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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1086061 |
審判番号 | 不服2003-721 |
総通号数 | 48 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-04-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-01-10 |
確定日 | 2003-10-30 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第280596号「ビデオカメラ装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 4月16日出願公開,特開平 5- 95503]について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 本願は,平成3年10月1日の出願であって,その発明は,平成15年1月16日付けで補正された明細書及び図面からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載されたものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は次のとおりである。 【請求項1】インナーフォーカスレンズを用いたビデオカメラ装置において, 上記インナーフォーカスレンズ内に設けられたズームレンズの位置を検出するズームレンズ位置検出手段と, 上記インナーフォーカスレンズ内に設けられたフォーカスレンズの位置を検出するフォーカスレンズ位置検出手段と, フォーカス状態を検出するフォーカス処理手段と, 上記フォーカス処理手段からの出力信号に応じて駆動される第一のフォーカスレンズ駆動手段と, 合焦距離に応じて異なるズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置を示すカムカーブが複数設定された制御手段と, 上記フォーカスレンズを無限遠の合焦位置に駆動する第二のフォーカスレンズ駆動手段と, フォーカス動作を制御する押圧スイッチとを有し, 上記第一のフォーカスレンズ駆動手段が動作している間に上記押圧スイッチが押圧されると,上記第二のフォーカスレンズ駆動手段が動作し,上記ズームレンズ位置検出手段の出力と上記カムカーブに基づいて無限遠の合焦位置に上記フォーカスレンズを移動して保持し, フォーカスレンズが無限遠の合焦位置に保持されている状態で上記押圧スイッチが押圧されると,上記第1のフォーカスレンズ駆動手段が動作することを特徴とするビデオカメラ装置。 第2 引用例 これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,特開平2ー230110号公報(以下,「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。 (1)「従来よりビデオカメラ等に用いられている焦点距離可変の撮影レンズ,所謂ズームレンズとして多くの光学設計例が知られている。」(2頁左上欄10〜12行の〔従来の技術〕) (2)「焦点調節の為のレンズ群を第3群以降のレンズ群とする,所謂インナーフォーカスタイプのズームレンズが知られている。」(2頁右上欄5〜7行) (3)「この方式の自動焦点調節装置とインナーフォーカスレンズを組みあわせることによって,複雑な鏡筒構造をとらなくとも焦点調節の為のレンズ群の位置を正しい位置とすることが可能となる。」(2頁左下欄5〜9行) (4)「21はCCD等 ・・・24はフォーカシングモータ27の駆動パルスカウンタ回路であり,これによって焦点調節の為のレンズ群の絶対位置を知るエンコーダーを形成している。・・・ ズームスイッチ32が操作されていなくとも,ズームエンコーダー及びステップ数から第4図の領域16にあるか,領域17にあるかがCPU33内で判定される。領域16の場合にはAF装置22の検出結果によって,前述の通り,ズームモータ29とフォーカシングモータ27の両モータを駆動する。」(5頁左下欄12行〜6頁左上欄13行及び第4図参照) 同じく,原査定の拒絶の理由に引用された,実願昭57ー48025号(実開昭58ー152619号)のマイクロフィルム(以下,「引用例2」という。)には, (5)「本考案は,このような障害を除去するため,切り替え操作をすることなく自動モードとマニュアルモードとを使い分けることを可能にすることを目的とする。そのため,本考案の装置では,自動モードで焦点を調節していても,外部操作に応じて焦点検出手段の出力にレンズ駆動手段が応動するのを阻止すると共にマニュアルレンズ駆動信号を発生してマニュアルモードで焦点調節を可能とする。」(5頁14行〜6頁2行) (6)「スイッチS∞は,外部操作に応じて撮影レンズ1を無限遠に合焦する方向に移動させる信号を発生する。」(7頁9〜11行及び表1参照) (7)「なお,図においては操作スイッチS∞を回転式のスイッチとして示したが,これは原理上の説明を行うために用いたものであって,実際には後述の第7図の如く,自動復帰型の押しボタンスイッチもしくはシーソースイッチ等を用いた方が操作上便利であろう。」