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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1085974
審判番号 不服2002-14890  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-04-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-07 
確定日 2003-10-27 
事件の表示 特願2000-296930「反射型スクリーン」拒絶査定に対する審判事件[平成14年 4月10日出願公開、特開2002-107827]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯
本願は、平成12年9月28日の出願であって、平成14年7月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月6日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年9月6日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成14年9月6日付の手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「支持層の上に反射層が積層され、この反射層の上に光吸収層が積層され、この光吸収層の上に光拡散層が積層された航空機内で使用される反射型スクリーンであって、支持層及び光拡散層として自己消火性を有するPVCフィルムが採用され、反射層として、トップゲインが5乃至15であり、且つ、スクリーン水平方向で20乃至35度の位置及びスクリーン垂直方向で5乃至10度の位置で夫々ゲインが前記トップゲインの1/3となる視野角特性を有する反射層が採用されていることを特徴とする反射型スクリーン。」

と補正された。
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「自己消火性フィルム」を「自己消火性を有するPVCフィルム」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前日本国内において頒布された刊行物である、特開平10-312027号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

(a)
「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の反射型映写スクリーンは、基材シートと、透明樹脂に鱗片状の薄片を分散した光反射層、着色又は無彩色の透明樹脂からなる光吸収層、及び光透過性樹脂にアクリル樹脂系粒子を分散・形成した組成物を透明フィルムに塗工により設けた凹凸形状をもつ光拡散層とが順に積層されたものである。また、請求項2の発明は、基材シートと、金属蒸着膜よりなる光反射層、着色又は無彩色の透明樹脂からなる光吸収層、及び光透過性樹脂にアクリル樹脂系粒子を分散・形成した組成物を透明フィルムに塗工により設けた凹凸形状をもつ光拡散層とが順に積層されたことを特徴とする反射型映写スクリーンである。」(第2ページ段落0009)

(b)
「【0011】本発明の基材シートは、・・・ポリ塩化ビニル(硬質、半硬質又は軟質)、・・・などの延伸又は無延伸樹脂シート、低発泡のプラスチックシートより製造される合成紙やガラスや樹脂の繊維を用いた織布又は不織布などである。そして、これらを単層あるいは異種のものを2層以上積層して用いる。
【0012】反射型映写スクリーンは、難燃性、剛性と可撓性と両立、折れ曲がりなどの痕跡防止の観点からは、ガラス繊維の織布又は不織布と、軟質又は半硬質のポリ塩化ビニルシートとの積層体が好ましい。」(第2ページ段落0011、0012)

(c)
「【0014】光反射層は、透明樹脂をバインダーとして光反射性物質である鱗片状薄片を分散した塗料を塗工して形成する。塗膜に含まれる薄片はスクリーンの面と平行になるように配列されることが好ましく、これにより良好なスクリーンゲインと視野角を得ることができる。光反射層を構成する鱗片状薄片の平面部が、映写光入射及び画像観察面に対して略平行になるように、鱗片状薄片を配向させるためには、ロールコート法や、コンマーコート法などのように塗工を行うときに、シートの進行方向に塗膜が平行方向の剪断応力が作用するように塗工することが好ましい。また、塗工の厚みと鱗片状薄片とを同じ又はそれ以下にして塗工時に配向するように塗工する。」(第3ページ段落0014)

(d)
「【0016】光反射性物質を構成する材料は、次のとおりである。・・・
上に記載した金属、通常はアルミニウムを蒸着した4〜8μm厚みのポリエチレンテレフタレートフイルムの砕片。
これらの光反射性物質のなかでも、スクリーンゲインを向上するには、アルミニウム箔片、又は金属蒸着膜(アルミニウム蒸着)やその砕片が好ましく、鱗片状体の平面を基材反射シート面と平行に配列すると光反射率を向上できる。」(第3ページ段落0016)

(e)
「また、請求項2の光反射層は、基材シートに設けた通常の金属蒸着層好ましくはアルミニウム蒸着層である。」(第3ページ段落0019)

(f)
「【0027】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)図1に示すように基材シート1として、ジオクチルアジペートを48重量部を含む厚み300μmの軟質ポリ塩化ビニルシート(シート材B)と、厚み125μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートシート(シート材A)とをポリエステル・イソシアネート系接着剤を用いた通常のドライラミネーションで積層して、実施例1の基材シート1を形成した。」(第4ページ段落0027)

(g)
「【0039】前記スクリーンゲインの測定と同様に全面白色の画像を投影し、輝度計を、スクリーンの中心から立てた法線に対して、-60°〜+60°の角度範囲で水平方向に、輝度の角度依頼性(配向特性)を測定する。そして、この法線方向の輝度の1/2以上のもつ角度範囲、すなわち半値角を視野角とする。」(第5ページ段落0039)

(h)
実施例及び比較例のスクリーンゲイン及び視野角を比較した対照表として、以下の表が記載されている(第5ページ段落0040)



これらの記載事項からみて、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明」という。)。

「基材シートの上に光反射層が積層され、この光反射層の上に光吸収層が積層され、この光吸収層の上に光拡散層が積層された反射型映写スクリーンであって、基材シートとしてポリ塩化ビニルシートが採用され、光反射層として、透明樹脂にアルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムの砕片を分散した反射層が採用されていることを特徴とする反射型映写スクリーン。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「基材シート」、「光反射層」、「反射型映写スクリーン」、「ポリ塩化ビニルシート」は、それぞれ本願補正発明における「支持層」、「反射層」、「反射型スクリーン」、「PVCフィルム」に相当する。
したがって、両者は、

