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審決分類 審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:13  H01L
管理番号 1085804
審判番号 補正2002-50085  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-07-28 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2002-09-09 
確定日 2003-10-09 
事件の表示 平成 4年特許願第510197号「電気的可変不揮発性単一トランジスタ半導体記憶装置及び方法」において、平成14年3月18日付けでした手続補正に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は1992年3月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1991年4月9日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後、平成14年3月18日付けで明細書を補正する手続補正がなされたが、この補正は、平成14年5月23日付けで決定をもって却下されたものである。

2.原決定の理由
原決定における却下の理由は、次のとおりである。
「出願人は、平成14年3月18日付け手続補正書において、請求項1、4、7、10に係る発明の導電性制御ゲートを、「浮遊ゲートとの容量結合を最小化するために浮遊ゲートと僅かに重複するかまたは全く重複しない」ものである点で限定している。
しかしながら、出願当初明細書等には、消去時において、浮遊ゲートと制御ゲートとの間の静電容量であるCfcを最小化することが必要であることが記載されているが、具体的にどういった条件下でどこまで最小化できるのかは記載されておらず、また、プログラミング時においては、制御ゲートの第1部分30と浮遊ゲート22の間のチャネル領域において急勾配の電圧降下が生じることを利用してホットエレクトロンを誘起することが記載されており、この観点からみても浮遊ゲートと全く重複しないということは浮遊ゲート下のチャネル領域においてのチャネル形成がなされず、ホットエレクトロン誘起が行えないものと認められることから、導電性制御ゲートと浮遊ゲートは重複すべきものであると認められる。そうすると、出願当初明細書等には「全く重複しない」ということが記載されておらず、また、自明なこととも認められないから、上記限定は出願当初明細書等に記載された範囲を越えるものである。
したがって、この補正は、明細書の要旨を変更するものと認められ、特許法53条第1項の規定により、上記結論の通り決定する。」

3.請求人の主張
審判請求人の主張は、次のとおりである。
「出願当初明細書には、例えば、明細書第14頁、第7-11行に、「実際、好ましい実施例において、Cfcを最小化し、Cfsを最大化することが望ましい。かくして、第2絶縁層25を覆う制御ゲート29の第2部分28の量は最小化されなければならない。同様に、ソース14を直接覆う浮遊ゲート22は最大化される。」と記載されている。
従って、審査官殿の「重複しない」との記載に関しては、本願明細書では第2絶縁層25を覆う制御ゲート29の第2部分28の量が最小であるべきことを明記している。この明細書に記載された「最小化」の用語にはゼロが含まれると解される。また、明細書の教示に従って用いられた補正書の「前記浮遊ゲートとの容量結合を最小化するために前記浮遊ゲートと僅かに重複するか又は全く重複しないようにされる導電性制御ゲートを含む方法」との記載は出願当初明細書などに記載された範囲内のものである。」

4.補正却下の当否に対する判断
(1)請求項1、4、7、10に係る発明の導電性制御ゲートに関して、「浮遊ゲートとの容量結合を最小化するために浮遊ゲートと僅かに重複するかまたは全く重複しない」とした補正が、明細書の要旨を変更するものであるかどうかについて検討する。
なお請求項4、7、10には、「最少化する」とあるが、明細書には「最小化する」という記載はあるが「最少化する」という記載は見当たらないから、「最少化する」とあるのは、「最小化する」の誤記と認定した。
(2)出願当初の明細書及び図面
出願当初の明細書又は図面には、次の記載が認められる。
「第2の絶縁層25には、浮遊ゲート22の上に被せられている第1の部分24と、浮遊ゲート22に近接して配置される第2の部分26とが具えられている。・・・(中略)・・・。制御ゲート29には2つの部分が具えられているが、その第1の部分28は第2絶縁層25の上部壁24の上に被せられ、その第2の部分30は、第1層20の上に被せられ、第2絶縁層25の側面壁26に直接して配置される。」(明細書5頁21行〜6頁11行)
「実際、好ましい実施例において、Cfcを最小化し、Cfsを最小化することが望ましい。かくして、第2絶縁層25を覆う制御ゲート29の第2部分28の量は最小化されなければならない。同様に、ソース14を直接覆う浮遊ゲート22は最小化される。」(明細書14頁7〜11行)
「ポリシリコンを従来式の写真製版乾式エッチング技法を用いてパターン化して、制御ゲートを形成する(図4Pを参照のこと)。」(明細書30頁4〜6行)
及び図1・図4-P-1〜図4-S-1(制御ゲートが浮遊ゲートと重複している構造が読み取れる。)
(3)当審の判断
出願当初の明細書及び図1・図4-P-1〜図4-S-1の記載によれば、制御ゲートが浮遊ゲートと重複している構造は認められるが、浮遊ゲートと全く重複しないようにされる導電性制御ゲートの構造は全く記載されていない。
次に審判請求人が根拠として引用した明細書14頁7〜11行には、審判請求人の引用するとおりの記載はないが、好ましい実施例において、Cfcを最小化することが望ましく、第2絶縁層25を覆う制御ゲート29の第2部分28の量は最小化されなければならない旨を読み取ることはできる。
しかしながら、明細書5頁21行〜6頁11行及び図1・図4-P-1〜図4-S-1の記載によれば、特許請求の範囲の「第2の部分」に相当する導電性制御ゲートの第1の部分28は、浮遊ゲート22の上に被せられている第2絶縁層25の上部壁24の上に被せられた構造を前提とするものである。
したがって、第2絶縁層25を覆う制御ゲート29の第2部分28の量を最小化することを実現するために、上記導電性制御ゲートの「第2の部分」が浮遊ゲート22の上に被せられている第2絶縁層25の上部壁24の上に被せられた構造の前提を外れて、浮遊ゲートと全く重複しないように導電性制御ゲートの第2の部分を構成すること、即ち浮遊ゲート22の上に被せられている第2絶縁層25の上部壁24の上に被せられた導電性制御ゲートを実質的に不要にすることは、出願当初の明細書又は図面に記載も示唆もないばかりでなく、当業者にとって自明な事項であるともいえない。

5.むすび
以上のとおりこの補正は、明細書の要旨を変更するものであるから、これを却下すべきものとした原決定は妥当なものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-04-28 
結審通知日 2003-05-09 
審決日 2003-05-22 
出願番号 特願平4-510197
審決分類 P 1 7・ 13- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井原 純  
特許庁審判長 内野 春喜
特許庁審判官 恩田 春香
朽名 一夫
発明の名称 電気的可変不揮発性単一トランジスタ半導体記憶装置及び方法  
代理人 山崎 行造  

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