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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B29C
管理番号 1085605
審判番号 無効2002-35384  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-09-01 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-09-11 
確定日 2003-08-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2562929号発明「内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。特許第2562929号の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第2562929号の発明についての出願は、昭和63年2月26日に出願され、平成8年9月19日にその発明について特許の設定登録がなされたものである。
(2)これに対して、平成14年9月11日に日本製紙株式会社より無効審判の請求がなされ、平成14年12月9日に答弁書及び訂正請求書が提出され、平成15年2月7日に請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、平成15年2月7日に口頭審理が行われ、その後平成15年2月24日に被請求人より第2答弁書が提出されている。
2.訂正の内容について
ア)請求項1において、「紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記封筒貼り予定部分」の記載を「紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記裏面層を厚さ5-200μmの範囲内で形成し、前記封筒貼り予定部分」と訂正する。
イ)請求項2において、「紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記封筒貼り予定部分」の記載と「紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記裏面層を厚さ5-40μmの範囲内で形成し、前記封筒貼り予定部分」と訂正する。
3.訂正の可否についての判断
(1)これらの訂正事項について検討すると、上記各訂正事項は、裏面層の厚さを限定することにより特許請求の範囲を減縮することを目的としたものであり、かつ訂正事項は願書に最初に添付した明細書第9頁第16-18行、及び第10頁末行-第11頁第1行に記載されている事項であるから、上記各訂正事項は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)したがって、この訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書、及び同条第5項において準用する平成6年法改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
4.本件の発明
本件の発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】ポリオレフィン系樹脂による表面層と40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂による裏面層とを具備する紙容器用積層シートによって、容器内周面層が前記積層シートによる裏面層で構成される紙容器を得る際に、前記積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳した状態で、前記紙容器用積層シートにおける表面層と裏面層とを熱溶着することからなる紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記裏面層を厚さ5-200μmの範囲内で形成し、前記封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層とのそれぞれに火炎処理を施すことによって、前記表面層と裏面層とを熱溶着させた後、両層が熱溶融状態にある間に、前記積層シートの一方の側辺部と他方の側辺部との重畳部分を加圧することを特徴とする内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法。
【請求項2】ポリオレフィン系樹脂による表面層とエチレン-ビニルアルコール系共重合体による裏面層とを具備する紙容器用積層シートによって、容器内周面層が前記積層シートによる裏面層で構成される紙容器を得る際に、前記積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳した状態で、前記紙容器用積層シートにおける表面層と裏面層とを熱溶着することからなる紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記裏面層を厚さ5-40μmの範囲内で形成し、前記封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層とのそれぞれに火炎処理を施すことによって、前記表面層と裏面層とを熱溶着させた後、両層が熱溶融状態にある間に、前記積層シートの一方の側辺部と他方の側辺部との重畳部分を加圧することを特徴とする内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法。」
