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審決分類 審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない G02F
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない G02F
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない G02F
管理番号 1085613
審判番号 無効2002-35359  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-11-19 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-08-29 
確定日 2003-09-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2633407号発明「アクティブマトリクス表示装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2633407号に係る手続の経緯は以下のとおりである。
平成 3年 5月 8日 特許出願
平成 9年 4月25日 設定登録
平成14年 8月29日 ベンクジャパン株式会社より無効審判請求
平成15年 2月14日 口頭審理
平成15年 2月21日 無効理由通知
平成15年 4月23日 意見書及び訂正請求書提出

2.訂正の適否について
2-1.訂正事項
平成15年4月23日付け訂正請求は以下のものである。
<訂正事項>
特許請求の範囲の請求項1の記載中「他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して重畳され」を「他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して面領域で重畳され」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項に関し、特許明細書には「面領域」との直接の記載はない。
特許明細書には、「【0023】・・・図3において、導電体片48は下方の導電体部47の先端から少し突出した状態で該導電体部47の先端を完全に覆うようにして、絶縁膜を介して重畳されている。」、「【0028】・・・絵素電極41の隅部には先端部が絵素電極41に重畳される矩形状をなす導電体部47が形成される。・・・加えて、導電体部47の先端部上方には、該先端部の全面を覆い、且つ先端が導電体部47よりも突出する導電体片48がゲート絶縁膜13を介して重畳される。該導電体片48は導電体部47と交差する方向に長い矩形状をなす。」、「【0036】・・・絵素欠陥を確認すると、・・・および導電体部47と導電体片48との重畳部に・・・YAGレーザー光を照射する。・・・これにより、レーザー光が照射された部分の端部において上下の導電体が短絡される。
【0037】なお、導電体部47と導電体片48との重畳部におけるレーザー光の照射部は図3に破線で示される照射領域51とする。・・・【0038】上記の照射領域51にレーザー光を照射する場合は、図中に網掛け線52で示すように、導電体部47と導電体片48との接続部における周長を図8(b)に示される上記従来例の周長に比べて格段に大きくできる。また、図から明かなように、導電体片48の面積に比べて照射領域51の面積が小さくなっている。」と記載されており、また図3には、導電体部47の上方約1/3の部分が導電体片48により覆われていることがみてとれ、また網掛け線52で示された領域が導電体部47と導電体片48との重畳部にあることがみてとれる。
上記特許明細書の記載及び図面から見てとれる事項から、導電体部47と導電体片48とが絶縁膜を介して重畳されている部分が「面領域」であることは明らかであるから、上記事項は明細書に記載されているに等しい事項である。
よって、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮に当たるものであって、願書に添付した明細書の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

2-3.独立特許要件の判断
2-3-1.訂正後の発明
平成15年4月23日付け訂正請求書による訂正後の請求項に係る発明は、請求項1ないし3に記載された次のものである。
「【請求項1】一対の絶縁性基板の何れか一方の基板上に走査線および信号線を格子状に配線し、該走査線および信号線で囲まれた領域に絵素電極をそれぞれ配設すると共に、該絵素電極と該走査線および信号線にそれぞれスイッチング素子を接続したアクティブマトリクス液晶表示装置において、該絵素電極に向けて該信号線から突出形成され、該絵素電極と電気的に非接触の信号線突出部と、該信号線突出部に一端側が絶縁膜を介して重畳され、該信号線、該走査線および該絵素電極と電気的に非接触の導電体部と、該導電体部の他端側に、他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して面領域で重畳され、該絵素電極に電気的に接触し、且つ該信号線突出部と電気的に非接触の導電体片とを備えたアクティブマトリクス表示装置。
【請求項2】前記導電体部が前記走査線に隣接する走査線から前記絵素電極に向けて突出形成された走査線突出部である請求項1記載のアクティブマトリクス表示装置。
【請求項3】前記導電体部が前記絵素電極の下部に付加容量を形成する付加容量バスラインから該絵素電極に向けて突出形成された付加容量バスライン突出部である請求項1記載のアクティブマトリクス表示装置。」(以下、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明3」という。)

2-3-2.無効理由通知
平成15年2月26日付け無効理由通知は、本件出願が特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていないと言うものであって、概略以下のとおりである。

特許法上は、特許発明が、自然法則を利用した技術的思想の創作である発明として、技術的意義が一義的に明確に理解することができる程度に、特許請求の範囲に明りょうに記載されていれば、特許発明の技術的範囲は明細書の発明の詳細な説明を参酌する必要がないことになるから、その特許発明は、「欠くことのできない事項のみ」として記載されているといえることになる。

請求項1の、(c)該導電体部の他端側に、他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して重畳され、該絵素電極に電気的に接触し、且つ該信号線突出部と電気的に非接触の導電体片として示した要件中の「他端末部を完全に覆う」との事項であるが、通常の用語の意味から上記請求項1の記載を解釈すると
i)導電体部に一端と他端があること、
ii)導電体部の他端側の末部を導電体片が覆うこと
について不明りょうな点はなく、また
iii)末部を「完全に」覆うとは、導電体部の他端側の末部で覆われない箇所はないということも明らかである。
そして、「末部」との用語も、「まつ【末】・・・すえ。はし。あと。最後。」(広辞苑第5版)との意味に照らせば、導電体部の他端側の「端の部分」と解することができるから、その点でも不明りょうな点はないから、この記載からは、被請求人が提出した答弁書の参考図2(c),(d)のみならず、該参考図(a),(b)のものを含むことを否定できない。

一方、特許明細書には、従来技術との比較で、本願発明の課題が【0015】〜【0019】及び【0049】に記載されており、また、【0037】及び図3には、レーザー光の照射領域51の一部は導電体部47の先端からはみ出していることが記載されている。

しかしながら、上記「他端末部を完全に覆う」の語句の解釈から把握される本件発明(上記参考図(a)〜(d)を含むもの)では、上記特許明細書に記載された上記課題を解決することもできず、また上記効果を奏しないものも含むのであるから、特許請求の範囲に、本件発明が、自然法則を利用した技術的思想の創作である発明として、技術的意義が一義的に明確に理解することができる程度に、特許請求の範囲に明りょうに記載されている、ということはできない。
したがって、請求項1ないし3に係る発明は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでない。

2-3-3.審判請求人の主張する無効理由
(1)無効理由の要点
(無効理由1)本件特許の明細書の記載は、特許法第36条第4項及び又は第5項第1号に規定する要件を満たしていない。
(無効理由2)本件特許発明は、下記甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明とに基づいて、または、下記甲第1号証〜甲第3号証の各発明を組み合わせることにより、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができないものである。

甲第1号証:特開平2-124538号公報
甲第2号証:特開平2-310537号公報
甲第3号証:特開平2-282288号公報

(2)無効理由の概要
(無効理由1について)
本件特許発明は、例えば絵素電極を選択駆動するスイッチング素子が不良素子として形成されるなどして、アクティブマトリクス液晶表示装置において点欠陥が生じた場合に、点欠陥が生じた絵素電極を信号線に電気的に接続させてこれを実質的に修繕するため、不良絵素の絵素電極と最近接のソースバスラインとを、レーザー照射により電気的に導通(短絡)させて点欠陥を修復するための、絵素電極と信号線との間に設けられる冗長構造の改良に関するものである。

そして、レーザーの加工精度で可能な数μm角の穴よりも僅かに大きいがせいぜい10μm四方の導電体片48を用いた従来の冗長構造において、この従来の冗長構造を大きくすることなく、導電体片48の完全粉砕による導通不充分な状態が生じないようにして欠陥の確実修復を実現でき、製品の歩留りを格段に向上できるアクティブマトリクス表示装置を提供することが本件特許発明の目的であると解される。

