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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1086276
審判番号 不服2001-22699  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-19 
確定日 2003-11-06 
事件の表示 平成 8年特許願第322911号「3-5族化合物半導体の製造方法および発光素子」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 6月19日出願公開、特開平10-163523]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年12月3日の出願であって、平成13年11月8日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月19日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成13年12月19日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年12月19日付の手続補正を却下する。
[理由]
本件補正は、特許請求の範囲の請求項2を
「一般式GaaAlbN(式中、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1)で表される3-5族化合物半導体からなる第1の層を1000℃を超える温度で成長させた後、一般式InxGayAlzN(式中、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)で表される3-5族化合物半導体層からなる第2の層を1000℃以下で成長させる3-5族化合物半導体の成長方法において、第2の層を成長させる前に一般式GavAlwN(式中、0≦v≦1、0≦w≦1、v+w=1)で表される3-5族化合物半導体からなる第3の層を1000℃以下の温度で5Å以上1μm以下の膜厚に成長させることを特徴とする3-5族化合物半導体の製造方法(但し、第3の層を第2の層の膜厚以下の膜厚に成長させる場合を除く)。」とする補正を含むものである。

そこで、検討するに、
(イ)本件補正前(拒絶査定時)の請求項2は、平成13年4月12日付け手続補正により補正されていないから、平成13年1月5日付け手続補正により補正された次のとおりのものである。
「【請求項1】
一般式GaaAlbN(式中、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1)で表される3-5族化合物半導体からなる第1の層を1000℃を超える温度で成長させた後、一般式InxGayAlzN(式中、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)で表される3-5族化合物半導体層からなる第2の層を1000℃以下で成長させる3-5族化合物半導体の成長方法において、第2の層を成長させる前に一般式GavAlwN(式中、0≦v≦1、0≦w≦1、v+w=1)で表される3-5族化合物半導体からなる第3の層を1000℃以下の温度で5Å以上1μm以下の膜厚に成長させることを特徴とする3-5族化合物半導体の製造方法(但し、第3の層におけるw=0であって、その膜厚が35Åまたは50Åである場合を除く)。
【請求項2】
第1の層が一般式GaaAlbN(式中、0.8≦a≦1、0≦b≦0.2、a+b=1)で表される3-5族化合物半導体からなることを特徴とする請求項1記載の3-5族化合物半導体の製造方法。」

すなわち、本件補正後の請求項2は、補正前の請求項2における第1の層のについての「一般式GaaAlbN(式中、0.8≦a≦1、0≦b≦0.2、a+b=1)」という数値範囲を「一般式GaaAlbN(式中、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1)」に拡張・変更したものに相当する。

(ロ)また、本件補正は、補正前の請求項1を限定的に減縮し、請求項2〜6に対応するものを新たな請求項3〜7に繰り下げると共に、記載のなかった事項を新たな請求項2として加え、請求項の数を6から7に増加するものである。
上記(イ)(ロ)のとおり、本件補正は、いずれにしろ、特許法第17条の2第4項各号に規定する、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明の何れにも該当しない補正事項を含んでいる。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第159条第1項の規定により準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願についての当審の判断
(1)本願発明
平成13年12月19日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年1月5日付け及び平成13年4月12日付手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
一般式GaaAlbN(式中、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1)で表される3-5族化合物半導体からなる第1の層を1000℃を超える温度で成長させた後、一般式InxGayAlzN(式中、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)で表される3-5族化合物半導体層からなる第2の層を1000℃以下で成長させる3-5族化合物半導体の成長方法において、第2の層を成長させる前に一般式GavAlwN(式中、0≦v≦1、0≦w≦1、v+w=1)で表される3-5族化合物半導体からなる第3の層を1000℃以下の温度で5Å以上1μm以下の膜厚に成長させることを特徴とする3-5族化合物半導体の製造方法(但し、1150℃でシリコンドープGaNを2μm成長させ、次いで900℃でGaNを約35Å成長させ、しかる後に700℃でIn0.4Ga0.6Nを約35Å成長させる場合、1100℃でシリコンドープn-Al0.15Ga0.85Nを約200Å成長させ、次いで800℃でGaNを約50Å成長させ、しかる後に800℃でIn0.2Ga0.8Nを約50Å成長させる場合、1150℃でシリコンドープGaNを約1μm成長させ、次いで750℃でGaNを1nm成長させ、しかる後に750℃でGa0.5In0.5Nを5nm成長させる場合、及び1100℃でシリコンドープAl0.08Ga0.92Nを5.0μm成長させ、次いで850℃でGaNを10nm成長させ、しかる後に850℃でシリコンドープIn0.07Ga0.93Nを10nm成長させる場合を除く)。」