5.請求人の主張及び被請求人の主張の概略
審判請求人は、本件の請求項1、2に係る発明の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件発明は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出している。
これに対して、被請求人は、審判請求人の上記主張は妥当性のないものである旨主張している。
6.当審の判断
(1)甲第1号証-甲第5号証
ア)甲第1号証(特開昭62-290534号公報)には、次の事項が記載されている。
A)「ペーパーボードのカートンのための積層品およびその形成方法」について記載されており、
「1.以下のものを含む積層体から構成された精油および/または風味を含有する液体用の容器:
(a)ペーパーボードの基体:
(b)上記ペーパーボードの基体の外側表面に塗布された熱封緘が可能な低密度ポリエチレンポリマーまたはグリコール変性ポリエチレンテレフタレートの外側層:
(c)上記ペーパーボードの基体の内側表面に塗布された熱封緘が可能な低密度ポリエチレンポリマーの内側層:および
(d)上記ポリエチレンポリマーの上記内側層の外表面に塗布され、250゜F-500゜Fの範囲の温度で通常の装置により熱封緘することのできる、熱封緘が可能なグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)の層。」第1頁左下欄第6行-末行)、
B)「前記外側層が、前記積層体の熱封緘可能性を強化すべく火炎処理された低密度ポリエチレンポリマーである。」(第1頁右下欄第5-7行)、
C)「前記熱封緘可能な低密度ポリエチレンポリマーの前記内側層の前記表面が、前記熱封緘可能なPETG層の付着を強化すべく火炎処理される。」(第1頁右下欄第13-15行)、
D)「本発明は、特に柑橘類ジュースや他の液体の容器の製造に使用されるペーパーボードの積層体として有用である。そのような容器は閉じ合せや密封のために熱封緘を利用し、折重ねた箱、正方形や長方形の容器やカートン、または円筒形のチューブのようにもされる。」(第4頁右下欄第9-14行)
E)「本発明は改良された熱封緘可能な素材接触品を含む障壁積層体に関し、その素材接触品は柑橘類その他のジュースの風味(フレーバー)または香りの成分を吸収したり透過することのないものである。」(第3頁左上欄下から5-末行)。
イ)甲第2号証(特開昭63-3950号公報)には、次の点が記載されている。
A)「改良されたジュース包装のための熱封緘可能な障壁材料」について記載されており、
「1.以下のものを含む積層体から構成された精油および/または風味を含有する液体用の容器:
(a)ペーパーボードの基体:
(b)上記ペーパーボードの基体の外側表面に塗布された熱封緘が可能な低密度ポリエチレンポリマーまたは低密度ポリエチレンポリマーとエチレンビニルアルコールコポリマーとの混合物の外側層;
(c)上記ペーパーボードの基体の内側表面に塗布された熱封緘が可能な低密度ポリエチレンポリマーの内側層:および
(d)上記ポリエチレンポリマーの上記内側層の外表面に塗布され、250゜F-500゜Fの範囲の温度で通常の装置により熱封緘することのできる、熱封緘が可能なエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)の層。」第1頁左下欄第6行-右下欄第1行)、
B)「前記外側層(b)が、前記積層体の熱封緘可能性を強化すべく火炎処理されたな低密度ポリエチレンポリマーである」(第1頁右下欄第6-8行)、
C)「前記熱封緘可能な低密度ポリエチレンポリマーの前記内側層の前記表面が、前記熱封緘可能なEVOH層の付着を強化すべく火炎処理される」(第1頁右下欄第14-16行)、
D)「本発明は、特に柑橘類ジュースや他の液体の容器の製造に使用されるペーパーボードの積層体として有用である。そのような容器は閉じ合せや密封のために熱封緘を利用し、折重ねた箱、正方形や長方形の容器やカートン、または円筒形のチューブのようにもされる。」(第5頁左上欄第2-7行)
E)「本発明は改良された熱封緘可能な素材接触品を含む障壁積層体に関し、その素材接触品は柑橘類その他のジュースの風味(フレーバー)または香りの成分を吸収したり透過することのないものである。」(第3頁右上欄第9-13行)。
ウ)甲第3号証(「EASTMAN PLASTICS」(Kodak社、March22,1982発行)には、
「PETG5116のGlass Transition Temperature (Tg)(ガラス転位温度)が58℃である」、
が記載されている。
エ)甲第4号証(「白板紙・紙器」第172-187頁、株式会社紙業タイムス社、昭和54年12月20日発行)には、
「たとえばミルクカートン・・・の貼りには普通の接着剤では無理のことが多いので、ガスまたは電気で塗布された熱可塑性樹脂を溶かして圧着し、接着する方法がとられる。溶融してから接着するまでの時間が短いので、ストレートタイプの貼り機が主で、フレームシーラー機が使用される。貼り機のスピードは500-600m/分が標準のようである。」(第185頁末行-第187頁第6行)、
が記載されている。
オ)甲第5号証(「最新紙パルプ技術」第351-356頁、株式会社紙業タイムス社、昭和54年12月15日発行)には、
「フレームシーラーはガス火焔でポリエチレンラミされたミルクカートンの両側をそれぞれ表裏加熱を行って、折り込み加圧シールする機械である。」(第353頁第3-8行)、
