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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1085955
審判番号 不服2001-15278  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-10-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-08-30 
確定日 2003-10-27 
事件の表示 平成 5年特許願第107739号「ゲームデータの転送システム」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年10月21日出願公開、特開平 6-292767]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願発明
本願は、平成5年4月9日に特許出願されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成12年8月11日付け及び平成13年9月26日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
多数のゲームデータを保有し、これらのゲームデータを衛星通信でサイクリックに送信のみするホスト局と、上記ゲームデータを受信のみする端末装置とからなり、この端末装置は上記受信したゲームデータをファイル単位で蓄積する大規模記憶装置と、上記端末装置とは別の半導体記憶装置を搭載したカートリッジに上記大規模記憶装置から選択した1つのゲームデータを書き込むためのインターフェイスと、上記書き込みを指示するための操作パネルとからなり、上記大規模記憶装置は上記端末装置が受信した複数のゲームデータを蓄積可能とし、かつ既に蓄積されているゲームデータが受信された場合には読み飛ばして蓄積を拒否することを特徴とするゲームデータの転送システム。」
【2】引用刊行物
(1)当審における平成14年5月24日付け拒絶の理由に引用した刊行物1(特公昭63-23584号公報)には、その実施例及び図面とこれに係わる記載を参酌すると、以下のような技術的事項の記載が認められる。
(イ)「本発明は、コンピュータメモリ装置、特に再プログラム可能なプラグイン式カートリッジメモリやICカードの如きメモリモジュールにプログラムを記録するためのレコーディングターミナル及び装置に関するものである。」(第4頁第7欄第27〜31行)
(ロ)「本発明の目的は、従って、メモリモジュールの大量の在庫を必要とせずにプログラムライブラリを保有でき、メモリモジュールから半導体メモリチップを取り外す必要なくメモリモジュールにプログラムを記録できるようにし、更に格納されたプログラムライブラリから選択された単一のプログラムまたは一式のプログラムを再プログラム可能なメモリモジュールに記録するためのレコーディングターミナル及び装置を提供することである。
ある実施例においては、遠隔場所に配置した多数のレコーディングターミナルに相当するリモートプログラミングターミナル(以下RPTという)を通信して制御するホストコンピュータを持つカートリッジレコーディング装置が提供される。この実施例のカートリッジレコーディング装置においては、RPTは、選択されたプログラム(1つのライブラリから選択されたもの、または他のカートリッジに含まれたもの)を、種々のコンピュータ用の再プログラム可能な空のカートリッジにロードすることができるように設計されている。各RPTは、ホストコンピュータとRPTとの間にデータの授受をするモデムを持っている。RPTは、RPTの機能を制御するためのオペレーティングシステムを備えた中央処理手段(CPM)を持っている。プログラムライブラリを保持するディスクメモリ装置と、RPTにより行われた処理の記録を保持するバッテリーバックアップメモリがある。キーボードは、カートリッジにロードすべきプログラムの選択と、ロードの開始に使用される。カートリッジレセプタクルは、カートリッジをRPTの他のコンポーネントに結合する。」(第4頁第8欄第28行〜第5頁第9欄第15行)
(ハ)「カートリッジメモリ手段は、一般的に、電気的にプログラム可能で、紫外線で消去できるリード・オンリ・メモリ(EPROM)または電気的にプログラム可能で、電気的に消去可能なリード・オン・メモリ(EEPROM)を有する。」(第5頁第9欄第25〜30行)
(ニ)「プログラムは、カートリッジメモリに有効に保持され得るすべての型のコンピュータプログラムおよびデータを含んでいる。典型的な例は、家庭ビデオゲーム、教育的コンピュータプログラム、電話帳、あるいは特定の職業スポーツリーグのすべてのプレーヤおよびチームの統計のような特殊目的のデータ、或いはカートリッジ所有者にとって限定された期間有用なデータセット及びプログラムである。」(第5頁第9欄第43行〜第10欄第7行)