「支持層の上に反射層が積層され、この反射層の上に光吸収層が積層され、この光吸収層の上に光拡散層が積層された反射型スクリーンであって、支持層としてPVCフィルムが採用されたことを特徴とする反射型スクリーン。」

という点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
反射型スクリーンの使用場所として、本願補正発明では航空機内に限定しているのに対し、引用発明では使用場所を限定していない点。

[相違点2]
支持層としてのPVCフィルムについて、本願補正発明では自己消火性を有するPVCフィルムとしているのに対し、引用発明ではPVCフィルムの自己消火性について言及していない点。

[相違点3]
本願補正発明では、光拡散層として自己消火性を有するPVCフィルムを採用しているのに対して、引用発明では、そのようなフィルムに限定していない点。

[相違点4]
本願補正発明では、トップゲインが5乃至15であり、且つ、スクリーン水平方向で20乃至35度の位置及びスクリーン垂直方向で5乃至10度の位置で夫々ゲインが前記トップゲインの1/3となる視野角特性を有する反射層を用いているのに対し、引用発明では、反射層のトップゲイン及び視野角特性について言及していない点。

(4)判断

(4-1)相違点1について
反射型スクリーンを航空機内で使用することは従来周知(例えば、特開平5-204046号公報(第2ページ段落0006〜第3ページ段落0010)、実願平2-8228号(実開平3-101087号)のマイクロフィルム(第6ページ下から4行〜下から3行)参照。)であるから、引用発明においても、その使用場所を航空機内とすることは当業者であれば容易に想到できることである。

(4-2)相違点2について
本願補正発明及び引用発明も共に、ポリ塩化ビニルを支持層として採用しており、当然に同じ特性を有するものであるから、この点について両者に実質的な差異はない。

(4-3)相違点3について
反射型スクリーンの光拡散層としてPVCフィルムを採用することは、従来周知(特開平9-152658号公報(第4ページ段落0024)、特開平9-34012号公報(第3ページ段落0013)、特開平8-6160号公報(第2ページ段落0007)参照。)であるから、引用発明においても、光拡散層として従来周知なPVCフィルムを採用することは当業者であれば容易に想到できることである。なお、(4-2)に記載したとおり、本願発明における支持層と同じPVCフィルムであるから、当然に自己消火性を有している。

(4-4)相違点4について
アルミニウムとPETフィルムを積層した反射層は、従来周知(特開平9-152658号公報(第2ページ段落0007、第3ページ0017〜0018、第5ページ0031)、特開平9-49907号公報(第2ページ段落0014〜0019)参照。)であるから、引用発明においても、反射層としてアルミニウムとPETフィルムを積層した反射層を採用することは当業者であれば容易に想到できることである。そして、アルミニウムとPETフィルムを積層した反射層は、本願明細書の段落0035に記載した実施例と同じであるから、前記周知技術においても当然に、トップゲインが5乃至15であり、且つ、スクリーン水平方向で20乃至35度の位置及びスクリーン垂直方向で5乃至10度の位置で夫々ゲインが前記トップゲインの1/3となる視野角特性を有している。
仮に、前記周知技術の反射層のトップゲイン及び視野角特性が本願発明のものと一致しないとしても、反射型スクリーンが所望のトップゲイン及び視野角特性を有しなければならないことは当然のことであり(要すれば、引用例1(記載事項(h))、特開平9-49907号公報(第3ページ段落0021〜0026)参照。)、かつ、引用例1の記載事項(c)(特に、「塗膜に含まれる薄片はスクリーンの面と平行になるように配列されることが好ましく、これにより良好なスクリーンゲインと視野角を得ることができる。」の記載参照。)及び(d)(特に、「これらの光反射性物質のなかでも、スクリーンゲインを向上するには、アルミニウム箔片、又は金属蒸着膜(アルミニウム蒸着)やその砕片が好ましく、鱗片状体の平面を基材反射シート面と平行に配列すると光反射率を向上できる。」の記載参照。)にみられるよう、構成要素の一つである反射層を調整することによって反射型スクリーンのトップゲイン及び視野角特性を制御できるのであるから、反射層のトップゲイン及び視野角特性を単に所望の値に限定することは当業者であれば容易に想到できることである。

また、本願補正発明の作用効果も、引用例1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定で準用する同法第126条第4項に規定される独立特許要件を満たしていないものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定によって却下すべきものである。

3.本願発明について

平成14年9月6日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年6月24日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「支持層の上に反射層が積層され、この反射層の上に光吸収層が積層され、この光吸収層の上に光拡散層が積層された航空機内で使用される反射型スクリーンであって、支持層及び光拡散層として自己消火性フィルムが採用され、反射層として、トップゲインが5乃至15であり、且つ、スクリーン水平方向で20乃至35度の位置及びスクリーン垂直方向で5乃至10度の位置で夫々ゲインが前記トップゲインの1/3となる視野角特性を有する反射層が採用されていることを特徴とする反射型スクリーン。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明における「自己消火性を有するPVCフィルム」の限定事項である「PVC」との構成を省き、「自己消火性フィルム」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-08-26 
結審通知日 2003-09-01 
審決日 2003-09-12 
出願番号 特願2000-296930(P2000-296930)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 谷山 稔男
辻 徹二
発明の名称 反射型スクリーン  
代理人 吉井 剛  
代理人 吉井 雅栄  

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