点が記載されている。
(2)対比・判断
1)そこで、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1号証発明」という。)とを比較する。
本件発明1の実施例に記載されている低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂(PETG)は、甲1号証発明におけるPETGと同じ低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂であることは明かである。そして、本件発明1と甲1号証発明とは、いずれも「ポリオレフィン系樹脂による表面層と低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂による裏面層とを具備する紙容器用積層シートを熱封緘(熱溶着)することによって、内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器を得る」点で同じである。
さらに、甲1号証発明のものも「容器は閉じ合せや密封のために熱封緘を利用し、折重ねた箱、正方形や長方形の容器やカートン、または円筒形のチューブのようにもされる。」(上記5.(1)D)参照)と記載されているように、「積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳した状態で、前記紙容器用積層シートにおける表面層と裏面層とを熱溶着する」点で本件発明1と同じである。
そうすると、両者は、
「ポリオレフィン系樹脂による表面層と低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂による裏面層とを具備する紙容器用積層シートによって、容器内周面層が前記積層シートによる裏面層で構成される紙容器を得る際に、前記積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳した状態で、前記紙容器用積層シートにおける表面層と裏面層とを熱溶着することからなる紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層とを熱溶着させることを特徴とする内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法。及び、「紙容器用積層シートの表面層と裏面層に火炎処理を施すことによって、前記表面層と裏面層とを熱溶着させた」
点で一致し、
a)本件発明1の低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂は、「40℃以上のガラス転移温度を有する」のに対し、甲1号証発明のものは、この数値限定がない点、
b)本件発明1のものは、「裏面層を厚さ5-200μmの範囲内で形成した」のに対し、甲1号証発明のものは、裏面層の数値限定がない点、
c)本件発明1のものは、「封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層とのそれぞれに火炎処理を施すことによって、前記表面層と裏面層とを熱溶着させた後、両層が熱溶融状態にある間に、前記積層シートの一方の側辺部と他方の側辺部との重畳部分を加圧する」のに対し、甲1号証発明のものは、封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートのポリオレフィン系樹脂による表面層と裏面層とを熱封緘するとのみ記載されている点、
の三点において互いに相違する。

上記相違点について検討する。
相違点a)について:
甲1号証発明における低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂であるコダックコダボンドコポリエステル(PETG)5116についてのガラス転移温度については記載されていないが、甲第3号証の記載によれば、コダック社のPETG5116についてのガラス転移温度は58℃であるので、甲1号証発明におけるPETG5116層は40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂であることは明かであるから、この点a)は甲第1号証に記載されているものといえる。
相違点b)について:
一般に飲み物用紙容器の分野において、ヒートシールに適した範囲として低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂のライナー(裏面層)を厚さ5-200μmの範囲内で形成することは、単なる慣用技術にすぎない(必要ならば、特開昭62-128752号公報、特開昭55-166247号公報参照)。
相違点c)について:
本件発明1は、火炎処理を利用した熱溶融法によって、ポリオレフィン系樹脂による層と低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂による層という異種樹脂層同士の強固な接合を可能にしたものであるが、甲1号証発明においても、「熱封緘可能な低密度ポリエチレンポリマーの前記内側層の前記表面が、前記熱封緘可能なPETG層の付着を強化すべく火炎処理される」(第2頁左下欄下から3行-末行)と記載されているとおり、火炎処理を施すことによって異種樹脂層同士の強固な接合を可能にするという点は両者において同じである。
