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審決分類 審判 判定 審理一般(別表) 属さない(申立て不成立) E03B
管理番号 1084960
判定請求番号 判定2003-60029  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1988-11-07 
種別 判定 
判定請求日 2003-04-03 
確定日 2003-10-01 
事件の表示 上記当事者間の特許第1739598号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「地下貯留槽」は、特許第1739598号発明の技術的範囲に属しない。 (なお、本件特許第1739598号に対しては、別途、無効審判(注1)が請求され、特許請求の範囲を訂正する訂正請求がされている(注2)。このため本件特許は無効となったり、その発明の内容が異なるものとなる可能性があるが、本件判定では、現時点における特許請求の範囲の請求項1に記載された発明に基づいて判断した。 注1:無効審判2002-35325号 注2:平成15年4月14日付けの訂正請求による特許請求の範囲1 「1 地面を掘下げてタンク部を構成し、上記タンク部内に、その底部からグランドライン付近まで、複数の容器状部材を縦横かつ上下に配設して充填し、最上部には、被覆手段を施したことを特徴とする雨水等の貯留浸透施設であって、 容器状部材が、上面を開口し、且つ多数の孔を有し、上記容器状部材の周側板が底部に向かって縮小するテーパ状に構成されて、運搬時に多数の上記容器状部材を重ね合わせることができるようになっており、 上記容器状部材の充填に際しては、容器状部材を下向きにして、下方となる容器状部材を格子の交点相当位置に連接配置して縦横に並べ、前記下方となる容器状部材の上に乗せる上方となる容器状部材を四個の下方の容器状部材の中心に位置させ、前記各容器状部材に形成した上下方向の接続手段で接続して積み重ねて前記タンク部の内部の空隙率を高めるように縦横かつ上下に配設することを特徴とする雨水等の貯留浸透施設。」) 
理由 1 請求の趣旨

本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書に示す「地下貯水槽」が、特許第1739598号の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2 本件発明

本件特許第1739598号は、昭和62年4月23日の出願に係り、平成5年2月26日に設定登録されたものであって、本件発明は、明細書の記載及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】地面を掘下げてタンク部を構成し、上記タンク部内に、その底部からグランドライン付近まで、複数の容器状部材を縦横かつ上下に配設して充填し、最上部には、被覆手段を施したことを特徴とする雨水等の貯留浸透施設。」
そして本件発明は次のように分説される。
A 地面を掘下げてタンク部を構成し、
B 上記タンク部内に、その底部からグランドライン付近まで、複数の容器状部材を縦横かつ上下に配設して充填し、
C 最上部には、被覆手段を施したことを特徴とする
D 雨水等の貯留浸透施設。
(以下、上記A〜Dを本件発明の構成要件A〜Dという。)

