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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E05B
管理番号 1086258
審判番号 不服2002-19765  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-10-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-10 
確定日 2003-11-07 
事件の表示 平成11年特許願第 86273号「引出しのロック装置」拒絶査定に対する審判事件[平成12年10月10日出願公開、特開2000-282736]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年3月29日の出願であって、平成14年9月3日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月11日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年11月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年11月11日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「左右に並設された複数の引出しと、当該引出しを各引出し本体の外側面と、筐体のとの間に設けられたレール機構を介して、押込位置と引出位置との間で前後に出し入れ可能に支持する筐体とを具備する家具等に適用されるものであり、各引出しにそれぞれ設けられた被係止部と、これら各被係止部に対応させて前記筐体にそれぞれ設けられ、前記被係止部を係止して引出しを引出し不能とするロック状態、及び前記被係止部を係止せず引出しを引出し可能とする非ロック状態の2状態を保ち得る係止部と、左右に並ぶ一段の引出しにおける所定のもののうち、いずれか一の引出しが引出された状態においては、他の引出しに対応する係止部を全て前記ロック状態に保ち、これら他の引出しを引出すことができないようにロックする連動機構とを具備するものであって、前記被係止部が、引出しの底板に左右に延びるように取り付けられているチャネル状の桟部材に配設されていることを特徴とする引出しのロック装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「引出しを支持する筐体」を「引出しを各引出し本体の外側面と、筐体のとの間(「筐体との間」の誤記と認める)に設けられたレール機構を介して、押込位置と引出位置との間で前後に出し入れ可能に支持する筐体」と限定したものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭54-92132号(実開昭56-9241号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、3頁7行〜6頁3行「第1図において、1はキャビネット本体、2…は該本体1内に複数個装備された竪型の抽斗で、該抽斗2…はそれぞれ、通常、上端部で本体1に対し、案内枠3,4,5およびローラー6…等により出入り自在な状態で吊下げ式に保持されている。本体1の底部1aと各抽斗2…との間には、任意の一つの抽斗2を引出したときに他の抽斗2…を引出されないようにロックする機構を具備している。この機構は、本体1の底部1aに回転自在に装備せる横軸7の所定数箇所に取付けた回転金具8…と、該各金具8…に対して各抽斗2の下端に設けた突杆11…とで構成される。上記横軸7は、本体1底部1aの後端近傍部に、そのほぼ全幅にわたって装備し、両端を枢支金具12にて枢支している。回転金具8…は、各抽斗2の後方にあたる各箇所で横軸7に固着され、それぞれ、側面からみて略L字形に二方向の突片9,10を連成してなる。そして、横軸7と一体に、前部突片9が起立して後部突片10が本体1底部1a上に倒伏する後倒姿勢から、前部突片9が本体1底部1a上に倒伏して後部突片10が起立する前倒姿勢までの範囲で、各回転金具8…が連動して回動可能となるように構成され、すべての抽斗2…を閉じた状態では各回転金具8…が後倒姿勢に保たれている。上記後部突片10は、後述する回転動作を確実にする意味で、通常、上辺を後上がりに傾斜させておく。また、少なくとも一つの回転金具8に対し、その後方における本体1の底部1aに、弾性的に出入自在な鋼球13を備えた係止部材14を取付け、該鋼球13を回動金具8の後部突片10後端に係合させる等により、弾性的に係脱可能に後倒姿勢を保持し得るようにしておくことが望ましい。一方、前記各突杆11…はそれぞれ、各抽斗2の下端部後端に連設した取付枠15の側面後端部に突設し、抽斗2を閉じた状態で前記回動金具8の後方に位置するようにしている。また、この突杆11の回動金具8に対する高さ位置関係としては、突杆11が抽斗2の出入に伴って前後に移動するときに、回動金具8の両突片9,10のうちの倒伏した状態にあるものは乗り越えるが、起立した状態にあるものは当接するように構成されている。尚、本体1の底部1aに対する横軸7及び各回動金具8…の取付位置および抽斗2…に対する突杆11…の取付位置は、前記の回動金具8…と突杆11…との相対位置関係を満足する限り種々変更し得るところであって、例えば各抽斗2…の幅方向中央部あるいは一側部等に取付枠15…を介して突杆11…を取付け、これに対応させて横軸7に回動金具8…を配設しておけばよい。また、第6図に示すように、抽斗2…を回動金具8…よりも浮かせた状態で、抽斗2…の下方部で突杆11…と横軸7および回動金具8…とを対応させて配設するようにすれば、前後方向の取付位置も任意に選定し得るところである。」