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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  E04B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  E04B
管理番号 1084949
異議申立番号 異議2002-72813  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-12-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-11-21 
確定日 2003-10-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第3320708号「鉄骨柱梁の接合構造、および鉄骨柱梁の接合工法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3320708号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第3320708号は、平成13年5月22日に出願され、平成14年6月21日に登録されたものであり、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、本件発明という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】外周面の所定高さ位置に、上部側に至るほど肉厚が逓次的に減少するテーパー部11が形成された鉄骨柱1と;鉄骨梁2に接合されるべきブラケット部31を少なくとも側面の一部に有する筒形鋼材であって、それ自身の内筒面の少なくとも一部には下部側に至るほど肉厚が逓次的に減少する逆テーパー部32が形成されており、前記鉄骨柱1に挿通されて当該鉄骨柱のテーパー部11に対し前記逆テーパー部32が両楔状に摩擦定着して所要位置で嵌着されたボックスコア3とを包含して構成されることを特徴とする鉄骨柱梁の接合構造。」

2.異議申立ての理由の概要
特許異議申立人株式会社ライト建築事務所は、証拠方法として本件特許出願前に頒布された特許第3104009号公報、特開平9-60111号公報(いずれも特願平7-245062号に係るもの)を提出し、異議を申し立てた。
申立の理由は明確ではないが、異議申立書、平成15年5月28日付け回答書の全趣旨から、次の趣旨と解される。
本件発明は、上記公報に記載の発明と同一であって、新規性はなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものであって、本件発明の特許は取り消されるべきものである。

3.異議申立人提出の証拠に記載の発明
(1)特許異議申立人の提出した特許第3104009号公報は、特願平7-245062号に係り、特開平9-60111号として出願公開され、特許請求の範囲のみが補正されて特許され、平成12年10月30日に発行されたものであるから、発明の詳細な説明及び図面の記載内容は同じであって、共に本件特許出願前に頒布されたものである。
そこで、特許第3104009号公報の記載事項を検討すると、同公報(以下、刊行物という。)には、以下の記載が認められる。
(ア)特許請求の範囲において、
「【請求項1】『梁の端部を円柱に巻付く形にしたツバ付筒状に一体化した筒状内面を拡底円錐状にした継手と、筒状で2枚割した拡底円錐状のクサビ状摩擦部材の組合せで柱を拘束して、継手の内面と柱の外面の圧縮力と垂直摩擦力によつて、柱と梁の応力を伝達させる継手』」。
(イ)発明の詳細な説明において、
「【0001】【産業上の利用分野】 この発明のツバ付き筒状の継手に梁の端部を一体化した継手は溶接が不要となり鋳造生産ができるものであり品質管理ができて継手の安定性が高まる。また、現場での組み立てにおいても柱に継手を挿入するだけの簡単作業ですみ工場と現場の双方に工業化率が高く低価額で構造物強度を安定させる建設システムが可能になる。
【0002】【従来の技術】 従来の鉄骨造などの柱と梁の仕口は素材の切断と溶接の精度を求める複雑な加工技術が多く必要であり加工度合いが多いほど強度的安定性が低下すると共に加工費用とエネルギーの消費が大きいのが実状である。
【0003】【発明が解決しようとする課題】 本発明の課題は、柱と梁の結合に際して溶接加工部を低減させてコストの低減と生産性の向上と共に構造物の強度的安定性を高めた建設システムの工業化を促進する所にある。
【0004】【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するため、柱を拘束して梁との結合が可能な一体鋳造のツバ付き筒状継手によつて柱の外面を拘束して、圧縮力、摩擦力を利用して柱と梁の応力を結合させて単純な加工と組立てを可能にする。又、摩擦力を高め、組み立てを容易にするためにクサビ状摩擦片(2)を介在させる。
【0005】【作用】 この継手を使うことで柱と梁の取付け部は、断面積による応力伝達から表面積による応力を加えて、部材間の溶接断面で結合されていたものが鋳造製作された部材の許容力で結合されることとなり構造物の継手強度が安定する。
【0006】【発明の効果】 本発明は、以上説明したように構成されているので柱の加工が激減されコストの削減と構造物の安全性が高められる効果を奏する。
【0007】【図面の簡単な説明】【図1】本発明のツバ付き筒状継手の鳥観図と梁の数による標準的な継手図。【図2】図2は柱とツバ付き筒状継手の結合断面図。【符号の説明】1 ツバ付き筒状継手。2 クサビ状摩擦片。」。
上記記載及び図面を参照すると、刊行物記載の継手は鉄骨造などの柱と梁の結合に際して溶接加工部を低減させ、コストの低減と生産性の向上、構造物の強度的安定性を高めることを課題としている(段落番号0003参照)ことから、柱、ツバ付き筒状継手は鉄製であると考えられ、また、ツバ付き筒状継手の内面の逆テーパー部は図面上同じ肉厚のものを傾斜させて形成しているから、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「外周面の所定高さ位置に、上部側に至るほど肉厚が逓次的に減少するテーパー部が介在されて設けられた鉄骨柱と、鉄骨梁に接合されるべきブラケット部を側面に1ないし4個有する筒形鋼材であって、それ自身の内筒面には下部側に至るほど逓次的に減少する逆テーパー部が形成されており、前記鉄骨柱に挿通されて当該鉄骨柱のテーパー部に対し前記逆テーパー部が両楔状に摩擦定着して所要位置で嵌着されるツバ付き筒状継手にて構成される鉄骨柱梁の接合構造。」
(以下、「刊行物記載の発明」という。)