3 イ号物件の特定

3-1 請求人の主張
(1)『クロスウエーブ』の単体は、積水化学工業株式会社が製造販売するポリプロピレン成形品の商品名である(甲第1号証)。
(2)『クロスウエーブ』単体は、底部が狭く、底部と対面する開□部が広い、断面が略台形の、同一形状及び大きさの細長い箱状部材を、当該広口開口部の長手方向に取付けた鍔部を介して、複数個(4個または2個)、同一平面で結合した該箱状部材の連結物である。当該連結物には、上下2個の同一連結物と上下方向に嵌合するための複数(4個または3個)の凹部及び凸部が、各々の連結物の箱状部材連結部(谷部)と底部(山脈部)に形成されており、全体として連結部(谷部)と底部(山脈部)に多数の凹凸及び補強リブを有する底浅箱状部材を形成する。
(3)『クロスウエーブ』とは、『クロスウエーブ』単体を上下方向に嵌合せしめた積重ね体若しくは集合体である。底浅箱状部材の底を上向きに、底浅箱状部材の広口開口部を底にして、底浅箱状部材の箱状部材連結部の方向を、上下方向の底浅箱状部材が箱状部材連結部及び底部にある凹凸部が嵌合するように、底浅箱状部材の一段毎に、90度づつ転換しつつ、規則正しく、複数個、積重ねたものである。従い、『クロスウエーブ』とは、細長い箱状部材または当該部材を結合した底浅箱状部材の集合物を構成する。
(4)被請求人は、山形県酒田市北千日堂松境18番1号の特別養護老人ホームの駐車場において、その地下に「クロスウエーブ」を用い2000年3月に「浸透施設」を竣工した(甲第3号証の1及び甲第3号証の2)。
(5)当該「浸透施設」は、積水化学工業株式会社が宣伝カタログ等に開示する、『クロスウェーブ工法』に基づく『クロスウエーブ式地下貯水槽』(甲第1号証)と同一構成からなる地下水槽である。
(6)『クロスウエーブ工法』に基づく浸透型地下貯水槽は、掘削した凹所に透水性シートにより透水層を形成し、その中に『クロスウエーブ』を積層して構成された「浸透施設」である。
(7)なお、『クロスウエーブ式地下貯水槽』は、『クロスウエーブ』を積層してなる「貯留空間」と「雨水等を流入させる施設」及び「貯めた雨水を取り出す施設」を備えてなるもの、とされる(甲第1号証)が、通常の雨水貯水槽では、雨水の流入・流出施設が、機能上、必要不可欠であることは周知である。よって、本判定請求では、これらの施設を除外した(5)で定義された貯留浸透施設をイ号とする。
(8)上記から、雨水の流入(沈砂)・流出施設を除いた、『クロスウエーブ』を充填してなる地下水槽をイ号とする。
(9)イ号物件
本件判定請求に係る特許第1739598号「雨水等の貯留浸透施設」の構成に即して、イ号物件を記載すると次のとおりである。
A)地面を掘下げてタンク部を構成し、
B)その底部及び側面に透水性シートを敷設し、
C)上記タンク部内に、
D)その底部からグランドライン付近まで、
E)複数の『クロスウエーブ』単体を
F)縦横かつ上下に積層して『クロスウエーブ』を形成し、
G)上記積層した『クロスウエーブ』最上部にスペーサを敷設し、
H)タンク最上部には、被覆手段を施した
I)ことを特徴とする雨水等の浸透型地下貯水槽。

3-2 被請求人の主張
(1)[クロスウェーブ]の説明
クロスウェーブ(以下、「骨格部材」と云う。)には、フルサイズのものとハーフサイズのものの2種類が存在する。ハーフサイズのものは、フルサイズのものを中央線で正確に2分割しただけの平面視して長方形状のものである。以下、フルサイズのものについてその構造及び積み上げた状態での嵌合状況を説明する。
添付図面の図10乃至図12において、骨格部材11(フルサイズのもの)は、ポリプロピレンなどの射出成形により形成された平面視すると縦、横共に99.4cmの正方形で、最大高さhが18cmの平盤状成形体である。平面方向をX軸、Y軸とし、それらに直交する方向をZ軸とすると、この骨格部材11は、X軸方向に一定のピッチPXで形成され、断面が台形状で且つY軸方向に延びる4個の山脈部Hと、山脈部Hの間に形成された3筋の渓谷部Lとが交互に連続して力学的に強度が高く側面に孔のない折板構造をなしている。
この山脈部Hの長さ方向両端部には閉鎖壁面Sが存在すると共に、骨格部材11のY軸方向の両端縁には、横方向に細長い連接壁T(幅99.4cm、高さ3.5cm)が形成されている。
なお、上記閉鎖壁面Sは、骨格部材11の全体に加わる垂直方向の荷重に対する強度アップのために設けられている。また、上記連接壁Tは、水平方向の荷重に対する強度アップと骨格部材11全体のねじれ防止及び変形防止の役割を果たしている。さらに、輸送・保管時の収納状態において、上下の骨格部材11の密着を防止し、取り外しを容易にする役割も果たしている。
山脈部Hの頂部はY紬方向に向かって略同一断面を示すが、Z軸方向に最も高い高頂部分HHと僅かに窪んだ平面(以下、この平面を「低頂部分HL」と云う)とが交互に連続して力学的に強度の高く側面に孔のない折板構造をなしている。一方、渓谷部LもY軸方向に向かって略同一の断面形状を有しているが、Z軸方向に最も低い深底部分LLとやや高い平面(以下、この平面を「浅底部分LH」と云う。)とが交互に連続して力学的に強度の高い折板構造をなしている。また、それぞれの山脈部Hと渓谷部Lとの裏面は表面の形状に沿った形状に形成されている。
なお、高頂部分HH又は低頂部分HLの設けられているY軸方向のピッチPYは山脈部H(又は渓谷部L)が設けられているX軸方向のピッチPXと同一である(PY=PX=25cm)。
さらに、高頂部分HHと深底部分LLには、空気抜き及び導水のための貫通孔が2個宛設けられている。また、浅底部分LHのY軸方向両側にあって山脈部Hと渓谷部Lとを結ぶ斜面Cには、補強リブが設けられている。
(2)イ号物件
以上説明したように、甲第3号証の1でいう「浸透施設」をイ号物件(「貯水槽」)の周りに配置しているが、イ号物件の「貯水槽」(Bクロスウェーブ非浸透型貯留施設)の構成は、甲第3号証の2のように全面に遮水シートと保護マットを施した非浸透型貯留施設である。
イ号物件の「貯水槽」を、本件発明の構成に対比させて分説すると次のとおりである。
A 地面を掘下げて保護マットと遮水シートを施工したタンク部を構成し、
B 上記タンク部内に、その底部からタンク部の所定の深さまで、複数の側面に孔のない折板構造の骨格部材を、各段それぞれにおいては同じ向きに、そして奇数段と偶数段とでは相互に90度異なる向きで縦横に配列すると共に、折板構造の骨格部材相互を結合する結合部材は一切用いずに、直上段の骨格部材の中心を直下段の骨格部材の隅部に一致させる如く上方に積み上げて、垂直方向の荷重を均等且つ広い面で支持し、且つ、全体として折板構造の渓谷部は連通して巨大な波板を構成し、更には全ての骨格部材が全体として1個の集合体となるように実質的に一体化され、
C 上記骨格部材に設けられた貫通孔が目詰まりを生じないように、最上段の骨格部材の上面の渓谷部にはスペーサーを嵌合し、最上段の骨格部材の上面との境界を保護マットと遮水シートで画して、最上部に砕石、土砂等による被覆を施した
D 雨水等の非浸透型の貯留施設。