の記載および図面を参照すると、「左右に並設された複数の抽斗と、当該抽斗を各抽斗の上端部と、本体との間に設けられた案内枠およびローラー等を介して、押込位置と引出位置との間で前後に出し入れ可能に支持する本体とを具備するキャビネットに適用されるものであり、各抽斗にそれぞれ設けられた突杆と、これら各突杆に対応させて前記本体にそれぞれ設けられ、前記突杆を係止して抽斗を引出し不能とするロック状態、及び前記突杆を係止せず抽斗を引出し可能とする非ロック状態の2状態を保ち得る回動金具と、左右に並ぶ一段の抽斗における所定のもののうち、いずれか一の抽斗が引出された状態においては、他の抽斗に対応する回動金具を全て前記ロック状態に保ち、これら他の抽斗を引出すことができないようにロックする機構とを具備するものであって、前記突杆が、抽斗の底板に取り付けられている取付枠に配設されている抽斗のロック装置」という発明(以下「引用例発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例発明とを比較すると、引用例発明の「抽斗」、「本体」、「キャビネット」、「突杆」、「回動金具」、「機構」は、それぞれ、本願補正発明の「引出し」、「筐体」、「家具等」、「被係止部」、「係止部」、「連動機構」に相当し、引用例発明の「各抽斗の上端部と、本体との間に設けられた案内枠およびローラー等」と本願補正発明の「各引出し本体の外側面と、筐体との間に設けられたレール機構」とは、「引出しを筐体に押込位置と引出位置との間で前後に出し入れ可能に支持する機構」で共通しており、引用例発明の「取付枠」と、本願補正発明の「桟部材」とは、ともに、被係止部が配設されている、引出しの底板に取り付けられている「部材」で共通するから、両者は、「左右に並設された複数の引出しと、当該引出しを引出しを筐体に押込位置と引出位置との間で前後に出し入れ可能に支持する機構を介して、押込位置と引出位置との間で前後に出し入れ可能に支持する筐体とを具備する家具等に適用されるものであり、各引出しにそれぞれ設けられた被係止部と、これら各被係止部に対応させて前記筐体にそれぞれ設けられ、前記被係止部を係止して引出しを引出し不能とするロック状態、及び前記被係止部を係止せず引出しを引出し可能とする非ロック状態の2状態を保ち得る係止部と、左右に並ぶ一段の引出しにおける所定のもののうち、いずれか一の引出しが引出された状態においては、他の引出しに対応する係止部を全て前記ロック状態に保ち、これら他の引出しを引出すことができないようにロックする連動機構とを具備するものであって、前記被係止部が、引出しの底板に取り付けられている部材に配設されている引出しのロック装置」の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:引出しを筐体に押込位置と引出位置との間で前後に出し入れ可能に支持する機構が、本願補正発明は、各引出し本体の外側面と、筐体との間に設けられたレール機構であるのに対して、引用例発明は、各抽斗の上端部と、本体との間に設けられた案内枠およびローラー等である点。
相違点2:被係止部が配設されている、引出しの底板に取り付けられている部材が、本願補正発明は、引出しの底板に左右に延びるように取り付けられているチャネル状の桟部材であるのに対して、引用例発明は、抽斗の底板に取り付けられている取付枠で、取付枠が左右に延びるチャネル状ではない点。

(4)判断
相違点1について検討すると、引出しを筐体に押込位置と引出位置との間で前後に出し入れ可能に支持する機構として、各引出し本体の外側面と、筐体のとの間に設けられたレール機構は、周知技術(例えば、実願昭47-10153号(実開昭48-87128号)のマイクロフィルム、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-327953号公報等参照)にすぎない。
相違点2について検討すると、引用例発明において、取付枠を左右に延びるチャネル状とすることは、当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎない。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用例発明および上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成14年11月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成14年5月27日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 左右に並設された複数の引出しとこれら引出しを支持する筐体とを具備する家具等に適用されるものであり、各引出しにそれぞれ設けられた被係止部と、これら各被係止部に対応させて前記筐体にそれぞれ設けられ、前記被係止部を係止して引出しを引出し不能とするロック状態、及び前記被係止部を係止せず引出しを引出し可能とする非ロック状態の2状態を保ち得る係止部と、左右に並ぶ一段の引出しにおける所定のもののうち、いずれか一の引出しが引出された状態においては、他の引出しに対応する係止部を全て前記ロック状態に保ち、これら他の引出しを引出すことができないようにロックする連動機構とを具備するものであって、前記被係止部が、引出しの底板に左右に延びるように取り付けられているチャネル状の桟部材に配設されていることを特徴とする引出しのロック装置。
【請求項2】ないし【請求項6】(記載を省略)」
(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明を特定するために必要な事項から、「引出しを支持する筐体」についての限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-08-26 
結審通知日 2003-09-02 
審決日 2003-09-16 
出願番号 特願平11-86273
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E05B)
P 1 8・ 121- Z (E05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清藤 弘晃住田 秀弘古屋野 浩志  
特許庁審判長 鈴木 憲子
特許庁審判官 新井 夕起子
山田 忠夫
発明の名称 引出しのロック装置  
代理人 赤澤 一博  
代理人 井上 敬子  

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