本件特許発明の構成により如何にして従来技術における上述の問題が解決されるかについて、明細書の0023段落〜0025段落にかけて「発明の作用」として説明されている。この記載によれば、表示画面の視認により点欠陥を発見した場合には、図3に示されるようにしてレーザー照射を行い、導電体片を、導電体部の他端部に、他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して重畳する構成を採用することにより、導電体片を含む冗長構造を大きくすることなく、欠陥の確実修復を実現でき、製品の歩留りを格段に向上させるという所期の目的を達成できるとしている。

しかし、発明としての作用を説明するのに引用されている図3と、従来例を示す図8とを比較すると、本件特許発明で用いられている導電体片48は、従来のものに比べて面積比で少なくとも5倍以上のものを用いており、請求項1に記載された発明によって何故その目的が達成されるのかを当業者は理解することが出来ないと言わざるを得ない。
また、特定のレーザ照射位置に基づく効果に基づいて発明の作用を説明していることから、この特定のレーザ照射位置は本件特許発明の目的を達成するための必須構成要件と密接に関連していると考えられるが、特許請求の範囲の請求項1にはこの点についての記載は一切ない。

したがって、当業者は、明細書に開示された発明の詳細な説明に基づいて、従来の冗長構造を大きくすることなく、導電体片の完全粉砕による導通不充分な状態が生じないようにして欠陥の確実修復を実現でき、製品の歩留りを格段に向上できるようにすると言う本件特許発明を実施することができないばかりか、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないことは明白である。

(無効理由2について)
(a)請求項1に係る発明と各甲号証の発明との対比
本件請求項1に係る特許発明は、下記構成要件A)、B)、C)、D)及びE)を具備するアクティブマトリクス表示装置である。
A)一対の絶縁性基板の何れか一方の基板上に走査線および信号線を格子状に配線し、該走査線および信号線で囲まれた領域に絵素電極をそれぞれ配設すると共に、該絵素電極と該走査線および信号線にそれぞれスイッチング素子を接続したアクティブマトリクス液晶表示装置において、
B)該絵素電極に向けて該信号線から突出形成され、該絵素電極と電気的に非接触の信号線突出部と、
C)該信号線突出部に一端側が絶縁膜を介して重畳され、該信号線、該走査線および該絵素電極と電気的に非接触の導電体部と、
D)該導電体部の他端側に、他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して重畳され、該絵素電極に電気的に接触し、且つ該信号線突出部と電気的に非接触の導電体片とを備えた
E)アクティブマトリクス表示装置。

そして、請求項1に係る発明は、構成要件A)に示される構成のアクティブマトリクス液晶装置において、そのスイッチング素子等に起因する表示欠陥を修復する目的で絵素電極を信号線に電気的に接続するため、信号線に信号線突出部を設けると共に、該信号線突出部と絵素電極との間に冗長構造を設け、その冗長構造の構成を構成要件C)及びD)を備えて成る冗長構造としたというものである。
これに対し、甲第1号証の発明のアクティブマトリクス液晶表示装置は、構成要件A)、B)を具備しており、且つスイッチング素子(TFT)等に起因する表示欠陥を修復するため、書き込みバス(WB)の信号線突出部である延長部(11)を画素電極(E)まで延長して接続部(8)とした冗長構造を形成しており、信号線突出部を介して画素電極(E)をデータバス(WB)に接続するための冗長構造を有している。
甲第1号証の発明は、構成要件A)、B)、E)を備えている点で請求項1に係る発明と一致し、構成要件C)、及びD)を備えていない点で相違している。すなわち両者は、冗長構造の構成が異なるという点でのみ相違している。

しかしながら、甲第2号証には、構成要件A)を備えたアクティブマトリクス型液晶表示において、絵素電極を駆動するTFT等の不良による表示欠陥を修復するため、絵素電極を他の電極に接続するための冗長構造を設けたアクティブマトリクス液晶表示装置が開示されている。甲第2号証に開示されている冗長構造は、レーザ光を用いて絵素電極1aと絵素電極1cとを接続することができるものであるが、要するに、基板上に離れて形成されている2つの導電性要素を接続するためのものであり、甲第1号証の発明において、延長部(11)と画素電極(E)との接続のための冗長構造としてそっくりそのまま用いることができることは、当業者であれば容易に想到しうることである。
そして、甲第2号証の第2頁右下欄第1行から同第19行にかけて、この種の冗長構造におけるレーザ光使用の場合の問題点が述べられており、ここでは、金属薄膜72(第7図参照)は面積が小さく、レーザ照射によって蒸発してしまうという、本件特許発明における課題と同様の課題が提起されている。
よって、請求項1に係る発明は、甲第1号証の発明に甲第2号証の発明を適用することにより当業者が容易に発明できたものである。

(b)請求項2に係る発明と各甲号証の発明との対比
請求項2に係る特許発明は、請求項1に係る特許発明において、導電体部を、走査線に隣接する走査線から絵素電極に向けて突出形成された走査線突出部としたというものである。
甲第1号証の第2図には、画素電極(E)を書き込みバス(WB)に接続するための構成の変形例として、画素電極(E)から延長部(11)を一体に書き込みバス(WB)にまで延長して接続部(8)とした冗長構造を開示している(公報第3頁左下欄第3行〜同第6行)。
このように、甲第1号証では、接続しようとする2つの部材間に配設すべき導電体部については、基板上に設けられている導体部材を適宜に利用できるという技術的思想を開示している。
したがって、当業者であれば、甲第1号証における上述の教えから、導電体部を、走査線に隣接する走査線から絵素電極に向けて突出形成された走査線突出部とするという構成を容易に想起することができたと言うべきである。
よって、請求項2に係る発明は、甲第1号証の発明に甲第2号証の発明を適用し、また基板上に設けられている導体部材を適宜に導電体部として利用するという甲第1号証における上述の教えを適用することによりすることにより、当業者が容易に発明できたものである。

(c)請求項3に係る発明と各甲号証の発明との対比
請求項3に係る特許発明は、請求項1に係る特許発明において、導電体部を、絵素電極の下部に付加容量を形成する付加容量バスラインから該絵素電極に向けて突出形成された付加容量バスライン突出部としたというものである。
甲第3号証の第10図には、本件特許発明の構成要件A)と同一の構成を有するアクティブマトリクス液晶表示装置が開示されており、蓄積容量16形成のための共通導電路17は対向電極15と接続されるのが一般的構成であると記載されている。この共通導電路17は走査線11の近くに平行に配設されているが、この種のアクティブマトリクス表示装置において、共通導電路17を走査線11の近くに平行に配設する構成は周知技術である。
よって、請求項3に係る発明は、甲第1号証の発明に甲第2号証の発明を適用し、基板上に設けられている導体部材を適宜に導電体部として利用するという甲第1号証における上述の教えに基づき、甲第3号証に示されているが如き周知の構成である走査線11の近くに平行に配設されている付加容量バスラインを適宜に導電体部として利用することにより、当業者が容易に発明できたものである。

2-3-4.被請求人の主張
(無効理由1について)
本件訂正後の請求項1は、「導電体部の他端側に、他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して面領域で重畳され、該絵素電極に電気的に接触し、且つ該信号線突出部と電気的に非接触の導電体片」と記載して、導電体片が導電体部の他端末部を完全に覆うように面領域で重畳されることを規定しているので、重畳部が面状であることを明確にしている。よって、本件訂正後の請求項1に係る発明には、答弁書の参考図2(c)および(d)が含まれ、(a)および(b)は含まれないことは明白である。
そして、本件訂正後の請求項1に係る発明は、端末部を完全に覆った上で面領域を有している導電体片と導電体部の重畳部にレーザー光を照射することにより、導電体片と導電体部を接続することができるので、本件特許の明細書に記載された課題を解決することができ、明細書に記載された効果を奏することができる。
従って、本件訂正後の請求項1は、特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしており、請求項1を引用して限定する請求項2および3も同様である。