3-3 当審によるイ号物件の特定
(1)上記のように、イ号物件の特定について当事者間において争いがある。
そこで特に、イ号物件が、浸透型か非浸透型かを中心に検討するに、請求人提出のイ号説明書にはイ号物件の具体的な構造や図面が記載されておらず、大略上記3-1に記載した事項が記載されているにすぎない。
そして、甲第3号証の1には、「特別養護老人ホームの駐車場に地下に40m3の防火水槽と調節(整)池100m3を設置しました。・・・地下水涵養に配慮し、貯水槽の他に浸透施設も設けて造成による影響を極力排除するよう設計されています。」と記載され、甲第3号証の2には、「初日・・掘削開始、二日目・・掘削、三日目・・掘削 基面整形、四日目・・防火水槽本体工事 下部 保護マット、遮水シート敷設、五日目・・防火水槽本体工事 マンホール設置 砕石敷設、六日目 防火水槽本体工事 クロスウェーブ組立、七日目・・防火水槽本体工事 遮水シート、保護マット敷設、八日目・・埋戻し、九日目・・埋戻し」と記載されている。
(2)一方、被請求人提出の答弁書において、図面と共にイ号物件の説明が大略上記3-2に記載したようにされている。そして、図1には、「A浸透井戸」が4つ、「Bクロスウェーブ非浸透型貯留施設」が1つ記載され、図2、図3には「A浸透井戸」と「Bクロスウェーブ非浸透型貯留施設」の断面図が示されており、「Bクロスウェーブ非浸透型貯留施設」は、防護マット、遮水シートが底部に敷設され、その上部に、単粒度4号砕石が敷設され、その上部に順に防護マット、クロスウェーブ、遮水シートと保護マットが積み重ねられている状態が示されている。
(3)以上によれば、請求人提出の甲第3号証の2や、甲第1号証においても、クロスウェーブを用いた地下貯水槽は遮水シートが敷設されており、イ号物件が貯水槽であることからも、通常は、遮水シートを用いて、貯水された水が地下に浸透しないようにするものと考えられることから、イ号物件は、掘削した地下に下から順に、遮水シート、砕石、クロスウェーブ、遮水シートと保護マットを敷設した貯水槽であって、貯水槽である以上掘削した地下の側面にも遮水シートが設けられていると考えられ、非浸透型の貯水槽であるといえる。
そして、甲第3号証の1の「地下水涵養に配慮し、貯水槽の他に浸透施設も設けて・・」という記載から、貯水槽とは別に浸透施設が設けられているといえる。
したがって、イ号物件は以下のように特定するのが妥当と考える。

