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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05D
管理番号 1086256
審判番号 不服2002-3884  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-04-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-07 
確定日 2003-11-07 
事件の表示 平成 4年特許願第245066号「モータの位置決め制御装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 4月 8日出願公開、特開平 6- 95743]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成04年9月14日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成4年9月30日付け、平成13年12月14日付け及び平成14年4月3日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という)
「【請求項1】
モータの回転位置を検出する位置検出手段と、
前記モータの目標位置と前記モータの現在の回転位置との位置偏差を算出し、
該位置偏差を位置偏差信号として出力する位置偏差出力手段と、
前記位置偏差信号が所定範囲内か否かを判定する位置偏差判定手段と、
前記位置偏差判定手段において、前記位置偏差信号が所定範囲外と判定された場合には、前記位置偏差信号に比例した比例信号と、前記位置偏差信号を微分した微分信号と、前記位置偏差信号を積分した積分信号とを合成した制御信号を出力し、前記位置偏差信号が所定範囲内と判定された場合には、前記微分信号を0にするとともに、前記位置偏差信号に比例した比例信号と、前記位置偏差信号を積分した積分信号とを合成した制御信号を出力する制御手段と、
を備え、前記制御信号により前記モータを駆動することを特徴とするモータの位置決め制御装置。」

2.引用例に記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前である平成4年4月28日に頒布された「特開平4-127417号公報」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
2.1 「このような電子ビーム描画装置の場合、移動ステージ7の移動時間が描画のスループットに与える影響は大きい。従って、移動ステージ7は短時間で移動することが要求され、また、停止時に発生する振動も小さいことが必要となる。」(2頁左上欄13行〜17行)
2.2 「図において、20は駆動用のサーボモータ、21は該サーボモータ20により駆動される移動ステージである。図示されていないが、移動ステージ21上には、電子ビーム描画用の材料が載置される。22は移動ステージ21の位置情報を受けて移動ステージの移動制御を行うための制御電圧を発生する制御演算部である。制御演算部22としては、例えば、マイクロコンピュータが用いられる。
23は該制御演算部からの制御電圧Vを受けて、対応する周波数Fのパルスに変換するV/F変換器を含むモータ駆動部である。該モータ駆動部23の出力パルスは、サーボモータ20に駆動パルスとして与えられる。24はサーボモータ20の回転軸に取り付けられ、該モータの回転数に応じた信号を出力するパルスエンコーダで、その出力は、制御演算部22に入力される。25は移動ステージ21の位置を検出するレーザ測長システム、26は該レーザ測長システム25の出力を受けて移動ステージ21の位置を示す信号に変換する位置変換器である。そして、該位置変換器26の出力は位置情報として制御演算部22に入っている。」(2頁左下欄10行〜右下欄11行)
2.3「PID制御 ・・・ステージがある目標位置に接近した時刻t3より行う制御である。方法としては、制御演算部22がパルスエンコーダ24またはレーザ測長システム25から移動ステージ21の位置情報を常時知りながら制御量を計算し、サーボモータ20の駆動部にフィードバックするものである。・・・演算式は、移動ステージ21の現在位置をX1、目標位置をXOとして、差分式で示すと差分値ΔX1は・・・制御演算部22から(2)式で与えられる制御量ΔXtで補正した制御電圧Vをモータ駆動部23に与えてやることにより、」(3頁右上欄13行〜右下欄6行)
なお、上記(2)式において、制御量ΔXtはP(比例)I(積分)D(微分)の各成分の和で表されている。すなわち、制御量ΔXtは各成分を合成した値であることが明らかである。

2.4「P制御及びパルスクリア
上記したPID制御によりステージを目的位置までに近づけたら制御演算部22からモータ駆動部23への制御をP(比例)制御に切換える。すなわち、第3図に示すように、時刻t3からt4の期間はPID制御を行い、時刻t4の後はP制御としてステージの自由振動を観測し、レーザ測長システムからの情報によりステージが所定の停止位置誤差内に入ったかを最終的に確認する。このP制御に切り換える理由は、PID制御よりも素早く停止制御が終了するからであり、所定の停止位置誤差内にステージが入ったならば(時刻t5)、モータ駆動部に対してパルスクリアを指示し、余分な溜りパルスの影響でステージが不要な動きをすることを避けるようにしる。」(3頁右下欄11行〜4頁左欄7行)