(無効理由2について)
甲第1号証記載の発明は、「信号線突出部に一端側が絶縁膜を介して重畳され、信号線、走査線および絵素電極と電気的に非接触の導電体部」と、「導電体部の他端側に、他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して重畳され、絵素電極に電気的に接触し、且つ信号線突出部と電気的に非接触の導電体片」を備えていない点で、本件発明(請求項1に係る発明)と相違する。
本件発明の信号線突出部と甲第1号証記載の延長部とは、その技術的意義において大きく異なり、甲第1号証に記載された延長部は、実質上は接続用の導体である。甲第1号証に記載された延長部は、一見、本件発明の信号線突出部に類似しているが、機能的には、本件発明の導電体部に対応するものである。本件発明の信号線突出部に実質的に対応するものは、甲第1号証には記載されていない。
甲第2号証の「接続配線23」は、正常絵素電極と不良絵素電極を接続するものであり、これに対して、本件発明の導電体部は、信号線と不良絵素電極を接続するものであるから、甲第2号証には、本件発明の構成要件である「信号線突出部に一端側が絶縁膜を介して重畳された導電体部」は記載されていない。
次に、導電体片について甲第2号証には、絵素電極間を接続する接続配線の端部が絵素電極と重なる位置に第2金属薄膜25a,bを配置した構成が示されているが、甲第2号証中には、接続配線23の端部を第2金属薄膜25a,bで完全に覆うという積極的意図を示す記載は皆無である。
本件発明は、レーザー照射による接続を確実にするために、接続部の周長を大きくすることを意図して、導電体部の他端末部を完全に覆う導電体片を設けたことを技術思想の基本とするものであるが、甲第2号証は、本件発明のこのような技術思想を開示するものではない。

次に、甲第1号証記載の発明と甲第2号証記載の発明を組み合わせる点について検討する。甲第1号証記載の延長部と甲第2号証記載の接続配線では、流れる電荷が、一方は走査期間毎に変化する信号線電荷であるのに対して他方は絵素電極に保持された絵素蓄積電荷であるという点で、電気的接続における性質が全く相違する。

また、本件発明は、レーザー照射を行う接続部位が、少なくとも2箇所設けられているので、正常絵素の保持電位が受ける影響は、コンデンサが1個の場合と比較して半減するとともに、正常絵素に関して、レーザー照射用接続部の一方が絶縁不良を生じたとしても、他方の接続部で絶縁が維持される、との効果を奏する。

そして、請求項2,3に係る発明は本件発明をさらに限定したものであるから、本件請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証と甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。

2-3-5.甲号各証の記載事項
甲第1号証(特開平2-124538号公報)には、次の事項が図面とともに記載されている。
「絶縁性基板(1)上にマトリクス状に配列された複数個の画素電極(E)と、該画素電極に対応付けて配置された薄膜トランジスタ(3)と、該薄膜トランジスタに選択信号を印加する走査バス(SB)と、前記薄膜トランジスタを介して前記画素電極(E)に表示データを供給する書き込みバス(WB)を有する構成において、
前記画素電極(E)と書き込みバス(WB)とを、少なくとも一方側から導出した接続部(8)により一部オーバラップさせ、且つこのオーバラップ部に絶縁膜(9)を介在させたことを特徴とするアクティブマトリクス型液晶表示装置。」(特許請求の範囲)、
「第3図(a)(b)に、従来の薄膜トランジスタ駆動液晶表示装置の構造を模式的に示す。同図(a)に示すように、薄膜トランジスタ(以後TFTと略記する)3の制御電極は走査バスSBに、被制御電極の一方はデータバスとも呼ぶ書き込みバスWBに、他方は画素電極Eに接続されている。上記TFT3は走査バスSBから選択信号を受けてオンとなり、この時の書き込みバスWB上の表示データが画素電極に送られ、表示が行われる。
上記液晶表示装置の断面構造は、同図(a)のA…A矢視部の断面図である(b)にみられるように、ITO膜のような透明導電膜からなる画素電極E、書き込みバスWB、配向膜4,および図示はされていないが走査バスSB、TFT3等をガラス基板1上に形成したTFT基板Pと、ITO膜等からなる対向電極E’とその上に配向膜4’をガラス基板1’上に形成した対向基板P’間に、液晶5を挟持する構成を有する。」(2頁左上欄5行〜同頁右上欄3行)、
「〔発明が解決しようとする課題〕
このようなエバーオフ点欠陥が存在する場合、駆動時間の経過につれて、このエバーオフ点欠陥の周辺部の光学状態が変化し、表示欠陥が拡大する現象が生じ、表示品質を著しく損なっていた。・・・即ちエバーオフ点欠陥部の電荷が周辺の画素に回り込む結果、周辺部の電位が変化するものと考えられる。・・・従ってエバーオフ点欠陥部の電位もまたある直流成分を持つことになる結果、液晶5中の電荷がエバーオフ点欠陥部に集まるものと解される。
本発明はエバーオフ点欠陥に起因する表示欠陥の拡大を防止することを目的とする。」(2頁右上欄9行〜同頁左下欄15行)、
「本実施例では同図(a)に示す如く、走査バスSBから選択信号を受けてTFT3がオンとなり、書き込みバスWB上の表示データを画素電極Bに送り込む点は従来と何ら変わりないが、書き込みバスWBの一部をその延長方向と直交する方向に導出するとともに、この導出された延長部11を絶縁膜9により被覆し、かつ画素電極Eをこの絶縁膜9を介して積層形成した点が異なる。ここで延長部11の画素電極Eとオーバラップする部分を接続部8とする。」(3頁左上欄2行〜11行)、
「本実施例では、上記液晶表示装置に全部で6点のエバーオフ点欠陥が存在したが、このうち任意の3点につき、画素電極Eと書き込みバスWBとの接続部8にレーザ光(ビーム径約10μm)を照射して絶縁膜9を破壊し、上下の画素電極Eと書き込みバスWBとを電気的に接続した。」(3頁右上欄11行〜17行)、
「第2図は本発明の変形例を示す図であって、これは画素電極Eを一部延長し、この延長部11を接続線を挟んで書き込みバスWBと対向させ接続部8とした例である。」(3頁左下欄3行〜6行)