a 地面を掘下げてタンク部を構成し、
b その底部及び側面に非透水性シートを敷設し、
c 上記タンク部内に、その底部からグランドラインの下約1280mmまで、
d 下記に示す複数のクロスウエーブを縦横かつ上下に積層、充填し、
e 最上部には、被覆手段を施した
f 雨水等の非浸透型地下貯水槽。

「クロスウェーブ」(積水化学工業株式会社製)(フルサイズのもの)は、ポリプロピレンなどの射出成形により形成された平面視すると縦、横共に99.4cmの正方形で、最大高さが18cmの平盤状成形体である。「クロスウェーブ」は、平面方向をX軸、Y軸とし、それらに直交する方向をZ軸とすると、X軸方向に一定のピッチPXで形成され、断面が台形状で且つY軸方向に延びる4個の山脈部と、山脈部の間に形成された3筋の渓谷部とが交互に連続して力学的に強度の高い折板構造をなしている。
この山脈部の長さ方向両端部には閉鎖壁面が存在すると共に、「クロスウェーブ」のY軸方向の両端縁には、横方向に細長い連接壁(幅99.4cm、高さ3.5cm)が形成されている。
なお、上記閉鎖壁面は、「クロスウェーブ」の全体に加わる垂直方向の荷重に対する強度アップのために設けられている。また、上記連接壁は、水平方向の荷重に対する強度アップと「クロスウェーブ」全体のねじれ防止及び変形防止の役割を果たしている。さらに、輸送・保管時の収納状態において、上下の「クロスウェーブ」の密着を防止し、取り外しを容易にする役割も果たしている。」

4 イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属するか否かについて

(1)本件発明の構成要件Dの「貯留浸透施設」の技術的意味について
本件発明の明細書を参照すると、「貯留浸透施設」に関して、明細書(本件特許の公告公報である特公平4-26648号公報(甲第2号証)参照)には以下の記載が認められる。
(ア)特許請求の範囲
「・・雨水等の貯留浸透施設。」、
(イ)「発明が解決しようとする問題点」の項
「・・後者の例は、全体がコンクリート作りであって費用が嵩む難点がある。」
(ウ)問題点を解決するための手段
「地面を掘下げてタンク部を構成し・・・た雨水等の貯留浸透施設である。上記タンク部は、基本的には、単純に地面を掘下げて造成したものである。側面には特別にコンクリートを打設するようなことはしないので、適当な傾斜をつけるのが好ましい。」(公報3欄8行〜16行)、
(エ)「作用」の項
「まずこの貯留浸透施設は次のように作用する。・・・しかして容量の確保が容易であり、充分多量の雨水等を貯留することができる。またタンク部の周囲及び底部は、コンクリート等で固めていないので、雨水等は時間の経過にともない徐々に地下に浸透する。・・・しかして、たとえば集中豪雨等があった場合には・・雨水等は一時的にはタンク部内に滞留保管され、道路や宅地周辺等の被害を未然に防止し、若干長期的には、それらの雨水等は地中に浸透し、自然のサイクルに従った作用を行なうものである。しかもこのように雨水等は地中に浸透していくので、オーバーフローが生じにくく、流出口からの流出が少ない。」(同5欄24行〜6欄2行)、
(オ)「第一の実施例」の項
「・・更にタンク部2の周囲及び底部は、コンクリート等により囲まれていないので、雨水等は時間の経過にともなって徐々に地中に浸透する。しかしてもし集中豪雨等があった場合にも、それらの雨水は、側溝10等を通じてタンク部2内に流入し・・・若干長期的には、それらの雨水を地中に浸透させるという、自然のサイクルに従った作用を行なうものである。・・・雨水等は、タンク部2の周囲及び底部を通じて、地中に浸透して行くという好ましい減少により、通常の排水設備とは異なりオーバーフローが生じにくく、流出口11からの雨水の流出も少ない。」(同7欄40行〜8欄18行)、
(カ)「発明の効果」の項
「本発明によれば、施工の容易な簡易な構成で、一時的には、充分に雨水等の自然水を貯留し、かつ若干長期的には、雨水等を地下に浸透させることができる。河川等への雨水の放流に時間差を生じさせるばかりでなく、これを減少させ、またはなくすこともできる。」(同10欄7行〜12行)

