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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23K
管理番号 1085865
審判番号 不服2001-9626  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-08-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-06-07 
確定日 2003-10-22 
事件の表示 平成10年特許願第 28335号「レーザー加工装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 8月24日出願公開、特開平11-226761]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成10年2月10日に特許出願されたものであって、その請求項1乃至14に係る発明は、平成13年3月30日付手続補正書により補正がされた明細書及び願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至14に記載されたとおりのものであると認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりである。
「前端に先細ノズルを備える把持筒内に、レーザー発振器で発生したレーザー光を導く光ファイバーの出射端を設け、この出射端より出たレーザー光が、前記先細ノズルの前端面付近において焦点を結ぶようにしたレーザートーチと、被加工物に当接させることにより、被加工物に電極の一極を接続させて通電しうるようにした給電手段とを、作業員が防護マスクを頭部へ装着して、それに枢着されている顔面シールド板を下向回動させると閉じ、かつこれを上向回動させると開くようになっているスタートスイッチ、並びに前記レーザー発振器を介して直列に接続し、作業員が前記顔面シールド板を下向回動させることによってスタートスイッチを閉じさせた状態で、前記レーザートーチにおける先細ノズルの先端と前記給電手段とを被加工物に接触させると、電源からの電流は、前記給電手段を通り、かつ被加工物を通電して、前記レーザー発振器へ電流が送くられて、これを発振させるように回路構成したことを特徴とするレーザー加工装置。」

2 引用例記載事項
原査定における拒絶の理由に引用した本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-99381号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されていると認める。
(1) 第1欄第2-26行(【特許請求の範囲】)
「【請求項1】YAGレーザー発振器と、該YAGレーザー発振器に光ファイバーで接続され、被加工材との接触を検出する接触検出手段を備えたレーザー加工ヘッドと、装着確認スイッチと防護面の開閉検出スイッチとを備えたレーザー光防護具と、レーザー加工作業準備完了信号を出力するフットスイッチと、前記YAGレーザー発振器、前記レーザー加工ヘッド、前記レーザー光防護具及び前記フットスイッチとを制御する制御装置とからなるマニュアル溶接加工システムにして、前記制御装置が前記レーザー加工ヘッドの被加工材との接触と、前記レーザー光防護具の装着と防護面の閉状態と、前記フットスイッチの作業準備完了信号とを検出後、前記レーザー加工ヘッドのレーザー出射スイッチがONになったとき、前記YAGレーザー発振器からレーザー光を前記レーザー加工ヘッドに出射することを特徴とするマニュアル溶接加工システム。
【請求項2】レーザー発振器と光ファイバーで接続されたレーザー加工ヘッドにおいて、該レーザー加工ヘッドと被加工材との接触を検出する接触検出手段を設けたことを特徴とするレーザー加工ヘッド。
【請求項3】前記接触検出手段は、前記レーザー加工ヘッドのレーザー光出射部に導電体の接触子を進退自在に突出させて設け、該接触子と被加工材との電気的な導通を検出することを特徴とする請求項2に記載のレーザー加工ヘッド。」
(2) 第5欄第9-17行(段落【0024】参照)
「上記構成のマニュアル溶接加工システム1において、制御装置19がレーザー加工ヘッド25の被加工材との接触と、レーザー光防護具29の装着と該レーザー光防護具29の防護面(後述)の閉状態と、前記フットスイッチ31の作業準備完了信号とを検出後、前記レーザー加工ヘッド25のレーザー出射スイッチを作業者がONにしたとき、YAGレーザー発振器9を発振させてレーザー光をレーザー加工ヘッド25に出射させることが可能である。」
(3) 第5欄第25-28行(段落【0025】参照)
「レーザー加工ヘッド25の上方に設けたレンズ保持筒33の上端部に、前記信号ケーブル11Bの端部に設けられた光ファイバーの出射端35が設けてある。」
(4) 第5欄第35行-第6欄2行(段落【0026】参照)
「また前記レンズ保持筒33の下端部には円筒形の接触子保持体43が設けてある。なおこの接触子保持体43は絶縁体で製作されており、そしてこの接触子保持体43に導電性を有するのシリンダー状の接触子45が設けてある。・・・なお、上記接触子45が被加工材Wに接触すると信号ケーブル11Bを介して前記制御装置と被加工材Wとの間に電気回路が形成されて、被加工材Wと接触子との接触を検出することができるようになっている。」
(5) 第6欄第22-24行(段落【0029】参照)
「前記レンズ保持筒33の周囲には前記接触子保持体43の外径とほぼ同径の外筒65が設けてある。」
(6) 第6欄末行-第7欄9行(段落【0033】参照)
「図3〜図5は、前記レーザー光防護具29の構造を示した図であり、図3は正面図、図4は図3における平面図、図5は図3における右側面図を示している。さて、図3〜図5を参照しながらレーザー光防護具29について説明する。レーザー光防護具29の防護面支持体71に防護面73が設けてある。この防護面73は防護面支持体71の両脇に設けた支軸75(R,L)に開閉自在に軸支されており、そしてこの防護面73の前面には、YAGレーザー光を遮蔽する遮蔽窓77が設けてある。」
(7) 第7欄第16-32行(段落【0035】,【0036】参照)
「また前記防護面支持体71には防護面73の開閉を検出するためのマイクロスイッチ85と、レーザー光防護具29を作業者が装着したか否かを検出するベルトスイッチ87とを設けてある。このベルトスイッチ87は作業者がレーザー光防護具29を装着すると、作業者の額の部分でベルトスイッチ87が押圧されることによりベルトスイッチ87がONとなるものである。そして前記マイクロスイッチ85と、このベルトスイッチ87に接続されたリード線89が前記防護面支持体71に設けたコネクター91に接続されている。
上記構成のレーザー光防護具29において、マイクロスイッチ85とベルトスイッチ87の信号出力をコネクター91、前記信号ケーブルSCを介して、例えば前記制御装置19の如き制御装置に入力し、作業者がレーザー光防護具29を装着したのか否か、及び作業者が防護面73を開けたか否かを検出判断させることが可能である。」
また、マイクロスイッチ85は、作業者がレーザー光防護具29を頭部へ装着して、それに軸支されている防護面73を下向回動させると閉じ、かつこれを上向回動させると開くようになっていること、及び、出射端35より出たレーザー光が、接触子45の前端面付近において焦点を結ぶようにされていることは、技術常識より明らかである。
以上のとおりであるので、引用例には、次の発明が記載されていると認める。
前端に接触子45を備える外筒65内に、YAGレーザー発振器9で発生したレーザー光を導く光ファイバーの出射端35を設け、この出射端35より出たレーザー光が、前記接触子45の前端面付近において焦点を結ぶようにしたレーザー加工ヘッド25と、作業者がレーザー光防護具29を頭部へ装着して、それに軸支されている防護面73を下向回動させると閉じ、かつこれを上向回動させると開くようになっているマイクロスイッチ85と、前記YAGレーザー発振器9とを、作業者が前記防護面73を下向回動させることによってマイクロスイッチ85を閉じさせた状態で、前記レーザー加工ヘッド25における接触子45の先端を被加工材Wに接触させ、接触子45の先端と被加工材Wとを導通させて、前記YAGレーザー発振器9を発振させるように回路構成したマニュアル溶接加工システム。