2.5 これらの記載事項及び図面の記載によれば、引用例には、
「モータによって駆動される移動ステージ、
該移動ステージの位置を検出するパルスエンコーダまたは、レーザ測長システム、
前記移動ステージの目標位置と現在位置との差分値を検出し、該差分値をPID各成分で補正した後、合成した制御電圧を出力する制御演算部と、
該制御演算部の出力である制御電圧を受けて対応する周波数の駆動パルスを出力するモータ駆動部とを備え、
前記制御演算部において、目的位置に接近したことを検出したとき、PID制御からP制御に切り換えることを特徴とする移動ステージ駆動装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下の事項が明かである。
3.1 引用発明の「差分値」、「制御電圧」は、本願発明の「位置偏差信号」、「制御信号」に相当する。
3.2 本願発明のモータの位置決め装置は明細書の記載から見て、モータに直結された負荷を駆動(停止)するための装置と認められるから、引用発明における移動ステージ(モータの負荷に相当)の「目標位置」、「回転位置」、「パルスエンコーダ又はレーザ測長システム」、「移動ステージ駆動装置」は、それぞれ本願発明における「モータの目標位置」、「モータの回転位置」、「位置検出手段」、「モータの位置決め装置」に相当する。
3.3 引用発明の「制御演算部」はマイクロ・コンピュータを用いることを前提として総合的に複数の制御・演算を行っており、具体的には、(1)「目標位置と現在位置との差分値を検出し」との演算機能、(2)「目的位置に接近したことを検出したとき」との演算機能、(3)「PID制御からP制御に切り換える」との制御機能を備えていると言える。
なお、上記(2)の演算機能を実現するには、目標位置から現在位置との所定の偏差を設定し、現在位置が該所定偏差内にあるか、該所定偏差外にあるかで、目標位置に接近したか否かを検出することは、偏差を検出して停止制御する装置において自明のこと認められる。
上記(1)、(2)の演算機能に対して、本願発明の「位置偏差出力手段」、「所定範囲内か否かを判定する位置偏差判定手段」がそれぞれ相当し、又、上記(3)の制御機能が本願発明の「制御手段」と対応することも明かである。
3.4 上記3.3の理由により、引用発明の「目標位置に接近したことを検出したとき」におけるその前は、本願発明の位置偏差信号が所定範囲外と判定された場合」に相当し、引用発明の「目標位置に接近したことを検出したとき」におけるその後は本願発明の「位置偏差信号が所定範囲内と判定された場合」に相当する。
3.5 引用発明の「前記移動ステージの目標位置と現在位置との差分値を検出し、該差分値をPID各成分で補正した後、合成した制御電圧を出力する」は、本願発明の「前記位置偏差信号に比例した比例信号と、前記位置偏差信号を微分した微分信号と、前記位置偏差信号を積分した積分信号とを合成した制御信号を出力し」に相当する。

3.6 以上の点を考慮すると、
両者は 「モータの回転位置を検出する位置検出手段と、
前記モータの目標位置と前記モータの現在の回転位置との位置偏差を算出し、
該位置偏差を位置偏差信号として出力する位置偏差出力手段と、
前記位置偏差信号が所定範囲内か否かを判定する位置偏差判定手段と、
前記位置偏差判定手段において、前記位置偏差信号が所定範囲外と判定された場合には、前記位置偏差信号に比例した比例信号と、前記位置偏差信号を微分した微分信号と、前記位置偏差信号を積分した積分信号とを合成した制御信号を出力する制御手段と、
を備え、前記制御信号により前記モータを駆動することを特徴とするモータの位置決め制御装置。」で一致し、
本願発明の制御手段が、「前記位置偏差信号が所定範囲内と判定された場合には、前記微分信号を0にするとともに、前記位置偏差信号に比例した比例信号と、前記位置偏差信号を積分した積分信号とを合成した制御信号を出力する」のに対し、引用発明の制御演算部では「目的位置に接近したことを検出したとき、PID制御からP制御に切り換える」点で相違する。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
停止制御を行う際、振動せずに早く目標位置に停止するのみでなく、更に、精確に停止することも、必要に応じて望まれる周知の技術的課題と認められる。
そして、この様な技術課題を解決する停止制御の方法として、停止寸前に比例(I)・積分(P)制御に切り換え、オフセット成分の生じないフィードバック停止制御方法(装置)は、例えば、
特開平1-296321号公報(「目標位置に近付いた時は、前述の信号に偏差値を積分した値の信号を加えて、位置決め誤差をなくして正確な位置決めを行う。これにより比例制御の応答性の悪さ振動振幅の増長を防ぎ、高速で高精度の位置決めを行うことができる。」(3頁左欄17行〜右欄2行))、特開平2-12507号公報(「停止速度近傍での定位置停止制御は、比例・積分制御により行なうようにした点」(特許請求の範囲参照))、特開平4-195207号公報(平成4年7月15日公開、「停止時のみ前記積分補償要素を動作させる点」(特許請求の範囲参照))等の記載からみて周知のことにすぎない。
したがって、引用発明においても、更に正確に停止することを課題として、目標位置に接近したことを検出したとき、PID制御からP制御に切換える構成に代えて,PI制御に切り換える構成とすることに格別の困難性が認められない。
なお、この様に構成する際、引用発明は、PID各成分を合成しているが、制御装置の切換の際、3つの成分の内、使わない成分を0とし、すなわち、PI成分のみを合成することは、慣用手段にすぎないと認められる。
そして、本願発明より得られる効果は、引用発明に上記周知の停止制御の方法(装置)を適用することにより、当然期待しうる程度のことにすぎないと認められる。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2003-08-26 
結審通知日 2003-09-02 
審決日 2003-09-17 
出願番号 特願平4-245066
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森林 克郎  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 岩本 正義
牧 初
発明の名称 モータの位置決め制御装置  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 佐藤 辰彦  

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