甲第2号証(特開平2-310537号公報)には、次の事項が図面とともに記載されている。
「第7図(a)において、1a・1b・1cおよび1dは絵素電極、11・71は絶縁体膜、12はゲート信号線、13はソース信号線、14はドレイン端子、72は金属薄膜である。第7図(b)は第7図(a)のCC’線による断面図である。第7図(b)において73はガラス基板、74は電気的接続用パターン、75はコンタクトホールである。第7図(b)に示すようにガラス基板73上に電気的接続用パターン74を形成し、その上に絶縁体膜71を形成し、コンタクトホール75を形成したのち絵素電極1aおよび1cを形成する。さらに絶縁体膜71と絵素電極1cと重なる部分上には金属薄膜72を形成している。以下、同一番号あるいは同一記号を付したものは同一あるいは同様の構成または同様の機能のものである。」(2頁左上欄13行〜同頁右上欄7行)、
「しかしながら上記のようなアクティブマトリックスアレイの構成では、レーザ光を照射し金属薄膜72を溶解させることにより絵素電極と電気的接続パターン74を電気的に接続している。
金属薄膜72は熱伝導性のわるい絶縁体膜71上に形成され、かつその面積は微小である。したがってレーザ光を金属薄膜72に照射すると金属薄膜72は溶解せず蒸発してしまいやすい。したがって、金属薄膜72を溶解させるレーザパワー・照射時間などのレーザ条件設定は非常に困難であるゆえに、接続不良をおこす。つまり、絵素欠陥の修正が困難である。なお、特開昭59-101693号公報では金属薄膜72は必要ないとも書かれているが絵素電極1cおよび、絶縁体膜71は透過色で、通常レーザ光を透過しやすい。したがって、金属薄膜72が形成されない状態ではレーザ光は直接電気的接続パターン74を加熱することになり、前記加熱により絶縁体膜71に穴をあけかつ、絵素電極の構成物質を溶解させ電気的に接続することは不可能に近い。」(2頁右下欄1行〜19行)、
「実施例
以下、本発明のアクティブマトリックスアレイの一実施例について図面を参照しながら説明する。
第1図は本発明の第1の実施例におけるアクティブマトリックスアレイの一部拡大平面図である。第1図において15は接続配線形成部である。第2図(a)は第1図の接続配線形成部の拡大平面図である。また、第2図(b)は第2図(a)のAA’線での断面図である。第1図で明らかなように接続配線形成部はソース信号線13上に形成される。前記形成部は、少なくとも1つの隣り合う絵素電極間に形成される。また、第2図(a)(b)から明らかなように、絵素電極の所定部位には金属薄膜22a、22b(以後、第1金属薄膜と呼ぶ)が形成される。前記、薄膜の形成面積は10μ2m以上、好ましくは100μ2m以上の大きさに形成する。形成面積が大きいほど以後に示す接続条件の範囲は広くなる。また、膜厚は500Å以上、好ましくは1000Å以上に形成する。構成物質としてはCr・Alなどが好ましい。前記、第1金属薄膜22a・22bおよびソース信号線13a上には絶縁体膜21(以後、第1絶縁体膜と呼ぶ)が形成される。前記、第1絶縁体膜の構成物質としてはSiNX・SiO2などの無機物質が用いられる。好ましくは、ち密・硬質に形成されたSiNX膜を用いる。また、その膜厚は1μm以下に好ましくは2000Å以下に形成する。前記、第1絶縁体膜上には第1金属薄膜22aの形成領域に重なるように接続配線23を形成する。前記、接続配線23の一端はソース信号線13の上層部を通り、隣接した絵素電極に形成された第1金属薄膜22bの形成領域上に形成される。接続配線23の構成物質としては、融点と沸点が離れているAlなどが好ましく、その膜厚は1000Å以上に、好ましくは2000Å以上に形成される。前記、接続配線23上には第2の絶縁体膜24(以後、第2絶縁体膜と呼ぶ)が形成される。構成物質としては、第1絶縁体膜21と同一物質で構成される。膜厚は第1絶縁体膜21より薄く形成される。これは第1絶縁体膜の膜厚は、ピンホールにより接続配線23とソース信号線13との短絡が発生することを防止するために比較的厚く形成されるためである。第2絶縁体膜24上には、第1金属薄膜22a・22bと重なるように第2の金属薄膜25a・25b(以後、第2金属薄膜と呼ぶ)を形成し、かつ前記金属薄膜25a・25bは絵素電極1aおよび、1Cと電気的に接続される。前記、金属薄膜の膜厚は1000Å以上、好ましくは2000Å以上に形成される。また、構成物質としては、比較的光吸収率のよいCrなどが用いられる。前記、金属薄膜21a・25bは良好に絵素電極1a・1bと接続をとるために、第2図(a)(b)では図示していないが、接続配線23を形成する際に同時に絵素電極上に金属薄膜を形成しておき、絶縁体膜21・24などによる段差を軽減し、段差切れを防止する。
以下、本発明のアクティブマトリックスアレイについて、その修正方法を第1図および、第3図を用いて説明する。第3図において31は光線の軌跡である。TFTのドレイン端子を絵素電極1aから切り離すことは従来のアクティブマトリックスアレイと同様である。次にb点および、c点に光を照射する。前記、光としては第2金属薄膜25a・25bに吸収のよい波長のものが好ましく、通常有視波長のものを用いる。具体的にはキセノンランプの集束光などが用いられる。前記光源はレーザなどと比較すると、照射電力にバラツキが生じるが、装置コストが安く、比較的制御も容易である。加熱条件は、集光部の電力密度は比較的低くし、複数回の光パルスを照射する。第3図はb・c点に光を照射し、接続処理を終了したときの接続配線形成部の断面図である。第3図においてb点では第2金属薄膜25aおよび、第2絶縁体膜24がやぶれ、蒸発し、接続配線23と第1金属薄膜が接続されている。また、c点では第2金属薄膜と接続配線が接続されている。前記接続状態としては、絶縁体膜にクラックが生じ、前記、クラックを介して溶触した金属薄膜が流れこむことにより電気的接続がとれる。また、同一電力でも出力光電力にはバラツキが生じ、b点のように上層の第2金属薄膜などが蒸発してしまう恐れがある。しかし、接続配線23は第1および第2金属薄膜によりはさまれている。したがって、上下どちらかの金属薄膜と電気的接続がとれる。ゆえに光照射条件の範囲は非常に広い。また、第1絶縁体膜のピンポールにより、接続配線23とソース信号線13および、接続配線23と第1金属薄膜間に短絡が生じると、絵素電極にはたえずソース信号線13に印加されている信号が印加される。したがって、白点欠陥となるが、その確率は極めて小さい。
なお、光線の照射方向は、光線を基板20に透過させ、第1金属薄膜22a・22bを直接加熱をしておこなってもよい。また、アクティブマトリックス形成後でなくとも、液晶パネルに組み立て、液晶パネルを表示させ、欠陥を検出して、当該絵素の接続配線形成部に光線を照射してもよい。液晶パネル形成後はブラックマトリックスがアクティブマトリックス上に形成されているため、表面から光線を入射させ、欠陥修正をおこなうことができないことが多い。」(3頁右上欄1行〜4頁右上欄15行)

甲第3号証(特開平2-282288号公報)には、次の事項が図面とともに記載されている。
「なお、第10図において蓄積容量16はアクティブ型の液晶パネルとしては必ずしも必須の構成要素とは限らないが、駆動用信号線の利用効率の向上、浮遊寄生容量の障害の抑制及び高温動作時の画像のちらつき(フリッカ)防止等には効果的な存在で適宜採用される。17はすべての蓄積容量16に共通する導電路で、一般的には15と17は接続して使用される。」(4頁右下欄3行〜10行)

2-3-6.判断
第36条について>(無効理由通知の理由及び請求人の主張する無効理由1)
まず、無効理由通知の理由について検討する。
訂正により、導電体部と導電体片が、導電体部の他端末部をを完全に覆うようにして絶縁膜を介して面領域で重畳されていることが明確となった。この「面領域で重畳」の意味するところは、上記2-2に記載したように、特許明細書の【0023】,【0028】,【0036】〜【0038】及び図3に記載されるように、レーザー光を照射する際に、網掛け線52で示すように導電体部47と導電体片48との接続部における周長を格段に大きくでき、「上下の導電体の接続確率を十分大きくできるものであって、両者を確実に導通させることが可能になる。」(【0025】)との効果を奏するものであることが理解できる。
訂正後の請求項1の記載及び上記記載事項からみると、本件訂正発明1は、被請求人が提出した答弁書の参考図2(a),(b)は含まず、(c),(d)を含むものである。
よって、同参考図(a)〜(d)を含むものでは、所望の効果を奏しないものも含むから、本件発明が、特許請求の範囲に明りょうに記載されているということはできないとした、無効理由通知は、上記訂正により解消している。

また、請求人の主張する無効理由1について、請求人は、本件特許発明で用いられている導電体片48は、図面上従来のものに比べて面積比で少なくとも5倍以上のものを用いているから、請求項1に記載された発明によっては何故その目的が達成されるのかを当業者は理解することができず、また、特定のレーザ照射位置に基づく効果が記載されているが、レーザ照射位置は本件特許発明の技術的事項ではないから明細書の記載が不備である旨主張するが、上記したように、訂正後の特許請求の範囲において、重畳部が面領域であることが明確となり、これにより導電体部47と導電体片48との接続部における周長を格段に大きくでき、上下の導電体の接続確率を十分大きくできるとの効果があることが理解できる。また、そのような面領域の重畳部であれば、レーザ照射位置が多少ずれても上下の導電体の接続確率を大きくできることが容易に理解できる。
したがって、本件特許の明細書の記載は、特許法第36条第4項及び又は第5項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