そして、本件発明1の「火炎処理を施すことによって、前記表面層と裏面層とを熱溶着させた後、両層が熱溶融状態にある間に、前記積層シートの一方の側辺部と他方の側辺部との重畳部分を加圧する」点は、甲第4号証及び甲第5号証に記載されたとおり、本件発明1の出願前、周知の技術手段にすぎない。また、本件発明1のように、封筒筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートに火炎処理を施すに際し、該積層シートの表面層と裏面層とのそれぞれに火炎処理を施す点については、熱溶着性をよくしようとするには接合する両面を溶融すればよいことであって、そのようにすることは当業者が必要に応じて適宜なし得る程度であって、その点に格別の困難性があるものとはいえない。
してみれば、相違点c)は、甲1号証発明に周知の技術手段を単に付加した程度にすぎないものといえる。

2)次に、本件特許の請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)と甲第2号証に記載された発明(以下、「甲2号証発明」という。)とを比較する。
まず本件発明2と甲2号証発明とは、いずれも「ポリオレフィン系樹脂による表面層とエチレン-ビニルアルコール系共重合体による裏面層とを具備する紙容器用積層シートを熱封緘(熱溶着)することによって、内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器を得る」点で同じである。
そして、甲2号証発明のものも「容器は閉じ合せや密封のために熱封緘を利用し、折重ねた箱、正方形や長方形の容器やカートン、または円筒形のチューブのようにもされる。」(上記5.(1)D)参照)と記載されているように、「積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳した状態で、前記紙容器用積層シートにおける表面層と裏面層とを熱溶着する」点で本件発明2と同じである。
そうすると、両者は、
「ポリオレフィン系樹脂による表面層とエチレンビニルアルコール系共重合体による裏面層とを具備する紙容器用積層シートによって、容器内周面層が前記積層シートによる裏面層で構成される紙容器を得る際に、前記積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳した状態で、前記紙容器用積層シートにおける表面層と裏面層とを熱溶着することからなる紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層とを熱溶着させることを特徴とする内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法。」
で一致し、
a)本件発明2のものは、「裏面層を厚さ5-40μmの範囲内で形成した」のに対し、甲2号証発明のものは、裏面層の数値限定がない点、
b)本件発明2のものは、「封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層とのそれぞれに火炎処理を施すことによって、前記表面層と裏面層とを熱溶着させた後、両層が熱溶融状態にある間に、前記積層シートの一方の側辺部と他方の側辺部との重畳部分を加圧する」のに対し、甲2号証発明のものは、「封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層を熱封緘する」とのみ記載されている点、
の二点において互いに相違する。
上記相違点について検討する。
相違点a)について:
一般に飲み物用紙容器の分野において、ヒートシールに適した範囲として低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂のライナー(裏面層)を厚さ5-200μmの範囲内で形成することは、単なる慣用手段にすぎない(必要ならば、特開昭62-128752号公報、特開昭55-166247号公報参照)。
相違点b)について:
本件発明2は、火炎処理を利用した熱溶融法によって、ポリオレフィン系樹脂による層とエチレンビニルアルコール系共重合体による層という異種樹脂層同士の強固な接合を可能にしたものであるが、甲2号証発明においても、「低密度ポリエチレンポリマーの前記内側層が、引き続き塗布される熱封緘可能な前記EVOH層の付着を強化すべく火炎処理される」(第2頁左下欄下から5-3行)と記載されているとおり、火炎処理を施すことによって異種樹脂層同士の強固な接合を可能にするという課題は両者において同じである。
そして、本件発明2の「火炎処理を施すことによって、前記表面層と裏面層とを熱溶着させた後、両層が熱溶融状態にある間に、前記積層シートの一方の側辺部と他方の側辺部との重畳部分を加圧する」点は、甲第4号証及び甲第5号証に記載されたとおり、本件発明2の出願前、周知の技術手段にすぎない。また、本件発明2のように、封筒筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートに火炎処理を施すに際し、該積層シートの表面層と裏面層とのそれぞれに火炎処理を施す点については、熱溶着性をよくしようとするには接合する両面を溶融すればよいことであって、そのようにすることは当業者が必要に応じて適宜なし得る程度であって、その点に格別の困難性があるものとはいえない。
してみれば、相違点b)は、甲2号証発明に周知の技術手段を単に付加した程度にすぎないものといえる。
