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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1085924
審判番号 不服2001-7063  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-01 
確定日 2003-10-24 
事件の表示 平成10年特許願第20782号「ATMセルの双方向伝送のためにリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年9月25日出願公開、特開平10-257083]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成10年2月2日(パリ条約による優先権主張 1997年2月3日(DE)ドイツ)の出願であって、平成13年1月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年5月31日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年5月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、
「ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法であって、
複数の交換装置(NA,NB,NC,ND)から形成されるリング線路システムを有し、前記交換装置(NA,NB,NC,ND)の間には現用区間(WEA-D,WEC-B,WEC-D)及び/又は予備区間(PEA-D,PEC-B,PEC-D)が構成されており、該現用区間(WEA-D,WEC-B,WEC-D)及び/又は予備区間(PEA-D,PEC-B,PEC-D)を介して情報をATMセルで伝送し、
前記現用区間(WEA-D,WEC-B,WEC-D)にそれぞれ予備区間(PEA-D,PEC-B,PEC-D)を配属し、前記現用区間のうちの1つに障害が発生した場合にはこの現用区間を介してこれまで伝送されていたATMセルを配属された前記予備区間に迂回転送させる、 ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法において、
複数の前記予備区間(PEA-D,PEC-B,PEC-D)は、共通にリザーブされた伝送容量を分割しあうことができ、
論理接続情報は仮想チャネルの番号(VCI)及び/又は仮想パス(VPI)の番号及び/又は仮想パスグループ(VPG)の番号であり、該仮想パスグループ(VPG)を複数の前記仮想パス(VPI)から形成することを特徴とする、ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、補正前の構成に「論理接続情報は仮想チャネルの番号(VCI)及び/又は仮想パス(VPI)の番号及び/又は仮想パスグループ(VPG)の番号であり、該仮想パスグループ(VPG)を複数の前記仮想パス(VPI)から形成することを特徴とする」という構成を付加してその構成を減縮するものである。
そして、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
次に、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて検討する。
[補正後の発明]
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

[引用発明]
#1:原審の拒絶理由に引用された特開平8-181710号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.【請求項2】 相反する方向性を持つ1次リングと2次リングの二重リングを媒体として接続する複数のノード装置が構成するリング型ATMネットワークシステムにおいて、情報の伝送を行う該ノード装置間に仮想パスと仮想コネクションによって識別される経路を設定し、該仮想パスと該仮想コネクションの識別子を制御情報として持つ固定長のセルを使い、該ノード装置はデータを伝送するATM伝送機能とセルスイッチによるセル交換機能を実装し、セルの送信を行うノード装置に複数の仮想パスを割り当てておき、該ノード装置から他のノード装置への経路毎に該仮想パスの値を割り付け、該仮想パスによってどのノード装置からどのノード装置への経路であるか識別し、該ノード装置から他のノード装置への経路は二重リングのそれぞれの方向に対応して2つ設け、仮想パスの値が異なる2つの該経路の一方を現用系もう一方を待機系とし、障害が発生し、障害の発生箇所が通知されたノード装置では該仮想パスの値をもとにして経路を現用系から待機系に切り替えるようにしたリング型ATMネットワークシステム。(特許請求の範囲、請求項2)

ロ.この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、正常状態において2つのリングをセルの伝送に使用することにより伝送遅延を短し、またリング又はノード装置の障害発生時に、経路の再構成を行った場合、任意のノード装置間での伝送遅延をリング1周の遅延未満とし、またセルのマルチキャスト(同報送信)送信が行える装置を得ることを目的とする。(4頁5欄13〜20行目、段落【0008】)

