• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47B
管理番号 1085688
審判番号 不服2002-7140  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-25 
確定日 2003-10-16 
事件の表示 平成 7年特許願第285465号「移動棚設備」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 5月13日出願公開、特開平 9-121951]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年11月2日に出願したものであって、平成14年3月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年4月25日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月27日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年5月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年5月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「既設床に帯板状のレールを敷き、このレールを既設床に固定するアンカーボルトを設け、車輪を介して上記レール上を往復走行自在な移動棚を設け、上記移動棚に、上記車輪を回転駆動および停止させるブレーキ付きモータを設け、垂直荷重を支持するレールの車輪転動面にボルト孔が形成され、既設床に下穴が形成され、上記アンカーボルトが上方から上記ボルト孔に挿通されて上記下穴に挿入され、上記アンカーボルトの上端は、レールの車輪転動面に露出し、上記車輪転動面と面一または車輪転動面よりもわずかに下方に退入するまで打設され、上記レールの幅方向の両側方に、下方へ傾斜する傾斜面を有するスロープ部が形成され、上記スロープ部は既設床に設けられたモルタル層で形成されることを特徴とする移動棚設備。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項4に記載した発明を特定する事項である「アンカーボルト」の打設構造について、「レールの車輪転動面にボルト孔が形成され、既設床に下穴が形成され、上記アンカーボルトが上方から上記ボルト孔に挿通されて上記下穴に挿入され」との限定を付加し、同じく「スロープ部」について「既設床に設けられたモルタル層で形成される」との限定を付加したものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
a.原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-83633号(実開平2-4433号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
「本考案は既設床面上にガイドレールを敷設し・・・移動棚装置に用いる既設床面上に敷設する露出型ガイドレールの改良に関する。」(第2頁第4〜9行)
「レール本体31の両側部には、傾斜板39がべースプレート36およびアンカーボルト37を覆うように並設され、」(第4頁第3〜6行)
「図中1は夫々移動棚であって、第2図に示すように夫々の底部に軸装された走行車輪2を介し、床3上に敷設された2本の平行で、且つ移動棚1の移動方向に延在する露出型のガイドレール4上に移動可能に載置されている。」(第6頁末行〜第7頁5行)
「第3図、第4図はつば無し走行車輪2aを載置した本考案によるガイドレール4を示す断面図であって、ガイドレール4はつば無し走行車輪2aの外周踏面11が接触して転動する走行面12の幅方向のほぼ中央に、移動棚1の移動方向に沿って連続した溝13が設けられ、この溝13はアンカーボルト14の頭部が沈み込むに充分な幅と深さを有し、且つ溝13の底部15にはアンカーボルト14のための貫通孔16が鉛直方向に適宜の間隔で設けられている。また、平坦な走行面12の幅方向の両端部に於いて下方へ向って傾斜し、且つ移動棚1の移動方向に延在するよう傾斜面17を形成し、」(第7頁第9行〜第8頁第1行)
「溝13の底部15の貫通孔16にアンカーボルト14を差し込み、床3に螺挿することにより、ガイドレール4が床3に固定される。」(第8頁第8〜11行)
また、第3図には、ガイドレール4が帯板状であること、アンカーボルト14の上端が車輪転動面に露出していることが示されている。
上記記載及び第1〜8図を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「既設床に帯板状のガイドレール4を敷き、このガイドレール4を既設床に固定するアンカーボルト14を設け、走行車輪2aを介して上記ガイドレール4上を往復走行自在な移動棚1を設け、垂直荷重を支持するガイドレール4の走行面12に貫通孔16が形成され、上記アンカーボルト14が上方から上記貫通孔16に挿通されて、上記アンカーボルト14の上端は、ガイドレール4の走行面12に露出し、上記走行面12よりも下方に退入され、上記ガイドレール4の幅方向の両端部に、下方へ傾斜する傾斜面17が形成される移動棚装置。」

b.同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開昭53-97558号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
「第1図においてU1U2U3・・・は棚ユニット、(1)(1)(1)はレール、(2)(2)・・・は車輪、(3)はカウンタシヤフトで、このカウンタシヤフト(3)に前記の車輪のうち駆動用の車輪(2)’が固着される。Mはブレーキ付ギヤモータを適用した駆動モータ」(第2頁左下欄末行〜右下欄第4行)

c.同じく原査定の拒絶の理由に引用された実願昭53-181428号(実開昭55-96245号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。
「戸車用レール1は、・・・敷居3もしくは床に釘4で固定されていたので、釘4の頭がレール1の上に突出して戸車2の転動か円滑(「転動の円滑」の誤記と認める。)を欠いたり、」(第1頁末行〜第2頁第4行)
「レール11は、ほぼ角形断面の棒状であり、上部には 斜面12a、12aと平坦な溝底12bとからなるV字形溝12が、・・・形成され、かつ上記の溝底12bには複数個の釘孔15が穿設されている。」(第2頁第12〜18行)
「釘孔15に釘4を打込むことによつて敷居3上面とレール11上面とが面一状に固定される。」(第3頁第1〜3行)