7.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1、2に係る発明は、甲第1号証-甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1、2に係る発明は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号により、これを無効にすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリオレフィン系樹脂による表面層と40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂による裏面層とを具備する紙容器用積層シートによって、容器内周面層が前記積層シートによる裏面層で構成される紙容器を得る際に、前記積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳した状態で、前記紙容器用積層シートにおける表面層と裏面層とを熱溶着することからなる紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記裏面層を厚さ5〜200μmの範囲内で形成し、前記封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層とのそれぞれに火炎処理を施すことによって、前記表面層と裏面層とを熱溶融させた後、両層が熱溶融状態にある間に、前記積層シートの一方の側辺部と他方の側辺部との重畳部分を加圧することを特徴とする内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法。
【請求項2】ポリオレフィン系樹脂による表面層とエチレン-ビニルアルコール系共重合体による裏面層とを具備する紙容器用積層シートによって、容器内周面層が前記積層シートによる裏面層で構成される紙容器を得る際に、前記積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳した状態で、前記紙容器用積層シートにおける表面層と裏面層とを熱溶着することからなる紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記裏面層を厚さ5〜40μmの範囲内で形成し、前記封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層とのそれぞれに火炎処理を施すことによって、前記表面層と裏面層とを熱溶融させた後、両層が熱溶融状態にある間に、前記積層シートの一方の側辺部と他方の側辺部との重畳部分を加圧することを特徴とする内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法。
【発明の詳細な説明】
〈産業上の利用分野〉
本発明は内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法に関するもので、内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器成形用素材による封筒貼り部を、極めて効率良く形成し得る方法を提供するものである。
〈従来の技術〉
従来の紙容器は、紙容器を得る際に使用される成形用素材である積層シートの有する熱溶着能によって接合部が形成されているのが普通であり、一般的には、容器内の内填物と接する容器内周面層となる層がポリオレフィン系樹脂層で形成されている成形用素材における前記ポリオレフィン系樹脂層の有する熱溶着能によって接合部が形成されている。
〈発明が解決しようとする問題点〉
ところで、前記容器内周面層がポリオレフィン系樹脂層で構成されている容器は、該容器の成形用素材たる積層シートを得る際のポリオレフィン系樹脂層の形成時や該積層シートによる紙容器の成形時に、ポリオレフィン系樹脂が熱分解を受けて脂肪族炭化水素等の揮発性成分を生成することとなり、この揮発性成分が容器内に収容されている内填物内に移行する結果、内填物に変味や異臭が発生するという弊害を有するばかりでなく、前記紙容器の内周面層をなすポリオレフィン系樹脂層は、内填物中の着香成分を吸着し易かったりあるいは透過し易かったりするため、容器内の内填物の風味が変化して損なわれ易いという欠点をも有する。
これに対して本発明は、内填物に対する保香性能に優れた性質を奏する紙容器成形用素材によって紙容器を成形する際の封筒貼り部を極めて効率良く形成する方法を提供するものである。
〈問題点を解決するための手段〉
本第1の発明の内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法は、ポリオレフィン系樹脂による表面層と40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂による裏面層とを具備する紙容器用積層シートによって、容器内周面層が前記積層シートによる裏面層すなわち40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層で構成される紙容器を得る際の封筒貼り部の形成方法であって、前記裏面層を厚さ5〜200μmの範囲内で形成し、前記積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳した状態で、前記紙容器用積層シートにおける表面層と裏面層とを熱溶着することからなる封筒貼り部の形成を、封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層とのそれぞれに火炎処理を施すことによって前記表面層と裏面層とを熱溶融させた後、両層が熱溶融状態にある間に前記積層シートの一方の側辺部と他方の側辺部との重畳部分を加圧するものである。