ハ.図9はノード装置19を使ったネットワーク構成図であり、図において、ノードCからノードAへは太線と破線によって示される2つの経路があることを示している。太線は現用系の経路であり、破線は待機系の経路である。この構成図ではノード装置は19a〜19eの5台によってリングを構成している。各ノード装置19をノードA、ノードB、ノードC、ノードD、ノードEと称する。図10は図9で示したネットワーク構成図に、ノード装置19の内部構成の一部を付加した図であり、図において、’#1〜#4’はセルスイッチ22の入出力回線であり、’x,y’はATM端末13とATMインタフェース7間のVPI/VCI値、’a,b’はノード装置19間のVPI/VCI値である。太線は現用系の経路であり、破線は待機系の経路である。図中にある’リング1’は’リングアクセス制御1’と同一であり、’リング2’は’リングアクセス制御2’と同一である。(5頁8欄36行目〜6頁9欄1行目、段落【0027】)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「ノード装置」は「データを伝送するATM伝送機能とセルスイッチによるセル交換機能を実装」したものであるから、いわゆる「交換装置」であり、上記「制御情報」はセルの経路を設定するための情報であるから、この情報はいわゆる「論理接続情報」である。
また、上記「現用系の経路」、「待機系の経路」はそれぞれが前記交換装置間の経路毎に対応する2つの相反する方向性を持つ経路として設定され、障害発生時に現用系から待機系に切り替えられるのであるから、これらの経路はいわゆる「現用区間」と「予備区間」である。そして、情報はATMセルとして「現用区間」又は「予備区間」のいずれか一方または両方を経由して伝送されるものである。
また、上記「リング型ATMネットワークシステム」は障害発生時に現用系と待機系を切り替える手段を備えるものであるところ、当該切り替え手段は「切り替え方法」と表現して差し支えないものである。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「双方向リング型ATMネットワークシステムにおける障害発生時の現用系と予備系の切り替え方法であって、
複数の交換装置から形成されるリング線路システムを有し、前記交換装置の間には現用区間及び予備区間が構成されており、該現用区間及び/又は予備区間を介して情報をATMセルで伝送し、
前記現用区間にそれぞれ予備区間を配属し、前記現用区間のうちの1つに障害が発生した場合にはこの現用区間を介してこれまで伝送されていたATMセルを配属された前記予備区間に迂回転送させる、双方向リング型ATMネットワークシステムにおける障害発生時の現用系と予備系の切り替え方法において、
論理接続情報は仮想チャネル(VCI)の番号及び仮想パス(VPI)の番号であることを特徴とする、双方向リング型ATMネットワークシステムにおける障害発生時の現用系と予備系の切り替え方法。」

[周知技術1]
#2.また、例えば特開平4-100343号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.(4)予備系のVPの帯域予約方法は、
上記現用系VPが収容されている、リング状伝送路に収容されているすべての現用系VPの帯域の総和を各パスハンドリングシステム間ごとに求め、その最大値を、上記予備系VPが収容されている逆方向のリング状伝送路での、共有の予備系用帯域として予約し、もって予備系用帯域の予約を最小限にとどめる。(4頁左下欄11〜18行目)

ロ.予備系のVPの帯域としては、伝送路ごとに求めた現用系帯域の総和B1,B2、・・Bnの最大値BMAXを割り当てる。図の(2)はポイントAの伝送路障害時を示している。この場合VP01、VP02、VP05を折り返す必要があり、予備系11のうちVP11、VP12、VP15が実際に使われる。(7頁右上欄4〜9行目)

上記周知例1の記載によれば、「予備系のVPの帯域予約を、予備系VPが収容されている逆方向のリング状伝送路での、共有の予備系用帯域として予約し、予約された共有予備系帯域を障害時に複数のVPで分割使用する」という技術手段は周知である。

[周知技術2]
#3.また、例えば特開平8-251182号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ. 図1はVPの容量制御が行われるATM網を説明する図であり、VPの交換を行うバーチャルパスハンドラVPH1、VPH2(通常は呼設定の処理を行わないので「クロスコネクト」とも呼ばれる)を経由した四つのバーチャルチャネルハンドラVCH1〜4の間の接続を示す。ここで、VCH1、VPH1間、VCH2、VPH1間、VCH3、VPH2間、VCH4、VPH2間、およびVPH1、VPH2間のそれぞれの物理的な伝送リンクを「伝送パス1」、「伝送パス2」、「伝送パス3」、「伝送パス4」、および「伝送パス5」とする。VCH間に設定されたVPを特にVPコネクション(VPC)といい、同一のVCHを両端とするVPCの集まりをVPグループ(VPG)という。VCH1、VCH2間には伝送パス1および伝送パス2を経由するVPグループVPG1が設定され、このVPG1にはVPコネクションVPC11、12が含まれる。VCH2、VCH3間には伝送パス2、伝送パス5および伝送パス3を経由するVPグループVPG2が設定され、このVPG2にはVPコネクションVPC21、22が含まれる。VCH3、VCH4間には伝送パス3および伝送パス4を経由するVPグループVPG3が設定され、このVPG3にはVPコネクションVPC31、32が含まれる。VCH4、VCH1間には伝送パス4、伝送パス5および伝送パス1を経由するVPグループVPG4が設定され、このVPG4にはVPコネクションVPC41、42が含まれる。VCH1、VCH3間には伝送パス1、伝送パス5および伝送パス3を経由するVPグループVPG5が設定され、このVPG5にはVPコネクションVPC51が含まれる。(3頁4欄29行目〜4頁5欄7行目、段落【0016】)