3 対比
本件発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「外筒」は、本件発明の「把持筒」に相当し、以下同様に、「YAGレーザー発振器」は「レーザー発振器」に、「レーザー加工ヘッド」は「レーザートーチ」に、「被加工材」は「被加工物」に、「作業者」は「作業員」に、「レーザー光防護具」は「防護マスク」に、「軸支されている防護面」は「枢着されている顔面シールド板」に、「マイクロスイッチ」は「スタートスイッチ」に、及び、「マニュアル溶接加工システム」は「レーザー加工装置」にそれぞれ相当していることが明らかである。
また、引用例記載の発明の「接触子」は、ノズルであることに限り、本件発明の「先細ノズル」と共通している。
また、本件発明の「レーザートーチと、被加工物に当接させることにより、被加工物に電極の一極を接続させて通電しうるようにした給電手段とを、・・・スタートスイッチ、並びに前記レーザー発振器を介して直列に接続し、・・・スタートスイッチを閉じさせた状態で、前記レーザートーチにおけるノズルの先端と前記給電手段とを被加工物に接触させると、電源からの電流は、前記給電手段を通り、かつ被加工物を通電して、前記レーザー発振器へ電流が送くられて、前記レーザー発振器を発振させるように回路構成したこと」は、スタートスイッチを閉じさせた状態で、レーザートーチにおけるノズルの先端を被加工物に接触させ、ノズルの先端と被加工物とを導通させて、レーザー発振器を発振させるように回路構成したことに限り、引用例記載の発明と共通している。
以上のとおりであるので、両者は、次の一致点及び相違点を有している。
(1) 一致点
前端にノズルを備える把持筒内に、レーザー発振器で発生したレーザー光を導く光ファイバーの出射端を設け、この出射端より出たレーザー光が、前記ノズルの前端面付近において焦点を結ぶようにしたレーザートーチと、作業員が防護マスクを頭部へ装着して、それに枢着されている顔面シールド板を下向回動させると閉じ、かつこれを上向回動させると開くようになっているスタートスイッチと、前記レーザー発振器とを、作業員が前記顔面シールド板を下向回動させることによってスタートスイッチを閉じさせた状態で、前記レーザートーチにおけるノズルの先端を被加工物に接触させ、ノズルの先端と被加工物とを導通させて、前記レーザー発振器を発振させるように回路構成したレーザー加工装置。
(2) 相違点
ノズルの形状が、本件発明では、先細であるのに、引用例記載の発明では、そのようなものではない点(以下「相違点1」という。)、及び、本件発明では、レーザートーチと、被加工物に当接させることにより、被加工物に電極の一極を接続させて通電しうるようにした給電手段とを、スタートスイッチ、並びにレーザー発振器を介して直列に接続し、前記レーザートーチのノズルの先端と前記給電手段とを被加工物に接触させることにより、電源からの電流は、前記給電手段を通り、かつ被加工物を通電して、前記レーザー発振器へ電流が送くられて、前記レーザー発振器を発振させるように回路構成しているのに対し、引用例記載の発明では、スタートスイッチを閉じさせた状態で、レーザートーチにおけるノズルの先端を被加工物に接触させ、ノズルの先端と被加工物とを導通させて、レーザー発振器を発振させるように回路構成している点(以下「相違点2」という。)。