(3)対比
そこで、本願補正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の「ガイドレール4」、「走行車輪2a」、「走行面12」、「貫通孔16」、「傾斜面17」、及び、「移動棚装置」は、それぞれ本願補正発明の「レール」、「車輪」、「車輪転動面」、「ボルト孔」、「傾斜面を有するスロープ部」、及び、「移動棚設備」に相当し、刊行物1記載の「アンカーボルト14」と本願補正発明の「アンカーボルト」は、「固定手段」で共通し、刊行物1記載の発明の「両端部」と本願補正発明の「両側方」は、「両側近傍」で共通するから、両者は、
「既設床に帯板状のレールを敷き、このレールを既設床に固定する固定手段を設け、車輪を介して上記レール上を往復走行自在な移動棚を設け、垂直荷重を支持するレールの車輪転動面にボルト孔が形成され、上記固定手段が上方から上記ボルト孔に挿通されて、上記固定手段の上端は、レールの車輪転動面に露出し、上記車輪転動面よりも下方に退入され、上記レールの幅方向の両側近傍に、下方へ傾斜する傾斜面を有するスロープ部が形成される移動棚設備。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]固定手段に関し、本願補正発明は、既設床に下穴が形成され、アンカーボルトが上方からボルト孔に挿通されて上記下穴に挿入され、上記アンカーボルトの上端は、車輪転動面と面一または車輪転動面よりもわずかに下方に退入するまで打設されるのに対し、刊行物1記載の発明は、アンカーボルトが上方から貫通孔16(本願補正発明の「ボルト孔」に相当。)に挿通されるものの、下穴について明記がなく、アンカーボルトの上端位置が相違し、打設されるものではない点。
[相違点2]本願補正発明は、移動棚に、車輪を回転駆動および停止させるブレーキ付きモータを設けるのに対し、刊行物1記載の発明は、ブレーキ付きモータについて記載がない点。
[相違点3]スロープ部に関し、本願補正発明は、レールの幅方向の両側方に形成され、上記スロープ部は既設床に設けられたモルタル層で形成されるのに対し、刊行物1記載の発明は、レールの幅方向の両端部に形成され、モルタル層ではない点。

(4)判断
[相違点1]について
レールの床への固定手段として打設されるものは刊行物3に記載されているように周知技術であり、また、打設される固定手段を一方の部材上方から孔に挿通し、他方の部材の下穴に挿入し、固定手段の上端は、一方の部材の表面と面一またはわずかに下方に退入するまで打設することは、本願出願前に周知技術(例えば、実公昭49-14915号公報)であるから、これらの周知技術を刊行物1記載の発明に適用し、本願補正発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

[相違点2]について
移動棚に、車輪を回転駆動および停止させるブレーキ付きモータを設けることは刊行物2に記載されており、該技術を刊行物1記載の発明に適用し、本願補正発明の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

[相違点3]について
レールの幅方向の両側方にレールとは別体のスロープ部を形成することは刊行物1第7図(レール本体両側面の外方に傾斜板が取り付けられている。)に記載されており、その材料をモルタル層とすることは単なる材料変更に過ぎないから、刊行物1第7図に記載された事項を刊行物1記載の発明のスロープ部に適用し、本願補正発明の上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物1〜3及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1〜3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年5月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年8月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。
「既設床に帯板状のレールを敷き、このレールを既設床に固定するアンカーボルトを設け、車輪を介して上記レール上を往復走行自在な移動棚を設け、上記移動棚に、上記車輪を回転駆動および停止させるブレーキ付きモータを設け、レールの幅方向の両側方に、下方へ傾斜する傾斜面を有するスロープ部が形成され、垂直荷重を支持するレールの車輪転動面に上記アンカーボルトを設け、
上記アンカーボルトの上端は、車輪転動面に露出し、上記車輪転動面と面一または車輪転動面よりもわずかに下方に退入するまで打設されていることを特徴とする移動棚設備。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「アンカーボルト」の打設構造の限定事項である「レールの車輪転動面にボルト孔が形成され、既設床に下穴が形成され、上記アンカーボルトが上方から上記ボルト孔に挿通されて上記下穴に挿入され」との構成を省き、同じく「スロープ部」の限定事項である「既設床に設けられたモルタル層で形成される」との構成を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1〜3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1〜3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1〜3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-08-05 
結審通知日 2003-08-19 
審決日 2003-09-01 
出願番号 特願平7-285465
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A47B)
P 1 8・ 121- Z (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 忠夫伊藤 陽渋谷 知子  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 新井 夕起子
長島 和子
発明の名称 移動棚設備  
代理人 森本 義弘  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