#4.また、例えば特開平7-283825号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ. 図1にATM(非同期転送モード)で動作するスイッチ装置KEが示され、・・・(3頁4欄6〜8行目、段落【0008】)
ロ. 図5及び図6には、バーチャルパスVPC=AとVPC=BとVPC=Cとから成り回線接続装置AU1を介して導かれたバーチャルパス群VPG=GからバーチャルパスVPC=Cが分離され、付加的にバーチャルパスVPC=AからバーチャルチャネルVCI=1及びVCI=5が分離され、バーチャルパスVPC=BからバーチャルチャネルVCI=3が分離され、バーチャルパスVPC=CからバーチャルチャネルVCI=4が分離される1例が示されている。(5頁8欄5〜14行目、段落【0020】)

上記周知例2または3の記載によれば、「ATM網における交換制御に複数のバーチャルパスからなるバーチャルパスグループ(群)を用いる」ことは単なる慣用手段である。

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比すると、補正後の発明の「ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法」と引用発明の「双方向リング型ATMネットワークシステムにおける障害発生時の現用系と予備系の切り替え方法」はいずれもリング状に伝送路を配置した双方向ATM網における現用予備切り替え方法を意味するから、両者の間に実質的な差異はない。
したがって、補正後の発明と引用発明は、
「ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法であって、
複数の交換装置から形成されるリング線路システムを有し、前記交換装置の間には現用区間及び予備区間が構成されており、該現用区間及び/又は予備区間を介して情報をATMセルで伝送し、
前記現用区間にそれぞれ予備区間を配属し、前記現用区間のうちの1つに障害が発生した場合にはこの現用区間を介してこれまで伝送されていたATMセルを配属された前記予備区間に迂回転送させる、 ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法において、
論理接続情報を用いて接続することを特徴とする、ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
「方法」に関し、補正後の発明は「複数の前記予備区間(PEA-D,PEC-B,PEC-D)は、共通にリザーブされた伝送容量を分割しあうことができ、」るものであるのに対し、引用発明はその点の構成が不明である点。
<相違点2>
「論理接続情報を用いて接続する」構成に関し、補正後の発明は「論理接続情報は仮想チャネルの番号(VCI)及び/又は仮想パス(VPI)の番号及び/又は仮想パスグループ(VPG)の番号であり、該仮想パスグループ(VPG)を複数の前記仮想パス(VPI)から形成する」ものであるのに対し、引用発明は「仮想チャネルの番号(VCI)及び仮想パス(VPI)の番号」である点。

そこで、まず、上記相違点1について検討するに、例えば上記周知例1には「予備系のVPの帯域予約を、予備系VPが収容されている逆方向のリング状伝送路での、共有の予備系用帯域として予約し、予約された予備系帯域を障害時に複数のVPで分割使用する」という周知技術が開示されているのであるから、補正後の発明における予備系のVPの伝送容量(即ち、帯域)を上記周知技術に基づいて「共通にリザーブ(即ち、予約)され、分割しあうことができる」ものとして構成する程度のことは当業者であれば容易なことである。