(ホ)「第1図を参照すると、カートリッジレコーディング装置11は、ホストコンピュータ12により制御される。ホストコンピュータ12は、以下に述べる周辺装置を取り扱うことができる如何なるミニコンピュータあるいは他のデータ処理装置でもよい。ホストコンピュータ12の動作は、コンソール13を使用して開始される。報告書その他の印刷物は、ホストコンピュータ12によりプリンタ16の上に出力される。プログラムのデータベース14は、磁気ディスクまたは磁気テープのような大量記憶媒体に保持される。さらに、ホストコンピュータは、複数の入出力ポート(I/O)15を持っていて、それらはRPT41と通信するためのモデム21に接続されている。」(第5頁第10欄第8〜21行、第1図)
(ヘ)「単一ポートモデム21は、典型的には、通常の電話回線24に接続してRPT41側にある対応するモデム26を通ってRPT41と通信するように動作する。」(第5頁第10欄第30〜33行、第1図)
(ト)「第2図を参照すると、各RPT41は、中央処理ユニット(CPU)42、典型的にはインテル8088 16ビットマイクロプロセッサにより制御される。プログラムライブラリは1組のフロッピィディスクに記憶され、そのディスクはディスクコントローラ49、代表的にはインテル8272またはNEC765フロッピィディスクコントローラと接続したフロッピィディスクドライブ48により呼び出される。メモリ手段は、オペレーティングシステムを保持するための不揮発性メモリ62と、CPU42による一般使用のための揮発性RAM47とを含んでいる。バックアップメモリ51は、RPT41によるコピー動作の記録を格納するためのバッテリーバックアップRAMまたはバルブメモリである。バッテリーバックアップ手段は、RPT41が通常電源から切り離されてもデータが失われないようにする。カートリッジアダプタ45は、RPT41へカートリッジを結合するためのレセプタクルとなる。」(第6頁第11欄第16〜34行、第2図)
(チ)「キーボード46は、カートリッジ61にロードされるようにライブラリディスク48またはメモリ47の中のプログラムを選択したり、ローディング処理を開始させるために使用される。(より好ましい実施例においては、RPTライブラリ内の少数の最も人気のあるプログラムのコピーがRAM47に保有されて、頻度の高いカートリッジローディング動作を完了するのに必要な時間を減らしている。)キーボード46は、モデム26の自動ダイヤリング機能と共に、ホストコンピュータ12にメッセージを送り、RPTライブラリにない特定のプログラム伝送を依頼し、小売店の在庫品を補充するように新しいカートリッジを注文し、あるいは保守に関してホストコンピュータにメッセージを送るようにも使用される。ディスプレイ53は、ディスプレイコントローラ52に接続し、キーボード49において与えられた命令を視覚的補助および確認を与える。」(第6頁第12欄第11〜29行、第2図)
(リ)「第1図、第2図および第3図によれば、カートリッジレコーディング装置11は、次のように動作する。各ホストコンピュータ12に対して、複数のRPT41が小売店に設置されている。ホストコンピュータ12とRPT41とは、通常のダイヤルアップ電話回線を経てその時々に通信する。そのような場合に、ホストコンピュータは、RPTライブラリから古いプログラムを消去し、それらに新しいプログラムを伝送し、最後の通信以後の特定RPT41における取引きデータを集める。プログラムは、典型的には、誤りを訂正する様に暗号化されたものがRPT41に伝送されて、データの確実性を保証する。伝送されたプログラムの暗号化は専有するプログラムの非公認のコピー化を思い止まらせる。同様に、RPT41内のプログラムは、他のコンピュータと互換性を持たせないように設計されたファイル方式によりフロッピィディスク・ライブラリー48に記憶され、これによってライブラリプログラムの公認されないコピー化を思い止まらせる。」(第7頁第13欄第9〜28行、第1〜3図)
(ヌ)「小売店において、第2図のRPT41の動作は次のようである。
使用者または小売店従業員は、正当なキーを保全ロック55に押し込むことによりRPT41の動作を可能にする。そのときプログラムは、キーボード46およびディスプレイ53(視覚フィードバック用)を使用してRAM47またはライブラリーディスク48から選択される。空のカートリッジ61は、カートリッジアダプタ45に挿入される。プログラムをカートリッジ61にロードすることはキーボード46により開始され、そのときカートリッジメモリは読み込まれて、正しいコピーがカートリッジ61の中に記録されたことを検証する。処理の記録は、バッテリバックアップメモリ51に格納される。
RPT41内のソフトウェア手段は、プログラム選択とロード処理とを制御する。好ましい実施例においては、このソフトウェア手段は、一連のメニュー選択ルーチンを含み、このルーチンは、興味をひくグラフィックスと簡単な指示による操作方法を提供する。」(第7頁第14欄第7〜27行、第2図)