第29条について>(無効理由2)
本件訂正発明1と甲第1号証記載の発明とを対比する。
(1)甲第1号証に本件訂正発明1の前提である「一対の絶縁性基板の何れか一方の基板上に走査線および信号線を格子状に配線し、該走査線および信号線で囲まれた領域に絵素電極をそれぞれ配設すると共に、該絵素電極と該走査線および信号線にそれぞれスイッチング素子を接続したアクティブマトリクス液晶表示装置」との技術的事項が記載されていることは明らかである。
(2)甲第1号証には、「本実施例では同図(a)に示す如く、・・・書き込みバスWBの一部をその延長方向と直交する方向に導出するとともに、この導出された延長部11を絶縁膜9により被覆し、かつ画素電極Eをこの絶縁膜9を介して積層形成した」と記載されており、これは本件訂正発明1の「該絵素電極に向けて該信号線から突出形成され、該絵素電極と電気的に非接触の信号線突出部」との技術的事項を示すものである。
したがって両者は、「一対の絶縁性基板の何れか一方の基板上に走査線および信号線を格子状に配線し、該走査線および信号線で囲まれた領域に絵素電極をそれぞれ配設すると共に、該絵素電極と該走査線および信号線にそれぞれスイッチング素子を接続したアクティブマトリクス液晶表示装置において、該絵素電極に向けて該信号線から突出形成され、該絵素電極と電気的に非接触の信号線突出部を備えたアクティブマトリクス表示装置」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
本件訂正発明1は、「該信号線突出部に一端側が絶縁膜を介して重畳され、該信号線、該走査線および該絵素電極と電気的に非接触の導電体部」及び「該導電体部の他端側に、他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して面領域で重畳され、該絵素電極に電気的に接触し、且つ該信号線突出部と電気的に非接触の導電体片」を有しているのに対し、甲第1号証のものは、上記導電体部及び導電体片について記載がない点。

上記相違点について検討する。
甲第2号証に、アクティブマトリクス型表示装置において、絵素電極を駆動するTFT等の不良による表示欠陥を修復するため、絵素電極を他の電極に接続するための冗長構造を設けたアクティブマトリクス液晶表示装置が開示されているとしても、該冗長構造は、レーザ光を用いて絵素電極1aと絵素電極1cとを接続するものである点で、本件訂正発明1の導電体部とは相違する。そればかりでなく、該導電体部に伴う技術的事項である、「該導電体部の他端側に、他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して面領域で重畳され、該絵素電極に電気的に接触し、且つ該信号線突出部と電気的に非接触の導電体片」に相当する技術的事項については甲第2号証には何ら記載されていない。
動機付けについて検討するに、甲第1号証には、絵素電極と電気的に非接触の信号線突出部が形成されているものの、該突出部は絵素電極と重畳しているから、構造的に別の導電体部を設ける必然性がないものである。また甲第2号証に、絵素電極同士を接続する接続配線23が記載されているといっても、該接続配線23は、絵素電極同士を接続するものである点で本件訂正発明1と相違するばかりでなく、その接続がソース信号線をまたいで形成されるものであるから、ソース信号線の突出部に接続する本件訂正発明1のものと類似性を欠くものであり、その点でも甲第1号証に適用する必然性がないものである。
さらに、甲第3号証は、本件訂正発明1の前提を有するアクティブマトリクス型表示装置において、共通導電路17を走査線11の近くに配設することが記載されているのみであって、上記相違点を示すものでも、甲第1号証及び甲第2号証を結びつける契機になるものでもない。

なお、請求人は、動機付けに関し、「甲第2号証・・・この種の冗長構造におけるレーザ光使用の場合の問題点が述べられており、ここでは、金属薄膜72・・・は面積が小さく、レーザ照射によって蒸発してしまうという、本件特許発明における課題と同様の課題が提起されている。」と主張するが、甲第2号証のものは、絵素電極同士を接続するものであるから、該証拠において金属薄膜72の面積が小さくなっていることが理解できるとしても、甲第1号証のものは、延長部8の上に画素電極Eが接続部8において面状に重畳されている(図1)のであるから、甲第2号証と同様の課題を有するとは必ずしもいえない。よって、この点でも甲第2号証のものを甲第1号証に適用する動機付けがあるとはいえない。

そして、本件訂正発明1のものは、上記相違点の構成により、明細書記載の作用効果を奏するものである。

よって、本件訂正発明1は、甲第1ないし3号証から当業者が容易になし得るということはできない。

本件訂正発明2及び3は、本件訂正発明1を引用してさらに限定するものであるから、上記と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-3-7.まとめ
したがって、本件訂正発明1ないし3は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

2-4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第134条第2項並びに同条第5項で準用する特許法第126条第1項ただし書きないし第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.訂正後の本件特許発明について
3-1.本件特許発明
訂正後の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という。)は、上記2-3-1に記載したとおりのものである。

3-2.無効理由の概要
審判請求人の主張する無効理由の概要は、上記2-3-3に記載したとおりである。

3-3.甲号各証の記載事項
甲第1〜3号証の記載事項は、上記2-3-5に記載したとおりのものである。

3-4.当審の判断
上記無効理由1,2については、上記2-3-6で判断したと同様に、本件特許の明細書の記載が、特許法第36条第4項及び又は第5項第1号に規定する要件を満たしていないとも、また本件特許発明1ないし3は、特許法第29条第2項の規定に該当するともいえない。

