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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L |
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管理番号 | 1084881 |
異議申立番号 | 異議2003-70268 |
総通号数 | 47 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-11-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-01-28 |
確定日 | 2003-09-29 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3308492号「圧電アクチュエータ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3308492号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続きの経緯 本件特許第3308492号の請求項1に係る発明についての特許は、平成10年5月13日に特許出願され、平成14年5月17日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立てがなされたものである。 (2)本件発明 本件発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1により特定される次のとおりのものである。 「チタン以外の金属からなる金属振動体と、前記金属振動体との間に樹脂層を含むことなくガスデポジション法により形成された圧電体層とを有し、前記金属振動体と前記圧電体層の間にチタン薄膜、窒化チタン薄膜、または酸化チタン薄膜からなる中間層を設けたことを特徴とする圧電アクチュエータ。(以下、「本件発明」という。)」 (3)特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人八島和枝は、証拠として甲第1号証(特開平8-230181号公報)、甲第2号証(特開平9-232644号公報)、甲第3号証(特開平10-81016号公報)、甲第4号証(SPIE Volume3242「PROCEEDINGS OF SPIE,Smart Electronics and MEMS」11-13 December 1997 174頁3行乃至22行、176頁33行乃至177頁12行、Fig.2、Fig.10及び甲第5号証(機械技術研究所所報 Vol.52 No.2 1998年3月「強誘電体を利用したソリッドステートトランスデューサ技術」2頁左欄20行乃至右欄29行、3頁左欄1行乃至9行)を提出し、本件発明は、甲第1、4或いは5号証に記載された発明であるか、甲第1乃至5号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は、特許法第29条第1項第3号或いは第29条第2項の規定に違反して、特許を受けることができないものである旨主張している。 (特許異議申立人は、特許法第29条第1項第3号違反を明文をもって主張していないが、申立書の全趣旨から上記のように認定した。) (4)甲各号証記載の発明 甲第1号証には、「インクジェット記録ヘッド」が図面とともに開示されている。そして公報の2頁2欄50行〜3頁3欄17行には、 「図1において、圧電ユニット20は、シリコン基板21と、チタン膜22と、白金膜23と、圧電素子であるPZT膜24と、上部電極(駆動電極)である金電極25からなる。シリコン基板21は、キャビティ板または振動板に接合される、厚さ0.15mmの共通な部材である。チタン膜22および白金膜23は、それぞれ厚さが0.3 μm,0.5 μmで、シリコン基板21の全表面にわたって積層被着(スパッタによって)される。さらに、その上にPZT膜24を、ガスデポジション法によって、すなわちPZTの超微粒子をガス流にのせ、ノズルを通して高速で噴射することによって、厚さ50μm,幅2mm,長さ4mmで成膜する。これを大気雰囲気中で600 ℃、0.5 時間の条件で焼成した後に、PZT膜24の上に幅1mm,長さ3mmの金電極25を被着する。ここで、白金膜23の働きは、熱処理中のPZT膜24の鉛がシリコン基板21へ拡散するのを抑えることであり、チタン膜22の働きは、シリコン基板21と白金膜23との密着性を向上させることである。」と記載されている。 甲第2号証には、「圧電体薄膜素子及びこれを用いたインクジェット式記録ヘッド」が図面とともに開示されている。そして公報の4頁5欄23行〜35行には、 「図2(a)に示す工程では、面方位(110)を有する単結晶シリコン基板101(基板厚:220μm)を、1200℃程度の温度で湿式熱酸化し、単結晶シリコン基板101の両面に二酸化シリコン膜201及び202を同時に形成する。 【0033】次に、この二酸化シリコン膜201上に、白金下部電極形成用膜104A、圧電体膜形成用膜105A及び上部電極形成用膜106Aを、順に形成する。実際には、二酸化シリコン膜201と、白金下部電極形成用膜104Aとの間に、両者の密着力を向上させるための中間膜として、チタン膜(膜厚:250Å)、二酸化チタン膜(膜厚:200Å)及びチタン膜(膜厚50Å)を順に形成した。」と記載されている。 甲第3号証には、「圧電体薄膜素子、その製造方法、及び圧電体薄膜素子を用いたインクジェット式記録ヘッド」が図面とともに開示されている。そして公報の6頁9欄44行〜50行には、 「図2は、この圧電体薄膜素子の構造をより詳しく示した断面図であり、シリコン基板10と、シリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜11と、シリコン酸化膜上に形成されたチタン酸化膜11Aと、チタン酸化膜上に形成された下電極12と、下電極上に形成されたPZT膜(圧電体膜)14と、PZT膜上に形成された上電極16と、を備えて構成されている。」と記載されている。 甲第4号証には、「Si振動体と、前記振動体との間に(樹脂層を含むことなく)ガスデポジション法により形成されたPZT層とを有し、前記振動体と前記圧電体層の間に酸化シリコン層と、チタン-プラチナ層からなる中間層を設けた圧電アクチュエータ」が記載されている。 甲第5号証には、「(酸化した)Siからなる振動体と、前記振動体との間に(樹脂層を含むことなく)ガスデポジション法により形成されたPZT層とを有し、前記振動体と前記圧電体層の間に酸化シリコンと、チタン-プラチナ層からなる中間層を設けた圧電アクチュエータ」が記載されている。 またステンレス鋼も振動体として採用し得ることが記載されている。 (5)対比・当審の判断 甲第1乃至4号証に記載された発明と本件発明とを対比すると、甲第1乃至4号証には、「チタン以外の金属からなる金属振動体」(Siは、本件明細書記載の「アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などチタン以外の金属」には当たらない)及び「金属振動体と前記圧電体層の間に(他の膜を介在することなく)チタン薄膜、窒化チタン薄膜、または酸化チタン薄膜からなる中間層を設けた圧電アクチュエータ」については記載も示唆もされていない。(甲第1乃至4号証に記載のものは、チタン薄膜、窒化チタン薄膜、または酸化チタン薄膜からなる中間層に加えて、該中間層の圧電体層側にプラチナ層が、また振動体側に酸化シリコン層が形成されており、これらの層について省略を示唆する特段の記載もない。) また甲第5号証に記載された発明と本件発明とを対比すると、甲第5号証には、「ステンレス鋼からなる金属振動体」を採用し得る旨の記載はあるが、その具体的な構造は記載されておらず、また、「金属振動体と前記圧電体層の間に(他の膜を介在することなく)チタン薄膜、窒化チタン薄膜、または酸化チタン薄膜からなる中間層を設けた圧電アクチュエータ」については記載も示唆もされていない。(甲第5号証に記載のものは、チタン薄膜からなる中間層に加えて、該中間層の圧電体層側にプラチナ層が、また振動体側に酸化シリコンが形成されており、これらの層について省略を示唆する特段の記載もない。) そして本件発明は、請求項1記載の構成により明細書記載の作用効果を奏するものである。 よって、本件発明1が甲第1、4或いは5号証に記載された発明であるとも、また甲第1乃至5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-09-10 |
出願番号 | 特願平10-130246 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(H01L)
P 1 651・ 121- Y (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 松田 成正 |
特許庁審判長 |
内野 春喜 |
特許庁審判官 |
朽名 一夫 小田 裕 |
登録日 | 2002-05-17 |
登録番号 | 特許第3308492号(P3308492) |
権利者 | セイコーインスツルメンツ株式会社 |
発明の名称 | 圧電アクチュエータ |
代理人 | 坂上 正明 |