3.対比、判断
(1)対比
本件発明と刊行物記載の発明とを対比すると、本件発明の「ボックスコア」は、箱状の形態をしたものを意味するから、両者の一致点、相違点は次のとおりと認められる。(符号は省略)
[一致点]
外周面の所定高さ位置に、上部側に至るほど肉厚が逓次的に減少するテーパー部が設けられる鉄骨柱と;鉄骨梁に接合されるべきブラケット部を少なくとも側面の一部に有する筒形鋼材であって、それ自身の内筒面の少なくとも一部には下部側に至るほど逓次的に減少する逆テーパー部が形成されており、前記鉄骨柱に挿通されて当該鉄骨柱のテーパー部に対し前記逆テーパー部が両楔状に摩擦定着して所要位置で嵌着されたツバ付き筒状継手とを包含して構成されることを特徴とする鉄骨柱梁の接合構造。
[相違点1]本件発明においては、上部側に至るほど肉厚が逓次的に減少するテーパー部は、鉄骨柱に形成されているが、刊行物記載の発明においては、鉄骨柱に介在されている点。
[相違点2]本件発明においては、筒形鋼材の内筒面形成された逆テーパー部は、肉厚が減少することにより形成されているのに対し、刊行物記載の発明においては、図面上同じ肉厚のものを傾斜させて形成されている点。
[相違点3]本件発明のツバ付き筒状継手は、ボックスコアを包含しているのに対し、刊行物記載の発明は、ボックスコアとはなっていない点。
(2)新規性について
上記のように本件発明と刊行物記載発明とは相違点1〜相違点3において相違しており、これら相違点は単なる設計上の微差や、周知慣用技術の適用ではないから、刊行物には本件発明が記載されているとすることはできできず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
(3)進歩性について
念のため、進歩性について判断する。
相違点1については、刊行物記載の発明においても、梁が設けられる高さは鉄骨柱の所定の高さであるから、上部側に至るほど肉厚が逓次的に減少するテーパー部は、柱の所定の高さ位置において何らかの手段によって保持されるものであり、当該テーパー部を鉄骨柱に設けるようにすることは、当業者が適宜行うことであって、容易に想到できた事項にすぎない。
また、刊行物記載の逆テーパ部を、相違点2に係る構成のように肉厚を変えることにより形成することは、当業者が適宜採用できる設計的事項にすぎない。
しかしながら、本件発明の相違点3に係る構成のように、ボックスコアとそれに対応する鉄骨柱とを、所定位置で嵌着させることは、本件特許出願前に周知の技術的事項ではなく、該構成を採用することにより明細書記載の作用効果を奏するものである。
よって、本件発明は、刊行物に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとすることはできず、特許法第29条第2項に該当しない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び提出した証拠方法によっては、請求項1に係る発明(本件発明)の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-09-16 
出願番号 特願2001-152793(P2001-152793)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (E04B)
P 1 652・ 113- Y (E04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 藤原 伸二
長島 和子
登録日 2002-06-21 
登録番号 特許第3320708号(P3320708)
権利者 黒田 博信
発明の名称 鉄骨柱梁の接合構造、および鉄骨柱梁の接合工法  
代理人 戸川 公二  

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