4.むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許発明1ないし3を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アクティブマトリクス表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】一対の絶縁性基板の何れか一方の基板上に走査線および信号線を格子状に配線し、該走査線および信号線で囲まれた領域に絵素電極をそれぞれ配設すると共に、該絵素電極と該走査線および信号線にそれぞれスイッチング素子を接続したアクティブマトリクス液晶表示装置において、該絵素電極に向けて該信号線から突出形成され、該絵素電極と電気的に非接触の信号線突出部と、該信号線突出部に一端側が絶縁膜を介して重畳され、該信号線、該走査線および該絵素電極と電気的に非接触の導電体部と、該導電体部の他端側に、他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して面領域で重畳され、該絵素電極に電気的に接触し、且つ該信号線突出部と電気的に非接触の導電体片とを備えたアクティブマトリクス表示装置。
【請求項2】前記導電体部が前記走査線に隣接する走査線から前記絵素電極に向けて突出形成された走査線突出部である請求項1記載のアクティブマトリクス表示装置。
【請求項3】前記導電体部が前記絵素電極の下部に付加容量を形成する付加容量バスラインから該絵素電極に向けて突出形成された付加容量バスライン突出部である請求項1記載のアクティブマトリクス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表示用絵素電極にスイッチング素子を介して駆動信号を印加することにより、表示を実行する表示装置に関し、特に絵素電極をマトリクス状に配列して高密度表示を行うアクティブマトリクス駆動方式の表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、液晶表示装置、EL表示装置、プラズマ表示装置等においては、マトリクス状に配設された絵素電極を選択駆動することにより、画面上に表示パターンが形成される。表示絵素の選択方式として、個々の独立した絵素電極を配設し、この絵素電極のそれぞれにスイッチング素子を接続して表示駆動するアクティブマトリクス駆動方式が知られている。絵素電極を選択駆動するスイッチング素子としては、TFT(薄膜トランジスタ)素子、MIM(金属-絶縁層-金属)素子、MOSトランジスタ素子、ダイオード、バリスタ等が一般的に使用され、絵素電極とこれに対向する対向電極間に印加される電圧をスイッチング素子でスイッチングして、両電極間に介在させた液晶、EL発光層あるいはプラズマ発光体等の表示媒体を光学的に変調して、該光学的変調が表示パターンとして視認される。このような、アクティブマトリクス駆動方式は、高コントラストの表示が可能であり、液晶テレビジョン、ワードプロセッサ、コンピュータの端末表示装置等に実用化されている。
【0003】ところで、このようなアクティブマトリクス表示装置において、例えばスイッチング素子が不良素子として形成されると、その不良素子に接続された絵素電極には本来与えられるべき信号が入力されないため、表示画面上では点状の絵素欠陥、即ち、点欠陥として認識される。このような点欠陥は、表示装置の表示品位を著しく損ない、製品歩留りの観点から大きな問題になる。
【0004】絵素不良の主たる原因は、以下の2種類のものに大別される。1つは、走査信号(ゲートバスラインからの信号)によってスイッチング素子が選択されている時間内に、絵素電極を十分に充電できないために起こる不良(以下ON不良という)であり、今1つは、スイッチング素子の非選択時に絵素電極に充電した電荷が漏洩する不良(以下OFF不良という)である。
【0005】ここで、ON不良はスイッチング素子の不良に起因するが、OFF不良はスイッチング素子を介して電気的漏洩が起こる場合と、絵素電極とバスラインとの間に電気的漏洩が起こる場合との2種類がある。ON不良、OFF不良いずれの場合も、絵素電極と対向電極との間に印加される電圧が必要な値に達しなくなるため、ノーマリホワイトモード(液晶に印加される電圧が0の時に光の透過率等が最大になる表示モード)を採用する場合は、絵素不良部が輝点に見え、ノーマリブラックモード(電圧0で透過率が最低になる表示モード)を採用する場合は黒点に見えることになる。
【0006】このような点欠陥はスイッチング素子が配設される基板の作成段階で発見されれば、レーザートリミング等で修正可能である。しかしながら、該基板の作成途中で膨大な数の絵素の中からかかる点欠陥を検出するのは極めて困難であり、製造時間や製造コストを考慮すると、量産レベルでは不可能といってよい。特に、絵素数が10万〜50万個におよぶ大型表示パネルでは完全に不可能であるといえる。
【0007】そこで、最近ではこの種の点欠陥を容易に検出でき、且つ該点欠陥を簡単に修復することができる構造のアクティブマトリクス表示装置が種々提案されてきており、その一例として以下に説明する冗長構造をとるアクティブマトリクス表示装置がある。このアクティブマトリクス表示装置においては、液晶を封入して該アクティブマトリクス表示装置を点灯できる状態にして点欠陥を検出し、その後、不良絵素の絵素電極と最近接のソースバスラインとを、ガラス基板越しにレーザーを照射することにより、電気的に導通(短絡)させて点欠陥を修復する手法が取られる。
【0008】上記のようにして、不良絵素の絵素電極と最近接のソースバスラインとを電気的に導通させると、不良絵素の絵素電極にゲートバスラインからの信号にかかわらず、ソースバスラインからの信号がそのまま入力されることになる。通常の絵素(正常絵素)ではゲートバスラインの選択時間内に供給されたソース信号のみを充電し、これを1周期分(次の選択時間が来るまでの時間)保持するのに対し、この場合はゲートバスラインの選択・非選択にかかわらず常にソース信号を充電することになる。従って、この場合は、1周期を通してみるとこの間に入力されたソース電圧の実行値が液晶に加わることになる。それ故、不良絵素の帰属するソースバスラインに付属した全ての絵素の平均的な明るさに不良絵素が点灯することになる。この状態は完全な輝点でもなく黒点でもない。この結果、上記修復が施された絵素は正常に作動しているわけではないが、点欠陥として極めて判別しにくい状態になっており、点欠間が実質的に修復されたといえる。
【0009】図6および図7は上記した冗長構造をとるアクティブマトリクス表示装置の一従来例を示す。図6に示される従来例は、ゲートバスライン21、ソースバスライン23、TFT31および絵素電極41からなる1つのユニット内に絵素電極41とソースバスライン23とを短絡させるための冗長構造を有している。
【0010】該冗長構造において、点欠陥の検出、修復は以下のようにして行われる。すなわち、検出は図示されるTFT31等が配設されたガラス基板と対向電極側のガラス基板とを貼り合わせ、両ガラス基板間に液晶を封入し、この状態でゲートバスライン21、ソースバスライン23および対向電極に適当な信号を印加して絵素を点灯し、その点灯状態を検査員が目視で検査して点欠陥の検出が行われる。点欠陥が見つかったら、次にこの絵素をレーザー光等のエネルギ照射により修復する。
【0011】具体的には、ソースバスライン23から絵素電極41に向けて突出形成されたソースバスライン突出部24と、該ソースバスライン突出部24に絶縁膜を介して重畳された導電体部47との重畳部、および導電体部47と、該導電体部47の先端部に絶縁膜を介して重畳された導電体片48との重畳部にレーザー光を照射し、該当部位を小さなスポットで打ち抜く。これにより、打ち抜かれた穴の周囲を介して導電体部47とゲートバスライン突出部24および導電体部47と導電体片48が電気的に接続され、結局、絵素電極41とソースバスライン23とが短絡される。従って、絵素電極41がソースバスライン23と常に同電位になり、これで目的が達成される。
【0012】一方、図7の従来例では、図上左側隅部に冗長構造が形成され、該冗長構造は、TFT31が形成されるゲートバスライン21に隣接するゲートバスライン21aから絵素電極41に向けて突出形成されたゲートバスライン突出部25、該ゲートバスライン突出部25の基端部に絶縁膜を介して重畳されたソースバスライン突出部24、および該ゲートバスライン突出部25の先端部に絶縁膜を介して重畳された導電体片48を、組み合わせた構造からなる。該絶縁膜の存在により、これらは初期状態において電気的に絶縁されている。
【0013】上記同様に液晶封入状態で点灯して点欠陥が検出されると、まずガラス基板越しにレーザー光をゲートバスライン突出部25の根元部に照射し、ゲートバスライン突出部25を根元から切断する。これにより、ゲートバスライン突出部25はゲートバスライン21aから電気的に隔絶された状態になる。続いて、ゲートバスライン突出部25とソースバスライン突出部24の重畳部およびゲートバスライン突出部25と導電体片48の重畳部にそれぞれ2回目および3回目のレーザー光照射を行う。これにより、ゲートバスライン突出部25とソースバスライン突出部24およびゲートバスライン突出部25と導電体片24がそれぞれ電気的に接続され、結局ソースバスライン23と絵素電気欲41とが短絡される。これにより、上記同様に点欠陥が修復される。