(2)同じく引用された刊行物2(特開昭64-37130号公報)には、送信側から受信側へ通信回線を使用してデータを転送するデータ転送システムにおいて、「通信回線として衛星通信回線を使用し、送信側のホスト局(衛星ネットワーク管理管理装置21、衛星アクセス制御装置24)からデータとしてプログラムを送信のみするようにし、受信側の端末装置(中継装置27-1〜27-n)がこのプログラムを受信のみする」技術的事項が記載されている。
(3)同じく引用された刊行物3(特開平3-57052号公報)には、送信側から受信側へ通信回線を使用してデータを転送するデータ転送システムにおいて、「送信側のホスト局(送信システム1a〜1b)がデータとしてプログラムをサイクリックに(反復的に)送信のみするようにし、受信側の端末装置(受信システム2)がこのプログラムを受信のみする」技術的事項が記載されている。
【3】対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と前記刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1における「プログラム」「ホストコンピュータ(12)」「リモートプログラミングターミナル(RPT41)」「カートリッジアダプタ(45)」「キーボード(46)」及び「カートリッジレコーディング装置(11)」は、それぞれ本願発明における「ゲームデータ」「ホスト局」「端末装置」「インターフェイス」「操作パネル」及び「ゲームデータの転送システム」に相当するものと認められる。また、刊行物1における「RAM(47)及びライブラリディスク(48)」はホストコンピュータから受信してカートリッジに書き込まれるゲームデータを記憶しておくものであるから、本願発明における「大規模記憶装置」に対応させることができ、いずれも「記憶装置」である点で差異はないものと認められる。
したがって、両者は以下のとおりの一致点及び相違点を有するものである。
(一致点)
「多数のゲームデータを保有し、これらのゲームデータを通信回線で送信するホスト局と、上記ゲームデータを受信する端末装置とからなり、この端末装置は上記受信したゲームデータをファイル方式で蓄積する記憶装置と、上記端末装置とは別の半導体記憶装置を搭載したカートリッジに上記記憶装置から選択した1つのゲームデータを書き込むためのインターフェイスと、上記書き込みを指示するための操作パネルとからなり、上記記憶装置は上記端末装置が受信した複数のゲームデータを蓄積可能とするゲームデータの転送システム。」
(相違点)
(i) 本願発明にあっては、通信回線として衛星通信(回線)を使用し、ホスト局がゲームデータをサイクリックに送信のみするようにし、端末装置がこのゲームデータを受信のみするようにしているのに対して、刊行物1にあっては、このようにしていない点、
(ii)本願発明にあっては、端末装置の記憶装置が大規模記憶装置であり、この大規模記憶装置にゲームデータをファイル単位で蓄積し、大規模記憶装置に既に蓄積されているゲームデータが受信された場合には読み飛ばして蓄積を拒否するようにしているのに対して、刊行物1にあっては、このようにしていない点、
(検討)
前記相違点について、以下に検討する。
相違点(i)について、前記刊行物2には、送信側から受信側へ通信回線を使用してデータを転送するデータ転送システムにおいて「通信回線として衛星通信回線を使用し、送信側のホスト局からデータとしてプログラムを送信のみするようにし、受信側の端末装置がこのプログラムを受信のみする」ように構成することが開示されており、また前記刊行物3には、送信側から受信側へ通信回線を使用してデータを転送するデータ転送システムにおいて「送信側のホスト局がデータとしてプログラムをサイクリックに送信のみするようにし、受信側の端末装置がこのプログラムを受信のみする」ように構成することが開示されており、さらに、送信側から受信側へ衛星通信回線を使用してデータを転送するデータ転送システムにおいて、データを一方向で反復的に送信するようにすることも従来より周知の技術的事項(例えば、特開昭63-299624号公報、特開平2-123833号公報参照)であるので、前記刊行物1に記載されたものにおいても、刊行物2、3に開示された技術的事項及び周知の技術的事項を採用して本願発明のように構成することは当業者が容易になし得ることと認められる。
相違点(ii)について、データを記憶する際に端末装置の記憶装置を大規模(記憶容量)の記憶装置として構成するか否かは当業者が適宜に定めうる設計上の事項である。そして、このような記憶装置にデータを蓄積するものにおいて、データをファイル単位で蓄積することも、例えば特開平2-96214号公報、特開平3-2919号公報に見られるように従来より周知の技術的事項であり、また記憶装置に既に蓄積されているデータの蓄積を拒否する(二重登録、重複登録を防止する)ことも従来より周知の技術的事項(例えば、特開昭62-42272号公報、特開昭63-278138号公報参照)であり、さらに、既に蓄積されたデータの蓄積を拒否するために受信したデータを読み飛ばすようにすることも必要に応じて適宜選択し得る設計上の事項と認められるので、本願発明のように構成することは前記各周知の技術的事項を斟酌して当業者が容易になし得ることと認められる。
