• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1086131
審判番号 不服2000-20094  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-20 
確定日 2003-10-29 
事件の表示 平成 6年特許願第 42079号「シート部材搬入機構」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年10月 3日出願公開、特開平 7-251969]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成6年3月14日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年1月19日受付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】上下方向に間隔をおいて配設されて両者間に上下方向間隔が比較的大きい上流部と上下方向間隔が比較的小さい下流部とを有するシート部材搬入路を規定する下側及び上側案内板、前部を該シート部材搬入路の該上流部に位置せしめて該下側案内板上に載置されたシート部材層における最下位のシート部材の下面に作用してシート部材を該シート部材搬入路の該下流部に移動せしめるためのシート部材送給手段、並びに該シート部材搬入路の該下流部において最下位のシート部材以外のシート部材が下流に搬送されるのを阻止し最下位のシート部材のみを下流に搬送せしめるためのシート部材分離手段を具備するシート部材搬入機構において、
該シート部材搬入路の該下流部の上流側には制限部材が昇降自在に配設されており、該制限部材が最下降位置に位置せしめられた状態において該制限部材は該シート部材搬入路の該下流部の上流端における該上側案内板の下面よりも下方に突出する、ことを特徴とするシート部材搬入機構。」

2 引用例の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である、実願平3-4855号(実開平4-133637号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
「【0001】【産業上の利用分野】本考案は、プリンタ等に適用される給紙装置に関する。
【0002】【従来の技術】 図3に従来の給紙装置の概略構成を示す。……
【0003】 ここで、用紙収容部10は、搬送面11と,搬送面11より上方に搬送用間隙Gを介して立設されたスリット板13とを有し当該搬送面11上に積載された複数用紙Pをその一端部をスリット板13のガイド面14に突き当てるとともに重り蓋17等を介して下方に付勢して所定箇所への送り出しに備えて待機させる構成とされている。
より具体的には、スリット板13は、その幅寸法(図3の紙面と直角方向の長さ)が用紙Pの幅寸法相当に選定されている。また、搬送用間隙Gは、用紙収容部11から用紙分離部20へ送り出される用紙Pの枚数が少なくなるように選定(例えば2mm)されている。さらに、スリット板13の下端部15は、用紙Pを円滑に送り出し可能なるように用紙搬送方向(X方向)に向けて傾斜するように形成されている。なお、図3において、19は送り出しローラで、その上部が搬送面11の開口部12を介して当該搬送面11より上方に所定量だけ突出している。この送り出しローラ19は、矢印方向に回転駆動されて複数用紙Pの内の最下位の用紙を用紙搬送方向(X方向)に送り付勢する。
【0004】 一方、用紙分離部20は、用紙収容部10より用紙搬送方向下流側に配設されており,周面の摩擦係数が大である上部分離ローラ21と,摩擦係数が小である下部分離ローラ22とから構成されている。両ローラ21,22間の間隙は、多重送りを防止可能な寸法(例えば用紙厚さの1.5倍)とされている。なお、上部分離ローラ21は固定されており,下部分離ローラ22は回転フリーとされている。
【0005】【考案が解決しようとする課題】 ところで、上記した従来の給紙装置において、用紙収容部10から多数枚の用紙Pが搬送用間隙Gを介して用紙分離部20へ送り込まれてしまい,当該用紙分離部20で用紙が円滑に分離されずに2枚送られてしまったり,紙詰まりを起こすことがある。