本第2の発明の内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法は、ポリオレフィン系樹脂による表面層とエチレン-ビニルアルコール系共重合体による裏面層とを具備する紙容器用積層シートによって、容器内周面層が前記積層シートによる裏面層すなわちエチレン-ビニルアルコール系共重合体層で構成される紙容器を得る際の封筒貼り部の形成方法であって、前記裏面層を厚さ5〜40μmの範囲内で形成し、前記積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳した状態で、前記紙容器用積層シートにおける表面層と裏面層とを熱溶着することからなる封筒貼り部の形成を、封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層とのそれぞれに火炎処理を施すことによって前記表面層と裏面層とを熱溶融させた後、両層が熱溶融状態にある間に前記積層シートの一方の側辺部と他方の側辺部との重畳部分を加圧するものである。
前記構成からなる本第1の発明で利用する紙容器用積層シートにおける裏面層、すなわち、40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層は、該樹脂層を構成している線状飽和ポリエステル樹脂のガラス転移温度未満の温度雰囲気中で優れた保香性能を発揮するものであり、一般的に、紙容器内の内填物が40℃未満に維持されるものであることとの関係で、前記線状飽和ポリエステル樹脂層による優れた保香性能が利用し得るものである。
なお、前記線状飽和ポリエステル樹脂層は、低結晶性の樹脂で形成されているものであるから、例えば、内填物の充填を熱充填で行なう場合等の加熱を受けても、前記ポリエステル樹脂層の熱接着特性が損なわれるようなことがなく、ポリオレフィン系樹脂層との間の熱接着部に優れた接着強度が得られるものである。
ガラス転移温度が40℃以上の飽和ポリエステル樹脂層は、例えば、エチレングリコール,プロピレングリコール,1,4-ブタンジオール,1,4-シクロヘキサンジメタノール等のアルコール成分と、アジピン酸,セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸,イソフタル酸,ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等によるジカルボン酸成分との共縮合重合体によって形成されているものであり、具体的には、エチレングリコールとテレフタル酸,エチレングリコールとイソフタル酸とテレフタル酸,1,4-シクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールとテレフタル酸,プロピレングリコールとイソフタル酸とテレフタル酸等の共縮合重合体を利用して形成し得るが、酸成分中の脂肪族ジカルボン酸成分が10重量%以上になる共縮合重合体の場合には、この共縮合重合体による飽和ポリエステル樹脂層は、その保香性能が低下する傾向を有するので好ましくない。
なお、前記40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層は、これが厚さ5μm未満になると樹脂層の安定性が悪く、ヒートシールによる密封性が悪くなり、また、200μmを越えるようになると、得られる紙容器用積層シートが固くなって、折り曲げ加工特性が悪くなることから、通常は、厚さ5〜200μmの範囲内で形成されるものである。
また、前記構成からなる本第2の発明で利用する紙容器用積層シートにおける裏面層、すなわち、エチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂層は、該樹脂層を構成するエチレン-ビニルアルコール系共重合体のエチレン含有量が25モル%未満の場合には、ヒートシールに要する温度が極めて高くなるため実用的でなく、またエチレン含有量が60モル%を越える場合には、内填物における着香成分の吸着傾向が高くなることから、エチレン含有量が25〜60モル%のエチレン-ビニルアルコール系共重合体を利用するのが好ましい。
なお、前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂層の場合には、該層の厚さが5μm未満になると樹脂層の安定性が悪く、また、40μmを越えるようになると該樹脂層の耐衝撃性が低下するようになるので、エチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂層は、5〜40μmの範囲内で形成されていることが好ましい。
本各発明で利用する積層シートにおける表面層は、これらの積層シートによって成形される紙容器に外部からの耐水性を付与するものであると同時に、前述の各積層シートの裏面層との間に火炎シール法による熱溶着性能をもたらすものであり、例えば、低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,エチレン-酢酸ビニル共重合体,エチレン-アクリル酸共重合体,エチレン-アクリル酸メチル共重合体,エチレン-α・オレフィン共重合体,更にはポリプロピレン等によって、厚さ3〜150μm程度に形成されているものである。
本各発明で使用される紙容器用積層シートは、前記40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層またはエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂層からなる裏面層と、ポリオレフィン系樹脂による表面層とが、包装材用基材に積層されているものであって、紙容器に成形されるに適した積層シートとなり得る包装材用基材、例えば、アルミニュウム箔,紙層,オレフィン系樹脂層,ポリエステル延伸フィルム層等を利用した厚さ40〜1000μm程度の包装材用基材が使用されるものである。