また、本願発明により奏する作用効果も、当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。
【4】請求人の主張について
審判請求人は、当審の拒絶の理由に対する平成14年8月5日付け意見書において、要点、以下のとおり主張している。
(1)相違点(i)について、「刊行物2に記載の発明は、衛星データ通信におけるプログラムDLL方式に関するもので、中継装置がダウンした後の再ローディング時においてディスクI/Oおよび回線速度の影響を受けないようにして中継装置のプログラムDLLの時間を短縮しダウンした中継装置の再立上げを早めることを目的としたものである。従って第1図等によれば、ホスト側が送信のみ行い、端末装置が受信のみ行っているように見えるが、実際には端末装置(中継装置)がダウンしたことをホスト局(衛星ネットワーク管理装置)に知らせる信号が端末装置側から発信されることを前提に構成されているものである。従って、プログラム送信の一方通行ではなく、端末装置からのフィードバックがあってこそ成立するものであり、本願のように端末装置から一切の信号を発信しない構成とは異なる構成であり、本願の契機となるものではないと考えられる。」(意見書第2頁第26行〜第3頁第7行)
(2)相違点(ii)について、「端末装置の記憶装置を大規模記憶装置としたことが設計上の事項であるとしているが、刊行物1ではむしろホストコンピュータのデータベースメモリ手段が大量のプログラムを記憶できることから、レコーディングターミナル(端末装置)のメモリ手段は小型のものですますことができる旨を述べている(第9頁第17欄2〜4行)のであって、特に本願のように端末装置の記憶装置として大規模記憶装置を選択することが単なる設計的事項であるとは認められない。例えば端末装置を特定の基地に設置する場合には、大規模記憶装置の容量は大きい程良いのである(段落番号「0012」参照)。」(意見書第3頁第13〜21行)
しかしながら、上記主張(1)について、前記刊行物2には、「ここでは第1図中の1〜12の符号が付された実線および破線により示される動作(処理の流れ)について符号順に説明していく。ここで、実線はデータの流れを示し、破線は制御の流れを示している。」(第3頁左上欄第2〜6行)旨記載され、また第1図の記載からもみても、データの流れは「ホスト側が送信のみ行い、端末装置が受信のみ行っている」ことが開示されていることは明らかであるから、請求人の当該主張は採用することができない。
さらに、上記主張(2)については、通常、記憶装置の規模(記憶容量など)をどのように定めるかは設計上の事項であり、刊行物1には、請求人が摘示した記載事項に後に続けて「第二に、レコーデイングターミナルの第1のメモリ手段に格納されていないコンピュータプログラムの需要があった場合にのみ、ホストコンピュータとの通信を行って、ホストコンピュータのデータベースメモリ手段に格納されているその需要のあったコンピュータプログラムを、そのレコーデイングターミナルの第1のメモリ手段に転送して格納して販売するようにすればよいのであるから、ホストコンピュータとレコーデイングターミナルとの間に必要となる通信の頻度を最小限に抑えることができる。」(第9頁第17欄5〜14行)と記載されており、レコーディングターミナル(14、端末装置)のメモリ手段が大規模或いは大容量の記憶装置であるものであっても何ら不都合がないものである。また、この記載からは、通信の頻度を少なくする場合には、逆に大規模、大容量の記憶装置であることを要することが示唆されているものと認められる。したがって、この主張も採用することができない。
【5】むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、前記刊行物1乃至3に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることとができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-08-11 
結審通知日 2003-08-19 
審決日 2003-09-01 
出願番号 特願平5-107739
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔後藤 和茂  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 仲間 晃
治田 義孝
発明の名称 ゲームデータの転送システム  
代理人 濱田 俊明  

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