した。) 3-2-2.本件発明4は、請求項3に係る発明を引用するもので、本件発明3の直鎖状低密度ポリエチレンまたはプロピレン共重合体の融点が120〜150℃に、及び140℃以上の高温下での接着強度が120℃での接着強度に対して1/3以下になる熱可塑性樹脂と特定するものであるから、上記した本件発明3についての判断において記載したと同様の理由により、甲第1号証に記載された発明とは認められないし、甲第1、第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではもない。 3-2-3.結論 したがって、本件発明3、4は、甲第1号証に記載された発明ではなく、さらに、甲第1、第2号証に記載された発明及び刊行物の記載に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1、2及び5に係る特許は、第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 したがって、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、取り消されるべきものである。 また、本件請求項3、4に係る特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては取り消すことができないばかりでなく、他に請求項3、4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-07-24 |
出願番号 | 特願平4-30209 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
ZC
(B32B)
P 1 651・ 121- ZC (B32B) |
最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
石井 淑久 |
特許庁審判官 |
野村 康秀 高梨 操 |
登録日 | 2000-08-04 |
登録番号 | 特許第3095278号(P3095278) |
権利者 | 昭和電工株式会社 |
発明の名称 | 積層材料 |
代理人 | 菊地 精一 |
代理人 | 神野 直美 |
代理人 | 久保山 隆 |
代理人 | 中山 亨 |