(2)引用例記載の発明
原審における拒絶理由に引用された、この出願前公知の刊行物:特開平8-264831号公報(以下、「引用例」という。)には、窒化ガリウム系化合物半導体発光素子に関して、次の記載が認められる。
「【0026】
(第2実施例)
第1実施例の多層発光層5は、マグネシウム(Mg)と亜鉛(Zn)とシリコン(Si)とが添加されたInGaN層から成っているが、第2実施例の多層発光層5は、図3に示すように、GaN層54、InGaN層53の交互の層から成っている。その製法は、前述の高キャリア濃度n+層3を形成するところまでは同様で、その後、まずサファイア基板1の温度を1000℃に保持し、・・・シリコンドープのAl0.1Ga0.9Nから成る高キャリア濃度n+層4を形成する。
【0027】
続いて、温度を850℃に保持し、N2を20liter/分、NH3を10liter/分、TMGを1×10-5モル/分、TMIを1×10-4モル/分、CP2Mgを2×10-4モル/分、シランを10×10-9モル/分、またはDEZを2×10-4モル/分で導入し、全体の膜厚約0.5μmのマグネシウム(Mg)ドープで、交互にシリコン(Si)と亜鉛(Zn)のドープされたGaN/InGaNから成る多層発光層5を形成する。この第2実施例では、発光層の母材を変えて積層するため、アクセプターとドナーを添加する組み合わせがあり、図3(a)ではGaN層54にシリコンを添加して、InGaN層53に亜鉛(Zn)を添加した場合で、それぞれの厚さを100Åにした場合である。・・・また図3(b)の場合は、不純物を入れ換えて、GaN層56に亜鉛(Zn)を添加し、InGaN層55にシリコンを添加した場合で、厚さをGaN層56を50Å、InGaN層55を100Åとした場合である。」
上記によれば、引用例には、
「Al0.1Ga0.9Nから成る層を1000℃に保持して成長させ、続いて、温度を850℃に保持し、GaN層、InGaN層を成長させる方法において、前記GaN層を850℃の温度で50Å又は100Åの厚さに形成した窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(3)対比
本願発明と上記引用発明とを対比する。
引用発明の「Al0.1Ga0.9Nから成る層」、「GaN層」、「InGaN層」、「窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」は、
本願発明の「一般式GaaAlbN(式中、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1)で表される3-5族化合物半導体からなる第1の層」、「一般式GavAlwN(式中、0≦v≦1、0≦w≦1、v+w=1)で表される3-5族化合物半導体からなる第3の層」、「一般式InxGayAlzN(式中、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)で表される3-5族化合物半導体層からなる第2の層」、「3-5族化合物半導体」に各々相当する。また、引用発明におけるGaN層の層厚、50Å又は100Åは、5Å以上1μm以下であることは明らかである。
よって、両者は、
「一般式GaaAlbN(式中、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1)で表される3-5族化合物半導体からなる第1の層を成長させた後、一般式InxGayAlzN(式中、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)で表される3-5族化合物半導体層からなる第2の層を1000℃以下で成長させる3-5族化合物半導体の成長方法において、第2の層を成長させる前に一般式GavAlwN(式中、0≦v≦1、0≦w≦1、v+w=1)で表される3-5族化合物半導体からなる第3の層を1000℃以下の温度で5Å以上1μm以下の膜厚に成長させることを特徴とする3-5族化合物半導体の製造方法(但し、1150℃でシリコンドープGaNを2μm成長させ、次いで900℃でGaNを約35Å成長させ、しかる後に700℃でIn0.4Ga0.6Nを約35Å成長させる場合、1100℃でシリコンドープn-Al0.15Ga0.85Nを約200Å成長させ、次いで800℃でGaNを約50Å成長させ、しかる後に800℃でIn0.2Ga0.8Nを約50Å成長させる場合、1150℃でシリコンドープGaNを約1μm成長させ、次いで750℃でGaNを1nm成長させ、しかる後に750℃でGa0.5In0.5Nを5nm成長させる場合、及び1100℃でシリコンドープAl0.08Ga0.92Nを5.0μm成長させ、次いで850℃でGaNを10nm成長させ、しかる後に850℃でシリコンドープIn0.07Ga0.93Nを10nm成長させる場合を除く)。」
で一致し、下記の点で相違する。
(相違点)第1の層を、本願発明は、1000℃を超える温度で成長させたのに対し、引用発明では、1000℃に保持した温度で成長させた点。

(4)判断
上記相違点に付き検討するに、第1の層を、1000℃に保持した温度で成長させた引用発明と、1000℃を超える温度(例えば、1001℃)で成長させた本願発明との間に、格別の差異が認められず、また、第1の層である、一般式GaaAlbN(式中、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1)で表される3-5族化合物半導体層を1000℃を超える温度で成長させること自体は請求人も認めるように従来周知の事項である。よって、引用発明の「1000℃に保持した温度」を「1000℃を超える温度」と規定することに格別困難性はない。
しかも、第1の層を1000℃を超える温度(例えば、1001℃)で成長させた後、第2の層及び第3の層を1000℃以下(例えば、1000℃)で成長させるものを含む本願発明が、その全ての範囲において、本願明細書の【0005】及び【0007】に記載された従来技術の問題点を解決し、所期の目的を達成するとは考えがたいし、このような本願発明の作用効果は、引用発明が奏する作用効果に比し格別な差異を生じるとはいえない。
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(なお、原査定の別の拒絶の理由である特許法第29条の2違反についても一応検討するに、先願明細書(特願平8-209271号の願書に最初に添付した明細書又は図面、特開平10-41545号公報参照。)には、本願発明で除外した「1150℃でシリコンドープGaNを約1μm成長させ、次いで750℃でGaNを1nm成長させ、しかる後に750℃でGa0.5In0.5Nを5nm成長させる場合」以外に、750℃で成長させたGaNからなるバリア層の層厚を0.2〜5nm(2〜50Å)にする(明細書の【0006】及び【0026】参照。)ことが記載されている。よって、本願発明は、上記先願明細書に記載された発明である。)

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-02 
結審通知日 2003-09-09 
審決日 2003-09-24 
出願番号 特願平8-322911
審決分類 P 1 8・ 571- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 161- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏崎 康司門田 かづよ  
特許庁審判長 青山 待子
特許庁審判官 平井 良憲
町田 光信
発明の名称 3-5族化合物半導体の製造方法および発光素子  
代理人 榎本 雅之  
代理人 中山 亨  
代理人 久保山 隆  

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