【0006】 そこで、かかる不都合を解消するために、搬送用間隙Gを狭くして用紙送り出し枚数を制限することが考えられる。しかし、かかる構成では、用紙Pが搬送用間隙Gを通過する際にしごかれ過ぎて用紙分離部20へ送り出されにくくなり紙詰りを起こすおそれが生じる。
【0007】 本考案の目的は、上記事情に鑑み、用紙収容部から用紙を紙詰まりや多重送り等を防止して円滑に1枚づつ給送することができる給紙装置を提供することにある。
【0008】【課題を解決するための手段】 本考案は、搬送面より上方に搬送用間隙を介して立設されたスリット板を有し前記搬送面上に積載された複数用紙をその一端部を前記スリット板のガイド面に突き当てるとともに下方に付勢して所定箇所への送り出しに備えて待機させる用紙収容部と、前記用紙収容部より用紙搬送方向下流側に設けられた用紙分離部とを備えた給紙装置において、
前記用紙収容部より前記搬送用間隙を介して前記用紙分離部へ搬送される複数用紙を階段状にずらしかつ用紙搬送方向に弾性変形可能な弾性ガイド部材を設けたことを特徴とする。」
「【0011】【実施例】 本考案の一実施例を図面に基づき説明する。 本実施例に係る給紙装置は、図1に示す如く,用紙収容部10(搬送面11,スリット板13等),送り出しローラ19,用紙分離部20(上部分離ローラ21,下部分離ローラ22)および本装置の特徴部である弾性ガイド部材30を含み構成されている。なお、図3に示した構成要素と同一のものについては同一の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0012】 ここで、弾性ガイド部材30は、用紙収容部10より搬送用間隙Gを介して用紙分離部20へ搬送される複数用紙Pを階段状にずらしかつ用紙搬送方向(X方向)に弾性変形可能に設けられている。本実施例においては、弾性ガイド部材30は、上部分離ローラ21の取付板23を介してスリット板13の側面に配設されている。また、弾性ガイド部材30は、弾性を有する厚さ0.35mmのマイラー板より形成されている。さらに、弾性ガイド部材30の下端部(すなわち用紙摺接部分)は、図2に示す如く,用紙Pが引っ掛からないように用紙搬送方向(X方向)に反りかえされている。
【0013】 次に作用について説明する。
【0014】 用紙収容部10より搬送用間隙Gを介して用紙分離部20へ搬送される複数用紙Pは、図2に示す如く,弾性ガイド部材30によってしごかれて階段状にずらされる。これにより、用紙分離部20へは、最下位の用紙Pを先頭にして当該用紙Pより上方の第2番目以降の用紙Pが少しづつ遅れながら到達する。このように、一度に用紙分離部20へ多数の用紙Pが集中して供給されることがないため、用紙分離部20の上部および下部分離ローラ21,22の協働により用紙Pの分離が円滑に行われることになり,多重送りを防止することができる。また、弾性ガイド部材30によって複数用紙Pがしごかれる際、当該ガイド部材30は用紙搬送方向(X方向)に弾性変形するので当該複数用紙Pに作用するガイド反力が過大となることはない。そのため、弾性ガイド部材30によって複数用紙Pがしごかれ過ぎるようなことはなく、紙詰りが防止される。
【0015】 したがって、用紙収容部10から用紙Pを紙詰まりや多重送り等を防止して円滑に1枚づつ給送することができる。」
以上の記載及び図1〜図3によれば、引用例には、
「上下方向に間隔をおいて配設された搬送面11及びスリット板13、一端部をスリット板13のガイド面14に突き当てて搬送面11上に積載された複数用紙Pにおける最下位の用紙を用紙搬送方向に送るための、搬送面11の開口部12を介して搬送面11より上方に突出している送り出しローラ19、並びにスリット板13より用紙搬送方向下流側において用紙Pの分離を行う用紙分離部20を具備する給紙機構において、
スリット板13の側面に弾性ガイド部材30が用紙搬送方向に弾性変形可能に配設されており、該弾性ガイド部材30はスリット板13の傾斜した下端部15の下面よりも下方に突出する給紙機構。」
の発明が記載されているものと認められる。

3 対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「用紙」、「積載された複数用紙P」及び「給紙機構」は、それぞれ本願発明の「シート部材」、「シート部材層」及び「シート部材搬入機構」に相当することは明らかである。
