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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C |
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管理番号 | 1086188 |
審判番号 | 不服2001-5101 |
総通号数 | 48 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-12-05 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-04-04 |
確定日 | 2003-10-31 |
事件の表示 | 平成11年特許願第149741号「軸受装置」拒絶査定に対する審判事件[平成12年12月5日出願公開、特開2000-337391]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1、手続の経緯 本願は、平成11年5月28日の特許出願であって、平成13年2月27日に拒絶査定がなされたが、その後、同年4月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に、同年4月26日付で手続補正がなされたものである。 2、平成13年4月26日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論]平成13年4月26日付の手続補正を却下する。 [理由]本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「外部との間に圧力差を生じる流体通路を内部に有する流体機器のハウジングの壁に設けた嵌合孔にシール付き転がり軸受を嵌装し、前記転がり軸受に、前記流体通路内に配置した回転体の軸を支持させた軸受装置において、前記転がり軸受の外輪と前記ハウジングの嵌合孔の内面および該転がり軸受の内輪と前記回転体の軸との間をシールするために、前記外輪の外周面および前記内輪の内周面の、前記流体通路側に寄った部位に少なくとも一つの環状溝を設け、該環状溝に弾性材料からなるOリングをそれぞれ嵌合配置したことを特徴とする軸受装置。」と補正された。 この補正は、本件補正前の請求項1の記載内容の内、「シールリング」なる記載を「Oリング」なる記載に変更して新たな請求項1とするものである。 ここで検討するに、この補正は、「シールリング」なる内容、即ち、密封作用を為すリング状物、なる内容を、「Oリング」と変更するものであるから、この補正は特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項に規定する独立特許要件に適合するか否か更に検討する。 (1)引用例 原査定の拒絶理由に引用された実願昭61-112676号(実開昭63-20529号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、本願補正発明の用語をできるだけ用いその記載手順に倣って整理すると、 「外部との間に圧力差を生じるロータ室を内部に有する流体機器のハウジング10の壁に設けたアダプタ31の嵌合孔にシール付き転がり軸受16を嵌装し、前記転がり軸受16に、前記ロータ室内に配置した回転体の軸13を支持させた軸受装置において、前記転がり軸受16の外輪16aと前記ハウジングのアダプタ内面の嵌合孔との間をシールするために、前記外輪16aの外周面の、前記ロータ室内側に寄った部位に少なくとも一つの環状溝40を設け、該環状溝40に弾性材料からなるOリング41をそれぞれ嵌合配置した軸受装置。」なる発明が図面と共に記載されている。 (上記の認定に当たって、引用例1に記載される軸受16が図面上明らかに転がり軸受であってそれもシールドベアリングであるから、本願補正発明に言う「シール付き転がり軸受」に相当することをその根拠とした。) 同じく引用された特開平10-103088号公報(以下、「引用例2」という。)の特に図3及びその説明には、「外部との間に圧力差を生じる流体通路(吸気通路4が対応する)を内部に有する流体機器のハウジングの壁に設けた嵌合孔に転がり軸受3を嵌装し、前記転がり軸受に、前記流体通路内に配置した回転体8の軸1を支持させた軸受装置」なる技術的事項がその従来例として開示されている。 同じく引用された実願昭59-137009号(実開昭61-52724号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)には、特にその実用新案登録請求の範囲に「固定部に装着され、回転軸を軸承する片側シール型のベアリングにおいて、このベアリングの外輪と固定部との間または内輪と回転軸との間のいずれか一方または双方にOリングを装着し、このOリングを装着しない側の上記ベアリングの外輪または内輪を上記固定部または上記回転軸にしまりばめ嵌合構成とした」とあり、その軸受が転がり軸受であることは自明であるから、つまり「転がり軸受のシール構造に関し、転がり軸受の外輪と固定部との間のみならず、内輪と回転軸との間にもOリングを装着する」なる技術思想が開示されている。 (2)対比 ここで本願補正発明と引用例1に記載される発明とを比較すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 一致点:「外部との間に圧力差を生じる雰囲気を内部に有する流体機器のハウジングの壁に設けた嵌合孔にシール付き転がり軸受を嵌装し、前記転がり軸受に、前記雰囲気内に配置した回転体の軸を支持させた軸受装置において、前記転がり軸受の外輪と前記ハウジングの嵌合孔の内面との間をシールするために、前記外輪の外周面の、前記雰囲気側に寄った部位に少なくとも一つの環状溝を設け、該環状溝に弾性材料からなるOリングを嵌合配置した軸受装置。」 