【0014】ここで、ソースバスライン23と絵素電極41との短絡は、スイッチング素子としてのTFT31の選択期間における抵抗値よりも大きい値である必要がある。これは、TFT31の書き込み時間毎に変化するソースバスライン23からの信号を速やかに絵素に充電しなければ、絵素電極41に加わるソース信号の電圧の実行値が小さくなってしまうからである。レーザー光を用いた上記修復処理によればかかる条件を確実にクリアできる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】)上記冗長構造をとる従来例においては、点欠陥を実質的に修復するためにはレーザー照射後に上下に重畳された導電体が確実に導通していることが必要になる。上下の導電体の導通は、上記のように重畳部分にレーザーで小さなスポット状の穴を明け、該穴の周囲部において上下間を導通して行われる。従来の冗長構造では、導電体片48の大きさはせいぜい10μm四方であり、この部分をレーザーで打ち抜くことになる。
【0016】ところで、通常このような加工に用いられる代表的なYAGレーザー(波長1053nm)の加工精度は数μm角の穴を加工できる程度である。従って、YAGレーザーで上記導電体片48に穴を加工する場合は、穴の面積が導電体片48の面積に対して僅かに小さい程度となる。それ故、図8(a)に示すように、導電体片48の中央にレーザー光を照射すると、レーザー光の照射領域51が導電体片48の面積よりも僅かに小さいため、導電体片48が完全に粉砕されてしまい、上下間の導通が全くとれない事態を招くおそれがある。
【0017】このような不具合を防止するには、図8(b)に示すように導電体片48の端部よりの部分にレーザー光を照射すればよい。しかるに、この方法によれば、図8(b)に網掛け線52で示すように、上下間の導通をとるべき穴の周囲部の周長が短く、接続確率が十分とは言えない。従って、上下間の導通を確実に行うには不十分である。
【0018】また、YAGレーザーの照射による導電体片48の四散を防止するには、レーザー光の照射領域51に対して導電体片48を含む冗長構造の面積を十分大きくすればよい。しかるに、本来不必要である冗長構造を大きくすることは有効な解決法とは言えない。
【0019】本発明は、このような従来技術の課題を解決するものであり、冗長構造を大きくすることなく、点欠陥を確実に修復でき、製品の歩留りを格段に向上できるアクティブマトリクス表示装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明のアクティブマトリクス表示装置は、一対の絶縁性基板の何れか一方の基板上に走査線および信号線を格子状に配線し、該走査線および信号線で囲まれた領域に絵素電極をそれぞれ配設すると共に、該絵素電極と該走査線および信号線にそれぞれスイッチング素子を接続したアクティブマトリクス液晶表示装置において、該絵素電極に向けて該信号線から突出形成され、該絵素電極と電気的に非接触の信号線突出部と、該信号線突出部に一端側が絶縁膜を介して重畳され、該信号線、該走査線および該絵素電極と電気的に非接触の導電体部と、該導電体部の他端側に、他端末部を完全に覆うようにして絶縁膜を介して重畳され、該絵素電極に電気的に接触し、且つ該信号線突出部と電気的に非接触の導電体片とを備えてなり、そのことにより上記目的が達成される。
【0021】前記走査線に隣接する走査線から前記絵素電極に向けて突出形成された走査線突出部や前記絵素電極の下部に付加容量を形成する付加容量バスラインから該絵素電極に向けて突出形成された付加容量バスライン突出部で前記導電体部を形成することもできる。
【0022】
【作用】上記構成のアクティブマトリクス表示装置において、スイッチング素子が配設される基板と対向電極側の基板とを貼り合わせ、両者間に液晶を封入した後、走査線、信号線および絵素電極に適当な駆動信号を与えると、アクティブマトリクス表示装置が表示パターンを表示するので、その表示画面を視認することにより、点欠陥を容易に発見できる。
【0023】そして、点欠陥を発見すると、導電体部と導電体片との重畳部、より具体的には図3に示される照射領域51にレーザー光を照射する。図3において、導電体片48は下方の導電体部47の先端から少し突出した状態で該導電体部47の先端を完全に覆うようにして、絶縁膜を介して重畳されている。また、照射領域51の一部は導電体部47の先端からはみ出している。
【0024】このような照射領域51にレーザー光を照射すると、レーザー光が導電体部47と導電体片48間に介在させた絶縁膜を突き破り、これにより図3に網掛け線52で示される照射領域51の端部において導電体片48と導電体部47が短絡される。
【0025】このとき、上記した冗長構造によれば、図から明かなように、導電体片48と導電体部47との接続部における周長を十分確保できる。なおかつ、照射領域が重畳部の端部よりの位置に選定されているので、レーザー照射により導電体片48が四散することがない。それ故、このような冗長構造によれば、上下の導電体の接続確率を十分大きくでき、両者を確実に導通させることが可能になる。
【0026】
【実施例】本発明の実施例について以下に説明する。
【0027】図1〜図3は本実施例のアクティブマトリクス表示装置を示しており、この表示装置は、上下一対の透明絶縁性基板1、2間に液晶18を封入してなる。下側の基板1上には、走査線として機能する複数本のゲートバスライン21、21…および信号線として機能する複数本のソースバスライン23、…が縦横に配線され、両バスライン21、23で囲まれる矩形上の領域それぞれに絵素電極41がマトリクス状に配設される。ゲートバスライン21にはこれから分岐したゲートバス支線22が形成され、該ゲートバス支線22の先端部にはTFT31が形成される。TFT31はスイッチング素子として機能し、絵素電極41に接続される。
【0028】TFT31形成部の反対側に相当する絵素電極41の隅部には先端部が絵素電極41に重畳される矩形状をなす導電体部47が形成される。該導電体部47の基端部上方にはソースバスライン23から突出形成されたソースバスライン突出部24がゲート絶縁膜13(図2参照)を介して重畳される。加えて、導電体部47の先端部上方には、該先端部の全面を覆い、且つ先端が導電体部47よりも突出する導電体片48がゲート絶縁膜13を介して重畳される。該導電体片48は導電体部47と交差する方向に長い矩形状をなす。
【0029】以下各部の詳細を制作手順に従って説明する。図2に示すように、まず透明絶縁性基板1上にゲートバスライン21を作製する。この作製は、一般にTa、Ti、Al、Cr等の単層又は多層の金属をスパッタリング法により透明絶縁性基板1上に堆積し、その後にパターニングして作成される。この時、同時にゲートバス支線22および導電体部47が作製される。本実施例では透明絶縁性基板1としてガラス基板1を用いた。なお、ゲートバスライン21の下にベースコート膜としてTa2O5等の絶縁膜を形成することにしてもよい。
【0030】次いで、ゲートバスライン21(ゲートバス支線22及び導電体部47を含む)上にゲート絶縁膜13を積層する。本実施例では、プラズマCVD法によりSiNx膜を300nm堆積してゲート絶縁膜13とした。なお、ゲート絶縁膜13を形成する前に、ゲートバスライン21を陽極酸化して、Ta2O5からなる酸化膜12を形成してもよい。
【0031】次いで、プラズマCVD法により半導体層14およびエッチングストッパ層15をゲート絶縁膜13の上に連続して形成する。半導体層14はアモルファスシリコン(a-Si)層で構成され、エッチングストッパ層15はSiNx層で構成される。それぞれの膜厚は30nm、200nmとする。そして、エッチングストッパ層15をパターニングし、その後、リンを添加したn+型a-Si層16をプラズマCVD法で80nmの厚みで積層する。このn+型a-Si層16は半導体層14と、その後に積層されるソース電極32又はドレイン電極33とのオーミックコンタクトを良好にするために形成される。
【0032】次いで、n+型a-Si層16をパターニングし、その後、ソース金属をスパッタリング法により積層する。ソース金属としては、一般に、Ti、Al、Mo、Cr等が用いられるが、本実施例ではTiを使用した。そして、Ti金属層をパターニングし、ソース電極32およびドレイン電極33を得る。この時、ソースバスライン23、ソースバスライン突出部24および導電体片48が同時に形成される。これにより、図2にその構造を示すTFT31が作製される。
【0033】次いで、絵素電極41となる透明導電性物質を積層する。本実施例では透明導電性物質として、ITO(Indium tin oxide)をスパッタリング法により積層し、これをパターニングして絵素電極41を得る。該絵素電極41は上記のようにゲートバスライン21とソースバスライン23で囲まれた矩形の領域に積層形成され、図2に示すように、その端部はTFT31のドレイン電極33の端部に積層され、また、導電体片48上に積層される。これにより、絵素電極41とTFT31のドレイン電極33および導電体片44が導通状態になる。