なお、前述の40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層またはエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂層からなる裏面層は、前記包装材用基材に対して、例えば、接着性ポリオレフィン系樹脂やイソシアネート系接着剤等の接着剤層を利用して積層されるのが一般的である。
前記各紙容器用積層シートは、例えば、ブリックタイプ,ゲーベルトップタイプ,更には円筒体等の紙容器に成形されるものであり、主として胴貼り部分をなす封筒貼り予定部分の接合面となる表面層と裏面層とに火炎処理が施されるものである。
この封筒貼り部分の接合面となる表面層と裏面層とに施される火炎処理は、通常10mm程度の細幅状からなるシール予定部分に対して施されるものであって、シール部の温度が180〜200℃程度,ガス圧5mmAq,空気圧35〜60mmAq程度の火炎処理装置によって、処理速度200m/min.程度で実施されるもので、火炎処理された表面層すなわちポリオレフィン系樹脂層は、該樹脂層の1部分が溶融,酸化されて、前記樹脂層の表面張力が当該積層シートの裏面層の表面張力と同一程度となる程度に火炎処理されるのが好ましく、また、火炎処理された裏面層すなわち40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層またはエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂層は、前記火炎処理によって樹脂層表面が荒らされ、微細な多数の凹凸群が前記樹脂層面に生成されるように火炎処理されるのが好ましい。
〈実施例〉
以下、本発明の内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法の具体的な構成を実施例をもって説明する。
実施例1
秤量400g/m2の耐酸紙/厚さ15μmのアイオノマー樹脂「ハイミラン1652:三井デュポンポリケミカル(株)製」層/厚さ9μmのアルミニュウム箔/厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層からなる積層構成の包装材用基材に対して、前記包装材用基材の耐酸紙面に、厚さ30μmのポリオレフィン系樹脂「ミラソン16P:三井石油化学工業(株)製」層からなる表面層を形成し、また、前記包装材用基材の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層面に、厚さ30μmのエチレン-α-オレフィン共重合体樹脂「ウルトゼックス2020L:三井石油化学工業(株)製」層/厚さ10μmの接着性ポリオレフィン樹脂「アドマーAT469C:三井石油化学工業(株)製」層/厚さ20μmの線状飽和ポリエステル樹脂「PET G 6763:ガラス転移温度81℃,イーストマンコダック社製」層からなる三層共押し出しフィルムを、ポリエステル樹脂層が裏面層となるようにして積層することによって、本第1の発明で使用する紙容器用積層シートの1実施例品を得た。
次いで、前記積層シートの相対向する1対の側辺部の幅約10mmに亘る表面層と裏面層とを火炎処理に付した後に、前記火炎処理が付された表面層と裏面層とを接当させることからなる側辺部同士の重畳部を形成し、更に、ゴムロールによる加圧を前記重畳部に施すことによって、前記積層シートにおける裏面層が内周面層で構成されている封筒貼り部をエンドレス状に形成した。
なお、前記火炎処理は、積層シートの表面層に対しては、ガス圧5mmAq,空気圧39mmAqの予備処理用第1バーナーと、ガス圧5mmAq,空気圧47mmAqの第2バーナーとによって、また、積層シートの裏面層に対しては、ガス圧5mmAq,空気圧44mmAqの予備処理用第1バーナーと、ガス圧5mmAq,空気圧60mmAqの第2バーナーとによって、コンベアスピード200m/mim.で実施したもので、火炎処理面の加熱温度は250℃である。
得られた封筒貼り部の接合面の剥離を手指先で行なったところ、紙層内での断層破壊が生じてしまい、積層シートの表面層と裏面層との間の界面を剥離することはできなかった。
比較例1
前記実施例1で使用した紙容器用積層シートと同一の構成の積層シートによって、前記積層シートにおける裏面層が内周面積とされている封筒貼り部を、側辺部同士の重畳部の上,下に320℃のヒートシールバーを接当し、積層シート面が300℃になるまで、2Kg/cm2の圧力を付加しながら接着することによって、形成した。
得られた封筒貼り部の接合面の剥離を手指先で行なったところ、積層シートの表面層と裏面層との間の界面での剥離が容易に行なえた。
実施例2
坪量400g/m2の耐酸紙/厚さ15μmのアイオノマー樹脂「ハイミラン1652:三井デュポンポリケミカル(株)製」層/厚さ9μmのアルミニュウム箔/厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層からなる積層構成の包装材用基材に対して、前記包装材用基材の耐酸紙面に、厚さ30μmのポリオレフィン系樹脂「ミラソン16P:三井石油化学工業(株)製」層からなる表面層を形成し、また、前記包装材用基材の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層面に、厚さ30μmのエチレン-α-オレフィン共重合体樹脂「ウルトゼックス1520L:三井石油化学工業(株)製」層/厚さ15μmの接着性ポリオレフィン系樹脂「ノバテック220L:三菱化成工業(株)製」層/厚さ15μmのエチレン-ビニルアルコール系共重合体「エバールG156:(株)クラレ製」層からなる三層共押し出しフィルムを、該フィルムにおけるエチレン-ビニルアルコール系共重合体層が裏面層となるようにして積層することにより、本第2の発明で使用する紙容器用積層シートの1実施例品を得た。