そして、引用例記載の発明の「上下方向に間隔をおいて配設された搬送面11及びスリット板13」は、図2によると、スリット板13の下端部15上端の屈曲部付近に位置する弾性ガイド部材30を境に、上下方向間隔が比較的大きく、用紙が多数枚積載された部分と、上下方向間隔が比較的小さく、用紙が数枚積載された部分とで、搬送面11上に積載された用紙を用紙搬送方向(X方向)に送り出す通路を構成しているから、本願発明の「上下方向に間隔をおいて配設されて両者間に上下方向間隔が比較的大きい上流部と上下方向間隔が比較的小さい下流部とを有するシート部材搬入路を規定する下側及び上側案内板」に相当し、引用例記載の発明の、スリット板13の下端部15上端の屈曲部付近に位置する弾性ガイド部材30より上流側及び下流側は、それぞれ本願発明の「シート部材搬入路の上流部」及び「シート部材搬入路の下流部」に相当するということができる。
引用例記載の発明の「送り出しローラ19」は、搬送面11より上方に突出しており、スリット板13の下端部15上端の屈曲部付近より上流側の搬送面11上に積載された複数用紙Pの内の最下位の用紙を用紙搬送方向(X方向)に送る(段落【0003】参照。)から、本願発明の「前部を該シート部材搬入路の該上流部に位置せしめて該下側案内板上に載置されたシート部材層における最下位のシート部材の下面に作用してシート部材を該シート部材搬入路の該下流部に移動せしめるためのシート部材送給手段」に相当する。
また、引用例記載の発明の「用紙分離部20」は、図2に示す如く、弾性ガイド部材30によってしごかれて階段状にずらされ、最下位の用紙Pを先頭にして当該用紙Pより上方の第2番目以降の用紙Pが少しづつ遅れながら到達した用紙Pを、上部および下部分離ローラ21,22の協働により分離し1枚づつ給送する(段落【0014】、【0015】参照。)、つまり、最下位の用紙P以外の用紙が下流に搬送されるのを阻止し最下位の用紙のみを下流に搬送せしめるものであるから、本願発明の「該シート部材搬入路の該下流部において最下位のシート部材以外のシート部材が下流に搬送されるのを阻止し最下位のシート部材のみを下流に搬送せしめるためのシート部材分離手段」に相当するといえる。
さらに、本願明細書の「【0010】【作用】 本発明のシート部材搬入機構においては、最下降位置に位置せしめられている制限部材の制限作用によって、シート部材搬入路の下流部に同時に送給されるシート部材の合計厚さが、下側案内板と制限部材の下端との上下方向間隔と実質上同一乃至それ以下に制限、従ってシート部材搬入路の下流部における下側案内板と上側案内板との上下方向間隔よりも小さい厚さに制限される。かくして、シート部材搬入路の下流部において、下側案内板と上側案内板との間に過剰枚数のシート部材が強制的に挿入されて閉塞してしまうことが確実に防止される。合計厚さが下側案内板と制限部材の下端との上下方向間隔と実質上同一である複数枚のシート部材が同時に送給されて、下側案内板と制限部材の下端との間に強制的に挿入されたとしても、制限部材は昇降自在である故に下側案内板と制限部材の下端との間に複数枚のシート部材が閉塞されることはない。……」、「【0019】……制限部材92の垂下部94の下端と下側案内板6の上面との間には、両者間の間隔dに対応する合計厚さを有する複数枚のシート部材116が強制的に進入せしめられ得るが、制限部材92は上方に自由に移動され得る故に、制限部材92と下側案内板6との間においてシート部材116が閉塞されることはない。……」との記載によれば、本願発明の「制限部材」は、シート部材搬入路の下流部に同時に送給されるシート部材の合計厚さを、下側案内板と制限部材の下端との上下方向間隔と実質上同一乃至それ以下に制限して、シート部材搬入路の下流部における下側案内板と上側案内板との上下方向間隔よりも小さい厚さに制限することにより、シート部材搬入路の下流部に過剰枚数のシート部材が強制的に挿入されて閉塞してしまうことを防止し、強制的に挿入されたとしても、昇降自在であるため、下側案内板と制限部材の下端との間に複数枚のシート部材が閉塞されることをなくする、というものであるところ、引用例記載の発明の「弾性ガイド部材30」は、図2に示す如く、スリット板13の下端部15上端の屈曲部付近で、スリット板13の下面よりも下方に突出しており、用紙送り出し枚数を制限するとともに、用紙分離部20へ搬送される複数用紙Pをしごいて階段状にずらし、複数用紙Pをしごく際、用紙搬送方向(X方向)に弾性変形するので当該複数用紙Pに作用するガイド反力が過大となることはなく、そのため、複数用紙Pをしごき過ぎるようなことはなく、紙詰りを防止する(段落【0006】、【0014】参照。)というものであるから、本願発明の「制限部材」に相当するといえる。