【0034】絵素電極41を形成したガラス基板1上の全面には、SiNxからなる保護膜17が堆積される。該保護膜17は、絵素電極41の中央部で除去した窓あき形状にしてもよい。保護膜17上には配向膜19が形成される。該保護膜17についても、その中央部を除去した窓あき形状にしてもよい。図2に示すように、ガラス基板1に対向するガラス基板2上には、対向電極3及び配向膜9が形成される。そして、これらのガラス基板1、2の間に液晶18を封入し、本実施例のアクティブマトリクス表示装置が作成される。
【0035】次に、本実施例のアクティブマトリクス表示装置において絵素欠陥が生じた場合の修復方法について説明する。通常、絵素電極41はTFT31によって駆動され、TFT31が正常に動作している限り、ゲートバスライン21とソースバスライン23に囲まれた領域の絵素は正常に動作し、表示上の問題は発生しない。ところが、TFT31が異常を来たしたり、ソースバスライン23と絵素電極41の間に弱い電流リークが発生したりすると、絵素欠陥が現れ、表示上の問題として認識される。これを本実施例においては以下のようにして修復する。
【0036】すなわち、アクティブマトリクス表示装置を駆動して、絵素欠陥を確認すると、まず、導電体部47とソースバスライン突出部24との重畳部および導電体部47と導電体片48との重畳部に、光エネルギの一例としてYAGレーザー光を照射する。レーザー光が照射された部分ではレーザー光が上記した上下の導電体間のゲート絶縁膜13を突き破る。これにより、レーザー光が照射された部分の端部において上下の導電体が短絡される。
【0037】なお、導電体部47と導電体片48との重畳部におけるレーザー光の照射部は図3に破線で示される照射領域51とする。該照射領域51の一部は導電体部47の先端からはみ出しており、はみ出し部を形成すると、次に説明する接続部における周長を大きくできる利点がある。
【0038】上記の照射領域51にレーザー光を照射する場合は、図中に網掛け線52で示すように、導電体部47と導電体片48との接続部における周長を図8(b)に示される上記従来例の周長に比べて格段に大きくできる。また、図から明かなように、導電体片48の面積に比べて照射領域51の面積が小さくなっている。従って、導電体片48が四散することがない。
【0039】上記2箇所の位置に対するレーザー光の照射により、ソースバスライン突出部24と導電体部47が導通され、且つ導電体部47と導電体片48が導通される。従って、結果的にソースバスライン24と絵素電極41が短絡される。それ故、点欠陥を発生している絵素は隣接したソースバスライン23に沿った全ての絵素の平均的な明るさに点灯され、表示上欠陥として極めて視認しにくくなる。
【0040】なお、レーザー光の照射はガラス基板1の裏側から或はガラス基板2側から行うことができるが、本実施例のアクティブマトリクス表示装置においては、対向電極側が遮光用の導電体で覆われ、直接レーザー光を照射することができない。そこで、本実施例ではガラス基板の裏側から照射した。また、上記2箇所の位置に対するレーザー光の照射順序は、上記順序に限定されるものではない。
【0041】図4は本発明の他の実施例を示しており、この実施例では上記した導電体部47に代えて、TFT31に接続されるゲートバスライン21に隣接するゲートバスライン21aから絵素電極41に向けて突出形成したゲートバスライン突出部25を用いる構成をとる。この実施例によれば以下に示す利点がある。
【0042】すなわち、一般にゲートバスライン21を陽極酸化して表面にTa酸化膜を形成し絶縁膜を2層構造として絶縁性を高める構造がよく使用されるが、導電体部47をゲートバスライン21に接続してあると、ゲートバスライン21の陽極酸化を行う際に同時に陽極酸化膜が形成されるので、この部分の絶縁特性を向上できる利点がある。そこで、本実施例ではかかる利点を生かすべく、ゲートバスライン21aから突出形成したゲートバスライン突出部25で導電体部を形成する構成をとる。
【0043】但し、この実施例においては、レーザー光を照射する際にゲートバスライン21aからゲートバスライン突出部25を切り離す必要がある。この切り離しは、ゲートバスライン突出部25の根元部にレーザー光を照射して実現される。
【0044】本実施例のアクティブマトリクス表示装置は上記実施例同様にして制作され、また点欠陥の修復は、ゲートバスライン突出部25をゲートバスライン21aから切り離した後(又はその前)に、上記実施例同様の2箇所の位置にレーザー光を照射して行われる。
【0045】図5は本発明の更に他の実施例を示しており、この実施例では、各絵素電極41が付加容量72を有する構成をとる。付加容量72は、ゲートバスライン21に平行に設けられた付加容量バスライン26と、絵素電極41との間に介在される前記ゲート絶縁膜13とで構成される。今少し説明すると、ゲートバスライン21が絵素電極41に重畳され、ゲートバスライン21と絵素電極41との重畳部に図中斜線で示す付加容量72が形成される。付加容量バスライン26は上記ゲートバスライン21と同じ金属を積層し、ゲートバスライン21のパターニングの際に同時に形成される。
【0046】本実施例では、付加容量バスライン24に上記対向電極3と同じ信号が入力されるようになっている。従って、付加容量42は電気回路的には絵素電極41とガラス基板2との間に封入される液晶18の液晶容量に並列に設けられることになる。このような付加容量42の存在により、絵素電極41の電荷保持能力が向上し、結局、表示装置としての性能を向上できることになる。
【0047】本実施例では導電体部が付加容量バスライン26から絵素電極41側に向けて突出形成された付加容量バスライン突出部27で形成される構成をとる。この実施例における点欠陥の修復は、図4に示される実施例同様にして行われる。
【0048】なお、上記各実施例ではスイッチング素子としてTFTを用いたが、MOSトランジスタ素子等の他のスイッチング素子を用いることもできる。また、TFTの構造についても上記実施例のものに限定されず、ソースバスラインを下面に配置し、ゲートバスラインを上面に配置した構造であってもよい。
【0049】
【発明の効果】以上の本発明アクティブマトリクス表示装置の冗長構造によれば、点欠陥の修復後における上下の導電体の接続確率を大きくできる。従って、上下の導電体を確実に導通することができる。また、導電体が四散することがない。それ故、製品の歩留りを向上でき、コストダウンを図る上で都合のよいものになる。
【0050】また、特に請求項2記載のアクティブマトリクス表示装置によれば、絶縁特性を向上できる利点がある。
【0051】また、特に請求項3記載のアクティブマトリクス表示装置によれば、表示特性を向上できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアクティブマトリクス表示装置の平面図。
【図2】図1のA-A線断面図。
【図3】図1のB部拡大図。
【図4】本発明の他の実施例を示す平面図。
【図5】本発明の更に他の実施例を示す平面図。
【図6】従来例を示す平面図。
【図7】他の従来例を示す平面図。
【図8】従来例の欠点を示す平面図。
【符号の説明】
1 絵素電極が配設される側のガラス基板
2 対向電極が配設される側のガラス基板
3 対向電極
13 ゲート絶縁膜
18 液晶
21(21a) ゲートバスライン
22 ゲートバス支線
23 ソースバスライン
24 ソースバスライン突出部
25 ゲートバスライン突出部
26 付加容量バスライン
27 付加容量バスライン突出部
31 TFT
32 ソース電極
33 ドレイン電極
41 絵素電極
47 導電体部
48 導電体片
51 レーザー光の照射領域
52 接続部における周長を示す網掛け線
72 付加容量
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-07-03 
結審通知日 2003-07-08 
審決日 2003-07-22 
出願番号 特願平3-102366
審決分類 P 1 112・ 532- YA (G02F)
P 1 112・ 121- YA (G02F)
P 1 112・ 534- YA (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井口 猶二  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 青山 待子
町田 光信
登録日 1997-04-25 
登録番号 特許第2633407号(P2633407)
発明の名称 アクティブマトリクス表示装置  
代理人 山本 光太郎  
代理人 伊藤 晴國  
代理人 永島 孝明  
代理人 伊藤 晴國  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 山本 光太郎  
代理人 伊藤 高英  
代理人 高野 昌俊  
代理人 永島 孝明  
代理人 磯田 志郎  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 磯田 志郎  
代理人 伊藤 高英  

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