4 判断
上記相違点について、以下検討する。
(1) 相違点1について
ノズルの先端の形状をどのような形状とするかは、必要に応じて適宜決定する設計的事項であって、本件発明のように先細とすることに、困難性はない。
(2) 相違点2について
引用例記載の発明のスタートスイッチを閉じさせた状態で、レーザートーチにおけるノズルの先端を被加工物に接触させ、ノズルの先端と被加工物とを導通させて、レーザー発振器を発振させるということは、レーザー発振器の発振条件についてみると、スタートスイッチを閉じさせた状態の第1の条件及びレーザートーチにおけるノズルの先端を被加工物に接触させ、ノズルの先端と被加工物とを導通させる第2の条件が同時に満たされた場合にのみ、レーザー発振器という機器を作動させるということである。
そして、このような第1の条件及び第2の条件が同時に満たされた場合にのみ機器を作動させる回路として、第1の条件が満たされた場合に導通する回路、第2の条件が満たされた場合に導通する回路及び機器を直列に接続することは、例示するまでもなく、本件出願前周知な事項であり、また、引用例記載の発明は、ノズルの先端と被加工物とが導通したことを検出する回路が具体的にどのようなものであるのか明らかではないが、このような検出のために、被加工物に当接させることにより、被加工物に電極の一極を接続させて通電しうるようにした給電手段を設け、給電手段及び被加工物を通ってノズル先端に通電されたことを検出するような回路、即ち、第2の条件で導通する回路を採用することは、必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎないので、引用例記載の発明の回路構成を、第1の条件で導通する回路であるスタートスイッチ、第2の条件で導通する回路として採用する被加工物に当接させることにより、被加工物に電極の一極を接続させて通電しうるようにした給電手段を設け、給電手段及び被加工物を通ってノズル先端に通電されたことを検出するような回路及びレーザー発振器を直列に接続し、相違点2における本件発明のように特定することは、当業者が容易に想到することができたことである。
なお、審判請求人は、審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】」の項において、引用例記載の発明は、リミットスイッチ63が設けられているために誤動作する可能性があるとして、本件発明と相違するものである旨主張している。
しかし、上記2の(1) のとおり、【請求項1】に、発明を特定する事項としてリミットスイッチが記載されていないように、引用例記載の発明は、リミットスイッチを設けることが必須なものとして認定しなければならないものではないので、リミットスイッチが設けられていることを前提としている上記主張は採用できない。

5 むすび
したがって、本件発明は、本件出願前に日本国内において頒布された上記引用例記載の発明及び上記周知な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるので、請求項2乃至14に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-08-05 
結審通知日 2003-08-12 
審決日 2003-08-27 
出願番号 特願平10-28335
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神崎 孝之  
特許庁審判長 小池 正利
特許庁審判官 宮崎 侑久
鈴木 孝幸
発明の名称 レーザー加工装置  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 倉持 裕  
代理人 倉持 裕  

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