そうすると、本願発明と引用例記載の発明は、
「上下方向に間隔をおいて配設されて両者間に上下方向間隔が比較的大きい上流部と上下方向間隔が比較的小さい下流部とを有するシート部材搬入路を規定する下側及び上側案内板、前部を該シート部材搬入路の該上流部に位置せしめて該下側案内板上に載置されたシート部材層における最下位のシート部材の下面に作用してシート部材を該シート部材搬入路の該下流部に移動せしめるためのシート部材送給手段、並びに該シート部材搬入路の該下流部において最下位のシート部材以外のシート部材が下流に搬送されるのを阻止し最下位のシート部材のみを下流に搬送せしめるためのシート部材分離手段を具備するシート部材搬入機構において、
該シート部材搬入路の該下流部の上流側には制限部材が配設されており、該制限部材は該シート部材搬入路の該下流部の上流端における該上側案内板の下面よりも下方に突出するシート部材搬入機構。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
本願発明では、制限部材が昇降自在に配設されており、最下降位置に位置せしめられた状態においてシート部材搬入路の該下流部の上流端における該上側案内板下面よりも下方に突出するのに対し、引用例記載の発明では、制限部材が用紙搬送方向に弾性変形可能に配設されている。

そこで、上記相違点について検討する。
本願発明が、「制限部材が昇降自在に配設され」という構成を採用したのは、制限部材92の垂下部94の下端と下側案内板6の上面との間に、両者間の間隔dに対応する合計厚さを有する複数枚のシート部材116が強制的に進入せしめられても、制限部材92が上方に自由に移動して、制限部材92と下側案内板6との間においてシート部材116が閉塞されることをなくする(本願明細書段落【0019】参照。)ためであると解されるところ、引用例記載の発明では、複数用紙Pをしごく際、弾性ガイド部材30(制限部材)が用紙搬送方向(X方向)に弾性変形するので、当該複数用紙Pに作用するガイド反力が過大となることはなく、そのため、複数用紙Pをしごき過ぎるようなことはなく、紙詰りを防止する(段落【0014】参照。)というものであり、上記相違点は、要するに、制限部材の下端と下側案内板の上面との間に、複数枚のシート部材が強制的に進入せしめられても、制限部材が自由に移動して、制限部材と下側案内板との間においてシート部材が閉塞されることをなくするために、制限部材を、本願発明では、昇降自在に配設するのに対し、引用例記載の発明では、用紙搬送方向に弾性変形可能に配設するというものである。
しかしながら、シート部材を搬送する機構において、制限部材を昇降自在に設け、搬送過程で複数のシート部材が制限部材の下方に押し込まれたときに、制限部材を上方に逃がして複数のシート部材の通過を許容することは、本願の出願前に周知の技術的事項であり(例えば、実願昭61-121889号(実開昭63-31045号)のマイクロフィルムの「搬出動作の過程で同時に2枚のカード商品が一緒にスリット8内に食い込んでブロッキングが発生するような事態になると、……カード商品の押し込み反力によりゲート板2は上方への力を受ける。これによりゲート板2はばね16の付勢力に抗してスリット8を拡大するように上方に逃げ移動する。この結果……2枚のカード商品がスリット8を通過し得るようになる。」(8頁11〜20行)の記載参照。)、引用例記載の発明において、制限部材を、用紙搬送方向に弾性変形可能に配設されるものに代えて、昇降自在に配設されるものとし、相違点における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果も、引用例記載の発明及び周知の技術的事項から当業者が予測し得た範囲のものである。

4 むすび
したがって、本願発明は、引用例記載の発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-07-09 
結審通知日 2003-08-05 
審決日 2003-08-21 
出願番号 特願平6-42079
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 大町 真義
山崎 豊
発明の名称 シート部材搬入機構  
代理人 小野 尚純  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