(19頁7〜12行) (8)「操作スイッチSN,S∞は第1図,第4図,第5図,第6図にそれぞれ示した操作スイッチSN,S∞であって,通常は図示されていないバネ性の部材等によって上に押し上げられていて共にOFFの状態を保ち,手動で押し下げることによってONとなり,放すと再びOFFにもどるような構造になっている。」(23頁4〜10行) 第3 対比 本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると,インナーフォーカスレンズを用いたビデオカメラである点で差異はなく,ズームレンズの位置及びフォーカスレンズの位置を検出してレンズを駆動制御する際に,引用例1の第4図に示された,本願発明のカムカーブに相当する制御を行っていることは明らかである。 そうすると,本願発明の前提とする構成が引用例1には示されており,本願発明は引用例1と次の一致点を備える。 【一致点】インナーフォーカスレンズを用いたビデオカメラ装置において,上記インナーフォーカスレンズ内に設けられたズームレンズの位置を検出するズームレンズ位置検出手段と,上記インナーフォーカスレンズ内に設けられたフォーカスレンズの位置を検出するフォーカスレンズ位置検出手段と,フォーカス状態を検出するフォーカス処理手段と, 上記フォーカス処理手段からの出力信号に応じて駆動される第一のフォーカスレンズ駆動手段と,合焦距離に応じて異なるズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置を示すカムカーブが複数設定された制御手段と,を備えたビデオカメラ装置。 そして,本願発明の次の(1)ないし(4)が,引用例1に明確に示されていない点で一応相違が認められる。 【相違点】 (1)本願発明の課題である,フォーカスレンズを強制的に無限遠に設定する点 (2)フォーカスレンズを無限遠の合焦位置に駆動する第二のフォーカスレンズ駆動手段と,フォーカス動作を制御する押圧スイッチとを有する点 (3)第一のフォーカスレンズ駆動手段が動作している間に上記押圧スイッチが押圧されると,第二のフォーカスレンズ駆動手段が動作し,ズームレンズ位置検出手段の出力とカムカーブに基づいて無限遠の合焦位置に上記フォーカスレンズを移動して保持する点 (4)フォーカスレンズが無限遠の合焦位置に保持されている状態で押圧スイッチが押圧されると,第一のフォーカスレンズ駆動手段が動作する点 第4 当審の判断 本願発明と同一の技術分野に属する引用例2を基に上記相違点を判断する。 なお,引用例2では,「カメラ等」と記載されているのみで,ビデオカメラであることの明確な記載はないが,焦点調節はビデオカメラもスチルカメラと同じく必要なものであり,引用例2をスチルカメラの説明と理解しても何ら矛盾する点は生じない。 1 相違点(1)について 前記2(5)の記載から,引用例2は本願発明と同等の課題を備えており,本願発明の課題に格別考慮すべき点は認められない。 2 相違点(2)について 引用例2に示された前記2(6)記載のスイッチS∞は,本願発明の押圧スイッチに相当し,スイッチ操作に応じて撮影レンズを無限遠に合焦していることから,当該相違点は,引用例2に記載されている事項である。 3 相違点(3)について 本願発明の「第一のフォーカスレンズ駆動手段が動作している間」の表現は,引用例2のスイッチSNがOFFの状態である自動焦点調節モード(表1参照)の場合に相当し,この状態で押圧スイッチ(S∞スイッチに相当)がONとなると無限遠の合焦位置にフォーカスレンズを移動することは,引用例2にも同様に示されている。 そして移動後の状態では,無限遠の合焦位置に保持されていることとなり,本願発明と何ら相違は認められない。 4 相違点(4)について 上記3の状態で,押圧スイッチが押されることに対応する記載として,引用例2では,スイッチS∞がOFFとなることに相当する。スイッチとしては,前記2(6),(7)に揚げたように種々のものが慣用されており,操作上便利なスイッチを採用することは当業者が適宜決定しうる事項である。例えば,押圧することによりオン状態を保持し,再度の押圧によりオフ状態に復帰するような,いわゆるプッシュロック式の押しボタンスイッチを用いることにより,本願発明を実現できることは当業者に明らかである。 以上,相違点(1)ないし(4)は,引用例2に示されている事項を引用例1のビデオカメラに適用するに際し適宜変更しうる程度の事項であり,当業者が格別困難を伴うものとは認められない。 また,効果についても各引用例から当然に予測可能な程度のものにすぎない。 第5 むすび したがって,本願発明は,引用例1及び引用例2に記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,本願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-08-27 |
結審通知日 | 2003-09-02 |
審決日 | 2003-09-19 |
出願番号 | 特願平3-280596 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 信一 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
小林秀美 橋本恵一 |
発明の名称 | ビデオカメラ装置 |
代理人 | 杉浦 正知 |