ついで、上記相違点2について検討するに、補正後の発明の「論理接続情報は仮想チャネルの番号(VCI)及び/又は仮想パス(VPI)の番号及び/又は仮想パスグループ(VPG)の番号であり、該仮想パスグループ(VPG)を複数の前記仮想パス(VPI)から形成する」という構成は、構成中に「及び/又は」が含まれるから、「論理接続情報」として「仮想チャネルの番号(VCI)」、「仮想パス(VPI)の番号」、「仮想パスグループ(VPG)の番号」のいずれか1つ以上を用いるものであると解されるところ、
「論理接続情報」として「仮想チャネルの番号(VCI)」と「仮想パス(VPI)の番号」を用いる場合の構成は、引用発明の「仮想チャネルの番号(VCI)及び仮想パス(VPI)の番号」を用いる構成と変わるところがない。したがって、補正後の発明は引用発明を包含するものであり、両者の間に実質的な差異はない。
また、補正後の発明の「論理接続情報」が更に「仮想パスグループ(VPG)の番号」を用いる場合の構成は、例えば、上記周知例2又は3に開示されているように、「ATM網における交換制御に複数のバーチャルパスからなるバーチャルパスグループ(群)を用いる」ことは単なる慣用手段であるから、引用発明の「論理接続情報」に用いられる「仮想パス(VPI)」に関し、その複数の「仮想パス(VPI)」に上記慣用手段に基づいて「仮想パスグループ(VPG)」の概念を導入し、「複数の仮想パス(VPI)から形成される仮想パスグループ(VPG)」を用いるように構成する程度のことは当業者であれば容易に想到し得たものである。
また、補正後の発明の「論理接続情報」が、単独の「仮想チャネルの番号(VCI)」又は「仮想パス(VPI)の番号」又は「仮想パスグループ(VPG)の番号」の場合、又は上記以外の他の組み合わせの場合も、引用発明に「仮想チャネルの番号(VCI)」と「仮想パス(VPI)の番号」を用いる場合の構成が開示され、上記周知例2、3に「ATM網における交換制御に複数のバーチャルパスからなるバーチャルパスグループ(群)を用いる」ことが開示されているのであるから、これらを単独で、又は適宜組み合わせて用いるように構成する程度のことは、当業者であれば、容易なことである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は上記引用例に記載された発明及び周知例1〜3に記載された周知技術ないし慣用手段に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が独立特許要件を満たしていないので、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第4項の規定に違反するから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成13年5月31日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年10月24日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法であって、
複数の交換装置(NA,NB,NC,ND)から形成されるリング線路システムを有し、前記交換装置(NA,NB,NC,ND)の間には現用区間(WEA-D,WEC-B,WEC-D)及び/又は予備区間(PEA-D,PEC-B,PEC-D)が構成されており、該現用区間(WEA-D,WEC-B,WEC-D)及び/又は予備区間(PEA-D,PEC-B,PEC-D)を介して情報をATMセルで伝送し、
前記現用区間(WEA-D,WEC-B,WEC-D)にそれぞれ予備区間(PEA-D,PEC-B,PEC-D)を配属し、前記現用区間のうちの1つに障害が発生した場合にはこの現用区間を介してこれまで伝送されていたATMセルを配属された前記予備区間に迂回転送させる、 ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法において、
複数の前記予備区間(PEA-D,PEC-B,PEC-D)は、共通にリザーブされた伝送容量を分割しあうことができることを特徴とする、ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法。」

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.(2)[引用発明]#1.」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明の「ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法」と引用発明の「双方向リング型ATMネットワークシステムにおける障害発生時の現用系と予備系の切り替え方法」はいずれもリング状に伝送路を配置した双方向ATM網における現用予備切り替え方法を意味するから、両者の間に実質的な差異はない。
したがって、本願発明と引用発明は、
「ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法であって、
複数の交換装置から形成されるリング線路システムを有し、前記交換装置の間には現用区間及び予備区間が構成されており、該現用区間及び/又は予備区間を介して情報をATMセルで伝送し、
前記現用区間にそれぞれ予備区間を配属し、前記現用区間のうちの1つに障害が発生した場合にはこの現用区間を介してこれまで伝送されていたATMセルを配属された前記予備区間に迂回転送させる、 ATMセルの双方向伝送のためのリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
「方法」に関し、補正後の発明は「複数の前記予備区間(PEA-D,PEC-B,PEC-D)は、共通にリザーブされた伝送容量を分割しあうことができる」ものであるのに対し、引用発明はその点の構成が不明である点。

そこで、上記相違点について検討するに、例えば上記周知例1には「予備系のVPの帯域予約を、予備系VPが収容されている逆方向のリング状伝送路での、共有の予備系用帯域として予約し、予約された予備系帯域を障害時に複数のVPで分割使用する」という周知技術が開示されているのであるから、補正後の発明における予備系のVPの伝送容量(即ち、帯域)を上記周知技術に基づいて「共通にリザーブ(即ち、予約)され、分割しあうことができる」ものとして構成する程度のことは、当業者であれば、容易なことである。

4.結語
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知例1に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-05-22 
結審通知日 2003-05-28 
審決日 2003-06-10 
出願番号 特願平10-20782
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野元 久道  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 桂 正憲
浜野 友茂
発明の名称 ATMセルの双方向伝送のためにリングアーキテクチャにおける伝送装置を予備接続するための方法  
代理人 ラインハルト・アインゼル  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 山崎 利臣  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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