次いで、前記積層シートの相対向する1対の側辺部の幅約10mmに亘る表面層と裏面層とに対して、前述の実施例1で施したものと同一の条件による火炎処理を施し、更にゴムロールによる加圧処理によって、前記積層シートにおける裏面層が内周面層で構成されている封筒貼り部を、エンドレス状に形成した。
得られた封筒貼り部の接合面の剥離を手指先で行なったところ、紙層内での断層破壊が生じてしまい、積層シートの表面層と裏面層との間の界面を剥離することはできなかった。
比較例2
前記実施例2で使用した紙容器用積層シートと同一の構成の積層シートによって、前記積層シートにおける裏面層が内周面層とされている封筒貼り部を、側辺部同士の重畳部の上,下に320℃のヒートシールバーを接当し、積層シート面が300℃になるまで、2Kg/cm2の圧力を付加しながら接着することによって、形成した。
得られた封筒貼り部の接合面の剥離を手指先で行なったところ、積層シートの表面層と裏面層との間の界面での剥離が容易に行なえた。
〈発明の作用,効果〉
本各発明の内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法は、ポリオレフィン系樹脂による表面層と、40℃以上のガラス転移温度を有する厚さ5〜200μmの低結晶性線状飽和ポリエステルまたは厚さ5〜40μmのエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂による裏面層とを具備する紙容器用積層シートによって、容器内周面層が前記積層シートによる裏面層で構成される紙容器を得る際に、前記積層シートの一方の側辺部上に他方の側辺部を重畳した状態で、前記紙容器用積層シートにおける表面層と裏面層とを熱溶着することからなる紙容器における封筒貼り部の形成方法において、前記封筒貼り予定部分の接合面となる紙容器用積層シートの表面層と裏面層とのそれぞれに火炎処理を施すことによって、前記表面層と裏面層とを熱溶融させた後、両層が熱溶融状態にある間に前記積層シートの一方の側辺部と他方の側辺部との重畳部分を加圧するものである。
しかして、前記本各発明においては、火炎処理された表面層すなわちポリオレフィン系樹脂層は、該樹脂層の1部分が溶融,酸化されて、前記樹脂層の表面張力が、当該積層シートの裏面層の表面張力と同一程度となる程度となっており、また、火炎処理された裏面層すなわち40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層、または、エチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂層は、該樹脂層表面が荒らされて微細な多数の凹凸群が前記樹脂層面に生成されているので、火炎処理に続く加圧工程で、表面が溶融状態にあるポリオレフィン系樹脂層が、低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層、または、エチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂層の表面の凹凸の凹部内に深く食い込むようにして侵入し、両者の間の強固な接合が得られるものである。
本各発明は、保香性能に優れた性質を有する40℃以上のガラス転移温度を有する低結晶性線状飽和ポリエステル樹脂層またはエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂層と接合される樹脂層として、ポリオレフィン系樹脂層を選択することによって、初めて、火炎処理を利用した熱融着法によって、前記異種樹脂層同士の間の強固な接合が可能となったものであり、火炎処理を利用した熱融着法によって封筒貼り部を形成するものであるから、内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部を、極めて効率の良い熱シール方法で形成し得るものである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-06-04 
結審通知日 2003-06-09 
審決日 2003-06-25 
出願番号 特願昭63-45650
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (B29C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森林 克郎  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 山崎 豊
杉原 進
登録日 1996-09-19 
登録番号 特許第2562929号(P2562929)
発明の名称 内填物に対する保香特性に優れた性質を有する紙容器における封筒貼り部の形成方法  
代理人 小林 茂雄  
代理人 金山 聡  
代理人 小田 淳子  
代理人 金山 聡  

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