上記記載を参照すると、本件発明の構成要件Dの「貯留浸透施設」は、「タンク部の周囲及び底部は、コンクリート等で固めていないので、雨水等は時間の経過にともない徐々に地下に浸透」し、「若干長期的には、(タンク部内に貯留された)それらの雨水等は、(タンク部の周囲及び底部を通じて)地中に浸透し、自然のサイクルに従った作用を行なうものである。しかもこのように雨水等は地中に浸透していくので、オーバーフローが生じにくく、流出口からの流出が少な」くなるものであり、さらに、「河川等への雨水の放流に時間差を生じさせるばかりでなく、これを減少させ、またはなくすこともできる」ものであって、構成要件Dの「浸透」は、貯留された雨水等がタンク部の周囲及び底部から地面へ浸透することを意味することは明らかであるから、「貯留浸透施設」は、雨水等を貯留するとともにその周囲及び底部から地面へ雨水等を浸透させる施設を意味すると考えられる。
(2)一方、イ号物件のタンク部においては、その底部と側面には非透水性シートが設けられ、底部に設けられた非透水性シートの上には複数のクロスウェーブが積層、充填される(イ号物件の構成b、d)ものであって、貯留された雨水等はタンク部内から地中へ浸透しないものである。
したがって、イ号物件は、本件発明の構成要件Dの「雨水等の貯留浸透施設」を充足しないものである。

5 まとめ

以上のように、イ号物件は、少なくとも本件発明の構成要件Dを充足しないから、本件発明のその余の構成要件について判断するまでもなく、イ号物件は本件発明の技術的範囲に属するとすることはできない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲 イ号図面説明書

a 地面を掘下げてタンク部を構成し、
b その底部及び側面に非透水性シートを敷設し、
c 上記タンク部内に、その底部からグランドラインの下約1280mmまで、
d 下記に示す複数のクロスウエーブを縦横かつ上下に積層、充填し、
e 最上部には、被覆手段を施した
f 雨水等の非浸透型地下貯水槽。

「クロスウェーブ」(積水化学工業株式会社製)(フルサイズのもの)は、ポリプロピレンなどの射出成形により形成された平面視すると縦、横共に99.4cmの正方形で、最大高さが18cmの平盤状成形体である。「クロスウェーブ」は、平面方向をX軸、Y軸とし、それらに直交する方向をZ軸とすると、X軸方向に一定のピッチPXで形成され、断面が台形状で且つY軸方向に延びる4個の山脈部と、山脈部の間に形成された3筋の渓谷部とが交互に連続して力学的に強度の高い折板構造をなしている。
この山脈部の長さ方向両端部には閉鎖壁面が存在すると共に、「クロスウェーブ」のY軸方向の両端縁には、横方向に細長い連接壁(幅99.4cm、高さ3.5cm)が形成されている。
なお、上記閉鎖壁面は、「クロスウェーブ」の全体に加わる垂直方向の荷重に対する強度アップのために設けられている。また、上記連接壁は、水平方向の荷重に対する強度アップと「クロスウェーブ」全体のねじれ防止及び変形防止の役割を果たしている。さらに、輸送・保管時の収納状態において、上下の「クロスウェーブ」の密着を防止し、取り外しを容易にする役割も果たしている。」

 
判定日 2003-09-19 
出願番号 特願昭62-101097
審決分類 P 1 2・ 0- ZB (E03B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 山口 由木
藤原 伸二
登録日 1993-02-26 
登録番号 特許第1739598号(P1739598)
発明の名称 雨水等の貯留浸透施設  
代理人 小原 英一  

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