相違点1:本願補正発明の雰囲気が、 「流体通路」であるのに対して、 引用例1に記載される発明の雰囲気が、 「ロータ室」である点。 相違点2:本願補正発明が、 「流体機器のハウジングの壁に設けた嵌合孔にシール付き転がり軸受を嵌装し」としているのに対して、 引用例1に記載される発明は、「流体機器のハウジング10の壁に設けたアダプタ31の嵌合孔にシール付き転がり軸受16を嵌装し」としている点。 相違点3;本願補正発明が、 「転がり軸受の内輪と前記回転体の軸との間をシールするために、前記内輪の内周面の前記流体通路側に寄った部位に少なくとも一つの環状溝を設け、該環状溝に弾性材料からなるOリングをそれぞれ嵌合配置した」としているのに対し、引用例1に記載される発明は、かかる構成を備えていない点。 (3)当審の判断 そこで、その相違点につき検討する。 相違点1について、本願補正発明の構成要件である「流体通路」なる構成は、引用例2に「吸気通路4」として開示されてもいるが周知である。 そうしてみると、シール装置のかかる適用対象の相違程度のことは、設計上の微差であるとするのが相当である。 相違点2につき検討する。 本願補正発明が構成要件として「流体機器のハウジングの壁に設けた嵌合孔にシール付き転がり軸受を嵌装し」としているのに対し、引用例1に記載される発明は、更にアダプタ31を有する点が相違点のポイントである。 しかし、引用例1のものは熱対策を施す必要性からアダプタを採用したもので、本願補正発明のような構成とすること、つまりハウジングの壁に設けた嵌合孔に転がり軸受を嵌装すること、の方が寧ろありふれた設計である事は論を待たないが、必要であれば引用例2の記載を参照されたい。 したがってこの点も設計上の微差に過ぎない。 相違点3につき検討する。 確かに引用例1に記載される発明には、本願補正発明が有する、「転がり軸受の内輪と前記回転体の軸との間をシールするために、前記内輪の内周面の前記流体通路側に寄った部位に少なくとも一つの環状溝を設け、該環状溝に弾性材料からなるOリングをそれぞれ嵌合配置した」なる構成が欠如する。 しかし、引用例1に記載される発明が少なくとも「外輪16aの外周面の、前記ロータ室内側に寄った部位に少なくとも一つの環状溝40を設け、該環状溝40に弾性材料からなるOリング41をそれぞれ嵌合配置した」なる構成を有しているところ、更に内輪と回転体の軸との間にも同様の技術を採用すること、つまり本願補正発明の相違点3にかかる構成を採ることは、引用例3に開示される技術的事項が充分に教示するところであるから、当業者が容易になし得たことである。 そうしてみると、本願補正発明は引用例1に記載される発明に引用例2,3に記載される技術的事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3、本願発明について 平成13年4月26日付の手続補正は上記の通り補正の却下がされたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年5月22日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「外部との間に圧力差を生じる流体通路を内部に有する流体機器のハウジングの壁に設けた嵌合孔にシール付き転がり軸受を嵌装し、前記転がり軸受に、前記流体通路内に配置した回転体の軸を支持させた軸受装置において、前記転がり軸受の外輪と前記ハウジングの嵌合孔の内面および該転がり軸受の内輪と前記回転体の軸との間をシールするために、前記外輪の外周面および前記内輪の内周面の、前記流体通路側に寄った部位に少なくとも一つの環状溝を設け、該環状溝に弾性材料からなるシールリングをそれぞれ嵌合配置したことを特徴とする軸受装置。」 (2)対比・当審の判断 本願発明と本願補正発明とを比較すると、本願発明は本願補正発明における「Oリング」の上位概念に属する「シールリング」を有する発明である。 そうすると、本願発明よりも下位概念の発明である本願補正発明が前記「2、(3)」に記載したとおり、引用例1に記載される発明に引用例2,3に記載される技術的事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるとされているから、本願発明も同様の理由により、引用例1に記載される発明に引用例2,3に記載される技術的事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである。 5、むすび したがって、本願発明、即ち請求項1に係る発明は、引用例1、2、3に記載される発明または技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 以上、本願請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願の請求項2〜4に係る発明について審究するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-08-27 |
結審通知日 | 2003-09-03 |
審決日 | 2003-09-18 |
出願番号 | 特願平11-149741 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16C)
P 1 8・ 575- Z (F16C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 秋月 均、仁木 浩 |
特許庁審判長 |
村本 佳史 |
特許庁審判官 |
常盤 務 町田 隆志 |
発明の名称 | 軸受装置 |
代理人 | 萼 経夫 |